コンプライアンス体制の構築⑥

【事例】
Aさんは、佐賀県唐津市で水産加工業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、インターネットでの通販を利用して自社の水産加工品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社の直売所での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そのため、インターネット通販のサイトを開設する必要もあると考えていますし、購入された水産加工品を安全に消費者に届けなければいけませんし、消費者への輸送手段も確保せねばなりません。
また、事業拡大のために、銀行から融資も受けなければなりません。
このような山積する課題に対応する一環として、Ⅹ社では法務部を新設することになり、Aさんがそこの責任者となりました。
Aさんが法務部の責任者として最初に会社から指示された仕事は、X社のコンプライアンス体制を構築することでした。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんでした。
また、X社にはこれまで顧問として付いてもらっていた弁護士もいません。
そこで、Aさんは、Ⅹ社のコンプライアンス体制を構築するにあたって、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。

1 はじめに

以前の記事で、法的リスクを細分化して分類することの必要性や、仮にリスクと考えていた自体が実際に起きてしまった場合に、どのように責任を取る必要が生じるのかについて解説してきました。

今回は、不祥事を予防するために必要なことについて考えていきます。

2 組織が変わる必要があること

以前の記事で、コンプライアンス違反の陥りやすい状況について解説していますが、そこからも分かるように、企業風土に根ざしている場合も少なくありません。
不祥事を予防するためには、一部門に任せきりにするのではなく、自社の組織体制を様々な角度から見直し、企業が全体として取り組んでいくことが必要です。

3 予防策のポイント

必要なことの1つ目は、原因の究明です。

これは、事態を起こした個人を特定したり、その個人の責任を追及したりするということではありません。
人の責任を追及するだけでは、どうしても場当たり的な対応になってしまい、適切な予防策を見出すことは難しくなります。
不祥事の再発を防止するという視点からは、個人に注目するのではなく、起きた出来事に注目することが必要です。

2つ目は、企業風土の見直しです。
いわばソフト面を整えるということです。

例えば、企業内の常識と一般常識が乖離している場合、その乖離を是正していくことが必要です。

東洋オンライン 日本の大問題「風土が劣化した、重い組織」5大症状

また、不祥事の隠蔽は最悪の対策の1つです。不祥事を隠すと、発覚した場合の被害は大きくなるばかりですし、改善の機会もなくなってしまいます。責任を問われることをおそれて不祥事を隠すことがないようにしなければなりません。
このような点からすると、組織外に対しても、組織内に対しても、組織は開かれたものに見直す必要があります。

組織外という意味では、組織の行動指針などを社会に公表できるようなものにすれば、それは企業内の常識と一般常識の乖離がない状態でしょう。
また、組織内という意味では、不祥事が起きた場合に現場から経営層に報告が上がるようにする必要があります。

3つ目は、再発防止体制の構築です。
これはいわばハード面を整えるということです。
企業内部の監査体制を構築して不祥事に繋がる事態を察知したり、不祥事が発覚した場合の報告窓口を整備したりすることなどが重要になっていきます。

今回は、不祥事の予防策について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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