福祉施設の職員による虐待事案について④

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回の解説記事はこちら。

取調べを受ける場合の注意点はこちら。

虐待事実を把握することの意味

虐待を受けたとされる本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。その際、当然のことですが、加害者の職員等への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。今回は、施設が事実確認の調査を行う際の留意点について解説します。

職員への聴き取り

まずは、職員への聴き取りです。
この点、職員への聴き取りは、大きく分けて2種類に分けられます。虐待を行なったとされる職員本人への聴き取りと同人以外の職員に対する聴き取りです。
この聴き取りについては、誰に確認するか、また確認する順番について慎重に検討する必要があります。
すなわち、いまだ虐待の事実は明確でない時点で、虐待を行ったとされる職員以外の職員に対する聴き取りを広く行い過ぎると、虐待を行ったと疑われている職員が職場にいづらくなったり、口裏を合わせて虐待の事実を隠蔽しようとするなどの事態が発生する可能性があるからです。したがって、虐待を行ったとされる職員以外の職員の場合、例えば通報をしてきた職員がいる場合は、まずはその職員から聴き取りを行い、他には、目撃者といった中立的な立場の者等、少数の信頼できる職員に限って行うことが重要です。

次に、聴き取りにおいては、通報者がいればその者から開始し、次いで中立的な立場の者、利害関係者の順番で行い、最後に虐待を行った疑いのある者に対して行うのが通常のパターンといえます。
聴き取りを実施することで、調査を行っていることが、聴き取りの対象には知られますので、早い段階で虐待を行った疑いのある者について聴き取りを行うと、その者による関係者への働きかけなど、証拠隠滅工作が行われてしまうリスクが大きくなってしまいます。

聴き取りは、密行的に、かつ、短期間に集中して行う

また、既に虐待行為の案件が大きく報道されているような事案は別ですが、聴き取りは密行的に、かつ、短期間に集中して行う必要があります。聴き取りが施設内で表立って実施されれば、施設内部で、虐待行為の犯人捜しが始まるなど相互不信が生じ、関係者の協力が得られなくなる可能性があります。また、実施する期間が長引くほど、虐待行為の実行者による罪証隠滅工作が行われるリスクが大きくなってしまいます。

次回は、虐待行為を行った疑いのある職員や施設利用者に対する聴き取りなどについて、別個に取り上げて解説します。

最後に

施設内で事実確認の調査をする際には、人証(関係者への聴き取りなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、担当の責任者と一緒に進めていくのがベストといえます。

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