不正競争防止法違反

1 不正競争防止法とは

不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的として(同法1条)定められた法律です。

このような目的を達成するために、不正競争防止法には、様々な措置が定められていますが、ここでは、

  1. 営業秘密侵害
  2. 不当・虚偽表示
  3. 国際約束に基づく禁止行為

について、説明していきます。

2 営業秘密侵害

「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいいます(同法2条6項)。

そして、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺や窃盗等の不正な手段によって営業秘密を取得する行為(同法21条1項1号)や営業秘密が記録された媒体を預かった者がこれを横領する行為(同法21条1項3号イ)などが営業秘密を侵害する行為とされています。

不正競争防止法21条1項は、こうした営業秘密を侵害する行為をした者を、10年以下の懲役もしくは2000万円の罰金(または罰金を併科)に処するとしています。

また、こうした営業秘密を侵害する行為の一部については、法人の代表者又は法人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、その行為を行ったときは、法人も罰金(法定刑は5億円以下。同法22条1項2号)の対象とされています。

たとえば、A社の代表取締役Xさんが、A社の事業に利用するため、競合会社B社の従業員Yさんを騙し、「営業秘密」が入ったUSBメモリを取得した場合、Xさんだけではなく、A社も刑事責任を問われることが考えられます。

3 不当・虚偽表示

不正競争防止法では、商品や営業に関し、不当や虚偽の表示をすることが事業者間の公正な競争などを害するため、規制の対象としています。なお、場合によっては、詐欺罪など別の罪にも問われる可能性がありますが、ここでは、あくまで不正競争防止法違反について説明します。

たとえば、B社が販売する「Eドリンク」という名称で、人気となっている栄養ドリンクがあった場合において、A社(発売を決定したのはXさん)が「ドリンクE」という栄養ドリンクを販売していました。

このとき、他人の商品・営業の表示(以下、「商品等表示」といいます。)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為(同法2条1項1号)として、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(または罰金を併科)の範囲で刑事責任を問われる可能性があります(同法21条2項1号)。

また、たとえば、豚肉を混ぜた合いびき肉であるにもかかわらず、取引先の業者に対し、「牛100%」と表示して、合いびき肉を販売した場合、商品・役務又はその広告等に、その原産地、品質・質、内容等について誤認させるような表示をする行為、またはその表示をした商品を譲渡等する行為(同法2条1項20号)として、同様の刑事責任を問われる可能性があります。

仮に、法人の代表者又は法人の代理人、使用人その他の従業者が、こうした不正競争防止法違反行為として刑事責任を問われることになった場合、営業秘密侵害と同様、法人も罰金(このときの法定刑は3億円以下。同法22条1項3号)を科される可能性があります。

4 国際約束に基づく禁止行為

不正競争防止法では、国際約束に基づく禁止行為というものを定めています。

たとえば、①アメリカ産の牛肉であるのにも関わらず、パッケージに、オーストラリアの国旗を載せ、一見すると、オーストラリア産であるかのように見えるようにすることや、②オリンピックとは全く無関係の商品のパッケージに、国際オリンピック委員会のロゴを載せ、あたかもオリンピックの公式グッズのように見せること、③外国公務員に対する贈賄行為などが規制の対象となっており(同法16~18条)、これに違反した場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(または罰金の併科)とされています(同法21条2項7号)。

仮に、法人の代表者又は法人の代理人、使用人その他の従業者が、国際約束に基づく禁止行為として刑事責任を問われることになった場合、営業秘密侵害などと同様、法人も罰金(このときの法定刑は3億円以下。同法22条1項3号)を科されることが考えられます。

5 その他の会社の責任

たとえば、営業秘密侵害によって、損害を被った者がいる場合、その者に対して、損害賠償責任を負う可能性があります。

また、法人の代表者などが逮捕され、そのことが報道されることになると、法人の信用や取引先にも影響が出ることも考えられます。

6 会社における対応・弁護活動

会社にて不正競争防止法違反に該当する行為が行われた場合、会社としては、会社自身が法的責任を負う可能性があるのかを慎重に検討し、今後の対応を決める必要があります。

たとえば、会社が法的責任を負う場合において、被害者がいるとき、被害者と示談をするといったことも考えられます。

また、報道などの社会的責任に関しても、取引先にどのように説明をしていくのかといったことも考える必要があります。

以上のように、会社としては、様々な対応をする必要があり、適切に対応していくのであれば、弁護士のサポートが必要になってくることが考えられます。

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