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企業役員の私生活上の犯罪
(事例はフィクションです)
大阪に本社を置くZ社の取締役Aさんは、深夜、旅行先の京都市内の路上で、酒に酔って、タクシー運転手Bさんに暴行を加え、怪我を負わせるとともに、タクシーのドアを蹴って凹ませ、臨場した警察官に傷害・器物損壊罪で現行犯逮捕されました。既に、複数のメディアが報道しています。
このような場合、企業としては、どのように対応すべきでしょうか。
私生活上の行為の影響
従業員・役員による不正として、企業活動と関係なく、従業員・役員が私生活上の行為について不正を起こすことがあります。
この場合、必ずしも企業に影響があるとはいえません。
ただし、私生活上の行為であっても、特に企業の幹部従業員や役員による犯罪行為であれば、マスコミも注目し、報道される可能性があります。そして、私生活上の行為といえども、犯罪行為をするような者が重要な役職にいたという事実が明らかになれば、企業の社会的信用が損なわれることは免れず、これを防止するため様々な対応を検討する必要があります。
ここで難しい問題は、従業員・役員が私生活において犯罪行為をした場合には、企業がそれを認識するのは、事例のように逮捕等の捜査活動が端緒となることが通常です。しかも、企業が警察等捜査機関に事実関係の詳細や本人の供述状況等を尋ねたとしても、捜査機関は、捜査上の理由から、これに応じないのが通常であることです。
このように、企業外の犯罪ですから、企業としてできることは限られていますが、その場合でも、企業として適切な対応をとるためには、まずは、できる限り迅速に事実関係を把握する必要があります。本人が身柄を拘束されている場合、情報を入手する手段としては、当該従業員・役員の弁護人、家族等から事情を聞くことが考えられます。
役員や従業員が逮捕された場合についてはこちらのページでも解説しています。
企業側としての対応
マスコミ対応、役職や人事に対する検討はどうすべきでしょうか。
事例のような企業の役員が逮捕された場合、とりわけ上場企業であればマスコミ報道がされる可能性は極めて大きくなります。特に、事例のように、現行犯逮捕された場合には、報道の直後から、複数のマスコミから一斉に取材攻勢に遭うことが予想されます。この場合、企業としては、想定されるマスコミからの質問に対する回答を準備しておく必要があります。基本的には、事件の内容に関する質問に対しては、「捜査中であり、弊社からのコメントは差し控える。」などと回答することになります。
次に、事例のAさんについては、Aさんが、社長、副社長、専務、常務等の役付取締役や代表取締役である場合、これらの役職を解いたり、代表権を剥奪する必要があるかについて検討する必要があります。
また、事例と異なり、Aさんが従業員であった場合には、懲戒等の人事処分を検討する必要があります。仮に、Aさんが、代表権を有する唯一の取締役であり,Aさんが、逮捕のみならず勾留され身体拘束が続いた場合、身体を拘束されている間,Z社の業務執行が事実上停止してしまうことになりかねず、そのような場合、早期に取締役会を開催して、他の取締役に代表権を付与することも検討する必要があるでしょう。
従業員・役員による私生活上の不正行為が発覚した場合、弁護士のサポートがあればスムーズに進みます。マスコミ対応や、不正を行った従業員・役員に対し、責任を追及したい場合等、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。
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