会社内で発生した業務上横領事件への対応 加害者を刑事告訴をするべきですか?

【事例】
X社は製造業を営んでいる会社です。
X社の製造部の部長であるAさんは1年前から、管理を任されていた社内の物品を勝手に持ち出してフリマサイトで売却し金銭を得ていました。
最近になって物品の在庫と実際の数が合わないことに気付いたX社が調査をしたところ、Aさんの横領が発覚しました。
Aさんはこれまで転売により300万円の利益を得たこと、遊興費などでそのお金は費消してしまったこと、被害金額についてはこれから何とか分割して返していくから「刑事告訴だけはやめてほしい」と懇願してきました。
X社の担当者は、今後どのように対応するべきかあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談しました。
(事例はフィクションです)

今回は、上記の事例を用いて、自社で業務上横領事件が発生したことが明らかになった場合の対応についてあいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

刑事告訴について

刑事告訴とは、警察や検察などの捜査機関に対して、刑事事件が発生したことを申告し、事件を捜査し、犯人を処罰することを求めることをいいます。
本件の事例において、刑事告訴をする場合には、「告訴状」をX社の所在する地域を管轄する警察署に提出することが通常です。
告訴状には、犯罪を構成する事実を記載する必要があります。
例えば事例のような業務上横領事件であれば、「いつ」「誰が」「どこで」「何を(時価総額もあれば望ましい)」「どのように横領した」という事実を特定して行うことが通常です。
また告訴の際には後述するように、犯罪が成立したことを立証するための証拠を可能な限り添付することで警察が告訴を受理し動いてくれる可能性が格段に高くなるといえます。

ポイント

告訴を受理してもらい捜査を円滑に行うためには,事前の調査が重要

刑事告訴が受理された後は、取調べなどの捜査が行われることになります。
事件の内容や証拠の内容によっては加害者が逮捕されるリスクもあります。
事例のケースでは業務上横領による被害金額が100万円を超えているため実刑となる可能性もあるので、被害を立証するだけの証拠があれば逮捕される可能性の高い事件であるといえます。
そして捜査が進んで、最終的には検察官が証拠や加害者の言い分なども確認した上で起訴するか不起訴が決められます。
起訴された事件については裁判所で審理され、判決が出されて、判決が確定すれば刑事事件としては終了になります。

横領事件において刑事告訴をする場合のポイントは何か

個人的な利益の着服や物品の横流しといった横領事件は,企業内での不祥事として最たるものです。
刑事事件のうち,知能犯の中で見ても,詐欺・偽造につぐ認知件数があります。
参考:警察庁令和4年度版統計

①客観的な証拠の収集を行う
刑事告訴して実際に警察が動くためには、被害や犯行を裏付ける客観的な証拠が必要になります。
本件の事例であれば、
・保管していた物品の管理に関する記録
・Aさんが横領したこと及びその日時を裏付ける社内の防犯カメラ映像
・Aさんが被害品を転売したことを示す販売履歴等の記録や入出金履歴
・被害金額の使用に関する履歴
などが客観証拠として考えられます。
実際の被害事例において犯行を基礎づける証拠の判断には,専門的な知識と刑事事件に対する豊富な経験が必要になります。
また証拠は早期に確保しなければ、加害者による隠滅の恐れもあります。
したがって被害が発覚した場合にはなるべく早く、刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

②加害者本人に対する聴き取りを丁寧に行い、書面化しておく
加害者本人からの聴き取りも証拠収集の一環として重要な意味を持ちます。
客観的な証拠だけで立証が不十分な場合には、加害者が認めていることをもって証拠を補完する場合があります。
また事実を認めている場合や、賠償に関して応じる旨の話をしている場合には、それを上申書や誓約書といった形で残しておくことも重要になります。
この場合に、会社の担当者のみで聴き取りや書面の作成の指示を行えば、後から圧力をかけられて、無理やり誤った内容の書面を作成させられたと言われ、トラブルが複雑化する可能性もあります。
第三者の立場である弁護士などの専門家を入れて聴き取り調査を行うことが、トラブルの円満な解決には必要であるといえます。

社内調査活動についてはこちらのページでも解説をしています。

③警察の担当者と綿密に連携する
刑事告訴が受理されたと言ってもそれだけで安心してはいけません。
証拠の収集が不十分であったり、警察の方で優先順位が低くなったりすれば捜査が遅々として進まないこともあります。
弁護士が会社の窓口になって証拠の収集状況や取調べ状況についてこまめに確認し、必要であれば証拠の提出や作成などに協力することで捜査がスムーズに進むことにつながります。

刑事告訴を行うかどうかの判断

刑事告訴を行うことによるメリットには次のようなものが挙げられます。
・加害者に対し捜査機関による厳しい捜査が行われ、証拠の収集も容易になる
・会社の他の従業員に対し示しがつく
・警察が介入したことが加害者に対する圧力になり、賠償をする動機付けになる

その反面刑事告訴を行うことによるデメリットには次のようなものがあります。
・捜査協力をするために、会社が捜索の対象になるなど負担がかかる場合がある
・他の従業員にも事件が知れて話が大きくなるおそれがある
・加害者が逮捕された際に会社の名前が出る可能性がある
・逮捕や実刑判決により加害者の収入の当てがなくなり、却って賠償に支障が出る場合がある

刑事告訴を行うか、加害者への聴取を行った上で当事者間の賠償だけの問題とするのかについては社の方針も含め、以上のメリットとデメリットを慎重に検討し判断する必要があるかと思います。
当然、その判断の前提には証拠を収集し、関係者からの聴き取りを行って被害の全容の把握をすることも重要になります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、豊富な経験を基に綿密に調査を行い、会社にとってどのようにすることが最善なのかアドバイスさせていただくことができます。
業務上横領が発覚した際の対応や事件の調査、またその後の刑事告訴に関する相談は、刑事事件に精通し、企業で起きた刑事事件の対応にも強いあいち刑事事件総合法律事務所に是非ご相談ください。

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