企業が産業廃棄物を不法投棄するとどのような処分を受けるのか

【事例】

茨城県内で産業廃棄物約2トンを捨てたとして、茨城県警が1日、同県A市の70歳代の男2人を廃棄物処理法違反(不法投棄)容疑で逮捕したことが、捜査関係者への取材で分かった。 県内では近年、山中への大量投棄ではなく、平地の田畑などに少量の産廃を捨て去る手口が横行しており、県や県警が「ゲリラ的不法投棄」と呼んで警戒を強めていた。

(読売新聞オンライン 令和5年6月1日「田畑や駐車場に突然がれきの山が…産業廃棄物物の「ゲリラ投棄」で70代の男2人を逮捕」より引用)

廃棄物処理法について

事例のような不法投棄については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下通称である「廃棄物処理法」といいます。)で規制されています。
廃棄物処理法における廃棄物には大きく分けて産業廃棄物と一般廃棄物があり、両者の区別は環境に対する影響の大きさの違いから量刑上重要な意味を持ちます。

区別は以下の通りです。

●産業廃棄物
事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、その他政令で定める廃棄物に加え、輸入された廃棄物と携帯廃棄物。

●一般廃棄物
産業廃棄物以外の廃棄物。

そして廃棄物を不法に投棄した場合については刑事罰が定められており、法定刑は「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」です(廃棄物処理法16条、25条1項14号)。
また、廃棄物処理法には両罰規定があるので法人が不法投棄をしていた場合には、法人にも罰金刑が科されます。 法定刑は「3億円以下の罰金」です(廃棄物処理法26条6号)。

企業が不法投棄をしていた場合に負う責任

1 刑事上の責任

上記のように不法投棄をした場合には刑事罰が定められており、捜査を受けて刑事罰を受ける可能性があります。 不法投棄の態様や、行政指導に対する対応が悪質であると判断された場合には、不法投棄を主導した者が逮捕されるケースもあります。

態様が悪質と判断されるケースとしては複数回投棄をしていること、有毒物質を出すなど廃棄物が周辺の環境に与える影響が大きいこと、複数回行政指導を受けているにもかかわらずそれを無視しているなどの事情があるケースが考えられます。

そして刑事罰については初犯であれば罰金刑となるケースが多いですが、先述した悪質性が高い事案や廃棄物の量が1トンを超えるようなケースでは正式起訴されて執行猶予付きの判決を受けるケースや実刑判決を受けるケースもあります。

刑事処分の軽減のためには捜査段階から悪質性が高くない事情や原状回復を行っているなどの有利に働く事情を主張していく必要があります。 仮に執行猶予付きであれ経営者が懲役刑を受けることは、役員資格を失う、代表者名義で取得している行政上の許認可の取消事由になるなど企業の経営に与える影響が大きいことが考えられます。

2 民事上の責任

民事上の責任としては、不法投棄をした場所が私有地である場合にはその所有者から、公有地である場合については公共団体から損害賠償請求をされる可能性があります。

損害賠償の主な内容としては不法投棄がされた場所の原状回復費用になります。 先述したように原状回復の有無は刑事処分の判断においても重視されるので、被害者が明らかになった場合は早期に賠償や示談の交渉を始めることが望ましいといえます。

企業として不法投棄に対する事前の対策と発生後の対応について

1 事前の対策

事前の対策として特に建設業や解体業など多くの廃棄物が出ることが予想される業種については事前の対策を検討してもよいかもしれません。 社員や関連業者に対する指導やコンプライアンス対策を徹底し自社が関係することろで不法投棄が発生しないように対策することが求められます。

2 事後の対応

不法投棄の発覚については、いきなり警察が介入する場合だけでなく、行政側からの指導が入るケースもあります。 もし不法投棄について行政側からの指導が入った場合については原状回復など適切な対応を行って調査に対して再犯防止策を取っていることなどを説明するなど適切な対応をすることで刑事事件となり刑罰を受けることを避けられる可能性もあります。

仮に刑事事件化して、企業の経営者が逮捕された場合については早期に身柄解放するべく検察官や裁判官と交渉する必要があります。一度起訴されれば刑事処分を受けることになるので身柄解放だけでなく刑事処分に対する検察官に対する交渉も早期に始める必要があります。

刑事処分を受けるとしてもより経営への影響の少ない罰金刑でとどまるように、原状回復や再犯防止策の徹底など有利な事情を集め主張していく必要があります。

最後に

あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件、少年事件を数多く扱ってきており廃棄物処理法違反事件でも不起訴や正式裁判の回避(略式罰金)など被疑者の方にとって有利な処分を獲得した経験もございます。

また企業の経営の面でも、企業ホームチームがコンプライアンス対策や再犯防止策の策定など不法投棄事案の発生の防止や再犯防止の徹底をサポートさせていただきます。 今後の再犯防止策の徹底は刑事処分でより有利な判断を得るためにも有利な事情になります。 不法投棄などの廃棄物処理法違反事件についてご心配な方は、まずはあいち刑事事件総合法律事務所の無料相談(専用ダイヤル03−5989−0893)をご利用ください。

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