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営業秘密の侵害とは何か②
(事例はフィクションです)
Aさんは食品製造を業とするX社の開発部門に勤めていました。
ある時,Aさんは他の食品製造会社であるY社に転職したのち,「Y社がX社の商品とうり二つの製品を販売している」という噂が流れるようになりました。
X社の担当者が確認したところ,AさんがX社からの退職時に製品のレシピを不正に持ち出したという疑いが強まりました。
X社の担当者は,AさんやY社への対応をどうするべきか,弁護士に相談することにしました。
営業秘密の侵害とは何か
以前にも当サイトにて「営業秘密とは何か」について取り上げました。
法律上,①秘密に管理されている,②事業のための有益な情報であって,③誰でも知っているようなものではない情報は,「営業秘密」として保護されることになります。
しかし,営業秘密として保護されるということと,独占的に使用できることは若干意味合いが異なります。
少しわかりにくいので,具体例で説明しましょう。
上記の事例で,X社が開発した商品の製造方法,食品の種類やその配合の割合と言った情報は,「営業秘密」に該当する可能性があります。その情報を無断で持ち出したり,正当な権限がないのに使用したりすることは,不正競争の違反になることがあります。
例えば,X社が作っているカップラーメンの粉末スープには,塩:胡椒:山椒が2:2:1の割合で入っていたとします。このような割合でカップラーメンの粉末スープを作る方法は営業秘密に当たる可能性があります。
しかし,同業の他社が研究を行った結果,同様に「塩:胡椒:山椒が2:2:1の割合でカップラーメンの粉末スープを作るとおいしい!」と気づき,製品を作るということがあり得ます。
このように,「営業秘密を不正に取得したり使用したりしていなくても,結果として同じものが出来上がるということは理論上あり得るのです。その場合には,営業秘密の侵害行為がないのですから,「同じ方法で製品を作るな!営業秘密の侵害だ!」とは言えないことになります。
不正競争防止法は,営業秘密を守る,つまり不正に外部に流出されたり利用されたりすることを防止しています。一方で,営業秘密と同じ情報を独占的に利用させる,ということまでは認めていないのです。
以前の記事でも取り上げた,令和5年5月31日に東京地方裁判所で判決が言い渡された民事裁判では,営業秘密の侵害が認められないとして原告(訴えた側の企業)の請求が認められませんでした。この事例も,ある食品製造会社が他の会社の製品について,レシピなどを盗用されたと主張していた事案です。
その裁判においては,食材の配合の割合について似ている部分はあるけれども,レシピを盗用した,つまり営業秘密を使用されたとまでは言えないと判断して,原告の請求を認めませんでした。
単に似ている,というだけでは営業秘密の侵害とまでは認めなかった事案です。
会社としての対応は?
上記の事例でも,まずは「どのような営業秘密があるのか」と「その営業秘密が侵害されたと言えるのか」という二段階での検討が必要です。
そして営業秘密の侵害なのか,営業・研究結果の一致にすぎないのかは,当該情報の性質や業界の常識なども含めて検討しなければならないものです。
X社としても,Y社製品との類似性やAさんの言動についてよく調査を行った上で,その後の対応を検討しなければなりません。
また,第三者によって利用されることを制限したい,独占的に使用したいという場合には,むしろ特許を出願するということも考えられます。
不正競争防止法は,特許のように届出をしていない情報であっても保護の対象としていますが,「侵害」と言えるかどうかについては一定の制限を設けています。
「塩:胡椒:山椒が2:2:1の割合による粉末スープ」というだけでは特許として認められる可能性は低いでしょうが,企業における門外不出の技術や長年の研究の成果のように「他人に絶対に使わせたくない製法」なのであれば,特許法による保護も検討に値するでしょう。
特許を取得してしていたのであれば,独占的な使用が可能なのです。

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パワハラ行為による民事的,刑事的責任
事例はフィクションです。
A社の営業部長Bさんの部下であるCさんは最近元気がありません。そこで、社長がCさんに声をかけると、Cさんは、「B部長からは、いつも意地悪をされたり、暴言を吐かれ、ときには大声で怒鳴り散らされるなどのパワハラを受けている。A部長の下ではもう働きたくない。」と言ってきました。
パワハラとは
パワハラとは、2012年1月に公表された、政府の「職場いじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」の報告書によれば、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」とされています。
パワハラについては、一般的には民事の損害賠償請求の形で落ち着くことが多いのですが、刑事事件に発展する場合もあります。
すなわち、相手に対して、殴る、蹴るなどの暴力行為を伴うものであれば、暴行罪に当たることは当然ですが、傷害罪における傷害行為は、人の生理的機能に対して障害を与えればよいとされています。人の生理的機能に対して障害を与えれば、それが肉体的なものではなく、精神的なものであっても、傷害罪が成立しうることになるのです。
例えば、何度も大きな声で怒鳴る、執拗にねちねちと小言を言うなどの行為により、部下が精神障害を起こして診断書が提出されれば、上司が傷害罪に問われるおそれもあります。
事例のBさんの行為も、Cさんから診断書が提出されれば傷害罪に問われる可能性がありますので注意が必要です。
パワハラ・セクハラについてはこちらでも解説をしています。
会社としてどう対処すべきか
加害者に対する処分
A社は、パワハラの事実が確認できた場合には、加害者に対する懲戒処分を検討することになります。懲戒処分を科す場合には就業規則に則って対応をしなければなりません。就業規則に沿わない処分や不当に重い処分をしてしまうと、裁判で無効と判断されることもあります。
会社に生じる責任について
パワハラは、あくまでも会社に所属する個人が行うものです。そこで、すでに説明したような刑事責任を、所属先であるA社が問われることはありません。
しかし、民事責任については、A社にも生ずる場合があります。
たとえば、事例のパワハラの事例で、Bさんが、会社における仕事を行うに際して(法律上は「事業の執行について」といいます。)、パワハラ行為を行っている場合、A社も、Cさんに生じた損害を賠償する責任(使用者責任といいます。)を負う場合があります。
また、A社でパワハラがあった場合において、事前に、相談できる職場環境を整えたり、事後的に、パワハラ被害の申告があったにもかかわらず、これを放置し、何ら調査を行わなければ、A社自身が民事責任を負うことになる可能性があります。
さらに、会社にてパワハラがあった場合において、たとえば、事例におけるBさんが傷害罪で逮捕され、Bさんの実名や、BさんがA社の従業員であることが報道されてしまうと、会社の信用にも関わり、取引先への影響などが生ずる可能性があります。
以上のように、会社内でパワハラ行為があったことが発覚した場合、様々な対応をする必要があり、適切に対応していくのであれば、弁護士のサポートが必要になってくることが考えられます。早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

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風営法違反をきっかけとした捜査
事例
(取り上げる事例はフィクションです)
某県某市で、店舗を構えて複数の個室を設けて性的なサービスを行うお店を夫婦で経営していた夫のAさんと妻のBさんがいました。このように店舗などの個室で性的サービスを行う営業は、善良な一般国民の道義観念に反し、社会に悪影響を及ぼしたり、青少年の健全な育成に障害をもたらすおそれがあることから、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」、いわゆる「風営法」によって様々な規制がなされています。
Aさん達の経営する風俗店は、風俗営業の中でも「店舗型性風俗特殊営業」と言われる営業形態であり、風俗営業の中でも、特に社会への様々な悪影響がもたらされるおそれがあり、官公庁や学校などがある場所から一定距離の地域では、この店舗型性風俗特殊営業をすること自体が禁止されています。
AさんとBさんは、禁止地域で店舗型性風俗特殊営業を営んでいたことから、ある日、突然、多数の警察官がお店に乗り込んできて、いきなり「『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反』により、裁判所から捜索差押許可状が発付されています。これから、お店の中を捜索します!」と言われ、裁判所から発付された令状を示されて、怒涛の如く捜索が開始されました。お店の受付には妻のBさんだけがいて、もうどうすることもできません。捜索開始から10分ほどしたところで、夫のAさんが受付の交代のためにやってきたところ、警察の捜索が入っていたことを知りビックリです。
その後、AさんとBさんは逮捕されました。弁護を受任したC先生は、直ちに初回接見に行き、Aさんの話を聞いたところ、AさんもBさんも初犯であったこと、営業を始めて3か月程度と期間が比較的短かったこと、禁止地域であることの認識がやや希薄であったこと、事実を認めて、もう廃業するとしていたことなどから、略式起訴による罰金で終結するだろうとの見通しを持ちました。
一方、他方で、共犯者にBさんがいること、事件関係者が多数であることから、勾留が認められ、接見禁止がつくであろうこと、勾留延長はやむを得ないが延長満期で罰金の処分となり釈放されるであろう見込みなどを説明しました。
ところが・・・
風営法違反事件についてはこちらのページでも解説しています。
禁止地域営業は、ただの入り口事件・・・?
C先生は、本件の延長満期2日前に、担当検事に処分見込みを確認したところ、担当検事は「本件については処分保留で再逮捕します。」というではありませんか。
再逮捕のネタはいわゆる「バテイ」でした。「バテイ」というのは、馬の蹄(ひづめ)のことではなく、業界用語で、売春防止法違反の「売春を行う場(バ)所を提供(テイ)することを業とすること」です。
風営法の禁止地域営業は、法定刑が2年以下の懲役又は200万円以下の罰金又はその併科ですが、売春防止法違反としての場所提供罪の法定刑は、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金と各段に重くなります(罰金が30万円と軽く見えますが、刑の重さの比較は懲役の長さが基準になります。)。
警察の本当の狙いはバテイにあったのであり、禁止地域営業は入口事件に過ぎなかったのです。
入口事件というのは、捜査を始めるきっかけとなる事件のことです。警察は、捜査をする当たって、必要に応じて検事に事前相談をして、入念な捜査計画を立てて動きだしますが、まずは、証拠の明白な手堅い事件で捜索差押えをかけるとともに被疑者らの身柄を拘束し、本丸の捜査のためのお膳立てをするのであり、そのお膳立てが入口事件なわけです。
この種の事件での警察の捜査は、まず、風営法違反の疑いで捜査を始めます。
具体的には、店舗周辺で張込をし、店舗から出てきた一般客に声をかけて店舗内でどにような性的サービスを受けたのかを聞き取りします。通常、こうした客は、警察だと聞いてとても驚きます、そして、このようなお店に行っていることが家族や職場にバレはしないかと心配するなどしていることから、これらの狼狽した状態に乗じて警察はうまく聴き取りをするわけです。この聴き取りの早い段階で店舗の女性従業員と客との間に性交渉があったことが情報として出てくることもあります。これらの客の聴き取りを何人か行い、営業実態がある程度把握できたところで、本件店舗と関係場所など複数の捜索差押許可状のほか、被疑者らの逮捕状の発付を得て、私服刑事が乗り込み「令状執行、逮捕」となるわけです。
rf: 各種業法の違反に対する罰則
この事件の顛末は・・・?
この事件では、結局、売春防止法違反(場所の提供)で再逮捕・再勾留となりましたが、弁護士Cがバテイの勾留状謄本の交付を受けたところ、ある事実に気が付きました。
なんと、禁止地域営業の逮捕勾留の日時場所と、バテイの日時場所が全く同じだったのです。逮捕勾留というのは、身柄拘束の期間が法律で厳しく制限されています。同じ事実で何度も再逮捕・再勾留ができたのでは、身柄拘束は永遠に続き、法律が身柄拘束期間を厳しく制限していることに意味がなくなります。
もっとも、この事件では、性的サービスと性交渉という行為に違いはありますが、やっていることにほとんど変わりがない上に日時場所が同じというのは、やはりおかしいと考えたC弁護士、直ちに勾留に対する準抗告の準備をするとともに、担当検事に抗議をしました。すると、準抗告の判断が出る前に、検事が被疑者らを釈放したのです。本件の実態としても、店舗で働いていた女性達が自分達の小遣い稼ぎに、AさんやBさんの認識が薄いところで勝手に売春をしていたことが判明し、その後、在宅事件となったバテイに関しては、嫌疑不十分で不起訴となり、風営法違反のみで罰金の処分でおわりました。
このように個人事業主として風俗営業に携わると刑事事件としてもさまざまなリスクを負うことがあります。こうしたリスクが現実化した場合は、この事例でもわかるように、事業に関する法規制のみならず、刑事手続にも精通した弁護士の関与を欠かすことはできません。こうした事態に陥った場合には、少しでも早く刑事事件を専門とする弁護士に相談した方がよいでしょう。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
食中毒騒ぎが起きた場合に会社や経営者は刑事罰を受ける可能性があるの?
【事例】
A社は京都府上京区において、お弁当を製造する店舗を営んでいました。
今月になって、A社が製造するお弁当を食べた消費者数十名が嘔吐や腹痛などの症状を訴えて入院するという事態がSNSを中心に広まりました。
そこで、京都市の保健所がA社に立ち入り検査を行ったところ、A社のお弁当の製造過程に食中毒の原因があったと断定しました。
A社では以前から経費削減のために消費期限を徒過した腐りかけの肉や魚などをお弁当に使用するということが常態化していたということでした。
A社の代表取締役であるBさんは保健所の担当者から刑事事件になる可能性があると言われました。
あわてたBさんは、刑事事件に精通したあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談をしました。
食中毒騒ぎによる会社への深刻な影響
最近某洋菓子による食中毒問題が報道やネット上で大きな問題となっています。
現在ではSNSの発達により誰でも情報発信を行うことができるので、食中毒は大きな社会問題に発展しやすい状況になっています。
飲食業に携わる企業にとっては食中毒騒ぎは会社のイメージに深刻な影響を与えますので、対策に十分に留意する必要があることは大前提になっています。
ところで食中毒が発生した場合には、営業停止などの行政処分や、被害者からの損害賠償請求などの民事事件の問題になるというイメージを多くの方が抱いているのではないでしょうか。
しかしながら食中毒騒ぎが発生した場合にはその原因となった企業や企業の経営者が刑事責任を負う場合もあります。
数年前に大きく問題となった、焼き肉店で生肉を使用した商品による集団食中毒が発生し、それが原因で死亡者も出た事件では、焼き肉店を運営する会社に業務上過失致死傷罪の容疑で家宅捜索が入ったことが大きく報道されています。
その後、同容疑で同社の経営者らが業務上過失致死傷罪の容疑で書類送検されたと報道されました(結果は不起訴だったようです)。
このように、大規模な食中毒事件が発生した場合、刑事事件化して大々的に報道される場合があります。
仮に会社の代表取締役が刑事事件により禁錮以上の刑に処せられた場合には、取締役の地位を失い経営に影響が出ることも予想されます。
また、会社としても食品衛生法違反によって刑事罰を受ける場合が規定されています。
以下では、食中毒騒ぎによって会社や経営者が刑事罰に問われる場合にはどのような場合があるのか、またそれを防止するために、早期にできる対応にはどのようなものがあるのかを解説していきます。
食中毒騒ぎで予想される刑事罰
①食品衛生法違反
食中毒が起きた際に問題となる法律として最初に思い浮かぶのが食品衛生法なのではないでしょうか。
食品衛生法6条には次のような規定があります。
食品衛生法6条
次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
1 腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。
ただし、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。
2 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。
ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
3 病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を損なうおそれがあるもの。
4 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。
本件の事例のケースでは、消費期限の徒過した食品を使用していたということであり、食品衛生法6条1項の規定に違反していることが明らかです。
そして食品衛生法6条に違反する行為をしていた場合には、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に処せられることになります(食品衛生法81条1項1号)。
また法人の業務として違反行為がなされていた場合には、法人に「1億円以下の罰金刑」が科される場合があります(食品衛生法88条1号)。
先ほどの事案でも、消費期限を徒過していた食品を使用することが常態化していたようですから、法人としても食品衛生法違反により刑事罰を受ける可能性があるといえます。
また,刑事罰とは別に行政による処分(指導や違反事例としての公表,各都道府県HPや厚労省HP上で公表される)があり得ます。
食品衛生法についてはこちらのページでも解説しています。
②業務上過失致死傷罪
食中毒が発生した場合には、問題の責任者が業務上過失致死傷罪に問われる場合もあります。
業務上致死傷罪は刑法211条に規定があります。
刑法211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
この刑法211条の前段が、業務上過失致死傷罪と呼ばれる犯罪の規定です(後段は重過失致死傷罪という犯罪です。)。
業務上過失致死傷罪の「過失」とは簡単に言えば、「不注意」と言い換えることができます。
食中毒の事例であれば、食品を扱う者として当然気を付けなければならないことへの注意を怠っていれば過失があると判断されます。
本件の事例であれば、お弁当を製造する業者として消費期限と徒過していない衛生面に問題のない食品を使用することは当然の責務であるといえるので、それを怠っていた場合、過失が認められる可能性は高いといえます。
なお業務上過失致死傷罪に法人を処罰する規定(両罰規定)はないので、同罪により法人が処罰されることはありません。
食中毒騒ぎで刑事事件化を防ぐためには
先ほど見たように会社の管理体制の問題で食中毒騒ぎが起きた場合には、法人や経営陣が刑事罰を受ける可能性があることを説明させていただきました。
その一方で、報道される食中毒事件の多くは営業停止などの行政処分を科されるのみで、刑事事件まで発展していることは少ないように思います。
当然問題の規模や悪質性によるところもあるでしょうが、事後的な対策により刑事事件になるリスクを下げることはできるでしょうか。
以下では食中毒騒ぎが発生した場合に事後的に取りうる対策を紹介させていただきます。
①被害者に対する示談交渉
食中毒問題では、実際に食品を口にした被害者の方がいます。
被害者の方は苦しい食中毒の症状で苦しんでおられますし、最悪の場合死に至るケースもあります。
まずはこの被害者の方に対して、真摯に謝罪をして誠実に被害の賠償を行う必要があります。
謝罪や賠償の交渉を行う場合、当事者が直接行えば感情的になり却ってトラブルを大きくする可能性がありますので第三者である弁護士が間に立って交渉を進めていくことをおすすめします。
仮に賠償の要求があるにもかかわらず、被害者からの連絡を無視するなど誠実な対応を行っていない場合には、悪質性が高いと判断され刑事事件化するリスクが高くなるといえます。
②再発防止策の策定
食中毒騒ぎが確認された場合、まずはこれ以上問題が拡大しないことに全力を注ぐべきです。
問題の責任があることを認めずに、営業停止処分が下されているにもかかわらず営業を継続してしまえば、営業禁止処分の違反として別途食品衛生法違反(営業の禁止)が成立します。
こうなれば刑事罰の対象になるほか、行為の悪質性が高いとして責任者が逮捕されてしまう事態に発展することもあります。
ですのでまずは、科された行政処分には誠実に従ってください。
その上で、再発防止策を企業内で策定し、同様の事態が起こる可能性がないことを理解してもらう必要があります。
このような再犯防止策を策定する際には、内部の人間だけではなく第三者である弁護士も関与することでより客観性のある対策の策定が可能性になります。
以上のように、食中毒騒ぎが発生してしまった場合、問題の鎮静化を図るために早期に弁護士に相談し、対応を依頼することは非常に有用です。
是非早い段階で、刑事事件に精通したあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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【提携団体紹介】技術・情報保護に強い日本カウンターインテリジェンス協会
弊所は一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会との業務上の提携を行っています。
日本カウンターインテリジェンス協会は、企業に対する諜報活動やサイバー攻撃、不正行為等に関する企業の危機意識を醸成し、”公正な社会・安心な社会”を実現するための活動をおこなっています。民間不正調査で多くの不正調査に携わり、企業や”人”の健全性に関するリスクデューデリジェンスや経済安全保障観点でのリスクコンサルティングを行ってきた元捜査官や国際政治学者などの各分野の専門家を擁し、企業実務に即した不正調査やリスクマネジメントに強みがあります
刑事事件の豊富な経験がバックグラウンドにある弊所と,企業の社内調査活動やサイバー攻撃対策に強い日本カウンターインテリジェンス協会が協力し,お互いの経験や知識を活用することで,相乗的により高度な企業犯罪対策,不祥事対応を提供できるものと確信しております。
提携団体リンクhttps://www.japancia.com/※外部サイトへ遷移します。
企業犯罪,不祥事対応,リスクマネジメント体制の構築についてご相談ごとのある方,事業主の方はお気兼ねなくお問い合わせください。

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横領の被害申告
(事例はフィクションです)
雑貨店を経営しているAさんのお店では、レジのお金や商品の在庫の数を整理するための記録をつけておりますが、あまりに業務が多い場合にはついつい記録を忘れてしまったり、どこかで計算ミスが起きてしまったもののどこから間違っているのか解らなかったりする場合もあります。
従業員のBは、商品の売上金1万円を着服していることが解りました。着服の方法は、商品が返品されていないのに返品されたことにして、売上記録を勝手に抹消し、売上金1万円をお客さんに返したことにして実際には自分の財布に入れていたというものです。
Aさんは、とりあえずその1万円は返してもらいましたが、実際にはもっと着服をしているのではないかと疑っています。しかし、レジのお金や商品の在庫の記録が不正確なこともあるので、どうやって過去の着服を突き止めることができるのか、全く解りません。そこで弁護士に相談することを考えています。
この事例をもとに、弁護士が、どのようなサポートをAさんにして差し上げられるか、解説します。
弁護活動の内容
今回の事例のような着服は、よくある方法です。同じような被害にあった経営者の方も少なくないのではないでしょうか。
参考:レジ金窃取事案における窃盗と業務上横領の違いについて
もし、このような相談を受けた場合の対応としては、まずAさんから会社の経理関係の書類を預かって、お金の流れを追っていくことになります。いつからの経理関係書類をお預かりするかは、弁護士とAさんで相談して決めることになるでしょう。
そして、余罪が疑われるポイントを探していくことになります。例えば、異常に返品の数が多いような場合です。また、少なくともこの時期の記録は正確だと言える根拠があれば、在庫の数とレジのお金が合わないと言いやすくなってきます。これら経理関係書類のチェックは、大変に根気のいる作業なので、会計に精通した弁護士と細かく根気強く打合せをしていくことが大事です。
そして一定の証拠が揃った段階で、警察に被害届や告訴状、つまりBさんに対する捜査や処罰を求める書類を提出することになります。一般の方が告訴状を準備するのは一苦労なので、書類の作成技術の高い弁護士に依頼するメリットも大きいです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の強み
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、簿記の資格を有する弁護士はもちろん、会計検査院や検察庁で勤務した経験がある弁護士が在籍しています。また、犯人側の立場から、お金の流れを徹底的に追っていったことが決め手となって、無罪判決を獲得した弁護士も在籍しています。
こういった専門的な弁護士や実績のある弁護士のサポートをご希望の場合には、ぜひ弊所に一度ご相談ください。
ご相談はこちらからも問い合わせ可能です。

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従業員と会社が連帯責任?「両罰規定」を解説
役員や従業員が罪を犯した場合の企業の責任について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
一般論として、企業の役員や重要な従業員であったとしても、罪を犯したのであれば、それはその人個人の責任にとどまります。しかしながら、それが企業の業務として行い、企業にも利益をもたらしているのであれば、企業にも責任を負わせる必要があります。ここでは、役員や従業員が罪を犯した場合の企業の責任について解説します。
両罰規定とは
法人の代表者や使用人が違反行為をしたときは、その行為者を罰するだけでなく、その法人にも罰金刑を科するという規定が見られます。これを「両罰規定」といいます。
例えば、「独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)」では次のように定めています。
独占禁止法
(私的独占、不当な取引制限、事業者団体による競争の実質的制限の罪)
第八十九条
次の各号のいずれかに該当するものは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者
(両罰規定)
第九十五条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
一 第八十九条 五億円以下の罰金刑
このような規定は、独占禁止法のほか、「外国為替及び外国貿易法」のような規制法や「宅地建物取引業法」のような業法など、各種の法律で見られます。
両罰規定はなぜ認められるのか
現代社会の基本である個人主義によれば、個人が罪を犯したのに、その所属する企業まで責任を負わなければならないというのはおかしいと思うかもしれません。
しかしながら、個人が罪を犯したとしても、その個人が企業の役員や従業員で、その企業の業務として行ったのであれば、その犯罪による利益はその企業に入ってくることになります。このような場合に、実際に罪を犯した個人を罰しただけで終わりとなれば、犯罪により利益の帰属した企業を野放しにすることになり、犯罪によって得た利益の回収や刑罰による犯罪の抑止効果は無意味となりかねません。
また、企業は役員や従業員を用いて活動を広げ利益を得ているのですから、これらの者を監督し、第三者に損害を与えないようにする必要があります。したがって、仮に企業から行為者に対し具体的な犯罪の指示がなかったとしても、企業のために役員や従業員が罪を犯したのであれば、企業もその責任の一端を負うべきこととなります。
判例も、企業のこの責任は無過失責任ではなく、両罰規定は過失を推定するものだとしています。
昭和40年3月26日最高裁第二小法廷判決は、「事業主が人である場合の両罰規定については、その代理人、使用人その他の従業者の違反行為に対し、事業主に右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定したものであつて、事業主において右に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もまた刑責を免れ得ないとする法意と解するを相当とすることは、すでに当裁判所屡次の判例(・・・)の説示するところであり、右法意は、本件のように事業主が法人(株式会社)で、行為者が、その代表者でない、従業者である場合にも、当然推及されるべきである」として、憲法に違反するものではないとしました。
役員や従業員が罪を犯したときの対応は
上記の通り、両罰規定は過失を推定するものですから、企業がこの推定を覆せば刑事責任を問われることを防ぐことができます。もっとも、企業に過失がないといえるためには、企業が行為者の選任、監督その他の違反行為を防止するために必要な注意を尽くしたことを証明する必要があります。
日頃から不正をしないよう役員・従業員に言ってきた等では到底注意を尽くしたとはいえません。コンプライアンス体制を整備し、これに従って経営が行われてきたこと、実質のある内部通報制度を構築し運用してきたなど、不正防止に必要な体制を整備しその通りに運用してきたことを示さなければなりません。
企業内の不祥事についてはこちらでも解説をしています。
おわりに
法人が役員や従業員の行った犯罪行為の責任を負わされないようにするには、不正防止に必要な体制を整備し、この体制に従って運用されなければなりません。
不正防止のためのコンプライアンス整備、内部通報窓口の設置・運用など、企業の不正防止にお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。刑事事件について東京支部でのご相談はこちらからもお問い合わせいただけます。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
従業員の薬物所持が疑われる場合の誤った会社の対応
【事例】
Aさんは、もともと警察官をしていましたが、現在は通信事業を営むX社のコンプライアンス部で課長の職に就いています。
ある日、Aさんは、Ⅹ社の従業員であるBさんが、日常的に違法薬物を使っているらしいという噂を耳にしました。
そこで、Aさんは、X社の規定に則り、Bさんに対して聴き取り調査を行うことにしました。
Bさんは聴き取りで、日常的に大麻を使用していた事実を認め、会社にあるBさんの机の引出しに隠して所持していた大麻をAさんに提出しました。
Aさんは、警察官をしていた経験から、Aさんが提出したのが実際に大麻の可能性が高いと考えました。
しかし、Aさんは、X社の株主総会が1月後と間近に迫っていたこともあり、警察に大麻を提出したらX社に捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が入ったり、Bさんが逮捕されたりして、その事実が報道されてしまうのではないかということを心配しました。
そのため、警察への提出は株主総会後にし、それまでは自分が大麻を厳重に保管する方がいいのではないかと、Bさんから提出を受けた大麻を直ぐに警察に提出することを躊躇してしまいました。
Aさんは、X社の上司とも相談して、どのように対応すべきかをあいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです)
Bさんに成立する犯罪
Aさんの見立て通り、Bさんが提出したのが違法な大麻だったとします。
違法な大麻を所持していたBさんは、「大麻を、みだりに、所持」したということになりますから、大麻取締法違反となり、「営利の目的」などがなく、有罪となれば5年以下の懲役という刑罰を受ける可能性があります(大麻取締法24条の2第1項)。
また、一般論としては、大麻取締法違反のように薬物事件が疑われる場合、被疑者(いわゆる容疑者)の捜査は、逮捕などをしてされることが多いといえます。そして、薬物を隠していた場所に対しては、捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われる可能性が高いといえます。
そのため、Aさんが懸念していたとおり、警察がBさんに大麻取締法違反の疑いがあるとして捜査を開始した場合、Bさんが逮捕されたり、X社のBさんの机について捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われたりする可能性は充分にあるでしょう。
どの対応が間違えていたのか?
しかし、Bさんが提出した大麻を、Aさんが保管することには大きな問題があります。
場合によっては、Aさん自身が罪に問われる可能性もあります。
⑴ 大麻取締法違反
まず、元警察官とはいえ、X社の株主総会が終わるまでの期間中、AさんがBさんから提出を受けた大麻を保管・所持して良い理由はありません。そうすると、Bさんから大麻の提出を受けてから、株主総会が終わって警察に提出するまでの約1カ月間、これは大麻の可能性が高いと思いながら、大麻を所持していたわけですから、保管していたAさん自身が大麻取締法違反として捜査を受け、処罰される可能性があります。
大麻の単純所持事案については,弊所解説記事もご覧ください。
⑵ 証拠隠滅罪
少し事情が変わって、Bさんに大麻を売ったCさんが警察に逮捕され、その捜査の過程で大麻を買った人物としてBさんが浮上し、警察からX社に問い合わせがあったとします。
それにもかかわらず、Aさんが何かと理由をつけて、Bさんから提出を受けた大麻を提出しなかったり、隠したりしたとします。
この場合のAさんの行為は、Bさんという「他人の刑事事件に関する」大麻という「証拠を隠滅」したといえますから、証拠隠滅罪に問われる可能性があります(刑法104条)。
従業員が犯罪行為によって逮捕,検挙されてしまった場合の対応についてはこちらもご覧ください。
このように、従業員が不祥事を行い、会社のためと思ってした行為であっても、許されない行為はありますし、場合によっては犯罪に当たってしまう可能性もあります。
そのような事態を回避するためには、刑事事件の視点から対応を考えることも重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、会社内で不祥事が起こった場合の対応・アドバイスにも力を入れています。
会社としての不祥事対応へのアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
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会社内で発生した業務上横領事件への対応 加害者を刑事告訴をするべきですか?
【事例】
X社は製造業を営んでいる会社です。
X社の製造部の部長であるAさんは1年前から、管理を任されていた社内の物品を勝手に持ち出してフリマサイトで売却し金銭を得ていました。
最近になって物品の在庫と実際の数が合わないことに気付いたX社が調査をしたところ、Aさんの横領が発覚しました。
Aさんはこれまで転売により300万円の利益を得たこと、遊興費などでそのお金は費消してしまったこと、被害金額についてはこれから何とか分割して返していくから「刑事告訴だけはやめてほしい」と懇願してきました。
X社の担当者は、今後どのように対応するべきかあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談しました。
(事例はフィクションです)
今回は、上記の事例を用いて、自社で業務上横領事件が発生したことが明らかになった場合の対応についてあいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
刑事告訴について
刑事告訴とは、警察や検察などの捜査機関に対して、刑事事件が発生したことを申告し、事件を捜査し、犯人を処罰することを求めることをいいます。
本件の事例において、刑事告訴をする場合には、「告訴状」をX社の所在する地域を管轄する警察署に提出することが通常です。
告訴状には、犯罪を構成する事実を記載する必要があります。
例えば事例のような業務上横領事件であれば、「いつ」「誰が」「どこで」「何を(時価総額もあれば望ましい)」「どのように横領した」という事実を特定して行うことが通常です。
また告訴の際には後述するように、犯罪が成立したことを立証するための証拠を可能な限り添付することで警察が告訴を受理し動いてくれる可能性が格段に高くなるといえます。
告訴を受理してもらい捜査を円滑に行うためには,事前の調査が重要
刑事告訴が受理された後は、取調べなどの捜査が行われることになります。
事件の内容や証拠の内容によっては加害者が逮捕されるリスクもあります。
事例のケースでは業務上横領による被害金額が100万円を超えているため実刑となる可能性もあるので、被害を立証するだけの証拠があれば逮捕される可能性の高い事件であるといえます。
そして捜査が進んで、最終的には検察官が証拠や加害者の言い分なども確認した上で起訴するか不起訴が決められます。
起訴された事件については裁判所で審理され、判決が出されて、判決が確定すれば刑事事件としては終了になります。
横領事件において刑事告訴をする場合のポイントは何か
個人的な利益の着服や物品の横流しといった横領事件は,企業内での不祥事として最たるものです。
刑事事件のうち,知能犯の中で見ても,詐欺・偽造につぐ認知件数があります。
参考:警察庁令和4年度版統計
①客観的な証拠の収集を行う
刑事告訴して実際に警察が動くためには、被害や犯行を裏付ける客観的な証拠が必要になります。
本件の事例であれば、
・保管していた物品の管理に関する記録
・Aさんが横領したこと及びその日時を裏付ける社内の防犯カメラ映像
・Aさんが被害品を転売したことを示す販売履歴等の記録や入出金履歴
・被害金額の使用に関する履歴
などが客観証拠として考えられます。
実際の被害事例において犯行を基礎づける証拠の判断には,専門的な知識と刑事事件に対する豊富な経験が必要になります。
また証拠は早期に確保しなければ、加害者による隠滅の恐れもあります。
したがって被害が発覚した場合にはなるべく早く、刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
②加害者本人に対する聴き取りを丁寧に行い、書面化しておく
加害者本人からの聴き取りも証拠収集の一環として重要な意味を持ちます。
客観的な証拠だけで立証が不十分な場合には、加害者が認めていることをもって証拠を補完する場合があります。
また事実を認めている場合や、賠償に関して応じる旨の話をしている場合には、それを上申書や誓約書といった形で残しておくことも重要になります。
この場合に、会社の担当者のみで聴き取りや書面の作成の指示を行えば、後から圧力をかけられて、無理やり誤った内容の書面を作成させられたと言われ、トラブルが複雑化する可能性もあります。
第三者の立場である弁護士などの専門家を入れて聴き取り調査を行うことが、トラブルの円満な解決には必要であるといえます。
社内調査活動についてはこちらのページでも解説をしています。
③警察の担当者と綿密に連携する
刑事告訴が受理されたと言ってもそれだけで安心してはいけません。
証拠の収集が不十分であったり、警察の方で優先順位が低くなったりすれば捜査が遅々として進まないこともあります。
弁護士が会社の窓口になって証拠の収集状況や取調べ状況についてこまめに確認し、必要であれば証拠の提出や作成などに協力することで捜査がスムーズに進むことにつながります。
刑事告訴を行うかどうかの判断
刑事告訴を行うことによるメリットには次のようなものが挙げられます。
・加害者に対し捜査機関による厳しい捜査が行われ、証拠の収集も容易になる
・会社の他の従業員に対し示しがつく
・警察が介入したことが加害者に対する圧力になり、賠償をする動機付けになる
その反面刑事告訴を行うことによるデメリットには次のようなものがあります。
・捜査協力をするために、会社が捜索の対象になるなど負担がかかる場合がある
・他の従業員にも事件が知れて話が大きくなるおそれがある
・加害者が逮捕された際に会社の名前が出る可能性がある
・逮捕や実刑判決により加害者の収入の当てがなくなり、却って賠償に支障が出る場合がある
刑事告訴を行うか、加害者への聴取を行った上で当事者間の賠償だけの問題とするのかについては社の方針も含め、以上のメリットとデメリットを慎重に検討し判断する必要があるかと思います。
当然、その判断の前提には証拠を収集し、関係者からの聴き取りを行って被害の全容の把握をすることも重要になります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、豊富な経験を基に綿密に調査を行い、会社にとってどのようにすることが最善なのかアドバイスさせていただくことができます。
業務上横領が発覚した際の対応や事件の調査、またその後の刑事告訴に関する相談は、刑事事件に精通し、企業で起きた刑事事件の対応にも強いあいち刑事事件総合法律事務所に是非ご相談ください。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
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企業役員の私生活上の犯罪
(事例はフィクションです)
大阪に本社を置くZ社の取締役Aさんは、深夜、旅行先の京都市内の路上で、酒に酔って、タクシー運転手Bさんに暴行を加え、怪我を負わせるとともに、タクシーのドアを蹴って凹ませ、臨場した警察官に傷害・器物損壊罪で現行犯逮捕されました。既に、複数のメディアが報道しています。
このような場合、企業としては、どのように対応すべきでしょうか。
私生活上の行為の影響
従業員・役員による不正として、企業活動と関係なく、従業員・役員が私生活上の行為について不正を起こすことがあります。
この場合、必ずしも企業に影響があるとはいえません。
ただし、私生活上の行為であっても、特に企業の幹部従業員や役員による犯罪行為であれば、マスコミも注目し、報道される可能性があります。そして、私生活上の行為といえども、犯罪行為をするような者が重要な役職にいたという事実が明らかになれば、企業の社会的信用が損なわれることは免れず、これを防止するため様々な対応を検討する必要があります。
ここで難しい問題は、従業員・役員が私生活において犯罪行為をした場合には、企業がそれを認識するのは、事例のように逮捕等の捜査活動が端緒となることが通常です。しかも、企業が警察等捜査機関に事実関係の詳細や本人の供述状況等を尋ねたとしても、捜査機関は、捜査上の理由から、これに応じないのが通常であることです。
このように、企業外の犯罪ですから、企業としてできることは限られていますが、その場合でも、企業として適切な対応をとるためには、まずは、できる限り迅速に事実関係を把握する必要があります。本人が身柄を拘束されている場合、情報を入手する手段としては、当該従業員・役員の弁護人、家族等から事情を聞くことが考えられます。
役員や従業員が逮捕された場合についてはこちらのページでも解説しています。
企業側としての対応
マスコミ対応、役職や人事に対する検討はどうすべきでしょうか。
事例のような企業の役員が逮捕された場合、とりわけ上場企業であればマスコミ報道がされる可能性は極めて大きくなります。特に、事例のように、現行犯逮捕された場合には、報道の直後から、複数のマスコミから一斉に取材攻勢に遭うことが予想されます。この場合、企業としては、想定されるマスコミからの質問に対する回答を準備しておく必要があります。基本的には、事件の内容に関する質問に対しては、「捜査中であり、弊社からのコメントは差し控える。」などと回答することになります。
次に、事例のAさんについては、Aさんが、社長、副社長、専務、常務等の役付取締役や代表取締役である場合、これらの役職を解いたり、代表権を剥奪する必要があるかについて検討する必要があります。
また、事例と異なり、Aさんが従業員であった場合には、懲戒等の人事処分を検討する必要があります。仮に、Aさんが、代表権を有する唯一の取締役であり,Aさんが、逮捕のみならず勾留され身体拘束が続いた場合、身体を拘束されている間,Z社の業務執行が事実上停止してしまうことになりかねず、そのような場合、早期に取締役会を開催して、他の取締役に代表権を付与することも検討する必要があるでしょう。
従業員・役員による私生活上の不正行為が発覚した場合、弁護士のサポートがあればスムーズに進みます。マスコミ対応や、不正を行った従業員・役員に対し、責任を追及したい場合等、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。