福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
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虐待事実を把握することの意味
虐待を受けたとされる本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。その際、当然のことですが、加害者の職員等への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。今回は、施設が、虐待行為を行った疑いのある職員(嫌疑者)に対する聴き取りを実施する際の留意点などについて解説します。
嫌疑者に対する聴き取りの持つ意味
例えば通報をしてきて職員に対する聴き取り等から虐待行為を行った疑いのある職員(嫌疑者)が特定された場合、その職員が最終的に虐待を行ったことを自ら認めてくれれば、虐待の有無の調査の目的はほぼ達成されたといえます。
しかしながら、施設による調査では、刑事事件の捜査で認められているような強制的な調査権限が与えられているわけではありませんし、時間的な制約がある場合もありますから、施設による調査にはそもそも限界があります。この点が施設による調査の難しいところです。
嫌疑者に対する聴き取りを行う際の留意点
まず最初に、嫌疑者に対する聴き取りでは、最初は、手の内を見せずに、相手の言うことを否定せずに自由に話をさせることが効果的な場合が多いといえます。この方法であれば、嫌疑者が真相を語っていない場合、証言に矛盾が出てくることも多く、事後に防犯カメラ映像等客観的な証拠と照らし合わせて追及することで虐待行為を認めるように導けることがあります。
また、聴き取りを実施する側も結論ありきで話をしないこと、すなわち、思い込みは禁物です。他の証拠から虐待行為の事実関係を推測し解明していくことは重要ですが、聴き取りの最初から結論ありきで質問した場合、せっかく嫌疑者が正直に真相を語ろうとしているのに、反発心が生じてかえって口を閉ざしてしまうなど、弊害が起きる場合があります。また、思い込みが強すぎますと、それに合致する都合のよい証拠しか目に入らなくなるおそれがあり、真相を見誤ることにもなりかねません。
また、嫌疑者が虚偽の弁解を繰り返し続ける場合には、虚偽の弁解を続けることは情状が悪くなること、事実関係を正直に話せば懲戒解雇は免れる可能性があることなどを指摘し、正直に供述し事実を認めるよう促すことは必要かつ有効です。
施設利用者に対する聴き取り
そのほか、実際に虐待行為を受けている可能性のある施設利用者からの聴き取りも重要です。聴き取りを実施する場合、当該利用者の身体に実際に痣等の外傷がないかなどを慎重に確認した上、いつ、どこで、誰から、どのような虐待行為を受けたのかひとつひとつ意識しながら聴き取りを実施する必要があります。
弊所には犯罪被害支援部門も設置されており,被害対応についても並行してご依頼頂けます。
最後に
施設内で事実確認の調査をする際には、人証(関係者への聴き取りなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、担当の責任者と一緒に進めていくのがベストといえます。
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