道路交通関連

1 はじめに

道路交通関係法違反で会社の従業員等が検挙されてしまうというのは非常によくあることです。

道路交通関係法とは、例えば道路交通法や道路運送車両法、自動車運転処罰法などのことです。

従業員が飲酒運転をしてしまった、無免許運転をしてしまった、無車検車両を運行してしまった、などなど、いろいろな場面が想定されます。

また、それが営業中(職務中)のものなのか、それともプライベートな時間のものなのか、といった区別もあります。

ここでは、主に道路交通法と道路運送車両法の規定と罰則を紹介し、従業員が道路交通関係法に違反した場合の企業・会社としての対応について解説します。

2 道路交通法

道路交通法は聞きなじみのある法律ですし、企業や会社であろうとなかろうと、少なくとも自動車を運転する場合には絶対に避けては通れない法律です。

道路交通法には様々な交通ルールが定められています。そして、その交通ルールに違反した場合の罰則も定められています。

このうち、軽微な違反については交通反則通告制度に基づき、交通反則金を支払うことにより行政処分だけで処理されます。いわゆる、青切符と呼ばれるもので、交通反則金を支払い、違反点数の累積で処理するものです。

青切符での処理はいわゆる刑事事件ではないので、ここでは省略しましょう。
ここでは、交通反則通告制度では処理できない類型、いわゆる赤切符が交付されるような違反で、特に代表的なものを紹介します。

⑴ 飲酒運転(酒気帯び運転、酒酔い運転)

飲酒運転は、交通三悪の1つであり、非常に重い刑罰が規定されています。

「飲酒運転」と一口に言っても、法律上は2つに分かれています。1つが酒気帯び運転、もう1つが酒酔い運転です。

酒気帯び運転

まず、酒気帯び運転についてですが、道路交通法65条1項で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」(65条1項)と規定されています。

そして、「第65条第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの」は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金になります(道路交通法117条2の2第1項3号)。

「政令で定める程度」というのは、呼気中のアルコール濃度が0.25mg/L以上のことです。

酒酔い運転

次に、酒酔い運転についてですが、「第65条第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの」は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金になります(道路交通法117条の2第1項1号)。

酒酔い運転は酒気帯び運転とは異なり、アルコール濃度は関係ありません。呼気中のアルコール濃度が0.25mg未満であった場合でも、正常運転ができないような状態であれば酒酔い運転となります。

⑵ アルコールチェック

アルコールチェックは、近年の道路交通法施行規則の改正によって新たに義務づけられたものです。
概要を簡単に確認しておきましょう。

①義務化対象者

安全運転管理者を設置している事業者

安全運転管理者を設置しなければならない事業者は、「乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用する事業所」か「乗車定員10人以下の自動車を5台以上使用する事業所」です(道路交通法74条の3第1項、道路交通法施行規則9条の8第1項)。

②義務内容

  • 安全管理運転者の設置(なお、20台以上の自動車を使用する事業所の場合は副安全管理運転者も設置)
  • アルコール検知器の設置
    令和4年4月1日より、目視によるアルコールチェックが義務づけられました。それに加えて、令和5年12月1日より、アルコール検知器による確認も義務となります。
  • アルコールチェックの記録の作成・保管体制整備

③アルコールチェック時期

  • 「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」(道路交通法施行規則9条の10第6号)=運転業務の開始前及び運転業務の終了後の2回

④義務違反の罰則

安全運転者を設置していなかった場合には刑罰の対象となりますが(5万円以下の罰金。なお両罰規定あり)、アルコールチェック義務の違反があったとしても、それ自体は刑罰の対象とはなっていません。

ただし、罰則がないからといって義務を履行しなくてもいい理由にはなりません。
義務化対象の事業主は必ずアルコールチェック体制を万全に整えるようにしましょう。

⑶ 過労運転

過労運転も道路交通法では禁止されています。

道路交通法66条に「何人も、前条第1項(注:酒気帯び運転のこと)に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」と規定さています。

そして、過労運転をした場合にも、酒気帯び運転と同様に、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(道路交通法117条の2の2第1項7号)。

⑷ 無免許運転

無免許運転も交通三悪のうちの1つです。ちなみに、残り1つの交通三悪はスピード違反です。

無免許運転の罰則は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

3 道路運送車両法

道路運送車両法とは、道路運送車両に関し、所有権についての公証等を行い、並びに安全性の確保及び公害の防止その他の環境の保全並びに整備についての技術の向上を図り、併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより、公共の福祉を増進することを目的とする法律です(道路運送車両法1条)。

具体的には、自動車の登録(登記)に関する事項や車検などについて規定しています。

道路運送車両法違反で特に多いのが無車検運行です。

運行の用に供する自動車は必ず車検を受けなければなりません。そして、無車検(いわゆる車検切れやそもそも車検が通っていない)自動車を運行すれば、道路運送車両法違反となります。

無保険運行の罰則は6月以下の懲役又は30万円以下の罰金です(道路運送車両法108条)。

4 企業・会社の対応

企業や会社の従業員等が道路交通関係法に違反した場合、企業側もきちんとした対応をする必要があります。

まず、自動車の運行等を業としているような企業(例えば運送業者など)であれば、従業員等が起こした事件であったとしても、厳しい批判に晒されることが予想されます。

また、運送業などではなかったとしても、業務中の運転時の事件であれば同様です。

従業員等がまったく業務と関係なく、プライベートで事件を起こした場合であっても、事件の内容によっては大きく報道されることもありますし、報道の際に勤務先が明らかになってしまう場合もあります。

企業側としては、従業員等に対して道路交通法規の遵守を徹底させる必要があります。

また、個人だけでなく企業・会社全体として道路交通法規を遵守する姿勢を明確にする必要があるでしょう。

そのうえで、もし従業員等が道路交通関係法に違反してしまった場合には、すべてを個人の責任にするのではなく、企業・会社としても適切な対応をする必要があります。

特に飲酒運転はかなり厳しい非難が向けられますし、近年は運送業界の過労運転なども大きな社会問題となっています。

企業側がその後の対応を誤れば、風評被害や信用問題など、より大きな損害を被りかねないものです。

このような問題が起きないように予防法務の観点から事前に適切な措置を講じ、もし事件が起こってしまった場合には迅速かつ的確に対応していくためには、弁護士の助力と尽力が必須になります。

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