SNSでの迷惑行為への企業の対応

飲食店内で容器を舐めるような迷惑行為の様子を撮影してネットに上げるといった事件が続発し、社会問題となっています。このような迷惑行為の存在自体お店のイメージを下げることになりますが、企業が適切に対応していないとして、企業が責められ、社会的信用を失うことになりかねません。さらに、自社の従業員やアルバイトが、調理に使う具材にいたずらをするなどの迷惑行為の様子を撮影してネットに上げる、いわゆるバイトテロをしてしまえば、企業の社会的信用はさらに下がりかねません。

迷惑行為に対して成立する罪

いかに「いたずら」「悪ふざけ」と思っていたとしても,刑罰法令に抵触する場合には犯罪が成立します。
いわゆるバイトテロに対しては,以下のような刑法犯の成立があり得ます。

業務妨害罪

冒頭にあげた迷惑行為については、偽計業務妨害罪(刑法第233条)又は威力業務妨害罪(刑法第234条)が成立する可能性があります。

威力業務妨害罪の「威力を用いて」とは、人の意思を制圧する勢力を用いることをいいます。偽計業務妨害罪の「偽計を用いて」とは、人を欺き、あるいは、人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑したり、計略や策略を用いるなど、「威力」以外の不正な手段を言うとされています。

「威力」と「偽計」のいずれに該当するかを判断するにあたっては、行為の態様又は結果のいずれかが目に見えるものであれば「威力」に、目に見えないものであれば「偽計」になるとするのが一般的です。迷惑行為の様子をネットに上げることで、多くの人の目にさらされ、店舗内でそのような行為が行われているとか、自分が使った容器もそのようにされているのではないかと多くの人が不安に陥り意思が制圧されるといえます。したがって、「威力を用いて」に該当すると考えられます。

そして、迷惑行為がネットに上げられると、ネットで情報がさらに拡散し、利用者が不安に思って店に来なくなる可能性があります。また、調味料の容器を舐められたのであれば店内のすべての容器を入れ替えなければならないなど、迷惑行為に関係する備品を撤去するなどの対応が必要となり、通常の業務さえもできなくなります。これは業務の円滑かつ平穏な遂行そのものを妨害する行為であり、「業務を妨害した」といえます。

偽計業務妨害罪,威力業務妨害罪に対しては3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。

器物損壊罪

迷惑行為に当たり、容器に手を付けるようなことをすれば、器物損壊罪(刑法第261条)が成立する可能性があります。
「他人の物を損壊」とは、物の効用を害することとされています。飲食店の容器を舐めるなどすれば、その容器はもはや客に提供することができなくなります。これは物の効用を害するに当たるといえ、器物損壊罪に該当する可能性があります。

器物損壊罪に対しては3年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。

迷惑行為への対応

迷惑行為が行われても、インターネットのような多くの人々が目にする場所に上げる手段がない時代であれば、迷惑行為をした者に個別に対応すれば済みました。しかしながら、多くの人々の目にさらされる現在では、適切とされる対応を取らなければ、企業自身が加害者かのように扱われかねません。

加害者への対応

加害者に対する企業の対応としては、民事責任の追及として、加害者への不法行為に基づく損害賠償請求が考えられます(民法第709条)。
加害者が未成年者(18歳に満たない者。第4条)で自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった場合、監督義務者である保護者に請求することになります(民法第712条・第714条第1項)。

ただし、これは12歳前後までの年齢で問題になることであり、高校生などアルバイトをするような年齢では自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとされることはまずありません。監督義務者に請求できない場合、本人に請求することになります。

損害については、不法行為と因果関係があるものについて認められます。例えば、容器を舐められたのであれば、店内のすべての容器を取り換えたり、消毒するなどの対策をする費用が生じます。このような、加害者の行為により生じた費用については損害といえ、損害賠償請求をすることが可能です。

一方で、このような加害者の行為により株価が下がり、企業が大きな打撃を受けたなどしばしば主張されます。しかしながら、企業の株価は市場の状況など様々な要素の影響を受けます。加害者の行為が原因で株価が下がりそれによりどれだけの損害が生じたかを証明するのは難しいでしょう。
企業としては、民事責任のほか、刑事責任を追及するため、威力業務妨害罪や器物損壊罪などで被害届や告訴をすることが考えられます。

社会への対応

迷惑行為により、社会の人々も、その企業の店舗を利用しても安全なのか不信感を抱いてしまいます。時宜にかなった広報や会見を行うことにより、この不安を解消する必要があります。とくにネット上では犯人に重い代償を払わせるべきだという声が大きくなりがちですが、前述のようにそのようなことはできないこともあります。企業としては、自社が行った対応やその理由について丁寧に説明し、一人でも多くの人々の納得できるようにするべきです。

まとめ

このように、SNSでの迷惑行為については、企業は様々な事情を考慮して対応していく必要があります。
SNSでの迷惑行為について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

keyboard_arrow_up

0359890893 問い合わせバナー 無料相談・初回接見の流れ