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景品表示法,医事法違反で制裁も?インフルエンサー広告の落とし穴

2025-07-01

※生成AIによるイメージ

はじめに

近年、SNS上のインフルエンサー広告を取り巻く法規制が急速に強化されています。2023年10月には「ステルスマーケティング規制」が施行され、広告であることを隠した宣伝行為が正式に行政処分の対象となりました。実際に2024年には美容サプリやスキンケア商品の広告で違法な効能をうたったケースが報道され、企業が炎上・摘発される事例が相次いでいます。広告担当者にとって、これまで以上に法的リスクへの備えが不可欠な時代となっています。

1. 薬機法と景品表示法が規制する広告表現とは

薬機法(医薬品医療機器等法)は、医薬品や化粧品などの広告において、効果・効能に関する虚偽や誇大な表現を禁止しています。例えば、医薬品でないサプリメントを「あたかも病気の予防や治療ができる」かのように宣伝することは薬機法違反となります。一方、景品表示法は商品の品質や効果について消費者を誤認させる表示を禁止する法律です。根拠のない「世界一」「絶対○○できる」といった断定的な表現や、実際以上に優良に見せかける広告表示は景品表示法の規制対象となります。これらの法律は、消費者が正しい情報に基づいて商品を選択できるよう、企業に対し適切な広告表現を求めています。

2. 事例(2024年のインフルエンサー広告炎上・摘発事例)

2024年にはインフルエンサー広告に関連した違反事例が次々と明るみに出ました。例えば、大手製薬会社がアンチエイジング効果をうたうサプリメントの宣伝でインフルエンサーを起用し、投稿を自社サイトに転載する際に「PR」明記を怠ったため、消費者庁から景品表示法違反で再発防止の措置命令を受けています。
参考 消費者庁の公告
このケースでは、広告であることを隠したステルスマーケティングが問題視され、健康食品分野では新規制後初のステマ認定となりました。

また、医療機関では来院者に対し「Googleレビューで星5投稿」を条件に治療費を割引する行為が発覚し、2024年6月にステマ規制違反で措置命令が下されています。
参考 消費者庁の公告 
これらの事例は、企業にとってインフルエンサーやSNSを利用した宣伝に潜む法的リスクの現実を突きつけています。

3. ステルスマーケティング規制の要点と広告主の義務

ステルスマーケティング規制とは、企業が関与した宣伝であるにもかかわらず広告であると分からないように見せかける表示を、不当表示として取り締まるもの。日本では2023年10月1日から景品表示法の運用基準が見直され、ステマが正式に規制対象に位置付けられました。

具体的には、「事業者による広告であるにも関わらず第三者の中立的意見と誤認される表示」が違法とされ、行政処分の対象となります。広告主には、自社が依頼したインフルエンサー投稿やレビュー記事に「#PR」「広告」等の表示を明示させる義務があります。規制開始後は、既存の投稿も表示が残っていれば対象となるため、過去の宣伝についても広告主は点検と是正が求められます。

広告表示の透明性確保は企業の責務であり、「広告であることを隠さない」ことが信頼維持の前提条件になったといえます。

4. インフルエンサー・広告代理店・企業の法的責任の所在

インフルエンサー広告における法的責任は、広告主・制作者から発信者まで幅広い関係者に及びます。薬機法では「何人も」違反広告をしてはならないと規定されており、広告に関与した個人も処罰対象です。実際、2021年には個人アフィリエイターが自身のサイトで違法な効能をうたい書類送検された例もあり、この事案は商品が数個しか売れていなくとも摘発され得ることを示唆しています。

景品表示法についても2023年改正により、違法表示に広告主と共同で関与した広告代理店やインフルエンサーも罰則対象となりました。つまり、企業が依頼したインスタグラムPR投稿であっても、違反表現があれば投稿者本人も含め広告主も法的責任を問われる可能性があります。このため広告主はインフルエンサーや代理店任せにせず、事前に表現内容をチェックし指導を徹底する必要があります。法規違反があれば企業・代理店・起用したインフルエンサー全てが社会的・法的な責任を負う時代となったのです。

5. よくある違反表現とそのリスク解説

美容・健康商材の広告では、効果を強調するあまり違反となる表現を使ってしまいがちです。

典型例として、

・「このサプリを飲めば必ず痩せる

・「このクリームを塗ればニキビが治る

といった断定的・万能感のある謳い文句はNG表現です。

こうした表現は薬機法・景品表示法に抵触し、行政から措置命令(違法表示の停止や再発防止の命令)を受けるリスクがあります。

措置命令を受けると企業名公表や広告差し止めが行われ、従わない場合は2年以下の懲役や3百万円以下の罰金(法人は最大3億円)といった刑事罰に発展しかねません。

また、法律違反まではいかなくとも「嘘っぽい宣伝」と受け取られればSNSで批判が拡散し炎上しやすく、ブランドイメージの毀損や販売停止に追い込まれる危険もあります。Amazonや楽天などのECサイトでは,虚偽広告をした事業主に対する制裁として出品や出店の停止の措置をとることもあります。

根拠のない誇張表現は一時的な集客効果よりも大きな損失を招くリスクがあることを肝に銘じる必要があります。

6. 法的チェック体制の構築と広告審査のポイント

企業がインフルエンサーやSNSでのPR施策を安全に運用するには、万全の内部チェック体制を築くことが重要です。まず、社内で薬機法・景表法に関するガイドラインを策定し、どんな表現がNGかをマーケティング担当者やインフルエンサーに周知徹底しましょう。

投稿内容やLP(ランディングページ)は事前に法務担当者や専門家によるチェックを行い、根拠のない表現や誤認のおそれがないか確認します。自社で対応が難しい場合は、薬機法に詳しい弁護士やコンサルタントに定期的に監修を依頼するのも有効です。

また、アフィリエイト広告やインフルエンサー投稿については媒体管理を徹底し、報酬目当ての過剰表現が行われていないかモニタリングする必要があります。報酬提供時には「PR表示を必須にする」「禁句リストを共有する」などのルールを契約書に明記し、遵守状況を確認しましょう。

さらに、万一問題が発覚した際の対応フローも決めておくことで、迅速な投稿削除や再発防止策の実施が可能になります。法律知識のアップデートと社内教育の継続により、違法表現の未然防止と万全なリスク管理体制を構築することができます。

インフルエンサー広告の法令遵守に不安がある企業様は、ぜひ専門家への相談をご検討ください。当事務所(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)は刑事事件を専門とし、薬機法違反や景表法違反などの特別法違反事件にも対応実績があります。

広告表現の事前チェックや表示改善のアドバイスはもちろん、万が一行政から調査や措置命令を受けた際には法的対応を全面サポートいたします。また、インフルエンサー契約や広告代理店との取引に関するリーガルチェック、社内研修によるコンプライアンス体制強化支援なども行っています。

不安や疑問がございましたら一人で抱え込まず、違反の未然防止からトラブル対応まで経験豊富な弁護士にご相談ください。企業が安心してマーケティングに取り組めるよう、法的側面から全力で支援いたします。

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民泊サービスを始める場合の法律上の注意点⑦

2025-06-24

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します⑦

【相談】

不動産事業を営むX社の社長であるAさんから次のような相談を受けました
実は自社の顧客から
「自分が住む一軒家や持っている別荘を利用して民泊サービスを始めようと考えているがどうすればよいのか」
と相談されているのだがどのように対応すればよいのか。
最近住宅宿泊事業法という法律が施行されたと聞くがそれは旅館業法とは何が違うのか。
(相談はフィクションです)

前回までの記事では住宅宿泊業法の「住宅」の要件について解説しました。
実際に民泊サービスとして使用する「住宅」が決まれば、次は開業するための手続きになります。
今回の記事では、住宅宿泊事業法に基づいて民泊サービスを始める場合の手続きの概説について解説します。

1 届出方法について

住宅宿泊事業を始めるためには、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に届け出る必要があります(住宅宿泊事業法第3条1項)。
ここでのポイントは、旅館業法の場合は「許可」を申請する必要があったのに対して、住宅宿泊事業法では「届出」で手続きが足りるということです。
許可と届出の違いの説明はここでは省略しますが、旅館業法に基づくよりも手続きが簡便になっています。
届出をする際の記載事項に関しては住宅宿泊事業法第3条2項に定めがあります。
住宅宿泊事業法第3条
2 前項の届出をしようとする者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、住宅宿泊事業を営もうとする住宅ごとに、次に掲げる事項を記載した届出書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 商号、名称又は氏名及び住所
二 法人である場合においては、その役員の氏名
三 未成年者である場合においては、その法定代理人の氏名及び住所(法定代理人が法人である場合にあっては、その商号又は名称及び住所並びにその役員の氏名)
四 住宅の所在地
五 営業所又は事務所を設ける場合においては、その名称及び所在地
六 第十一条第一項の規定による住宅宿泊管理業務の委託(以下単に「住宅宿泊管理業務の委託」という。)をする場合においては、その相手方である住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項
七 その他国土交通省令・厚生労働省令で定める事項

7号の「その他国土交通省令・厚生労働省令」は前回の記事でも出てきた住宅宿泊業法施行規則になります。
上記にあげた事項の他に記載すべき事項については詳しくはこちらの法令を確認いただくか信頼できる弁護士にご相談ください。

2 住宅宿泊事業の管理について

先ほど挙げた届出事項の中に「住宅宿泊管理業務の委託をする場合」という文言がありました(住宅宿泊業法第3条2項6号)。
住宅で「民泊サービス」を提供する場合には、その住宅に誰か民泊を管理する人間が必要になります。その業務の事を住宅宿泊管理業務というのです。
住宅宿泊事業者が行うべき管理業務の内容については住宅宿泊事業法第5条から第10条に規定があります。
例えば住宅の清掃等の衛生の確保や、宿泊者の安全の確保などが規定されています。

もちろんこれは住宅宿泊業を営む者が、その「住宅」に常駐して行うのであれば問題ありませんが、それができないのであれば管理業務を第三者に責任をもって委託しなければなりません。
委託をする場合には、その委託された者が「住宅宿泊管理業者」となるのです。

3 旅館営業と民泊サービスの違い

民泊サービスを始める施設に関する基準

旅館業法として住宅宿泊業法に基づいて民泊サービスを始める場合のメリットとして、施設に対する基準の要件が緩いところです。
民泊サービスを始める場合の初期投資として最も大きなものは施設に関する費用であることがほとんどです。
記事でも住宅宿泊業法の「住宅」の要件について解説しましたが、要するに今住んでいる家の一室を利用しても開業することが可能な場合が多いです。
その点で開業のためのハードルが低いといえるでしょう。

手続きの違い

始める際の手続きについては許可制と届出制の違いがあります。
旅館業法では許可制とされており、住宅宿泊業法では届出制となっています。
許可制の場合は本来禁止されている行為を法令で特別に許可を与える制度ですので、仮に要件を満たしていても不許可となり開業が認められない場合があります。
そのために事前の行政側との面談が重要であることは以前の記事で解説した通りです。
これに対して届出制の場合は要件を満たしていれば、届出をした時点で効力が発生します。
この手続きの違いから届出制を取っている住宅宿泊業法による方が手続き面でもハードルが低いといえるでしょう。

営業日に関する基準

ここまで説明すると旅館業法の方がよいかもしれませんが住宅宿泊業法に基づいて民泊サービスを始める場合には日数制限があります。
具体的には1年の約半分である180日を超えて営業してはならないと定められています。
この日数を超えて営業すれば違法な営業となっています。
日数制限があるということは、その限られた営業日数で施設にかかる費用や人件費などにかかる維持費と比較して採算がとれている必要があります。
したがって始めるための手続や設備についての要件が簡単だからという理由だけで安易に住宅宿泊業法に基づいて民泊サービスを始めることは避けた方がよいでしょう。

4 まとめ

このように民泊サービスを始めようとする場合には複数の選択肢があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。
またうまく開業にこぎつけたとしても管理に関するトラブル、行政指導など行政側への対応、顧客対応など法的な対応が必要になるケースは珍しくありません。
弊所では法令に精通した弁護士のみならず、規制に関する問題に強い元検察官の弁護士、許認可関係に強い行政書士など多数の専門家が在籍しています。
民泊サービスを開業することをご検討の方は是非、許認可関係に精通したあいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回相談は無料で、WEB会議を利用したご相談にも対応しております。
その後の問題についても対応をご希望の方には顧問契約もご準備しています。

お気兼ねなくこちらからお問い合わせください

中国の中小企業向けセミナー(ウェブ)を協催しました

2025-06-18

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2025年6月18日(現地時間,於:蘇州)に,当事務所に所属する弁護士足立直矢(東京支部)が,「上海段和段(苏州)律师事务所 ダン・リーク法律事務所蘇州オフィス パートナー 中国弁護士 崔 暁瑜」と共同で,中国の中小企業向けのセミナーを実施しました(日本語で実施,通訳:崔弁護士)。

足立弁護士は「日本向け越境 EC 事業における法的問題点」という題目で,関税法,消費税法,景品表示法等を解説し,実務上の問題点を指摘しました。

現地会場に加えてウェビナーでも実施し,多数の企業・事業主の方にご参加いただきました。
セミナー終了後,会場参加者から日本の法制度について多数の質問,お問い合わせも頂きました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,企業・事業主向けの法解説やセミナー等も行っています。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点⑥

2025-06-17

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します⑥

【相談】
不動産事業を営むX社の社長であるAさんから次のような相談を受けました。
実は自社の顧客から「自分が住む一軒家や持っている別荘を利用して民泊サービスを始めようと考えているがどうすればよいのか」と相談されているのだがどのように対応すればよいのか。
最近住宅宿泊事業法という法律が施行されたと聞くがそれは旅館業法とは何が違うのか。
(相談はフィクションです)

前回の記事では上記の相談を基に民泊サービスを始めるための形態として、住宅宿泊事業(民泊とは何か?)という形態があることを解説させていただきました。

また住宅宿泊事業として行う場合には、宿泊させる日数が年間で180日を超えないことが条件になることを説明しました。
今回の記事では、住宅宿泊事業として民泊サービスを始める場合の法律の注意点について、より詳しく解説していきます。

1 住宅宿泊事業の「住宅」とは何か

住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象となる民泊施設は旅館・ホテルなどの宿泊施設ではなく、あくまで「住宅」という位置付けです。
詳しくは後述しますがこの定義は非常に重要です。
なぜならば住宅宿泊事業法上の「住宅」にあたらなければ宿泊事業を行うことはできず、最悪の場合無許可営業となってしまうからです。

住宅の定義については、住宅宿泊事業法2条1項に定めがあります。

住宅宿泊事業法第2条1項 
この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること

この条文では1号で「住宅」の要件として①一定の設備を有していること、②人の居住の用に供されていると認められることの2点を挙げています。
今回の記事では①,②の要件について詳しく解説していきます。

2 「住宅」の要件を満たす設備について

上記の1号に定めがあるのが「住居」に求められる設備について詳しくは住宅宿泊事業法施行規則第1条に規定があります。

住宅宿泊事業法(以下「法」という。)第二条第一項第一号の国土交通省令・厚生労働省令で定める設備は、次に掲げるものとする。
一 台所
二 浴室
三 便所
四 洗面設備

旅館業法の規定と比べて客室の面積や宿泊者数に応じた数だけの洗面設備や便所などは求められておらず、旅館業法によって許可取得を目指す場合に比較して設備についてのハードルはかなり低くなっているといえます。
上記の設備は通常の一軒家やマンションの居住用の部屋であれば十分に満たすでしょう。
ただ事務所用の一室やガレージとして使用している部屋で上記設備がない部屋は「住宅」とは認められません。

3 「人の居住の用に供されている」という要件について

設備については上記解説のように、人が生活するために必要な設備ばかりであり、規模についての要件もないのでこれを満たすハードルは高くありません。

しかし、「人の居住の用に供されている」という要件には別途注意が必要になります。

改めて条文を挙げて説明します。

住宅宿泊事業法2条1項
この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
(中略)
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。
そして、人の居住の用に供されているという要件については、住宅宿泊事業法施行規則第2条に定義規定があり以下のように定められています。
人の居住の用に供されていると認められる家屋として国土交通省令・厚生労働省令で定めるものは、次の各号のいずれかに該当するものであって、事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く。)の用に供されていないものとする。
一 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
二 入居者の募集が行われている家屋
三 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

この条文を分かりやすく説明すれば,①1号から3号の各号のいずれかに該当し、②宿泊・居住以外の事業に用いていないことです。

②について、宿泊事業で用いれるのが180日を超えてはならないと言っても、それ以外の日を会社のオフィスに使用している場合には「住宅」の要件を満たさないことになります。
以下では各号の意義について詳しく解説していきます。

現に人の生活の本拠として使用されている家屋

この要件は典型的に言えば誰かが自宅として継続して生活している家屋になります。
短期的に誰かが住んでいるだけというだけではこの要件を満たしません。

入居者の募集が行われている家屋

仮に住居として誰かが利用していなくても、入居するものを募集している一軒家や部屋については「入居者の募集が行われている」として「住宅」の要件を満たす場合があります。
ただし形式的に募集していたとしても、その条件があまりに厳しくおよそ入居者が応募しないだろうというものであれば「募集が行われている」と認定されない場合もあります。

随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

これは、生活の本拠として使用されていないものの、少なくとも年1回以上は使用しているような家屋を指します。
典型的には【相談】であったような年に数回利用するだけの別荘もこれにあたり、「住宅」の要件を満たす場合があります。
その他にも、相続したばかりで今は利用していないが将来住居と使用することを考えて保有している空き家や、休日のみ利用しているセカンドハウスなどもこれにあたります。
一方で入居実績が全くない、民泊専用の投資用マンションはこの要件を満たしません。民泊として利用することを想定した不動産売買ではこの点に留意しましょう。

この要件は文字通り読めば実際に現在人が住んでいないと駄目なようにも読めますが、それよりは広い解釈になっています。
その一方でこれに該当しないような不動産も当然たくさんあります。
法令の要件を満たしているかは,不動産売買や不動産管理の場面で非常に重要になります。
是非法令に精通した弁護士に一度ご相談ください。

あいち刑事事件総合法律事務所では初回無料で相談に対応しています。またいつでも弁護士に相談できる顧問契約にも対応させていただきます。

お気兼ねなくこちらからお問い合わせください

民泊サービスを始めるための注意点⑤

2025-06-10

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します⑤

【事例】

Aさんは京都市内で不動産業を営んでいるX社の代表取締役を務めていました。
Aさんは近年京都市内を訪れる観光客が増えていることに目を付けて、自社が保有する空き物件を活用し民泊事業を開始しようと考えました。
しかし、Aさんは民泊業を行うためにどのような設備や手続が必要か分かりませんでしたので民泊サービスの許認可関係に強い弁護士に法律相談をしました。
(事例はフィクションです)

これまでは上記の事例を基に旅館業法上の許可を得て民泊業を営む場合について解説させていただきました。

https://compliance-bengoshi.com/minpaku-checkpoints4

しかし後日Aさんから以下のような相談を受けました。

【相談】

実は自社の顧客から自分が住む一軒家の空き部屋を利用して民泊サービスを始めようと考えているがどうすればよいのかと相談されているのだがどのように対応すればよいのか。
最近住宅宿泊事業法という法律が施行されたと聞くがそれは旅館業法とは何が違うのか。
(相談はフィクションです)

この相談内容にお答えする形で、今回の記事では旅館業法の許可を得ずに民泊サービスを営む方法やその注意点について解説させていただきます。

1 住宅宿泊事業法について

住宅宿泊事業法は平成30年6月15日に施行された比較的新しい法律です。
制定の背景には旅館業法の規制緩和でも述べたように外国人旅行客の増加とそれに伴う宿泊施設の不足があります。
簡単に言えば、以前よりも一定の要件の下、旅館業法によるよりも簡単に民泊サービスを始められるようにすることを目的に制定された法律といえるでしょう。
以前の記事で旅館業法には営業形態として3つの形態(ホテル・旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業)があると解説しました。
住宅宿泊事業法の制定によって民泊サービスの営業形態として、「住宅宿泊事業」という新たな形態を規定しているといえます。
このことから、住宅宿泊事業法は別名「民泊新法」とも呼ばれています。

2 住宅宿泊事業とは

住宅宿泊事業(新法民泊事業)については、住宅宿泊事業法第2条3項に定義が規定されています。

住宅事業法第2条
3 この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。

この規定でポイントになるのは
①「住宅」に宿泊させる事業であること
②人を宿泊させる日数が「180日を超えない」こと
です。住宅の範囲については次回の記事で詳しく解説させていきます。

住宅宿泊事業として営業する場合には日数制限がありますので、これを超えて年間通して営業をすることを目指す場合には、住宅宿泊事業法に基づいて民泊サービスを始めることは不適当といえます。

今回の記事では住宅宿泊事業法について概略を説明させていただきました。
次回は住宅の定義など住宅宿泊事業として民泊を始める場合の注意点に関して詳しく解説させていただきます。

民泊サービスを始める場合にはこれまで解説していた旅館業法に基づく許可を得て解するのがいいのか、また住宅宿泊事業として始めるのがいいのか判断が難しいところです。
民泊サービスに用いようとする不動産や周囲の状況などの事情にもよりますので是非、民泊サービスの許認可関係に詳しいあいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

相談は初回無料で、経営者様のご都合によってはWEBでの相談にも対応させていただきます。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

民泊サービスを始めるための注意点④

2025-06-03

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します④

【事例】

Aさんは京都市内で不動産業を営んでいるX社の代表取締役を務めていました。
Aさんは近年京都市内を訪れる観光客が増えていることに目を付けて、自社が保有する空き物件を活用し民泊事業を開始しようと考えました。
しかし、Aさんは民泊業を行うためにどのような設備や手続が必要か分かりませんでしたので民泊サービスの許認可関係に強い弁護士に法律相談をしました。
(事例はフィクションです)

前回の記事では許可申請を行う場合の手続きの流れについて解説させていただきました。

今回の記事では前回の記事に補足する形で旅館業を行う際に旅館業法上の許可以外に必要な手続きや確認しておくべきことについて解説させていただきます。

1 建築基準法上の問題について

これは必ず必要な手続きではありませんが、使用を予定している物件が所在する地域において旅館業の立地が禁止されている場合に注意が必要です。
民宿サービスを行おうと計画する段階から、当該物件が旅館業の立地が禁止されていないか確認しておくことが必要です。
また建築基準法の用途変更の建築確認の手続きが必要となる場合があります。
詳しくは都道府県等の建築基準法担当窓口に相談する事ができますが、不安のある方は建築基準法に精通した専門家に確認してみてください。

2 消防法上の問題について

民泊サービスを利用される方や周辺住民等の安全を確保するため、消防用設備等の設置、出火防止、非難、通報等の防火安全対策が必要になります。
不安な方はお近くの消防署等の消防機関に相談することをおすすめします。
消防庁が民泊業を始める場合に消防法上注意するべきことに関してまとめたリーフレットを挙げているページがありますので以下のURLからご確認ください。
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/post20.html

3 賃貸借契約、管理規約等について

この問題については上記事例においては自社が所有する物件において民泊業を始めようとしているので問題になりません。
ただし他者から物件を借り受けて民泊業を営もうとする場合や、分譲マンションの所有する一室を使用して民泊業を行おうとする場合には別途法律上の問題が生じる可能性があります。
特に当該物件の契約内容やマンションの管理規約等で民泊として使用することが制限されていないかはトラブル防止の観点から事前に貸主やマンションの管理組合等に確認しておくことが重要になります。

4 まとめ

以上のように旅館業法上の問題以外にも民泊業を始める場合には様々な法律上の問題が生じる可能性があります。
弁護士は様々な法律に精通していますから民泊業を始めようとする場合に、これらの問題に柔軟に対応することが可能です。
あいち刑事事件総合法律事務所では、民泊業を始めることを検討している経営者の方向けに顧問契約も準備しております。
まずは一度初回無料の相談を利用してみてはいかがでしょうか。相談はWEB面談でも対応させていただいております。

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企業における営業秘密の情報漏洩⑤

2025-05-27
企業における営業秘密を守るための,情報管理について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します

企業において営業秘密の情報漏洩があった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回までは、秘密漏えいをしてしまった場合の,不正競争防止法上の罰則について解説しました。

参考 顧客情報保護のための体制と関連法令 後編

今回は、営業秘密保護のための管理体制の構築についてお話しします。

企業が保有する情報の把握、営業秘密の指定

適切な管理体制を構築するために,秘密として保護する情報の選択が重要です

前回までにお話ししましたように、「営業秘密」として不正競争防止法上の保護を受けるためには、企業が主観的に営業秘密であると考えているだけでは足りず、従業員等から認識可能な程度に客観的に秘密として管理されている状態にあったことが必要です。

現代社会において、企業が取り扱う情報は非常に多く、まずは、企業においてどのような情報を取り扱っているのかを十分把握する必要があります。その上で、各情報がどのくらい重要かを見極め、営業秘密は、そのなかでも秘密性の高い重要な情報という位置付けになると考えられます。

企業による営業秘密の保護対策

秘密情報へのアクセス権限を管理することが重要です

営業秘密を含む重要な秘密情報についてはアクセス権者を制限すること(アクセス制限)が重要です。

もっとも、通常の業務で常時使用するものであれば制限をかけることは困難であり、この場合にはパスワードを付してしっかり管理する必要があります。そのほか、秘密情報が記された資料の回収や記録媒体の複製制限、私的USBメモリ等の持ち込み禁止等によって、情報を外部に持ち出せないようにすること、就業規則に、企業秘密の保持について従業員の義務を明記し、入社時等に提出を求める誓約者等によって秘密保持を誓約させることなども重要です。

その他

上記のとおり、秘密情報の指定、あるいは、アクセス権者以外の情報の持ち出しを防止する対策をとったとしても、企業の情報に接触する従業員の情報の取扱いに対する認識が希薄であれば、実効的な情報管理は期待できません。それどころか企業からその情報を持ち出しても構わないだろうという気持ちになってしまうことも考えられます。そのため、日頃から、どのような行為が犯罪となるのかなどについて従業員を対象とした教育・研修を実施することが重要です。秘密性のレベルに応じてアクセス権者が異なる場合には、レベルに応じた教育・研修を実施することも必要でしょう。

最後に

企業において不正競争防止法違反に該当する行為が行われた場合、企業自身が法的責任を負う可能性があるのかを慎重に検討し、今後の対応を決める必要があります。

また、報道などの社会的責任に関しても、取引先にどのように説明をしていくのかといったことも考える必要があります。

以上のように、企業としては、様々な対応をする必要があり、適切に対応していくのであれば、弁護士のサポートが必要になってくることが考えられます。

社内の情報保護規定,体制の構築について関心のある方に向けて,弊所では無料相談も実施しております。お気兼ねなくお問い合わせください

中小企業が知っておくべき商標法の基本と実践ポイント

2025-05-22

中小企業の経営者が知っておくべき商標法について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

商標法の基本(定義と商標登録の意義)

商標とは何か: 商標は、事業者が自社の取り扱う商品・サービスを他社と区別するために使用するネーミングやマーク(識別標識)のことです。
たとえば商品名、ロゴマーク、サービス名、スローガンなどが商標に該当します。商標を見れば「誰の提供する商品・サービスか」が分かり、長年の営業努力によって培われた信用やブランドイメージ**がその商標に蓄積されます。そのため商標は「無言のセールスマン」とも呼ばれ、商品・サービスの顔として重要な役割を果たします。

商標法の目的: 日本の商標法では、「商標を保護することにより、商標の使用者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」ことが目的と定められています。つまり商標の保護を通じて企業の信用を守り、市場の健全な発展と消費者保護につなげる法律です。

商標権と登録の意義: 商標を財産として守るには、特許庁に出願して商標登録を受ける必要があります。商標登録によって発生する商標権は、指定した商品・サービス分野において登録商標を独占的に使用できる権利です。他社は権利者の許可なく同一または紛らわしい商標を使用することが禁止されるため、自社ブランドを模倣や混同から守る強力な手段となります。登録した商標は、自社商品・サービスの出所表示品質保証のシンボルとなり、安心感を与えることで需要者(顧客)の利益にも資します。

商標登録の企業メリット

商標登録には、中小企業にとって次のようなメリットがあります。

  • 独占的なブランド使用権: 登録商標は指定商品・役務の範囲で自社だけが独占的に使用できます。これにより他社との差別化が明確になり、ブランドを長期的に育てる土台となります。第三者による類似名称・ロゴの使用や横取り登録も防げるため、安心してブランド戦略を展開できます。
  • ブランド価値の向上と信用力アップ: 商標は企業の信用や評判と結びついており、登録商標を有すること自体が対外的な信用力向上につながります。知名度の高い商標を持っていれば、銀行からの融資が受けやすくなったり、大口取引の獲得につながったりするケースもあり、企業価値や競争力を高める効果があります​。また、自社のブランドを公式に保護していることは取引先や消費者への信頼感にも寄与します。
  • ライセンスによる収益機会: 商標権者は自社商標を第三者に使用許諾(ライセンス)することも可能で、その対価としてライセンス料収入を得ることができます。例えばヒット商品名やキャラクター名を商標登録しておけば、関連グッズ展開などで他社に使用させる際に収益を得ることもできます。このように商標は新たなビジネス機会の創出にもつながり得ます。

以上のように、商標を登録し権利化しておくことはブランド保護と活用の両面で大きなメリットがあるため、中小企業にとっても非常に重要です。

中小企業にとって特に重要な商標リスク

一方で、商標について十分な対策を取らないと中小企業は思わぬリスクにさらされます。「知らなかった」「うっかり」では済まない重大な商標トラブルになりかねません。特に注意すべきリスクは以下のとおりです。

  • 無登録のまま使用するリスク(先願主義による商標の横取り): 自社の商品名やサービス名を商標登録せずに使い続けていると、他社に先にその名称で商標登録をされてしまい、自社がその名前を使えなくなるおそれがあります。日本の商標制度は「先願主義」(登録した早い者勝ち)を採用しており、最初に出願した者に権利が与えられます。たとえ自社が先にその名前を使っていても、有名ブランドとして広く認知されている等の例外的事情がない限り、後から出願した他社に商標権を取得される可能性があります。
    もし自社の看板商品・サービスの名称が突然使えなくなれば、商品回収やブランドの変更を余儀なくされ、大きな手間とコストが発生します。長年愛用してくれた顧客や新規の顧客に対して「盗用」を疑われかねない等混乱を生じさせ、評判や信用の失墜にもつながりかねません。こうした事態を防ぐため、重要な名称やロゴはできるだけ早期に商標出願することが肝心です。
  • 他社商標の侵害リスク(知らずに他人の権利を侵す危険): 新商品・新サービスの名前やデザインを決める際に、十分な調査をせずに決めてしまうと、既に他社が商標登録していた名称やロゴと偶然衝突してしまうことがあります。そのまま使用を続けると、権利者である他社から「商標権侵害だ」と警告され、使用差止めや損害賠償を請求される可能性があります。実際、商標法違反が認められると、商品の販売停止や看板の撤去など厳しい措置を求められ、高額の賠償金支払いを命じられることもあります。中小企業にとって、せっかく軌道に乗せたブランド名を捨てたり、多額の賠償金を支払う事態は事業継続を揺るがす深刻な打撃となります
    「うちは小さいから大丈夫」「知らなかった」では済まされず、故意でなくとも侵害は侵害です。第三者の商標を無断で使っていないか、類似の名前が既に登録されていないかを事前にしっかり確認することが重要です。
  • 類似商標による混同リスク: 自社では全く別のつもりでも、他社の有名ブランドによく似た名称やロゴを使ってしまうと、消費者に「関連会社かな?」「真似しているのでは?」と混同を招く恐れがあります。商標法では登録商標と紛らわしい類似商標の使用も侵害となり得るため,意図せず他社ブランドの信用にタダ乗りする形になるとトラブルになります。反対に、自社が商標登録していないと他社に似た名前を付けられてブランドイメージを損なわれるリスクもあります。いずれにせよ、「少し似ているくらいなら平気」という油断は禁物です。

以上のように、中小企業であったとしても、商標への理解不足は事業全体に対するリスクが高く、商標権の重要性を認識し早めに対策を打つことが必要不可欠です。

商標法違反時のペナルティ(損害賠償・差止め等)

万が一商標権の侵害など商標法違反をしてしまった場合、中小企業は次のような深刻なペナルティに直面します​。

  • 差止請求・業務停止: 商標権者は侵害者に対し差止請求(使用停止)を求めることができます(商標法36条)。裁判所から差止め命令が出れば、対象となった商標の使用は禁止されます。具体的には商品の販売停止、製造中止、在庫回収・廃棄などを強いられ、事業の継続が困難になる恐れがあります。看板や包装資材の変更など多大なコストも発生します。
  • 損害賠償: 商標権者は侵害によって被った損害の賠償を請求できます(民法709条)。その額はケースによりますが、数百万円~数千万円規模の高額賠償を命じられる可能性もあります​。中小企業にとって何百万もの予期せぬ支出は資金繰りを逼迫させ、最悪の場合倒産の危機につながります​。賠償金だけでなく、訴訟対応の費用や時間的ロスも大きな負担です。
  • 信用失墜: 商標トラブルが表沙汰になると、「他社のブランドに便乗しようとしたのではないか」「知的財産を軽視している企業だ」といった負のイメージが広まりかねません。顧客や取引先からの信用を損ない、信頼回復のために長い時間とコストがかかるでしょう。企業ブランドに傷が付くこと自体が大きな損害です。
  • 刑事罰(悪質な場合): 商標権侵害は基本的に民事上の問題ですが、意図的かつ悪質な侵害行為(例えば偽ブランド品の大量販売など)の場合、刑事罰が科されることもあります​。商標法違反の刑事罰は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)と定められており、実際に摘発・起訴された事例もあります。中小企業でも悪質と判断されれば、経営者や担当者が刑事責任を問われ社会的信用を失墜するリスクがあります。

このように商標法に違反すると法的・経営的ダメージは計り知れません。「うちは大丈夫」と高をくくらず、違反を起こさないよう日頃から注意を払いましょう。また、万一トラブルになった場合は早急に専門家に相談し適切に対処することが肝要です。

商標権を守るために中小企業が取るべき具体策

中小企業が自社の商標権をしっかり守り、商標トラブルを防ぐために取るべき具体的な対策をまとめます。

  • 事前の商標調査を徹底する: 新商品名・サービス名やロゴを考案したら、正式に使用開始する前に必ず商標調査を行いましょう。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)等で類似の登録商標がないか検索したり、専門家に先行商標の調査を依頼します。既に同じような名称が登録出願されていれば、名称変更や使用見送りを検討すべきです。事前調査を怠ると後から撤退を余儀なくされるリスクが高まります。
  • 早期の商標出願・登録: 使用予定のブランドが見つかったら、できるだけ早く商標出願手続を行いましょう。特に新製品・新サービスをリリースするタイミングでは先願主義の原則を念頭に、初動での権利確保が重要です。出願の際は、自社の商品・サービスに適した区分を選定し、必要に応じて複数区分で出願することも検討します(専門家の助言が有用です)。商標登録により公式な権利を得ておくことで、後々の紛争予防につながります。
  • 継続的な権利維持と更新手続: 商標権は取得して終わりではなく、権利維持の管理も大切です。日本では商標登録後10年ごとに更新手続きを行えば権利を半永久的に存続できます。更新期限を忘れて失効しないよう、社内で期限管理を徹底しましょう。また、継続して商標を使用していないと不使用取消制度により権利を失う可能性もあるため、登録した商標はきちんと使用を続けることもポイントです。自社の事業内容が変わった場合は、新たな商標登録や不要になった権利の整理も検討します。
  • 社内教育とルール整備: 商標権を守るには従業員一人ひとりの意識向上も欠かせません。定期的に知的財産に関する社内研修を行い、「他社の商標を勝手に使ってはいけない」「商品名を決めるときは必ず確認する」といった基本ルールを周知徹底しましょう。特にマーケティング部門や商品企画部門には商標法の基礎知識を教え、企画段階で法務チェックを通すフローを確立することが望ましいです。過去の商標トラブル事例を教材にコンプライアンス教育をするのも効果的です。
  • 商標管理と監視: 自社が取得した商標権については、権利内容(指定商品・役務の範囲など)を把握し、ロゴ変更や新ブランド立ち上げ時に漏れなく権利化するよう管理します。また、自社ブランドと紛らわしい商標が他社に出願・登録されていないか、官報公報や商標情報を定期的にチェックすると安心です。他社による権利侵害の兆候があれば早期に対応でき、場合によっては異議申立てや無効審判で自社権利を防衛することも可能です。

以上のような対策を講じることで、「攻め」と「守り」の両面から商標に万全を期すことができます。商標は中小企業にとって貴重な経営資源ですから、手間を惜しまずしっかり管理しましょう。

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中小企業経営者必見!不正競争防止法の重要ポイントと対策

2025-05-20

不正競争防止法(ふせいきょうそうぼうしほう)は、事業者同士の公正な競争を守るための法律です。
中小企業の中にはこの法律を十分に知らずに、知らないうちに違反行為をしてしまったり、被害を受けても適切に対応できなかったりするケースも見られます。
しかし、自社の大切な情報やブランドを守り、競争上の不利益を避けるために、中小企業の経営者が知っておくべきポイントが数多く含まれています。
本記事では、営業秘密の保護、不正な商品表示、営業妨害行為といった不正競争防止法の注意すべき規定について、それぞれ具体例とインシデント予防のための施策を交えて分かりやすく解説します。

不正競争防止法の概要

不正競争防止法では、事業者間の不公正な競争行為をいくつかの類型に分けて禁止しています。
例えば、他社の有名ブランド名やロゴを無断で使い、自社の商品なのにあたかも相手の会社の商品であるかのように見せかける行為があります。
また、地域ブランドやキャッチフレーズなど著名な表示を勝手に使用することも問題です。
さらに、他社の商品パッケージやデザインをそっくり真似て似た商品を販売するといった行為も該当します。
そのほか、自社の秘密情報を盗み出したり、根拠のない悪い噂を流して競合他社の信用を落とすような行為も禁止されています。
これらに違反すると、損害賠償請求を受けたり刑事罰が科されたりする可能性があるため注意が必要です。
この法律によりこうした不正を防止し、公正な市場競争を維持することで、中小企業の正当な努力やブランド価値が守られることが期待されています。

事例

(フィクションです)

小さな食品メーカーA社は、地元で長年かけて開発した秘伝のレシピを武器に人気商品を販売していました。
しかし退職した社員がこのレシピを競合のB社に漏洩し、B社は非常によく似た商品をA社より安価で発売します。
さらにB社はその商品のパッケージデザインもA社の商品に酷似させ、「本場○○産」と実際とは異なる表示を行い、自社製品のほうが優れていると宣伝しました。
この結果、多くの消費者が両社の商品を混同してしまい、A社は売上だけでなくブランドの信用も大きく損なう打撃を受けました。
当然ながら、これらB社の行為は不正競争防止法に違反する疑いがあり、A社は差止めや損害賠償請求などの法的措置も視野に入れて検討しています。

営業秘密の保護

営業秘密とは、公に知られておらず、企業が秘密として管理することで競争上の価値を持つ重要な情報を指します。
例えば、製造上のノウハウや秘伝のレシピ、顧客リスト、新商品開発の計画、価格設定の戦略など、外部に知られていない自社の重要情報が該当します。
不正競争防止法では、こうした他社の営業秘密を窃盗や不正な入手によって取得したり、無断で使用・開示したりする行為を禁止しています。
営業秘密の侵害は特に悪質とみなされ、他の違反行為より重い罰則(最大で10年の懲役や2000万円の罰金)が科される場合もあります。
予防策として、秘密情報はアクセスできる人を限定し、重要データにはパスワードや権限設定を設けて厳重に管理しましょう。
さらに、従業員と秘密保持契約(NDA)を締結し、定期的に情報管理の教育を行うことで、内部からの漏えいリスクを減らすことができます。

不正な商品表示

商品の産地や品質などについて、事実と異なる表示をして消費者を誤解させる行為です。
例えば、海外産の原料を使っているにも関わらず「国産」「地元名産」と偽る表示や、他社のブランド名に紛らわしい名称で商品を販売するケースが挙げられます。
こうした虚偽表示は、消費者だけでなく正直に営業する他社にも損害を与えるため、不正競争防止法で禁止されています。
当然、偽装が発覚すれば企業の信用は失墜し、行政からの指導や罰則の対象にもなりかねません。
防止策として、商品パッケージや広告に記載する内容は必ず事実に即したものにしましょう。
また、表示に誤りや紛らわしい点がないか、社内で複数人が確認する仕組みを設け、定期的に見直すことも大切です。

営業妨害行為

競合他社の信用をおとしめるために虚偽の情報を流すような行為です。
例えば、競争相手の商品に欠陥があるという根拠のない噂を広めたり、インターネット上で匿名で悪評を書き込んだりするケースが該当します。
このような信用毀損行為は禁止されており、発覚すれば法的な責任を問われる可能性があります。
場合によっては損害賠償だけでなく刑事上の罰則(罰金刑など)が科されることもあるため注意が必要です。
自社としては、社員に対して競合他社を誹謗中傷しないよう教育を徹底することが必要です。
また、自社がこうした被害に遭った場合には、証拠を保全した上で専門家に相談し、情報の削除要請や差止め請求など適切な対応策を検討しましょう。

その他の不正競争行為

上記以外にも様々な行為が不正競争防止法で禁止されています。
例えば、他社の商品と混同されるような名称やロゴを意図的に使う行為や、有名ブランドの名前を無断で含むインターネットのドメイン名を取得して高額で売りつけようとする行為があります。
そのほか、契約者など特定の相手にだけ提供される業務データを不正に入手し利用する行為(限定提供データの不正取得)や、製品発売直後にその独特なデザインを模倣した商品を販売する行為なども挙げられます。
これらはいずれも公正な競争秩序を乱すものとして規制されており、違反すれば民事・刑事の追及を受ける可能性があります。
自社が加担しないのはもちろん、万一被害に遭った場合には、証拠を確保したうえで早めに法的対応を検討することが必要です。

最後に

当事務所は、中小企業の知的財産や不正競争防止法に関する法務サポートを専門としています。
知的財産分野に精通した経験豊富な弁護士が、親身になって貴社のトラブル解決に取り組んでおります。
営業秘密の管理体制構築や、不正競争が疑われる事案への対応など、企業活動を守るためのアドバイスと支援を日々行っております。
不正の疑いがある場合の証拠収集や相手方との交渉、さらには訴訟手続に至るまで丁寧にサポートいたします。
中小企業の皆様が安心して事業に専念できるよう、法的リスクの未然防止と問題発生時の解決に尽力いたします。
不正競争や知的財産に関するお困りごとがございましたら、いつでもお気軽に当事務所へご相談ください。

訪問販売で特定商取引法違反した場合の刑罰リスク徹底解説 -後編

2025-05-15

○はじめに

訪問販売は消費者に直接アプローチできる有効な販売手法ですが、その反面、不適切な勧誘行為によるトラブルも起こりやすいため法律で厳しく規制されています。
とりわけ特定商取引法は、訪問販売での悪質な勧誘を禁止し、違反した事業者には行政処分や刑事罰が科される仕組みを整えています。万一法令に違反すれば、業務停止命令などで事業の継続自体が困難になるリスクだけでなく、罰金や懲役刑といった刑罰もあります。

本記事では、前回の記事の後編として,特定商取引法違反事件が企業に対する影響などについて深堀します。

○違反が企業経営に与える影響

特定商取引法に違反すると、単に罰金などを払えば済むという問題ではなく、企業経営に深刻なダメージが及びます。以下に、違反発覚・処分による主な影響をまとめます。
信用の低下とブランド毀損: 違反により社名公表や報道がなされると、顧客や取引先からの信用は一気に失われます。悪質商法で摘発された会社というレッテルが貼られれば、将来的に新規顧客を獲得することはもちろん、既存顧客との信頼関係維持も難しくなるでしょう。企業の評判(レピュテーション)を回復するには長い時間と努力が必要です。
営業活動の停止・縮小: 業務停止命令が出れば、その期間中は該当する事業活動を行えず売上が途絶えます。例えば訪問販売事業の3か月停止を命じられれば、その間の売上機会はゼロになり、固定費だけがかかる厳しい状況に陥ります。停止命令まではいかなくとも行政からの指示で営業手法の全面見直しを迫られれば、一時的に勧誘活動を自粛せざるを得ず、事業規模の縮小は避けられません。特に訪問販売一本で収益を上げている中小企業には死活問題となります。
経営層・従業員への影響: 違反の内容次第では、代表者や担当社員が逮捕・起訴されて刑事裁判を受けることになります。経営トップが拘束・起訴されれば企業運営は滞り、最悪の場合そのまま廃業に至ることも考えられます。また従業員にとっても、自社が悪徳商法で摘発された事実は士気の低下や離職につながりかねません。優秀な人材の流出や採用難にも直結します。違反による内部への打撃は計り知れません。
金銭的損失: 刑事罰として科される罰金の支払い(法人に科される場合は最大数億円規模)や、行政処分に対応するためのコンサル費用・謝罪広告費用など、多額の支出を強いられる可能性があります。さらに、違反行為で得た売上はクーリングオフや契約取消しで返金対応が必要となり、被害者から損害賠償請求を受けることもあります。結果として企業財務に深刻な悪影響が及び、資金繰りが悪化して倒産リスクすら高まります。
このように、特定商取引法違反は企業の信用・業績・存続に直結する重大リスクです。一度違反を犯してしまうと、その後の事業継続にまで暗い影を落とすことになるため、「法律に触れなければ儲かるからやってしまえ」という発想は極めて危険です。短期的な売上よりも長期的な信用維持を優先し、法令順守を徹底することが健全な経営には不可欠と言えるでしょう。

○訪問販売事業者のコンプライアンス対応策

では、そうした違反リスクを回避し健全な訪問販売を行うために、企業はどのようなコンプライアンス対策を講じるべきでしょうか。以下に具体的な対応策を示します。
社内教育の徹底: 営業担当者や訪問スタッフに対し、特定商取引法のルールや消費者保護の理念を定期的に教育しましょう。新人研修で法律知識を教え込むのはもちろん、定期的に勉強会を開催したり、違反事例を共有して注意喚起を行ったりします。「知らなかった」では済まされないことを全社員に認識させ、法律を守った正しい営業活動の重要性を周知徹底することが大切です。
社内ルール・マニュアルの整備: 法律で求められる遵守事項(勧誘前の氏名等明示、再勧誘禁止、書面交付義務など)や禁止行為を網羅した営業マニュアルを作成し、実務に落とし込みます。勧誘のステップごとに「ここで必ず事業者名を告げる」「契約が成立したら〇〇を書面で渡す」等、具体的な手順とNG事項を明文化しておきます。また、クレーム発生時の報告フローなども定め、現場でマニュアルを常に参照できるようにします。明確なルールがあれば、万一現場社員が独断で逸脱行為をしてしまった場合でも「会社として違反を防ぐ体制を取っていた」ことの証明になり、企業の責任を軽減する助けにもなります。
契約書類やトークスクリプトの点検: 現在使用している契約書や申込書、パンフレット、そして営業トークの台本などをチェックし、法定事項の記載漏れや誤記載がないか、虚偽・誇大な表現が紛れ込んでいないかを確認します。特定商取引法で定められた契約書記載事項(氏名・価格・支払方法・クーリングオフ告知など)を満たしていない書面を使っていると、それだけで違反になります。必要に応じて専門家のレビューを受け、書類やトークの内容が適法かつ消費者に誤解を与えないものに改善しましょう。
勧誘現場のモニタリングと苦情対応: 訪問販売の現場を不定期にチェックし、法律遵守が守られているか監督します。例えば上司や管理者が営業に同行して様子を見る、顧客アンケートで営業員の対応を評価してもらうなどの方法があります。不適切な勧誘の兆候があれば早期に是正指導を行います。また消費者からクレームがあった場合は内容を精査し、違反行為が疑われれば速やかに原因究明と再発防止策を講じます。内部通報制度を整備して社員からの違法行為の申告を受け付けることも有効です。
最新法令情報の入手と専門家への相談: 特定商取引法は改正も行われていますので、消費者庁や経済産業省から発表される情報を収集し最新の規制動向に対応しましょう。例えば訪問販売の適用除外や電子書面交付の要件など、逐次アップデートがされる可能性があります。自社だけで判断が難しい場合は弁護士などの専門家に相談してアドバイスを仰ぐことも大切です。法律のプロにチェックしてもらうことで、グレーな勧誘手法に踏み込んでいないか客観的な評価を得られます。違反の予防には専門家の知見も積極的に活用しましょう。

以上のような対策を講じ、“「攻めの営業」より「守りの体制」”をまず固めることが、長期的に見れば事業の安定と信頼獲得につながります。コンプライアンスを軽視した営業はリスクが高すぎるため、経営者自ら陣頭指揮を執って法令遵守の企業風土を築くのがよいでしょう。

○弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所によるサポート

特定商取引法に関するリスク対応について不安がある企業や、残念ながら違反行為を指摘されてしまった事業者の方は、早めに法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、企業の刑事事件やコンプライアンス支援を扱う法律事務所であり、特定商取引法を含めた特別法違反の刑事事件に関する豊富な知見と実績を有しています。
当事務所では、訪問販売や通信販売など特定商取引法が関係するビジネスを営む企業に対し、法令遵守のためのアドバイスや社内体制整備のサポートを提供しています。具体的には、貴社の契約書類や勧誘マニュアルが法律の要件を満たしているかをチェックし、必要な修正点を提案いたします。また、営業担当者向けのコンプライアンス研修の実施、万が一トラブルが発生した際の社内調査の支援なども可能です。顧問契約による継続サポートによって、定期的に取引内容の適法性を確認しリスクを未然に防ぐ体制構築をお手伝いいたします。
もし既に行政処分の予兆があったり、捜査機関から事情聴取や突然の家宅捜索を受けてしまった場合には、速やかにご連絡ください。当事務所は刑事事件の経験豊富な弁護士が揃っており、特定商取引法違反の事案にも対応した経験があります。違反の疑いをかけられた段階から弁護活動を開始し、取調べへの対応方法のアドバイスや証拠の精査、問題となった契約の相手方との示談交渉など適切な対策を講じます。代表者や社員が逮捕・起訴されてしまった後でも、勾留や接見禁止の解除に向けた働きかけや、公判での情状弁護に全力を尽くし、身体拘束からの早期の解放や不起訴処分、執行猶予判決の獲得など被疑者・被告人のための弁護活動を展開します。企業としてのダメージを最小限に抑えるためにも、初動から弁護士のサポートを受けることが重要です。
当事務所へのご相談は初回無料で承っており、電話やウェブ面談にも対応しています。特定商取引法の適用範囲に自社の営業が該当するか判断に迷っている経営者の方、あるいは違反を指摘されお困りの方は、お一人で悩まずにぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。私たちは全国に拠点を持ち、迅速かつ丁寧に対応いたします。法令順守と企業防衛に向けた法律の専門家として、皆様の事業が安心・安全に継続できるよう全力でサポートいたします。
以上、訪問販売における特定商取引法違反の刑罰リスクについて解説しました。健全な事業運営のためには法律遵守が不可欠であり、違反した際の代償は企業にとってあまりにも大きいものです。本記事の内容を踏まえ、ぜひ適切なコンプライアンス体制を整えていただければ幸いです。万一トラブルに直面した際には早めに専門家に相談し、被害の拡大を防ぐようにしてください。法を守った誠実な訪問販売で、消費者から信頼される健全なビジネスを築いていきましょう。

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