産地偽装による不正競争防止法違反の事例

産地偽装による不正競争防止法違反で会社が家宅捜索を受けた場合の対応についてあいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】

愛知県にあるうなぎ店が中国や台湾産などのうなぎを三河産と偽って提供したとして、警察の家宅捜索を受けたことがわかりました。店主は産地偽装を認めています。
不正競争防止法違反の疑いで12月20日に警察の家宅捜索を受けたのは、愛知県にあるうなぎ料理店Aです。
警察や店主らによりますとAは店の看板に「三河産」と表示しているにもかかわらず、3年前から一部の料理に中国や台湾産などを使うようになったということです。
店主は、中京テレビの取材に対し偽装を認めた上で、「冬の時期は、出荷量が減るので三河産だけでは追い付かなくなった」などとしその後、三河産以外のものを使っているという掲示をするなどの対応をとったということです。 
(令和5年12月26日 中京テレビニュース「うなぎ店“産地偽装”で家宅捜索 中国や台湾産などのうなぎを三河産と偽って提供」より引用)

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産地偽装をした場合に成立する犯罪について

食品の産地偽装と言われる行為には、報道にあるような外食メニューに使用されている食材の産地を偽装するケース、生鮮食品の産地を偽装するケース、加工食品の原材料の産地を偽装するケースがあります。
そして、問題となるケースによって、不正競争防止法不当景品類及び不当表示防止法食品表示法の各違反行為が問題になります。
今回紹介している事例は不正競争防止法違反が問題になっていますので、以下では今回の事例に沿って不正競争防止法違反で問題になる条文の解説していきます。

今回の事例で問題になっているのは、不正競争防止法2条1項20号であると考えられます。
以下に条文をあげます。

不正競争防止法2条1項20号
商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為

不正競争防止法では上記の行為を「不正競争」として規定しており、これをした者について罰則等の定めがあります。
具体的に事例のような産地偽装行為は、条文上の「商品」の「原産地」について「誤認させる表示をする」場合にあたると考えられます。
実際には外国産のうなぎを使用していたにもかかわらず、うなぎ店の看板に「三河産」と表記すれば当然ながら、お店の利用客は店内のうなぎ料理にはすべて「三河産」のうなぎが使用されていると誤解してしまうためです。

産地偽装による不正競争防止法違反が発覚した場合の手続きの流れ

では次に事例のような食品の産地偽装が発覚した場合に予想される手続きの流れについて解説していきます。
不正競争防止法違反が発覚した場合には民事上の請求と刑事訴追の双方を受ける可能性があります。

民事上の請求

民事上の請求としては①差し止め請求と②損害賠償請求の2通りの可能性があります。
具体的には、差し止め請求については原産地を誤認させる産地偽装という「不正競争」によって、営業上の利益を侵害された・侵害されるおそれがある者は、侵害した・侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止・予防を請求でき(不正競争防止法3条1項)、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止・予防に必要な行為を請求できるとされています(同条2項)。
損害賠償請求については、故意・過失により原産地を誤認させる産地偽装というという「不正競争」を行って他人の営業上の利益を侵害した者の損害賠償責任が定められています(同法4条1項)。
そして、被侵害者が故意・過失のある侵害者に対し損害賠償請求をする場合に、侵害者が侵害行為により利益を受けているときは、その利益の額は、被侵害者が受けた損害の額と推定するとされています(同法5条2項)。

刑事訴追を受ける場合

被害が大きい、偽装の悪質性が高いと思われた場合には事例の場合のように、企業に捜索が入るなど刑事手続きが開始されます。
場合によっては産地偽装を主導した経営者らが逮捕される場合もあります。
逮捕された場合については、早期に弁護士が検察官や裁判官と交渉し釈放を目指す必要があります。
不正競争防止法違反の刑事罰については、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその併科に処すると定められています(同法21条2項1号)。
また、法人については、両罰規定で3億円以下の罰金に処すると定められています(同法22条1項3号)。
起訴された場合については、事実を争う(産地偽装が故意ではなかった等)、ないしはより量刑が軽くなるような弁護活動が求められます。

産地偽装が発覚した場合の対応について

当然ですが企業としては産地偽装の問題が生じないように原材料の管理体制などを整えておくなどの事前の対策が重要です。
しかし産地偽装の問題が明らかになった場合については、原因を明らかにしてしかるべき再発防止策を立てる必要があります。
産地偽装は国民の生活の重要な一部である食に関する問題ですので紹介した事例のように大々的に報道されることもあります。
発覚後の報道対応、刑事訴追される場合の対応など弁護士に依頼するべき必要性は高いといえます。

あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に精通した事務所です。不正競争防止法が問題になった案件も多数扱ってきました。
産地偽装などの不正競争防止法違反が発覚してしまった方や、自社で産地偽装問題がないか調査をされたい方、産地偽装がないように事前の対策を講じたい方は是非一度ご相談ください。
お電話の方は0120-631-881まで,HPからのお問い合わせはこちらからどうぞ。

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