楽天・Amazonの違反事例から学ぶ景品表示法のポイント

近年、景品表示法に基づいた規制,取締は厳しさを増しています。2024年度には消費者庁による調査件数が前年度の約2倍、指導件数は約4倍に急増しました。特に2024年には、根拠のない「No.1」表示に対する行政処分が次々に行われ、虚偽・誇大な広告表示への取り締まりが一段と強化されています。こうした摘発強化は企業経営に大きな影響を及ぼし、違反が判明すれば措置命令や課徴金といった行政処分だけでなく、社名公表による信用失墜や売上減少など重大なリスクを招きます。本記事では、中小企業の経営者や法務担当者の方々に向けて、楽天市場やAmazonといったECプラットフォーム上での表示に関して、2024年に行政処分を受けた具体的な事例を踏まえながら、企業が遵守すべき景品表示法の要点を解説します。

1. 景品表示法とは

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者に誤認を与える表示や過大な景品提供を禁止し、消費者の正しい選択と公正な競争を守るための法律です。具体的には、商品の品質・性能などを実際以上に良いと誤認させる表示(優良誤認)や、価格や取引条件を実際より有利だと誤認させる表示(有利誤認)を不当表示として禁じています。また、違反した事業者には消費者庁が措置命令や課徴金納付命令を発出する権限を有します。

2. 事例(2024年の行政処分例)

2024年にはECサイト上での表示に関し景品表示法違反による措置命令を受けた事例がいくつも報告されています。例えば2024年12月、楽天市場上で海外安全基準適合をうたう自転車用ヘルメットを販売していた3社が、実際には基準未達の製品に「CE認証済み」と表示した優良誤認表示により措置命令を受けました(景表法5条1号違反)。

引用 自転車用ヘルメットの安全性で不当表示

また、通販サイト上で架空の高値を「通常価格」と見せかけて割引率を誇張する二重価格表示も問題となっており、過去にはAmazonで「参考価格9720円(90%オフ)」と表示した事例が実態なき価格設定として景表法違反に認定されています。こうした虚偽・誇大な表示に対し、消費者庁は積極的に行政処分を行っています。

3. 優良誤認表示とは

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質・規格・性能などについて、実際よりも著しく優れていると誤認させる表示をいいます。根拠のない効能を謳った健康食品の広告や、自社製品が競合品より優秀だと事実と反して宣伝する行為が典型例です。なお、客観的な裏付けなく「No.1」と称する表示も優良誤認に当たり得る表現として注意が必要で、2024年にはこうした表示への措置命令が相次ぎました。

優良誤認表示は景品表示法第5条第1号で禁止されており、このような表示を行えば措置命令や課徴金納付命令の対象となります。

4. 有利誤認表示とは

有利誤認表示とは、商品の価格や取引条件などについて、実際よりも著しく有利であると誤認させる表示をいいます。たとえば実態のない割引率を謳ったセール広告、常態化しているのに「期間限定」と銘打つキャンペーン、付かない特典をあるように見せる宣伝などが該当します。消費者に過大な「お得感」を抱かせる不当表示であり、景品表示法第5条第2号で明確に禁止されています。これも違反すれば優良誤認の場合と同様、措置命令や課徴金納付命令の対象となります。

5. 二重価格表示の違法性と実例

二重価格表示とは、商品に現在の販売価格と比較対象となる別の価格を併記し、値引きの大きさを訴求する表示手法です。しかし比較対象として示す「通常価格」等に実態がない場合、一般消費者に販売価格が安いと誤認させる有利誤認表示に該当し、行政処分の対象となります。

例えば、ある家具通販サイトでは「通常価格:¥25,190」を取り消し線付きで掲示し、その下に「¥18,590」とセール価格を表示していましたが、実際にはその「通常価格」で直近販売された実績がなく、あたかも大幅値下げしているように見せていたため有利誤認と判断されています。このような不当な二重価格表示に対しては、消費者庁は措置命令や課徴金納付命令を発令し、厳正に対処しています。

6. 企業がとるべきコンプライアンス対応

企業は以下のポイントを徹底し、景品表示法違反のリスクを防止しましょう。

  • 表示内容の事前チェック:広告表示の事実関係や根拠を十分に確認し、誇張や曖昧な表現を避けます。「No.1」など最上級表現は根拠なく使わず、用いる場合もデータや出典を明示します。
  • 適正な価格表示:セールや割引の宣伝では比較対象価格の販売実績を確認し、適正な二重価格表示を行います。「期間限定」「○名様限定」などの宣伝文句も実態に即した期間・数量で用い、終了後は表示を直ちに改めましょう。
  • ステルスマーケティングの禁止:SNSや口コミを利用した宣伝では、必ず「PR」「広告」など広告であることを明示し、広告であることを隠す行為は禁止です。
  • プラットフォーム規約の遵守:Amazonなど主要ECでも景表法順守の規約が強化されています。各プラットフォームのガイドラインを確認し、遵守しましょう。

参考 インフルエンサー広告についての解説

7. 事務所紹介

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、企業の不祥事対応に特化したコンプライアンス専門チームを有し、景品表示法案件にも豊富な知見と対応実績があります。違反が疑われる段階での早期相談から、消費者庁への報告対応、再発防止策の策定、社内研修の実施まで、企業側に寄り添った法的支援を一貫して提供いたします。万一、悪質な事案で刑事責任が問われる場合でも、刑事事件に強い当事務所のノウハウを活かし、リスクを最小限に抑える対応が可能です。景品表示法に関するお悩みは、ぜひ当事務所までご相談ください。

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