施術所の開設手続き③

【事例】
Aさんは、一念発起して、自宅のある奈良県天理市内で、資格を取得して鍼灸整骨院を開業しようと考えました。
Aさんは、鍼灸整骨院を開業するのには資格がいるというのは分かっていましたし、資格取得のために通い始めた学校も卒業が近付いてきました。
また、患者として鍼灸整骨院に通っていた経験から、健康保険も使える場面もあるようだということも知っていました。
しかし、具体的にどのような手続きをする必要があるのかまでは分かっていませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、鍼灸整骨院を開業するにあたって、必要となる届出などについて解説してきました。

今回は届出や構造設備に関する規律を担保するための罰則規定や立ち入り調査等に関する規定についてみていきます。

2 届出や設備を整えなかった場合の罰則規定

前回までの記事でも解説しましたが、柔道整復師については柔道整復師法が、はり師やきゅう師についてはあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下では、各資格の頭文字をとって「あはき法」といいます。)が、業務に関する規律を規定しています。
そして、それらの規律を担保するために、違反した場合に課される刑事罰についても定めています。

⑴ 無免許、免許の不正取得

まず、柔道整復師でもないのに、「業として柔道整復」を行った場合(医師である場合は除きます。)、50万円以下の罰金に処されます(柔道整復師法29条1項1号)。
また、「虚偽又は不正の事実に基づいて」柔道整復師の免許を受けた場合も同様に処罰されます(柔道整復師法29条1項3号)。

はり師やきゅう師でもないのに、業としてはりやきゅうをした場合も(こちらも意思である場合は除きます。)、50万円以下の罰金に処されます(あはき法13条の7第1項1号)。
また、「虚偽又は不正の事実に基づいて」はり師やきゅう師の免許を受けた場合も同様に処罰されます(あはき法13条の7第1項2号)。

⑵ 届出の懈怠、虚偽の届出

また、施術所を開設したのに10日以内にその届出をしなかった場合や、施術所の休止や廃止をしたのに10日以内にその届出をしなかった場合は、30万円以下の罰金に処されます(柔道整復師については柔道整復師法30条6号、19条1項、2項。はり師やきゅう師についてはあはき法13条の8第5号、9条の2第1項、2項。)。
それぞれの届出の際に、虚偽の届出をした場合も同様に処罰されます。

しかも、この処罰規定は、違反をした個人に対してだけではなく、法人に対しても適用されます(柔道整復師法32条、あはき法14条)。

例えば、複数の柔道整復師やはり師、きゅう師を雇い、会社として施術所を運営していた場合に、その代表者が虚偽の届出をしていたことから、柔道整復師法やあはき法で処罰されるとします。
このような場合に、法人の代表者だけではなく、施術所を運営している会社も処罰されることがあるのです。

続いて、都道府県知事による報告聴取、立入検査、行政命令などの規定についてみていきます。

3 報告及び検査

柔道整復師については柔道整復師法が、はり師やきゅう師についてはあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下では、各資格の頭文字をとって「あはき法」といいます。)が、業務に関する規律を規定しています。
それぞれの法律では、それらの規律を担保するための規定、都道府県知事の権限を定めた規定についても定めています。

⑴ 報告・検査

まず、都道府県知事は、必要があれば、施術所の開設者や柔道整復師、はり師、きゅう師といった人々に、必要な報告を求めることができます(柔道整復師法21条1項、あはき法10条1項)。
万が一、求められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、それだけで30万円以下の罰金に処されることになります(柔道整復師法30条7号、あはき法13条の8第6号)。

また、職員に施術所の立入検査をさせることもできます(柔道整復師法21条、あはき法10条1項)。
万が一、この検査を拒んだり、妨げたり、忌避したりした場合にも、それだけで30万円以下の罰金に処されることになります(柔道整復師法30条7号、あはき法13条の8第6号)。

⑵ 行政命令

都道府県知事が報告を求めたり、立入検査をしたりした結果、施術所の構造設備が法律の基準(柔道整復師法20条1項、あはき法9条の5第1項)に適合していなかったり、法律で求められている衛生上の措置(柔道整復師法20条2項、あはき法9条の5第2項)が講じられていなかったりしたとします。
この場合には、期間を定めて、施術所の使用制限や使用禁止といったことを命令することもできますし、施術所の構造設備を改善するように命令したり、衛生上の措置を講じるように命令したりすることもできます(柔道整復師法22条、あはき法11条2項)。

万が一、この命令に違反した場合にも、30万円以下の罰金に処されることがあります(柔道整復師法30条4号、あはき法13条の8第7号)。

⑶ 両罰規定

報告や立入検査に関する刑事罰についても、行政命令の違反に関する刑事罰についても、両罰規定が定められています(柔道整復師法32条、あはき法14条)。
両罰規定というのは、違反した個人だけではなく、法人も処罰することができる規定です。

今回は、柔道整復師法やあはき法の規律を担保するための規定のうち、都道府県知事による報告聴取、立入検査、行政命令などの規定について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

まとめ

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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