営業秘密の侵害―企業と不正競争防止法

企業の営業秘密が外部からの侵入により奪われたり、退職者が営業秘密を持ち出すことが問題となっています。
先日報道された事案としても,回転ずしの運営会社の社長が転職前の競合他社の食材の原価や仕入れ先に関するデータを持ち出していた事件は社会に衝撃を与えました。
営業秘密の侵害は個人だけでなく企業も責任を負うことになります。ここでは、不正競争について解説します。

営業秘密とはなにか

「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいいます(不正競争防止法第2条第6項)。
まとめますと、以下の3つの用件を備えるものが営業秘密にあたります。
○有用性:当該情報自体が客観的に事業活動に利用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つものであること
○秘密管理性:秘密保有企業の秘密管理意思が、秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保されていること
○非公知性:保有者の管理以外では一般に入手できないこと
参照:経済産業省HP「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」

自社の技術データ、ノウハウ、顧客名簿などが営業秘密に当たります。

営業秘密の侵害とはなにか

不正競争防止法では、「不正競争」と定められている行為がいくつもあります(不正競争防止法第2条第1項第1号から第22号)。営業秘密を侵害する行為は、第4号から第9号に規定されています。
窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為は「営業秘密不正取得行為」とされています(同法第2条第1項第4号)。
営業秘密と知ってて不正に取得したり使用や開示をする場合(同法第2条第1項第4号)だけでなく、営業秘密不正取得行為であることを重大な過失により知らなかったり、後に営業秘密不正取得行為が介在したことを知りながら営業秘密を使用した場合等も「不正競争」に当たります(同法第2条第1項第5号から第9号)。
冒頭の回転ずしの社長の事案は、不正の手段により営業秘密を取得する営業秘密不正取得行為又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(同法第2条第1項第4号)に当たるものと考えられます。

営業秘密侵害に対する罰則

このような営業秘密の侵害には重い刑罰が加えられます。
不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為又は管理侵害行為により、営業秘密を取得した者(同法第21条第1項第1号)、詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者(同項第2号)、営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、①営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体)又は営業秘密が化体された物件を横領する、②営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成する、③営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装する、のいずれかの方法で領得した者(同項第3号)等は、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(同法第21条第1項柱書)。

「詐欺等行為」とは、人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいい、「管理侵害行為」とは、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(パスワード等によりアクセス制限をしているパソコン等に他人のパスワードやIDを使ってアクセスする行為を指します。不正アクセス禁止法第2条第4項)、その他の営業秘密保有者の管理を害する行為をいいます(不正競争防止法第21条第1項第1号)。

日本国外において使用したり開示する等の目的で、詐欺等行為等により営業秘密を取得した場合は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(同法第21条第3項柱書)。日本国外に流出するような場合は、さらに被害が大きくなり、経済安全保障の観点から、罰金額もより大きくなっています。

営業秘密侵害に対する会社の責任

役員や従業員が営業秘密を侵害する行為をした場合、企業も責任を問われます。法人の代表者や従業者等が、法人の業務に関し、違反行為をした場合は、法人も罰金刑を科されます(同法第22条第1項柱書)。日本国外で使用する目的等のため、不正の利益を得る等の目的で、詐欺等行為等により営業秘密を取得する等の場合は、上記のように被害の大きさや経済安全保障の観点から、罰金額は高くなっており、10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。それ以外の営業秘密の取得等の場合は、5億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第2号)。

まとめ

このように、営業秘密を侵害すると、行為者だけでなく企業も大きな責任を負わされます。
営業秘密の侵害ではないかなど不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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