第三者委員会について①

第三者委員会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも第三者委員会とは何か

日本弁護士連合会が2010年7月15日に公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(同年12月17日改定。以下「ガイドライン」という。)では、第三者委員会について、「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」と定義しています。

どういう場合に、企業は、第三者委員会を設置すべきなのか

企業で不祥事が発生した場合、第三者委員会を設置するか否かは、各企業の判断であり、また、不祥事が発生した場合に、必ず何らかの調査委員会を設置しなければならないわけでもありません。どのような不祥事が発生した場合に第三者委員会を設置すべきなのか、その基準についてガイドラインには何ら述べられていません。

もっとも、そのほか、第三者委員会について述べるものとして、日本取引所自主規制法人が2016年2月24日に公表した「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」(以下「プリンシプル」という。)があり、それによると、以下の5つの場面において、調査の客観性・中立性・専門性を確保するため、第三者委員会の設置が有力な選択肢となるとしています。

・内部統制の有効性に相当の疑義が生じている場合

・経営陣の信頼性に相当の疑義が生じている場合

・当該企業の企業価値の毀損度合いが大きい場合

・複雑な事案である場合

・社会的影響が重大な事案である場合

第三者委員会は、企業内部の経営者や従業員などを中心に構成した内部調査委員会と異なり、企業とは利害関係を持たない企業とは独立した委員のみをもって構成されます。そのため、内部調査委員会よりも独立性・中立性を確保しやすく、調査の客観性を担保できることがメリットとしてあげられます。

その一方、プリンシプルは、「第三者委員会という形式をもって、安易で不十分な調査に、客観性・中立性の装いを持たせるような事態を招かないように留意する。」と述べており、いわゆる「名ばかり第三者委員会」とならないよう釘を刺していることにも注意が必要です。

ステークホルダーとは、取引先、株主、従業員、顧客等、企業と利害関係にある者全般を指す言葉ですが、不祥事に関心を示すステークホルダーが多く、不祥事の内容がマスコミを通じて大々的に報道されているような事例では、企業が自ら調査を行う内部調査委員会の調査では信用されない危険性があります。このような事例では、調査に透明性を確保すべく、第三者委員会を設置することが望ましいといえるでしょう。

第三者委員会について、この続きは今後の記事で解説していきます。

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