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○はじめに
訪問販売は消費者に直接アプローチできる有効な販売手法ですが、その反面、不適切な勧誘行為によるトラブルも起こりやすいため法律で厳しく規制されています。
とりわけ特定商取引法は、訪問販売での悪質な勧誘を禁止し、違反した事業者には行政処分や刑事罰が科される仕組みを整えています。万一法令に違反すれば、業務停止命令などで事業の継続自体が困難になるリスクだけでなく、罰金や懲役刑といった刑罰もあります。
本記事では、前回の記事の後編として,特定商取引法違反事件が企業に対する影響などについて深堀します。
○違反が企業経営に与える影響
特定商取引法に違反すると、単に罰金などを払えば済むという問題ではなく、企業経営に深刻なダメージが及びます。以下に、違反発覚・処分による主な影響をまとめます。
•信用の低下とブランド毀損: 違反により社名公表や報道がなされると、顧客や取引先からの信用は一気に失われます。悪質商法で摘発された会社というレッテルが貼られれば、将来的に新規顧客を獲得することはもちろん、既存顧客との信頼関係維持も難しくなるでしょう。企業の評判(レピュテーション)を回復するには長い時間と努力が必要です。
•営業活動の停止・縮小: 業務停止命令が出れば、その期間中は該当する事業活動を行えず売上が途絶えます。例えば訪問販売事業の3か月停止を命じられれば、その間の売上機会はゼロになり、固定費だけがかかる厳しい状況に陥ります。停止命令まではいかなくとも行政からの指示で営業手法の全面見直しを迫られれば、一時的に勧誘活動を自粛せざるを得ず、事業規模の縮小は避けられません。特に訪問販売一本で収益を上げている中小企業には死活問題となります。
•経営層・従業員への影響: 違反の内容次第では、代表者や担当社員が逮捕・起訴されて刑事裁判を受けることになります。経営トップが拘束・起訴されれば企業運営は滞り、最悪の場合そのまま廃業に至ることも考えられます。また従業員にとっても、自社が悪徳商法で摘発された事実は士気の低下や離職につながりかねません。優秀な人材の流出や採用難にも直結します。違反による内部への打撃は計り知れません。
•金銭的損失: 刑事罰として科される罰金の支払い(法人に科される場合は最大数億円規模)や、行政処分に対応するためのコンサル費用・謝罪広告費用など、多額の支出を強いられる可能性があります。さらに、違反行為で得た売上はクーリングオフや契約取消しで返金対応が必要となり、被害者から損害賠償請求を受けることもあります。結果として企業財務に深刻な悪影響が及び、資金繰りが悪化して倒産リスクすら高まります。
このように、特定商取引法違反は企業の信用・業績・存続に直結する重大リスクです。一度違反を犯してしまうと、その後の事業継続にまで暗い影を落とすことになるため、「法律に触れなければ儲かるからやってしまえ」という発想は極めて危険です。短期的な売上よりも長期的な信用維持を優先し、法令順守を徹底することが健全な経営には不可欠と言えるでしょう。
○訪問販売事業者のコンプライアンス対応策
では、そうした違反リスクを回避し健全な訪問販売を行うために、企業はどのようなコンプライアンス対策を講じるべきでしょうか。以下に具体的な対応策を示します。
•社内教育の徹底: 営業担当者や訪問スタッフに対し、特定商取引法のルールや消費者保護の理念を定期的に教育しましょう。新人研修で法律知識を教え込むのはもちろん、定期的に勉強会を開催したり、違反事例を共有して注意喚起を行ったりします。「知らなかった」では済まされないことを全社員に認識させ、法律を守った正しい営業活動の重要性を周知徹底することが大切です。
•社内ルール・マニュアルの整備: 法律で求められる遵守事項(勧誘前の氏名等明示、再勧誘禁止、書面交付義務など)や禁止行為を網羅した営業マニュアルを作成し、実務に落とし込みます。勧誘のステップごとに「ここで必ず事業者名を告げる」「契約が成立したら〇〇を書面で渡す」等、具体的な手順とNG事項を明文化しておきます。また、クレーム発生時の報告フローなども定め、現場でマニュアルを常に参照できるようにします。明確なルールがあれば、万一現場社員が独断で逸脱行為をしてしまった場合でも「会社として違反を防ぐ体制を取っていた」ことの証明になり、企業の責任を軽減する助けにもなります。
•契約書類やトークスクリプトの点検: 現在使用している契約書や申込書、パンフレット、そして営業トークの台本などをチェックし、法定事項の記載漏れや誤記載がないか、虚偽・誇大な表現が紛れ込んでいないかを確認します。特定商取引法で定められた契約書記載事項(氏名・価格・支払方法・クーリングオフ告知など)を満たしていない書面を使っていると、それだけで違反になります。必要に応じて専門家のレビューを受け、書類やトークの内容が適法かつ消費者に誤解を与えないものに改善しましょう。
•勧誘現場のモニタリングと苦情対応: 訪問販売の現場を不定期にチェックし、法律遵守が守られているか監督します。例えば上司や管理者が営業に同行して様子を見る、顧客アンケートで営業員の対応を評価してもらうなどの方法があります。不適切な勧誘の兆候があれば早期に是正指導を行います。また消費者からクレームがあった場合は内容を精査し、違反行為が疑われれば速やかに原因究明と再発防止策を講じます。内部通報制度を整備して社員からの違法行為の申告を受け付けることも有効です。
•最新法令情報の入手と専門家への相談: 特定商取引法は改正も行われていますので、消費者庁や経済産業省から発表される情報を収集し最新の規制動向に対応しましょう。例えば訪問販売の適用除外や電子書面交付の要件など、逐次アップデートがされる可能性があります。自社だけで判断が難しい場合は弁護士などの専門家に相談してアドバイスを仰ぐことも大切です。法律のプロにチェックしてもらうことで、グレーな勧誘手法に踏み込んでいないか客観的な評価を得られます。違反の予防には専門家の知見も積極的に活用しましょう。
以上のような対策を講じ、“「攻めの営業」より「守りの体制」”をまず固めることが、長期的に見れば事業の安定と信頼獲得につながります。コンプライアンスを軽視した営業はリスクが高すぎるため、経営者自ら陣頭指揮を執って法令遵守の企業風土を築くのがよいでしょう。
○弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所によるサポート
特定商取引法に関するリスク対応について不安がある企業や、残念ながら違反行為を指摘されてしまった事業者の方は、早めに法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、企業の刑事事件やコンプライアンス支援を扱う法律事務所であり、特定商取引法を含めた特別法違反の刑事事件に関する豊富な知見と実績を有しています。
当事務所では、訪問販売や通信販売など特定商取引法が関係するビジネスを営む企業に対し、法令遵守のためのアドバイスや社内体制整備のサポートを提供しています。具体的には、貴社の契約書類や勧誘マニュアルが法律の要件を満たしているかをチェックし、必要な修正点を提案いたします。また、営業担当者向けのコンプライアンス研修の実施、万が一トラブルが発生した際の社内調査の支援なども可能です。顧問契約による継続サポートによって、定期的に取引内容の適法性を確認しリスクを未然に防ぐ体制構築をお手伝いいたします。
もし既に行政処分の予兆があったり、捜査機関から事情聴取や突然の家宅捜索を受けてしまった場合には、速やかにご連絡ください。当事務所は刑事事件の経験豊富な弁護士が揃っており、特定商取引法違反の事案にも対応した経験があります。違反の疑いをかけられた段階から弁護活動を開始し、取調べへの対応方法のアドバイスや証拠の精査、問題となった契約の相手方との示談交渉など適切な対策を講じます。代表者や社員が逮捕・起訴されてしまった後でも、勾留や接見禁止の解除に向けた働きかけや、公判での情状弁護に全力を尽くし、身体拘束からの早期の解放や不起訴処分、執行猶予判決の獲得など被疑者・被告人のための弁護活動を展開します。企業としてのダメージを最小限に抑えるためにも、初動から弁護士のサポートを受けることが重要です。
当事務所へのご相談は初回無料で承っており、電話やウェブ面談にも対応しています。特定商取引法の適用範囲に自社の営業が該当するか判断に迷っている経営者の方、あるいは違反を指摘されお困りの方は、お一人で悩まずにぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。私たちは全国に拠点を持ち、迅速かつ丁寧に対応いたします。法令順守と企業防衛に向けた法律の専門家として、皆様の事業が安心・安全に継続できるよう全力でサポートいたします。
以上、訪問販売における特定商取引法違反の刑罰リスクについて解説しました。健全な事業運営のためには法律遵守が不可欠であり、違反した際の代償は企業にとってあまりにも大きいものです。本記事の内容を踏まえ、ぜひ適切なコンプライアンス体制を整えていただければ幸いです。万一トラブルに直面した際には早めに専門家に相談し、被害の拡大を防ぐようにしてください。法を守った誠実な訪問販売で、消費者から信頼される健全なビジネスを築いていきましょう。
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