資金決済法違反

技術やサービスが日々進歩していくなか、企業は多様化するニーズに応えていくことが求められます。その一方で、より多くの利益を生み出すために新たなサービスを提供するにあたっては、法律による規制についても正確に把握しておく必要があります。

各種法律には罰則が規定されているものもあるため、規制の対象や内容を押さえていなければ、思わぬ法的リスクを負うこともあるためです。

資金の移動、すなわち決済サービスについても同様です。

資金決済に関するサービスの適切な実施に加えて、利用者の保護も両立させてサービス提供の促進を図るために定められたのが資金決済法(正式には資金決済に関する法律)になります。

商品券やプリペイドカードなどの金券に電子マネーといった、日常生活においてすっかり定着したサービスにも資金決済法は関わっています。さらには、徐々に一般にも浸透し始めている仮想通貨(暗号資産)も、資金決済法が規制する事業のうちの一つになります。

このように資金決済法は幅広い分野に関わるため、知らぬ間にリスクを冒すことがないよう、企業犯罪や不祥事に詳しい弁護士から法的アドバイスを受けることが重要です。

資金決済法が規制する事業として重要なのは、

  1. 前払式支払手段の発行業
  2. 資金移動業
  3. 暗号資産交換業

になります。

なお、資金決済法はこれら以外にも、為替取引に関係する債権債務を清算するために、銀行等の間で生じた為替取引に基づく債務を負担することを業として行う資金清算業(同法2条20項)についても規定しています。

各種規制は、いずれも利用者の保護を念頭に置いており、無登録・無届での営業や名義貸しは、刑事罰をもって禁止されています(資金決済法7条、同法42条、同法63条の2、同法64条1項、同法107条など)。

前払式支払手段

資金決済法が規制している事業の一つが、前払式支払手段の発行業になります。

前払式支払手段の詳細な定義は資金決済法3条1項によって定められていますが、概要としては、事前に対価を支払うことで、商品やサービスの購入時に利用できる決済手段のことを指します。

ギフト券やテレホンカード、買い物時や交通機関を利用する際に使用できる各種電子マネーなどがその例です。

前払式支払手段を発行する事業者は、その支払手段で支払が可能な金額(同法13条1項2号)、使用できる期間や期限(同項3号)、苦情・相談に応じる事業所の所在地や連絡先(同項4号)などの事項を利用者に対して情報提供することが求められます。

事業者がサービスの提供を終了した際に、利用者への速やかな払戻しを可能にするため、残高に応じた発行保証金を供託することも義務づけられています(同法14条1項)。

資金移動業

資金移動業とは、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことを指します(資金決済法2条2項)。送金にあたって利用者の資金を保護するため、資金移動業を営むには内閣総理大臣の登録が必要になります(同法37条)。

利用者保護の観点から、事業者が倒産した際にも送金を滞りなく行えるよう、送金途中で滞留している資金の全額以上を履行保証金として供託すること(同法43条1項)などが要求されています。

暗号資産交換業

いわゆる仮想通貨は、資金決済法では暗号資産(同法2条14項)と呼ばれています。暗号資産は電子マネーの一種ですが、法定通貨のように国が価値を保証しておらず、銀行等の第三者を介さずにインターネット上でユーザー同士がやり取りすることが可能という特徴を有しています。

需要と供給による価格変動が激しく、時として高騰することもあり得るため、企業による注目もますます高まっています。

暗号資産はこのような性質を有するため、利用者の保護やマネーロンダリングへの悪用を防止することが重要な課題となります。そこで、資金決済法は暗号資産の売買や交換、管理を行う暗号資産交換業(同法2条15項)に対する規制を行っています。

暗号資産交換業者には、漏洩などの不祥事を防止するために必要な情報の安全管理(同法63条の8)、暗号資産の性質に関する説明や手数料その他の情報を提供するといった利用者の保護等に関する措置(同法63条の10)が求められるほか、事業者と利用者の金銭を分別するといった利用者財産の管理(同法63条の11)に関する規制が課されています。 

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