福祉施設の職員による虐待事案について③

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

施設職員による虐待発生時、施設が負うリスク

市町村は虐待の通報を受けると当該施設に対して必要な調査を行います。そして、施設に対し虐待が判明すると改善を求める行政指導を行います。指導を行ったにもかかわらず、改善がみられない場合には、法令に基づき改善命令が下されたり、最悪指定取り消しという厳しい行政処分が下される可能性があります。加えて事件が報道されることによって、施設の信用が損なわれてしまうというリスクもあります。

施設職員による虐待が発生した場合における施設の対応

たとえば、施設内で職員から高齢者に対する虐待行為が行われている可能性がることが判明した場合、施設側は今後どのように対応すべきでしょうか。

① 施設内での聞き取り調査及び記録

高齢者本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。
その後、聴き取りが可能な場合には被害者である高齢者本人、加害者の職員、その他の職員への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。その際、被害者に外傷が見られた場合には、写真を撮影させていただくなど証拠の保全に努めるべきです。
また、施設内で調査を行った場合、調査を行った経緯や結果については記録として残しておくことが必要です。

② 市町村に対する通報

高齢者虐待防止法は、養介護施設従業者等に対して、自らが業務に従事する養介護施設又は養介護事業において、高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています(法21条1項)。
ここで注意すべきことは、施設内における聴き取り調査の結果、確実に虐待があったと判断できる場合だけでなく、「虐待を受けたと思われる」時点、すなわち虐待の疑いが払しょくできない場合であっても速やかに通報しなければならないとされている点です。
虐待の事実を隠蔽した場合、後からその事実が発覚してしまうと、行政処分の判断が厳しくなるなど、結局、施設側にとってかえって不利になってしまいます。虐待の隠蔽は絶対に避けるべきでしょう。
次回は、虐待事実の把握の仕方、すなわち、虐待の有無の調査の仕方について掘り下げて解説します。

最後に

施設内で虐待行為が行われている可能性が判明した場合には、調査によって虐待の有無を明確にすること、事実関係を正確に認定することが極めて重要です。しかしながら、施設自らが事実確認の調査を行うことは簡単なことではありません。事実確認の調査を行い、事実関係を正確に認定するには、事実関係の調査について豊富な経験を持つ弁護士が行うことが適任といえます。

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