従業員の薬物所持が疑われる場合の誤った会社の対応

【事例】
Aさんは、もともと警察官をしていましたが、現在は通信事業を営むX社のコンプライアンス部で課長の職に就いています。
ある日、Aさんは、Ⅹ社の従業員であるBさんが、日常的に違法薬物を使っているらしいという噂を耳にしました。
そこで、Aさんは、X社の規定に則り、Bさんに対して聴き取り調査を行うことにしました。
Bさんは聴き取りで、日常的に大麻を使用していた事実を認め、会社にあるBさんの机の引出しに隠して所持していた大麻をAさんに提出しました。
Aさんは、警察官をしていた経験から、Aさんが提出したのが実際に大麻の可能性が高いと考えました。
しかし、Aさんは、X社の株主総会が1月後と間近に迫っていたこともあり、警察に大麻を提出したらX社に捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が入ったり、Bさんが逮捕されたりして、その事実が報道されてしまうのではないかということを心配しました。
そのため、警察への提出は株主総会後にし、それまでは自分が大麻を厳重に保管する方がいいのではないかと、Bさんから提出を受けた大麻を直ぐに警察に提出することを躊躇してしまいました。
Aさんは、X社の上司とも相談して、どのように対応すべきかをあいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです)

Bさんに成立する犯罪

Aさんの見立て通り、Bさんが提出したのが違法な大麻だったとします。
違法な大麻を所持していたBさんは、「大麻を、みだりに、所持」したということになりますから、大麻取締法違反となり、「営利の目的」などがなく、有罪となれば5年以下の懲役という刑罰を受ける可能性があります(大麻取締法24条の2第1項)。

また、一般論としては、大麻取締法違反のように薬物事件が疑われる場合、被疑者(いわゆる容疑者)の捜査は、逮捕などをしてされることが多いといえます。そして、薬物を隠していた場所に対しては、捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われる可能性が高いといえます。

そのため、Aさんが懸念していたとおり、警察がBさんに大麻取締法違反の疑いがあるとして捜査を開始した場合、Bさんが逮捕されたり、X社のBさんの机について捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われたりする可能性は充分にあるでしょう。

どの対応が間違えていたのか?

しかし、Bさんが提出した大麻を、Aさんが保管することには大きな問題があります。
場合によっては、Aさん自身が罪に問われる可能性もあります。

⑴ 大麻取締法違反
まず、元警察官とはいえ、X社の株主総会が終わるまでの期間中、AさんがBさんから提出を受けた大麻を保管・所持して良い理由はありません。そうすると、Bさんから大麻の提出を受けてから、株主総会が終わって警察に提出するまでの約1カ月間、これは大麻の可能性が高いと思いながら、大麻を所持していたわけですから、保管していたAさん自身が大麻取締法違反として捜査を受け、処罰される可能性があります。

大麻の単純所持事案については,弊所解説記事もご覧ください。

⑵ 証拠隠滅罪
少し事情が変わって、Bさんに大麻を売ったCさんが警察に逮捕され、その捜査の過程で大麻を買った人物としてBさんが浮上し、警察からX社に問い合わせがあったとします。
それにもかかわらず、Aさんが何かと理由をつけて、Bさんから提出を受けた大麻を提出しなかったり、隠したりしたとします。

この場合のAさんの行為は、Bさんという「他人の刑事事件に関する」大麻という「証拠を隠滅」したといえますから、証拠隠滅罪に問われる可能性があります(刑法104条)。

従業員が犯罪行為によって逮捕,検挙されてしまった場合の対応についてはこちらもご覧ください。

このように、従業員が不祥事を行い、会社のためと思ってした行為であっても、許されない行為はありますし、場合によっては犯罪に当たってしまう可能性もあります。
そのような事態を回避するためには、刑事事件の視点から対応を考えることも重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、会社内で不祥事が起こった場合の対応・アドバイスにも力を入れています。
会社としての不祥事対応へのアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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