(事例)この事例はフィクションです。
Aさんは、医療機器メーカーの修理部門の部長をしています。Aさんの会社では、営業が機械を顧客に販売し、機械が故障した場合にAさんが部長をしている修理部門で修理をすることになります。
Aさんはある日、特別背任の疑いで捜査を受けることとなりました。警察は、修理代金を不当に安く設定して修理を請け負い続け、会社に莫大な損害を与えたというのです。そして、会社の経理関係資料をみると、確かに莫大な損害が出ています。
会社に損害を与えるつもりなど全くなかったAさんは、どう対応するのが良いか、弁護士に相談することとしました。
以上の事例を基に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、どのような聴取を行い、サポートしていくか、特別背任という犯罪の説明を交えて解説します。
背任とはどのような犯罪か
まず背任はどのような犯罪なのか,ざっくりいうと、本人(依頼者)のためにならないと知りながら、依頼者から任された任務の内容に反する行動をして、依頼者に損害を与えたときに成立します。特別背任は、この背任行為を社長や部長など一定の地位の高い人がした場合に成立します。
今回のケースでいうと、Aさんは、会社という依頼者から修理業務を引き受けて、営業活動をすることで利益を出すことを任されているわけです。
そのAさんが不当に安く修理を請け負うことは任務の内容に反することになります。その結果、莫大な損害を依頼者である会社に与えています。しかもAさんは、部長という高い役職にあります。そのためAさんには、不当に安く修理を請け負うことで会社に損害を与えたという特別背任の容疑をかけられているわけです。
しかし、特別背任が成立するためには、「依頼者のためにならないと知りながら」という要件(実際の刑法や会社法ではもっと難しい文言を使っていますが、ここでは簡単な書き方にしています。)があります。Aさんは、ここを否定することができれば、特別背任の罪を免れることができます。したがって、Aさんから相談を受けた弁護士は、この点について詳しく話を聞いていくことになります。
では、「依頼者のためにならないと知りながら」という要件に関わる事実はどのようなものでしょうか。
そもそも会社に損害を与える行為自体が会社のためにならないことは明らかです。したがって、Aさんは、不当に安く修理を請け負って会社に莫大な損害を与えてしまった以上、会社のためにならないことが解っていたはずだといわれかねません。
しかし、Aさんは、「会社に損害を与えるつもりなどなかった」と言っているので、なぜそう思うのか確認する必要があります。
例えばAさんが次のような説明をしたとすればどうでしょうか。「うちの会社では、修理部門が修理をしますが、修理に必要な部品にかかった費用などは経理部門という別の部門で管理しています。実は、経理部門の部長がとてもパワハラ体質の人で、せっかく入社した人がすぐやめてしまうということがここ最近たくさんありました。経理がそのような状況だったので、計算に漏れがあって困っているという愚痴を営業の部長や課長がこぼしていました。私が安すぎる価格で修理をしてしまったのも経理部門のゴタゴタのせいかもしれません。」
このような話が出てくると、確かにAさんは不当に安く修理を請け負ってしまったけれども、経理部門のミスで安すぎることに気づかなかった、だから「会社のためにならないと解っていながら」修理を請け負ったことなどありません、と主張できるようになります。
もちろん今回紹介した事例は、フィクションなので、これほど簡単にはいかないことの方が多いでしょう。会社の組織、経理、業界の専門知識などいろいろな知識が必要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、簿記の資格を有する弁護士はもちろん、経理関係の業務や会社運営の顧問に精通した弁護士が在籍しており、一定のクオリティを持ったアドバイスをさせていただきます。
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