社内調査におけるヒヤリングの留意点③

社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査におけるヒヤリングの意味

社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。

企業で不正行為が行われ、またその疑いがある場合に、事実関係を解明するため、事情を知っている関係者のヒヤリングを実施することは必要不可欠です。

今回は、企業が、不正行為を行った疑いのある社員(嫌疑者)に対するヒヤリングを実施する際の留意点について解説します。

嫌疑者に対するヒヤリングの持つ意味

社内調査は、不正行為の事実関係を解明し、不正を行った者を突き止め、この者に対する各種処分等を通じて、企業が自浄能力を発揮し、新たな体制を整える基礎をつくるために実施されるものです。

したがって、事案に関連する資料の分析や関係者に対するヒヤリング等から不正行為を行った疑いのある社員(嫌疑者)が特定された場合、嫌疑者が最終的に不正を行ったことを自白してくれれば、社内調査の目的はほぼ達成されたといえます。

しかし、前々回でお話ししたように、企業による社内調査では、刑事事件の捜査で認められているような強制的な調査権限が与えられているわけではありませんし、時間的な制約がある場合もありますから、社内調査にはそもそも限界があります。この点が社内調査の難しいところです。

嫌疑者に対するヒヤリングを行う際の留意点

まず最初に、嫌疑者に対するヒヤリングでは、最初は、手の内を見せずに、相手の言うことを否定せずに自由に話をさせることが効果的な場合が多いといえます。
この方法であれば、嫌疑者が真相を語っていない場合、証言に矛盾が出てくることも多く、事後に客観的な証拠と照らし合わせて追及することで自白に導けることがあります。

また、ヒヤリングをする側も結論ありきで話をしないこと、すなわち、思い込みは禁物です。他の証拠から不正行為の事実関係を推測し解明していくことは重要ですが、ヒヤリングの最初から結論ありきで質問した場合、せっかく嫌疑者が正直に真相を語ろうとしているのに、反発心が生じてかえって口を閉ざしてしまうなど、弊害が起きる場合があります。
思い込みが強すぎますと、それに合致する都合のよい証拠しか目に入らなくなるおそれがあり、真相を見誤ることにもなりかねません。

次に、嫌疑者は精神的に非常に不安定になっている場合も多く、嫌疑者を精神的に威圧するなど、精神的に追い込むことはNGです。あくまで冷静に証拠に基づき論理的に自白を導くことが基本です。「素直に認めないとクビにするぞ(あるいは、刑事告訴するぞ)。」などと圧力をかけて供述を引き出すことは企業の社内調査として行ってはいけないことであり、そのような手法によって嫌疑者が仮に自白したとしても証言の信用性に疑義が生じることになります。他方、嫌疑者が虚偽の弁解を繰り返し続ける場合には、虚偽の弁解を続けることは情状が悪くなること、事実関係を正直に話せば懲戒解雇は免れる可能性があることなどを指摘し、正直に供述し事実を認めるよう促すことは必要かつ有効です。

最後に

社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。

事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。

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