Archive for the ‘不祥事・危機管理’ Category

不祥事発生時における広報対応の留意点について④

2024-10-25

企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応の留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

以前の関連記事はこちら

そもそも広報とは

広報とは、企業が社会の人々に向けて企業の情報を発信することです。

参考 「不祥事」に関するプレスリリースの一覧

不祥事が発生した場合の広報対応

企業内で不祥事が発生したとき、特にそれが犯罪に関わるときには、新聞報道されたり、インターネット上で掲載されるなどして、不特定多数の人々に知られてしまう場合があります。その際、企業側に取材がなされ、時には、記者会見を実施する必要が生じるかもしれません。メディアからの取材依頼は広報が担当します。

前回までに、企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応(危機管理広報)の重要性やその基本的な手順について解説しました。今回は、実際に危機管理広報を行う場合にどのような態度で臨むべきかなど、特に注意する点について解説します。

誠実な対応とは

企業で不祥事が発生した場合、何よりも重要なことは、誠実に対応することです。

企業によっては、積極的な広報活動を行わず、放置し、世間から忘れられるのを待つという方針を選択する場合があります。しかし、このような対応をとると、企業が不祥事に対する説明も行わずに逃げたという印象を与える危険性があり、企業の社会的信用が更に低下する可能性があります。

事態を軽くみて忘却を待つという不誠実な対応は、世間の印象を悪くする可能性が高い一方、積極的な広報活動を行うことによって誠実かつ真摯な説明をした企業については、長い目でみれば、企業の社会的信用を回復し、また従前以上に向上させることも不可能ではありません。

広報は早く行う

企業で不祥事が発生した場合、広報は可能な限り迅速に行うべきです。

もし広報が遅くなってしまうと、憶測によるデマが流れて世間に誤った情報が広がってしまい、いわゆる風評被害に遭う可能性があります。とりわけSNSやネット掲示板を利用して、誰でも情報が発信できるようになった今、誤った情報もあっという間に広がる可能性があります。

そうなると、企業に対して寄せられた批判的な情報が事実でなければ、企業は被害者といえますから、事実とは異なる情報が拡散されている旨を記載した声明文を速やかに出さなければならなくなるなど、作業が増えて、正確な情報開示が更に遅れる可能性があります。

対応の遅れは世間を不安にし、世間の印象を悪くするため、広報はできるだけ早く行うことが重要です。

弁護士など専門家に相談する

企業での不祥事発生時における広報について、対外的に開示する文書の内容や記者会見で説明する内容については、弁護士などの専門家に事前にチェックを受けることも重要です。このようにして外部に出る情報については、消費者、株主等が訴訟を提起する場合の証拠となりうるからです。

また広報を行う場合、リスクマネジメントの専門家などからの助言が必要となる場合もあるでしょう。

福祉施設の職員による虐待事案について②

2024-10-22

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

施設職員による虐待事案は、刑事事件になり得る

前回、解説しましたように、虐待の種別として種々のものがありますが、なかでも責任が重大で、施設として最も起こしてはならない虐待事案として、刑事罰相当の虐待事案があります。

身体的虐待

高齢者等に対して、叩く、蹴るなどの暴行を加えれば暴行罪、それによって怪我をさせれば傷害罪となります。また、最悪、死なせてしまった場合、傷害の故意しかなければ傷害致死罪、殺すことの故意が認められれば殺人罪になります。

介護的放棄

介護の放棄は、保護責任者遺棄罪、不保護罪に該当し得ます。保護責任者遺棄罪に該当する行為には、「遺棄」と「不保護」があり、ここで「遺棄」とは、被害者を移動させること、すなわち置き去りにすることであり、「不保護」とは、場所的な隔離を伴わずに、生存に必要な保護をしないことです。

性的虐待

高齢者等に、同意しない意思を形成し、表明し、若しくは全うすることが困難な状態のもとでわいせつな行為をすれば不同意わいせつ罪、また、同様の状態のもとで性交等をすれば、不同意性交等罪になります。

経済的虐待

高齢者等の財産を勝手に処分して利益を得た場合、物について加害者が占有していれば横領罪、被害者が占有していれば窃盗罪になります。

具体例

施設職員による刑事罰相当の事件といえば、平成26年に起きた川崎市の有料老人ホームでの連続転落死事件が有名です。この事件は、介護付有料老人ホームの職員であった被告人が、約2か月間に、3回にわたって、同施設の夜勤業務に従事している際に、入居者ら3名をそれぞれベランダからその身体を抱えてフェンスを乗り越えさせ、施設裏庭に転落させて殺害したという事件であり、被告人は地方裁判所において死刑を宣告されました(令和5年5月11日付けで死刑が確定)。

虐待をすれば逮捕されるのか

虐待行為は、既に述べましたように、刑法の各犯罪に該当し得ます。
しかし、虐待をすればすぐに逮捕されるかと言えば、必ずしもそうではありません。
もちろん、当該虐待行為が、刑法の条文の犯罪に本当に該当するか否かについては厳格に判断されますし、虐待の程度が軽い場合には、たとえ実際に犯罪に該当したとしても、逮捕までされず、在宅捜査ということもあります。

福祉施設の職員による虐待事案について、この続きは今後の記事で解説していきます。

最後に

福祉施設の職員による虐待は後を絶たず、近年増加傾向にあります。虐待防止の取り組み、あるいは、実際に虐待が疑われる事案が発生した際の対応等については、刑事事件について豊富な経験を持つ弊社の弁護士にご相談ください。

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第三者委員会について②

2024-10-18

第三者委員会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも第三者委員会とは何か

日本弁護士連合会が公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)では、第三者委員会について、「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」と定義しています。

第三者委員会の委員の構成はどうすべきか

ガイドラインによれば、第三者委員会は、不祥事の経緯、動機、背景、不祥事を生じさせた内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点、企業風土等を調査対象とし、証拠に基づいた客観的な事実認定、認定された事実の評価を行い、不祥事の原因を分析し、再発防止策を提言するものとされています。

第三者委員会にそのような役割が期待されていることに鑑みると、委員には少なくともこのような活動を行うための専門的知見を有する弁護士を入れておくべきです。委員となる弁護士は、当該事案に関連する法令の素養があることに加えて、内部統制・コンプラインアイス・ガバナンス等、企業組織論に精通した者(後記のように対象企業の顧問弁護士を除く。)でなければなりません。

不祥事の内容によって、公認会計士、学者、その他の有識者を委員に含めることもあります。

また、ガイドラインによると、委員の人数は3名以上を原則とするとされています。第三者委員会は複数の専門家が、その専門的知見を背景に互いに議論し結論を導き出していくものであり、委員が1名などということは想定されず、これまで設置された第三者委員会では、3~5名の委員で構成される委員会が多いです。

独立性・中立性が要求される第三者委員会の場合、企業等と利害関係を有する顧問弁護士や企業内関係者を委員とするのは妥当ではなく、弁護士であれば外部の弁護士を委員とすべきです。

調査担当弁護士とは

企業の不祥事は、その事案の性質や調査期間等にもよりますが、第三者委員会の委員自身が直接全ての事実調査を行うことは時間的・物理的に不可能な場合も多いといえます。

そこで、ガイドラインによると、第三者委員会は、調査担当弁護士を選任できるとされ、調査担当弁護士は、第三者委員会に直属して調査活動を行うとされています。調査担当弁護士は、法曹の基本的能力である事情聴取能力、証拠評価能力、事実認定能力等を十分に備えた者でなければなりません。

第三者委員会について、この続きは今後の記事で解説していきます。

最後に

第三者委員会のメンバーを構成するときに弁護士がその主要なメンバーとなるのが通常であるのは、その職務上、事実調査や法的な判断などを日頃から業務として行っているので、調査が正確に行われる蓋然性が高いということにあります。

企業で不祥事が発生し、第三者委員会設置を考えておられる、あるいは、不祥事が起きていなくても、不祥事の事前の回避を真剣に考えておられる企業経営者等の方は、早めに弁護士にご相談ください。

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第三者委員会について①

2024-10-15

第三者委員会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも第三者委員会とは何か

日本弁護士連合会が2010年7月15日に公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(同年12月17日改定。以下「ガイドライン」という。)では、第三者委員会について、「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」と定義しています。

どういう場合に、企業は、第三者委員会を設置すべきなのか

企業で不祥事が発生した場合、第三者委員会を設置するか否かは、各企業の判断であり、また、不祥事が発生した場合に、必ず何らかの調査委員会を設置しなければならないわけでもありません。どのような不祥事が発生した場合に第三者委員会を設置すべきなのか、その基準についてガイドラインには何ら述べられていません。

もっとも、そのほか、第三者委員会について述べるものとして、日本取引所自主規制法人が2016年2月24日に公表した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」(以下「プリンシプル」という。)があり、それによると、以下の5つの場面において、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者委員会の設置が有力な選択肢となるとしています。

・内部統制の有効性に相当の疑義が生じている場合

・経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合

・当該企業の企業価値の毀損度合いが大きい場合

・複雑な事案である場合

・社会的影響が重大な事案である場合

第三者委員会は、企業内部の経営者や従業員などを中心に構成した内部調査委員会と異なり、企業とは利害関係を持たない企業とは独立した委員のみをもって構成されます。そのため、内部調査委員会よりも独立性・中立性を確保しやすく、調査の客観性を担保できることがメリットとしてあげられます。

その一方、プリンシプルは、「第三者委員会という形式をもって、安易で不十分な調査に、客観性・中立性の装いを持たせるような事態を招かないように留意する。」と述べており、いわゆる「名ばかり第三者委員会」とならないよう釘を刺していることにも注意が必要です。

ステークホルダーとは、取引先、株主、従業員、顧客等、企業と利害関係にある者全般を指す言葉ですが、不祥事に関心を示すステークホルダーが多く、不祥事の内容がマスコミを通じて大々的に報道されているような事例では、企業が自ら調査を行う内部調査委員会の調査では信用されない危険性があります。このような事例では、調査に透明性を確保すべく、第三者委員会を設置することが望ましいといえるでしょう。

第三者委員会について、この続きは今後の記事で解説していきます。

日本版DBSとは

2024-10-14

令和6年6月、日本版DBSの法律が成立したことを伝える報道が出ました。
この制度は、教育関係者など児童生徒と関わる仕事と密接に関連します。学校や学習塾の経営者や幹部の方々、学校などの教員を目指している方、性犯罪の前科を有する方には、とても大きな影響を持つ制度が誕生しました。

この日本版DBSとは一体何なのか。どのような仕組みなのか。連載していきます。
本ブログは、令和6年6月24日の情報を元に作成されています。日本版DBSにより現に対応を迫られている方や不利益を被っている方は、この制度に詳しい弊所の弁護士にお問い合わせください。
日本版DBSの根拠法は、「こども性暴力防止法」という法律になる見込みです。

そもそもDBSとは何でしょうか

「日本版」という言葉があるように元々DBSは外国の制度です。

”子どもを守る”「日本版DBS」法案決定https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/106604.html

イギリスには、子供と接する職場で働く人に性犯罪歴がないかどうかを確認する権限がある機関として、前歴開示及び前歴者就業制限機構、通称DBSがあります。
これと同様のシステムを日本でも作ろうというのが日本版DBSです。

日本版DBSのシステムを噛み砕いて説明すると、「子供と関わる一定の職場は、入社しようとする人に性犯罪の前科があるかどうか、確認しなさい」と命じるようなものです。
では、その確認をすべき一定の職場とはどんなものでしょうか。学校や学習塾です。学校は、確認をする義務がありますが、学習塾は任意というように、細かな違いはあります。

性犯罪とは何でしょうか。性犯罪といえば、例えば痴漢やレイプや児童ポルノが典型例です。これは、日本版DBSで確認される性犯罪にあたります。ストーカーや下着泥棒はどうでしょうか。これは対象外です。ストーカーや下着窃盗は、性犯罪に近い要素もあるといえばある気もしますし、性犯罪というほどではないのでないかといえばそのような気もします。このようなものは日本版DBSの対象にならないようです。

性犯罪を犯してしまった人の中には、「自分は成人している相手を性の対象として見ているのであって、児童生徒なんかに欲情しない!なぜ性犯罪前科があるだけで十把一絡げにされるんだ!」と思う方もいるかもしれません。
このブログを作成している頃に、女性保育士が保育園に通う男児の首を切りつけた事件が発生しました。これは性犯罪ではないのですが、まさに子供に直接的な加害行為をしているのですから、児童生徒を性の対象としない人に比べてずっと、子供と切り離す必要が大きいように思われます。

性犯罪という要素だけで十把一絡げに日本版DBSの対象とすることによって、児童生徒に対する危険が低いのに性犯罪前科のためだけに登録される人もいれば、現に子供に重大な加害行為を加えたのに性犯罪でないというだけで登録されない人もいるわけです。この日本版DBSについて、非常に大きな問題があるとの議論があることは間違いないので、今後、その問題を踏まえて制度変更があるかもしれません。
しかし発足当初の状況としては、「児童・生徒みたいな人は自分の性の対象でない」という話は通用しないわけです。

なお、性犯罪に限らず本当は前科があるのに、履歴書に前科があることを書かないなどその前科を隠して入社した場合にどのような問題が生じるかは、別の記事で説明します。

前科とは何か

これは有罪の裁判を受けた記録です。ですから、罰金刑、執行猶予、刑務所で服役といった刑罰を受けたことがある場合には前科にあたります。他方、痴漢で逮捕されたけど冤罪だったとか示談をして起訴猶予になったという場合は、前科にあたりませんから、日本版DBSで確認される情報とは異なることになります。
前科情報はいつまで登録されるのでしょうか。これは刑の重さによって変わっています。罰金刑の前科は執行終了から10年、刑務所など罰金より重たい前科は執行終了や裁判の確定から20年となっています。
 
このように日本版DBSは、一定の事業者が従業員の性犯罪の前科を確認するよう求めるシステムです。事業者だけでなく、就職希望者や現に前科のある人には、大きく関わってくる制度なので、この制度により問題を抱えている方は、弊所の詳しい弁護士までお問い合わせください。

企業役員の私生活上の犯罪

2024-10-11

事例はフィクションです。
大阪に本社を置くZ社の取締役Aさんは、深夜、旅行先の京都市内の路上で、酒に酔って、タクシー運転手Bさんに暴行を加え、怪我を負わせるとともに、タクシーのドアを蹴って凹ませ、臨場した警察官に傷害・器物損壊罪で現行犯逮捕されました。既に、複数のメディアが報道しています。

このような場合、企業としては、どのように対応すべきでしょうか。

会社としての対応

従業員・役員による不正として、企業活動と関係なく、従業員・役員が私生活上の行為について不正を起こすことがあります。この場合、必ずしも企業に影響があるとはいえません。
ただし、私生活上の行為であっても、特に企業の幹部従業員や役員による犯罪行為であれば、マスコミも注目し、報道される可能性があります。

参考報道 タクシー料金払わず、運転手にかみつき逃走 30歳会社役員の男を逮捕

そして、私生活上の行為といえども、犯罪行為をするような者が重要な役職にいたという事実が明らかになれば、企業の社会的信用が損なわれることは免れず、これを防止するため様々な対応を検討する必要があります。
ここで難しい問題は、従業員・役員が私生活において犯罪行為をした場合には、企業がそれを認識するのは、事例のように逮捕等の捜査活動が端緒となることが通常です。しかも、企業が警察等捜査機関に事実関係の詳細や本人の供述状況等を尋ねたとしても、捜査機関は、捜査上の理由から、これに応じないのが通常であることです。
このように、企業外の犯罪ですから、企業としてできることは限られていますが、その場合でも、企業として適切な対応をとるためには、まずは、できる限り迅速に事実関係を把握する必要があります。本人が身柄を拘束されている場合、情報を入手する手段としては、当該従業員・役員の弁護人、家族等から事情を聞くことが考えられます。

マスコミ対応、役職や人事に対する検討

事例のような企業の役員が逮捕された場合、とりわけ上場企業であればマスコミ報道がされる可能性は極めて大きくなります。特に、事例のように、現行犯逮捕された場合には、報道の直後から、複数のマスコミから一斉に取材攻勢に遭うことが予想されます。この場合、企業としては、想定されるマスコミからの質問に対する回答を準備しておく必要があります。基本的には、事件の内容に関する質問に対しては、「捜査中であり、弊社からのコメントは差し控える。」などと回答することになります。

次に、事例のAさんについては、Aさんが、社長、副社長、専務、常務等の役付取締役や代表取締役である場合、これらの役職を解いたり、代表権を剥奪する必要があるかについて検討する必要があります。

また、事例と異なり、Aさんが従業員であった場合には、懲戒等の人事処分を検討する必要があります。仮に、Aさんが、代表権を有する唯一の取締役であり,Aさんが、逮捕のみならず勾留され身体拘束が続いた場合、身体を拘束されている間,Z社の業務執行が事実上停止してしまうことになりかねず、そのような場合、早期に取締役会を開催して、他の取締役に代表権を付与することも検討する必要があるでしょう。

従業員・役員による私生活上の不正行為が発覚した場合、弁護士のサポートがあればスムーズに進みます。マスコミ対応や、不正を行った従業員・役員に対し、責任を追及したい場合等、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

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社内調査におけるヒヤリングの留意点について④

2024-10-08

社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査におけるヒヤリングの意味

社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。

企業で不正行為が行われ、またその疑いがある場合に、事実関係を解明するため、事情を知っている関係者のヒヤリングを実施することは必要不可欠です。

今回は、社内調査におけるヒヤリングの留意点の最後として、企業が、社内調査として社員に対するヒヤリングを行った場合に、それをどうやって証拠化するかについて解説します。

以前の記事:社内調査におけるヒヤリングの留意点③

ヒヤリング結果の証拠化について

社内調査は、証拠の収集活動であり、収集した証拠は、将来の民事・刑事の手続きに使用される可能性もあります。そこで、何らかの形で収集した証拠は、証拠資料として文書化し、整理しておくことが重要です。

社内調査でヒヤリングを行った場合には、そのヒヤリング結果を正確に証拠とする必要があります。ヒヤリング結果を証拠化する方法には、①ヒヤリングを実施した者がヒヤリング記録を作成する、②ヒヤリングを録音しておき、その反訳文(録音内容を文書化したものです。)を作成する、③陳述書を作成してヒヤリング対象者の署名を得る、などの方法があります。

①の方法が最も一般的な方法だと思われます。
②の方法は、短時間で簡潔なヒヤリングを実施した場合には、後日、言った、言わないという紛争を回避する観点からも有効な方法ですが、ヒヤリングが長時間に及び、社内調査とは無関係の会話が多数含まれるような場合は、使いにくい証拠となってしまいますので、注意が必要です。この場合、事前に録音することを対象者に伝えることが望ましいですが、録音を伝えることで、供述を引き出さない場合もあるため、事前に録音することを伝えるか否かは個別に判断する必要があります。なお、対象者の方から録音を申し出てくることもあり、情報漏洩防止の観点から録音を禁止にしても問題はありません。もっとも、これを拒むことで後にヒヤリング自体の透明性、信用性を問題とされる可能性があることは注意しておく必要があります。
③の方法は、ヒヤリングの結果を将来の民事・刑事の手続に実際に使用する必要があるときには有効な方法です。陳述書とは、対象者が自身の名義で作成した文書で、通常、作成者本人がこれに署名や押印を行うものであり、対象者が記載内容に間違いがないことを確認してから署名をおこなうため、対象者が説明した内容と異なる内容が企業へ報告されるリスクは少ないからです。もっとも、陳述書の内容が、客観的な関係資料と整合していなかったりした場合には、その社員の陳述書の証拠としての利用価値は少なく、常に陳述書を作成するまでの必要はありません。

最後に

社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。

事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。

不倫相手とのハメ撮りをアップ,法的問題点や刑事罰について

2024-10-04

事例

会社役員であるAさんは、アルバイト従業員であるBさんと不倫関係にありました。ある日、Aさんは、Bさんから「真剣交際をしたい人が見つかったので別れたい。」といわれました。Aさんは、どうせ不倫なのだからBさんも不倫したらよいではないかと提案しましたが、断られてしまい、怒りにまかせてBさんとセックスしている時に撮影した動画をインターネット上に投稿しました。
(この事例はフィクションです)

さて、どのような問題が生じるでしょうか。

このような事例でAさんから相談を受けた弁護士として、どのようなリスクを提案するか、説明します。

1点目 盗撮の罪が成立するか

Aさんは、Bさんとセックスしている際の動画、いわゆるハメ撮りを投稿していますが、そもそもこの動画撮影は、Bさんの許諾を得ているのでしょうか?
許諾を得ていない場合、各地域の条例に規定されている盗撮や性的姿態等撮影罪などの犯罪が成立する可能性があります。したがって、示談等Bさんに対する被害弁償に動く必要があります。

なお、Bさんは、アルバイト従業員ということですが、18歳未満の場合には児童ポルノ関係の法令に抵触する可能性があります。その動画データを所持している点は児童ポルノの所持罪、撮影をした点は児童ポルノの撮影罪が成立します。また、Bさんとのセックス自体が各地域の条例で定める青少年保護条例に規定された淫行にあたる可能性があります。いずれにしても示談等被害弁償をする必要があります。

2点目 わいせつ電磁的記録媒体公然陳列が成立するか

わいせつな動画や画像をインターネット上にアップロードした場合、わいせつ電磁的記録媒体公然陳列という犯罪が成立する可能性があります。

例えば、日中の路上でいきなり全裸になった場合、公然わいせつという犯罪が成立することはなんとなくお分かりになると思います。わいせつ電磁的記録媒体公然陳列は、公然わいせつのインターネット版というようなイメージを持っていただくと分かりやすいかもしれません。
Aさんのケースでは、インターネット上にアップロードしたとして、どのようなものにアップロードしたのか、誰でも見られるブログや掲示板なのか、それとも会員制のウェブサイトなのか、といった点を考慮して、犯罪の成否を検討することになります。

なお、Bさんが18歳未満である場合には、児童ポルノの頒布等より重たい犯罪が成立する可能性があります。

3点目 リベンジポルノや名誉毀損の罪が成立するか

リベンジポルノは、簡単にいうと、元配偶者や元交際相手などの性的な画像や動画をその人の承諾を得ず公表するような行為です。
名誉毀損は、簡単にいうと、ある人の名誉を低下させるようなことを公に言いふらすような行為です。

AさんがBさんとセックスしている動画がインターネット上にアップロードされたことによって、そのセックスのことがAさんとBさんの会社やBさんの友人知人に知れ渡った場合、Bさんがとても恥ずかしい思いをすることは容易に想像できますし、それ以上の思いをすることも容易に想像できます。

その動画でセックスしている人がBさんだと分かるような内容である場合、Aさんには、リベンジポルノや名誉毀損といった犯罪が成立する可能性が十分にあります。他方、動画そのものや動画をアップロードする際のコメントや文章などから、Bさんとは分からないようなものであれば、それらの犯罪が成立しない可能性も十分あり得ます。弁護士と相談して、犯罪成立のリスクを見極め、場合によっては示談等を行うことが考えられます。

4点目 不同意性交等の罪が成立するか

さて、AさんとBさんの間のセックスは、不同意性交等といった問題を生じないでしょうか。いわゆるワンナイトの場合、そういった犯罪の可能性が出てきますが、継続的な不倫であれば、その可能性は低いといえます。

ただ、不同意性交等は、近年刑事法令が改正されたことでできた新しい犯罪であり、重要な話がたくさんあります。この不同意性交等については、別途事例を設けて、別の記事で解説しますので、そちらの記事をご参照ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を重点的に扱う法律事務所として、複数の犯罪発生リスクを慎重に見極めた法律サービスを提供しています。こういった専門的な弁護士や実績のある弁護士のサポートをご希望の場合には、こちらからぜひ弊所に一度ご相談ください。

企業側のハラスメント対応① ハラスメントの種類と刑事事件

2024-09-27

現代では企業内でのハラスメントの問題はメディアでも取り上げられるなど社会問題となっています。
また時代の変化に応じてハラスメントと言われるものの種類も多様化の一途をたどっています。
今回の記事ではハラスメントの種類と、それらが刑事事件にまで発展するリスクがある事例について詳しく解説していきます。

1 ハラスメントとは

職場でのハラスメントの定義については、一般的に職場で行われる①優越的な関係を背景とした言動であり、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の修行環境が害されるものと言われており、①~③のすべての要素を満たすものが職場でのハラスメントに該当すると定義されています。
②の要件について、しばしばハラスメントの加害者からは「~したのは業務上必要なことだった」と弁解されることが多いですが、あくまで業務上必要かつ相当な範囲であるかは客観的に判断されますので当事者が必要かつ相当であると思っているかは関係ありません。調査する際などには本人の主張だけでなく、被害者側の言い分や客観的状況に着目することが重要です。

厚労省HP 職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

2 ハラスメントの種類について

ではハラスメントの種類について代表的なものをいくつか挙げて解説させていただきます。ここでは①セクシャルハラスメント、②パワーハラスメント、③モラルハラスメントを挙げて説明をさせていただきます。

① セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントの定義は労働者の意に反する性的な言動によって、労働条件について不利益を受けて就業環境が害されるハラスメントをいいます。
セクシャルハラスメントには一般的に性的な言動を拒否抵抗したことによって労働者が解雇や降格などの不利益を受ける対価型のセクシャルハラスメントと、性的な言動により労働者が不快に思い、能力の発揮に重大な影響を生じた環境型のセクシャルハラスメントに分類されます。

② パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、職場において地位や人間関係などの優位性を利用して、業務の適正な範囲を超えて、業務の適正な範囲を超えて身体的精神的苦痛を与える行為や職場環境を悪化させる行為をいいます。
上司の指示などは業務の適正な範囲を超えているか判断が難しいケースもあり適正な職務行為との線引きが難しい類型でもあります。身体的な攻撃や精神的な攻撃のほかに過大な要求をする場合など、パワーハラスメントに当たるとされている行為についてはさらにいくつかの類型があります。

③ モラルハラスメント

モラルハラスメントとは、精神的な虐待や心理的な攻撃のことです。職場であれば上司や同僚からの不適切な圧力、過剰な侮辱や批判などがこれに該当します
ここまで3つの類型を説明しましたが、これらは明確に分けられているわけではなく不空のハラスメントに該当する場合もあります。
例えば上司から一方的な叱責を受けた場合には上下関係に基づくという点に着目すればパワハラにも該当しますし、心理的な攻撃という点に着目すればモラハラともいえます。
このようにハラスメントの類型や区別することが重要なのではなく、会社側が対応を検討する際の指標としてハラスメントに該当すると言われる代表的な例については担当者で共有しておく必要があるといえます。

3 ハラスメントが刑事事件となる場合

ハラスメントと言われる行為も度が過ぎれば刑事事件として取り扱われるケースも出てきます。刑事事件として取り扱われるケースであれば、警察への被害相談も検討する必要が出ますし、加害者が逮捕される可能性も考慮して処分等を検討しなければならないです。
ハラスメントが刑事事件になるケースは例えば、被害者に対して殴る蹴るなどの暴行を行っていれば暴行罪(刑法208条)又は傷害罪(刑法204条)が成立する可能性があります。
上司の立場を利用して意に反する行動をさせた場合には強要罪(刑法223条)が成立する可能性があります。
被害者の意に反して胸や臀部に触れる行為には不同意わいせつ罪(刑法176条)が成立する可能性があります。
今のは代表的なケースですが、中には犯罪にあたるかの判断が難しいケースもあります。
当該ハラスメントが刑法上の犯罪にあたるかは法律的に慎重な判断が求められ、その後の対応にも大きくかかわりますので、是非刑事事件を専門に扱う弁護士に相談されることをおすすめします。

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契約書の重要性④

2024-09-20

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、契約の成立時期や契約書の作成日についてみてきました。
今回は、契約が誰と誰の間で締結されたものなのか(契約の当事者が誰なのか)や署名の重要性について深掘りしていきます。

2 署名の重要性

以前の記事でも解説したように、契約とは、2人以上の当事者が、権利や義務に関する合意を結ぶことをいいます。
そして、当事者には、生身の人間(自然人ということもあります。)に限らず、会社などといった法人もなることができます。
問題は、会社などといった法人が契約の当事者になる場合に、契約書に署名をするのは誰なのか、言葉を変えると、誰に契約を締結する権限があるのかという点です。

⑴ 代表取締役
まず、代表取締役には、契約を締結する権限があります。
これは、会社法349条4項で「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められているからです。
そのため、会社の代表取締役が契約書に署名するのが一般的といえます。

⑵ 業務執行取締役
また、その契約に関する業務について、業務執行取締役となっている取締役にも権限があります。
業務執行取締役というのは、取締役会を設置している会社において、ある業務を執行する取締役として、代表取締役以外の取締役を選定するという取締役会の決議を受けた取締役です(会社法363条2項)。
なお、取締役会というのは、会社の取締役全員で構成する合議体で、会社の業務執行の決定をしたり、取締役などの業務を監督したりする合議体です(会社法362条)。

⑶ 取締役
会社によっては、代表取締役を定めないことも可能な場合があります。
このように「代表取締役その他株式会社を代表する者を定め」ていない場合、取締役が会社を代表します(会社法349条1項)。
そして、このような場合で、取締役が複数人いる場合でも、各取締役がそれぞれ会社を代表します(会社法349条2項)。
このような場合であれば、“代表”取締役や“業務執行”取締役でなくても、権限があることになります。

⑷ 契約締結権限を与えられた使用人(従業員)
また、代表取締役や取締役といった会社の役員でなくても、会社の事業に関するある特定の事項などについて委任を受けた従業員(会社法では「使用人」といいます。)にも権限があります。

3 署名の際に気を付けること

このように契約書に署名する権限がある人というのは多岐にわたります。
契約の相手方が会社の場合は、契約書に署名をしようとしているその人に、会社を代表して契約を締結する権限があるのか確認することが重要です。

今回は、契約書の署名の重要性について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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