【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
このページの目次
1 はじめに
前回の記事では、契約の基本的な原則、ルールについてみてきました。
今回は、契約の成立時期について深掘りしていきます。
2 成立時期
まず、契約はいつ成立するのかをみていきましょう。
この点について、民法では「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定しています(民法第522条第1項)。
いくら情報化、電子化が進んでいるとはいえ、未だに書類を郵送で取り交して契約を締結する場合もあります。それでは、この場合、「承諾」をしたとされるのはいつになるでしょうか。
答えは、「承諾」するという意思表示が相手のもとに到達したときです(民法第97条第1項)。
つまり、郵便で回答するのであれば、その郵便が相手のもとに届いたときになります。
そして、このように郵便がいつ相手のもとに届いたのかというのは重要な意味を持つことになりますから、確かな到達の時点を記録に残しておく必要があります。
書留郵便などを活用すれば、相手方にいつ到達したのかという記録を残すことができます。
3 契約書の作成日と締結日
契約書には作成日を記入することが一般的です。
しかし、上記2のとおり、契約は承諾の段階で成立することになります。
例えば、ある製品を月に100個製造するという契約が当事者間で合意できたのが、5月1日だとします。そして、納期の都合上、製造は翌2日から始めましたが、契約書に当事者双方がサインできたのは5月10日だとします。
この場合、契約書には何日の日付を記入すべきでしょうか。
5月10日を記入するのでは、2日から9日までの製造については契約の効力が及ばないのではないかと考えて、1日と記入したいと考えるかもしれません。
しかし、契約書作成日を実際の日付よりも遡らせるのは、事実と異なる記載をすることになりますので、望ましいとはいえません。
この場合は、作成日は10日としたうえで、「作成日にかからわず、〇年5月1日から遡及的に適用するものとする」などといった条項を契約書の中に盛り込むのが望ましいといえます。
今回は、契約の成立時期やその点に関する契約書の記載における注意点について解説しました。
この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたい等といったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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