企業内部での犯罪は、被害者が実害・被害感情を被るだけでなく、従業員の安心感も損ない、職場への帰属意識を失い、不信感を抱くことになりかねません。また、事件が報道され、被疑者の実名だけでなく所属企業名まで出されてしまうと、起業まで信用を失いかねません。ここでは、企業内で起きうる犯罪について解説します。
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窃盗
企業の備品だけでなく、従業員個人の荷物が被害品となることもあります。
窃盗罪が成立すると、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(刑法第235条)。
更衣室内のロッカーや共有スペースなどで起きると、犯人の特定が困難となります。また、これが取り締まられずにいると、やっても問題ない、バレないと思われ、他の者までこうした行為を行いかねません。これは職場内全体のモラルの低下を招き、従業員の安心感や企業への帰属意識を崩壊させかねません。
盗撮
社内のトイレの個室や、更衣室のロッカーで行われることが多いですが、皆がいる執務室でデスクの下にカメラを仕掛けている場合などもあります。スマートフォンなどで直接撮影するほか、スマートフォンやカメラを仕掛けて撮影する場合もあります。
盗撮は、多くが「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」の性的姿態等撮影罪(同法第2条第1項)に該当し、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されます。スマートフォンを差し向けたりカメラを仕掛けたが撮影できなかった場合は、未遂罪となります(同条第2項)。この法律違反には該当しなかったとしても、都道府県の迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。東京都の迷惑防止条例違反となった場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第8条第2項第1号第5条第1項第2号)。他の道府県の迷惑防止条例でも同様の規定が設けられています。
更衣室内のロッカーやトイレなどで行われた場合、建造物侵入となり、その建物の管理者(店長などがあたります)も被害者となります。建造物侵入罪が成立した場合、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます(刑法第130条)。この場合、建造物侵入罪が犯罪の手段となり性的姿態等撮影罪等が結果となる関係にある場合が多く、このような場合は牽連犯といって、重い刑により処断されます(刑法第54条第1項)。
盗撮が発覚したときには既に被害者が複数にのぼっていることも多々あります。逮捕した直近の事件では被害者が特定されていることが多いでしょうが、それ以前のものとなると画像があっても被害者が特定できず、立件できない場合もあります。
横領
企業の金銭を勝手に費消することが考えられます。金銭を占有、つまり金銭を管理する権限がある場合は業務上横領罪(刑法第253条)が成立しますが、権限がない場合は窃盗(刑法第235条)など別の種類の犯罪に該当します。
発覚した段階では、被害金額が数千万円に達している場合もあります。また、横領は決算書類の改ざんなどにより行われますが、他の従業員が気付ける状況にもかかわらず放置されている様を見て、他の従業員も手を付け始めることも多々あります。このような状況が放置されれば、横領が蔓延し、職場のモラルは崩壊してしまいます。
被害が莫大だと報道され、企業内統治が崩壊しているとみなされ、企業の社会的信用が低下するおそれもあります。
まとめ
上記の違法行為を完全に防ぐことは容易ではありません。しかし、各項で述べたように、このような犯罪が行われることを放置していれば、更なる犯罪を招き、経済的損失だけでなく、従業員のモラルや企業への帰属感も損なわれ、企業統治が崩壊しかねません。
企業内部でも監視カメラの導入を検討するほか、書類チェックなどを厳として行い、コンプライアンスを高めていく必要があります。
企業内の犯罪防止、コンプライアンス向上についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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