金融商品取引法違反

利益を上げるために事業を行う企業にとって、まずもって行う必要があるのが活動資金の調達です。

どれほど魅力的な事業を計画していても、資金がなければ何も始まらないためです。そのため、手元資金が不足している企業にとって、株式や社債の発行は、資金調達において極めて重要な手段となります。

もっとも、株券や社債券といった有価証券の発行や売買が何らの制約もなく自由に行えてしまえば、金融取引の公正さが担保できず、結果として出資等を行う投資家の利益が害されてしまいます。

そこで、有価証券その他の金融商品に関する開示制度の拡充、取扱業者に対する規制を行い、投資家を保護するために制定されたのが金融商品取引法になります。

金融商品取引法に違反するということは、その企業に投資家保護のコンプライアンスが徹底されていないことを意味します。

その結果、後の活動資金の調達に深刻な影響を及ぼすことになるため、不安がある場合は速やかに企業犯罪や不祥事に造詣の深い弁護士に相談することをお勧めします。

粉飾決算(有価証券報告書虚偽記載)

メディアで度々取り上げられる粉飾決算を規制しているのも金融商品取引法です。粉飾決算とは、企業が不正な会計操作によって作成した虚偽の決算報告のことを指します。

不正な会計操作の中には、脱税を目的として売上を減少させ、経費を水増しするといったものもありますが、粉飾決算と呼ばれるのは、主として経営実績や財務状態を過大に表示する場合を指します。黒字経営を装うことで、有利な条件で融資を得ることがその目的となります。

粉飾決算が行われてしまうと、企業の実態を正確に把握できなくなるため、投資家が不測の損害を被ることになりかねません。それゆえ、金融商品取引法は粉飾決算を行った者に対して、損害賠償責任や刑事罰を定めています。

例を挙げると、有価証券報告書(会社の概況や事業状況、財務諸表といった企業情報がまとめられたもの)の重要な事項に関して虚偽の記載を行った場合は、事情を知らずに有価証券を取得した者に対して役員らの損害賠償責任が認められており(金融商品取引法24条の4)、刑事罰としても10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらの併科が定められています(同法197条1項1号)。

販売・勧誘規制違反(損失補填の禁止)

有価証券や先物取引などのデリバティブ取引を扱う取引業者が販売・勧誘を行う際には、投資家保護の観点から様々な規制が施されています。

規制内容は多岐にわたり、広告にあたっての必要事項の表示(金融商品取引法37条1項)、取引契約締結前(同法37条の3)及び締結時(同法37条の4)における書面の交付義務、虚偽の事実の告知(同法38条1号)や不確実な事項についての断定的判断の提供(同条2号)といった禁止行為が定められています。

顧客の知識や財産状況等に応じ、不適当と見られる勧誘を禁止する、いわゆる適合性の原則についても規定があります(同法40条1号)。

取引業者の販売・勧誘の規制において特徴的なものとして、損失補填の禁止があります。取引事業者は、顧客に生じた損失を補填すること、補填を約束することが禁止されています(同法39条)。

顧客の損失を事業者が補填することは、一見すると金融商品取引法の目的である投資家保護にも合致するようにも思えます。

もっとも、損失補填を認めてしまえば、実際には特定の大口顧客のみが保護されることになってしまい、かえって投資家間の公平を欠くことになります。それゆえ、事業者による損失補填は禁止されています。

不公正取引(インサイダー取引、相場操縦、風説の流布等)

金融商品取引法は、有価証券の売買等にあたって、不正の手段(同法157条1号)や虚偽の表示がある文書等(同条2号)を利用するといった不正行為一般を禁止するほか、不公正取引として風説の流布等(同法158条)や相場操縦行為(同法159条)も禁止しています。

風説の流布とは、有価証券の売買等のために、噂や根拠のない風評を不特定多数に伝達することを指し、偽計や暴行・脅迫行為と併せて規制されています。

相場操縦行為とは、取引が活発に行われていることを他人に誤解させる目的で、有価証券の仮想売買などを用いることで人為的に相場を変動させることを指します。

インサイダー取引も不公正取引の一種として規制されています。インサイダー取引とは、役員等がその立場を利用して知った重要な内部情報を用い、その情報が公表される前に会社の株式といった有価証券の売買を行うことを指します。

インサイダー取引を許してしまえば、一般投資家が不公平な立場に置かれ、金融商品市場の公正さも害されます。

そこで、金融商品取引法はインサイダー取引を禁止し(同法166条)、刑事罰として5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれの併科を定めています(同法197条の2第13号)。また、インサイダー取引によって得た利益は没収の対象となります(同法198条の2第1項)。

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