不正競争防止法(ふせいきょうそうぼうしほう)は、事業者同士の公正な競争を守るための法律です。
中小企業の中にはこの法律を十分に知らずに、知らないうちに違反行為をしてしまったり、被害を受けても適切に対応できなかったりするケースも見られます。
しかし、自社の大切な情報やブランドを守り、競争上の不利益を避けるために、中小企業の経営者が知っておくべきポイントが数多く含まれています。
本記事では、営業秘密の保護、不正な商品表示、営業妨害行為といった不正競争防止法の注意すべき規定について、それぞれ具体例とインシデント予防のための施策を交えて分かりやすく解説します。
このページの目次
不正競争防止法の概要
不正競争防止法では、事業者間の不公正な競争行為をいくつかの類型に分けて禁止しています。
例えば、他社の有名ブランド名やロゴを無断で使い、自社の商品なのにあたかも相手の会社の商品であるかのように見せかける行為があります。
また、地域ブランドやキャッチフレーズなど著名な表示を勝手に使用することも問題です。
さらに、他社の商品パッケージやデザインをそっくり真似て似た商品を販売するといった行為も該当します。
そのほか、自社の秘密情報を盗み出したり、根拠のない悪い噂を流して競合他社の信用を落とすような行為も禁止されています。
これらに違反すると、損害賠償請求を受けたり刑事罰が科されたりする可能性があるため注意が必要です。
この法律によりこうした不正を防止し、公正な市場競争を維持することで、中小企業の正当な努力やブランド価値が守られることが期待されています。
事例
(フィクションです)
小さな食品メーカーA社は、地元で長年かけて開発した秘伝のレシピを武器に人気商品を販売していました。
しかし退職した社員がこのレシピを競合のB社に漏洩し、B社は非常によく似た商品をA社より安価で発売します。
さらにB社はその商品のパッケージデザインもA社の商品に酷似させ、「本場○○産」と実際とは異なる表示を行い、自社製品のほうが優れていると宣伝しました。
この結果、多くの消費者が両社の商品を混同してしまい、A社は売上だけでなくブランドの信用も大きく損なう打撃を受けました。
当然ながら、これらB社の行為は不正競争防止法に違反する疑いがあり、A社は差止めや損害賠償請求などの法的措置も視野に入れて検討しています。
営業秘密の保護
営業秘密とは、公に知られておらず、企業が秘密として管理することで競争上の価値を持つ重要な情報を指します。
例えば、製造上のノウハウや秘伝のレシピ、顧客リスト、新商品開発の計画、価格設定の戦略など、外部に知られていない自社の重要情報が該当します。
不正競争防止法では、こうした他社の営業秘密を窃盗や不正な入手によって取得したり、無断で使用・開示したりする行為を禁止しています。
営業秘密の侵害は特に悪質とみなされ、他の違反行為より重い罰則(最大で10年の懲役や2000万円の罰金)が科される場合もあります。
予防策として、秘密情報はアクセスできる人を限定し、重要データにはパスワードや権限設定を設けて厳重に管理しましょう。
さらに、従業員と秘密保持契約(NDA)を締結し、定期的に情報管理の教育を行うことで、内部からの漏えいリスクを減らすことができます。
不正な商品表示
商品の産地や品質などについて、事実と異なる表示をして消費者を誤解させる行為です。
例えば、海外産の原料を使っているにも関わらず「国産」「地元名産」と偽る表示や、他社のブランド名に紛らわしい名称で商品を販売するケースが挙げられます。
こうした虚偽表示は、消費者だけでなく正直に営業する他社にも損害を与えるため、不正競争防止法で禁止されています。
当然、偽装が発覚すれば企業の信用は失墜し、行政からの指導や罰則の対象にもなりかねません。
防止策として、商品パッケージや広告に記載する内容は必ず事実に即したものにしましょう。
また、表示に誤りや紛らわしい点がないか、社内で複数人が確認する仕組みを設け、定期的に見直すことも大切です。
営業妨害行為
競合他社の信用をおとしめるために虚偽の情報を流すような行為です。
例えば、競争相手の商品に欠陥があるという根拠のない噂を広めたり、インターネット上で匿名で悪評を書き込んだりするケースが該当します。
このような信用毀損行為は禁止されており、発覚すれば法的な責任を問われる可能性があります。
場合によっては損害賠償だけでなく刑事上の罰則(罰金刑など)が科されることもあるため注意が必要です。
自社としては、社員に対して競合他社を誹謗中傷しないよう教育を徹底することが必要です。
また、自社がこうした被害に遭った場合には、証拠を保全した上で専門家に相談し、情報の削除要請や差止め請求など適切な対応策を検討しましょう。
その他の不正競争行為
上記以外にも様々な行為が不正競争防止法で禁止されています。
例えば、他社の商品と混同されるような名称やロゴを意図的に使う行為や、有名ブランドの名前を無断で含むインターネットのドメイン名を取得して高額で売りつけようとする行為があります。
そのほか、契約者など特定の相手にだけ提供される業務データを不正に入手し利用する行為(限定提供データの不正取得)や、製品発売直後にその独特なデザインを模倣した商品を販売する行為なども挙げられます。
これらはいずれも公正な競争秩序を乱すものとして規制されており、違反すれば民事・刑事の追及を受ける可能性があります。
自社が加担しないのはもちろん、万一被害に遭った場合には、証拠を確保したうえで早めに法的対応を検討することが必要です。
最後に
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中小企業の皆様が安心して事業に専念できるよう、法的リスクの未然防止と問題発生時の解決に尽力いたします。
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