暴行・傷害

暴行や傷害は突発的にされることが多い犯罪ですので、酔った際やかっとなった時などに犯してしまうことがあります。

暴行の経緯や傷害の重さによっては逮捕などの身体拘束がされる場合もあります。

企業の従業員が暴行事件や傷害事件に関わってしまった場合に企業側としてどのように対応するべきかについて具体的な事例を用いて説明します。

以下の事例において、企業側としてどのような責任が生じるか、どのような点に留意して対応するべきなのかについて解説します。

事例1

A社は飲食店を経営している企業であるが、そこで正社員として雇用しているBさんが、飲食店を訪れた客Cさんとの間でトラブルになった末、客の顔面を殴打して全治2週間のけがを負わせてしまいました。

Q
A社側としてBさんがした傷害事件の責任を負うことはありますか。
A

原則として会社側が刑事責任を負うことはありませんが、怪我をさせた状況等によっては民事上の責任を負う場合があります。

今回の事例では怪我をさせたBさんに傷害罪が成立する可能性が高いです。傷害罪については刑法204条に定めがあり、「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と定められています。刑事責任を負うのは傷害を負わせた者ですので、当然A社はこれにあたりません。

では民事上の責任はどうでしょうか。

民事上の責任として考えられるのは、不法行為に基づく損害賠償を支払う責任になります。経緯にもよりますが基本的には民事上の損害賠償責任を負うのは怪我を負わせたBさんになります。

しかしながら民法には使用者責任の規定があります。

これは民法715条に定めがあり、従業員が他人に損害を発生させた場合に、会社もその従業員と連帯して被害者に対して損害賠償の責任を負う場合があります。

「連帯して」とは簡単に言えば、怪我を負わせた従業員と同じ立場で賠償金を支払う責任を負うということであり、本件であれば被害者であるCさんとしては怪我を負わせたBさんではなく、より資力があると考えるA社に対し請求することも出来るという意味です。

Q
A社としてBさんに対する示談に協力するべきですか。
A

先ほどの質問に対する回答で述べたように、A社は傷害事件において刑事罰を受けるリスクはありませんが、民事上の責任を負う可能性があります。

今回の事例ではBさんが勤務中に起こした事件であるので、使用者責任の要件を満たす可能性が高い事例であるといえます。したがって、民事上の責任の追及を避けるためにも示談に協力するメリットはあるといえます。

示談の内容については、清算条項や口外禁止条項など、円満な解決のために必要な条項があります。

示談の締結を当事者同士ですればトラブルになることも予想されますので、是非一度示談の内容や交渉に関し弁護士に相談することをおすすめします。

Bさんが逮捕されて、出勤が出来ずにA社が困っている場合にも示談金を立て替えるなどして事件の早期解決に協力する場合もあります。その場合にも弁護士に一度接見を依頼するなどして対応を相談することをおすすめします。

事例2

D社の部長であるEさんは日常的に部下に対してパワハラを行っていた。ある日Eさんは、部下であるFさんの勤務態度に腹を立てて叱責した際に、手に持っていたファイルをFさん向かって投げつけて怪我をさせたということが被害者からの告発によってD社側に明らかになりました。

Q
会社側としてEさんがした傷害事件の責任を負うことはありますか
A

先ほどの事例と同様にEさんには傷害罪が成立して刑事罰を受ける可能性がありますが、会社が刑事罰を負うことはありません。

ただし会社内で起こした傷害事件であるので民法715条に基づく使用者責任を負う場合があります。

Q
会社としてEさんやFさんに対してどのように対応することが望ましいですか。
A

今回の事件は社内におけるいわゆるパワハラの問題でもありますので、1つ目の事例で述べた示談の締結も含めて、慎重に解決を図る必要があります。

まずは当事者双方に慎重に話を聞いて、事実経過の確認を行うことが重要になります。

そして社内調査を行ってEさんが日常的にパワハラを行っていないかについても確認する必要があります。そして治療費の負担やEさんへの処分、Fさんに対するフォローをどのようにしていくかを検討してく必要があります。

会社内のパワハラが原因でうつ病を発症してしまった、最悪の場合パワハラを苦にして自ら命を絶ってしまったという事例も起こっています。

大変痛ましいことですが、会社として適切な対応をとっていなかったとして損害賠償の支払いが認められたケースもあります。

今回の事例でも早期に慎重な対応をとって再発や事態の悪化の防止に努める必要があります。

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