景品表示法,医事法違反で制裁も?インフルエンサー広告の落とし穴

※生成AIによるイメージ

はじめに

近年、SNS上のインフルエンサー広告を取り巻く法規制が急速に強化されています。2023年10月には「ステルスマーケティング規制」が施行され、広告であることを隠した宣伝行為が正式に行政処分の対象となりました。実際に2024年には美容サプリやスキンケア商品の広告で違法な効能をうたったケースが報道され、企業が炎上・摘発される事例が相次いでいます。広告担当者にとって、これまで以上に法的リスクへの備えが不可欠な時代となっています。

1. 薬機法と景品表示法が規制する広告表現とは

薬機法(医薬品医療機器等法)は、医薬品や化粧品などの広告において、効果・効能に関する虚偽や誇大な表現を禁止しています。例えば、医薬品でないサプリメントを「あたかも病気の予防や治療ができる」かのように宣伝することは薬機法違反となります。一方、景品表示法は商品の品質や効果について消費者を誤認させる表示を禁止する法律です。根拠のない「世界一」「絶対○○できる」といった断定的な表現や、実際以上に優良に見せかける広告表示は景品表示法の規制対象となります。これらの法律は、消費者が正しい情報に基づいて商品を選択できるよう、企業に対し適切な広告表現を求めています。

2. 事例(2024年のインフルエンサー広告炎上・摘発事例)

2024年にはインフルエンサー広告に関連した違反事例が次々と明るみに出ました。例えば、大手製薬会社がアンチエイジング効果をうたうサプリメントの宣伝でインフルエンサーを起用し、投稿を自社サイトに転載する際に「PR」明記を怠ったため、消費者庁から景品表示法違反で再発防止の措置命令を受けています。
参考 消費者庁の公告
このケースでは、広告であることを隠したステルスマーケティングが問題視され、健康食品分野では新規制後初のステマ認定となりました。

また、医療機関では来院者に対し「Googleレビューで星5投稿」を条件に治療費を割引する行為が発覚し、2024年6月にステマ規制違反で措置命令が下されています。
参考 消費者庁の公告 
これらの事例は、企業にとってインフルエンサーやSNSを利用した宣伝に潜む法的リスクの現実を突きつけています。

3. ステルスマーケティング規制の要点と広告主の義務

ステルスマーケティング規制とは、企業が関与した宣伝であるにもかかわらず広告であると分からないように見せかける表示を、不当表示として取り締まるもの。日本では2023年10月1日から景品表示法の運用基準が見直され、ステマが正式に規制対象に位置付けられました。

具体的には、「事業者による広告であるにも関わらず第三者の中立的意見と誤認される表示」が違法とされ、行政処分の対象となります。広告主には、自社が依頼したインフルエンサー投稿やレビュー記事に「#PR」「広告」等の表示を明示させる義務があります。規制開始後は、既存の投稿も表示が残っていれば対象となるため、過去の宣伝についても広告主は点検と是正が求められます。

広告表示の透明性確保は企業の責務であり、「広告であることを隠さない」ことが信頼維持の前提条件になったといえます。

4. インフルエンサー・広告代理店・企業の法的責任の所在

インフルエンサー広告における法的責任は、広告主・制作者から発信者まで幅広い関係者に及びます。薬機法では「何人も」違反広告をしてはならないと規定されており、広告に関与した個人も処罰対象です。実際、2021年には個人アフィリエイターが自身のサイトで違法な効能をうたい書類送検された例もあり、この事案は商品が数個しか売れていなくとも摘発され得ることを示唆しています。

景品表示法についても2023年改正により、違法表示に広告主と共同で関与した広告代理店やインフルエンサーも罰則対象となりました。つまり、企業が依頼したインスタグラムPR投稿であっても、違反表現があれば投稿者本人も含め広告主も法的責任を問われる可能性があります。このため広告主はインフルエンサーや代理店任せにせず、事前に表現内容をチェックし指導を徹底する必要があります。法規違反があれば企業・代理店・起用したインフルエンサー全てが社会的・法的な責任を負う時代となったのです。

5. よくある違反表現とそのリスク解説

美容・健康商材の広告では、効果を強調するあまり違反となる表現を使ってしまいがちです。

典型例として、

・「このサプリを飲めば必ず痩せる

・「このクリームを塗ればニキビが治る

といった断定的・万能感のある謳い文句はNG表現です。

こうした表現は薬機法・景品表示法に抵触し、行政から措置命令(違法表示の停止や再発防止の命令)を受けるリスクがあります。

措置命令を受けると企業名公表や広告差し止めが行われ、従わない場合は2年以下の懲役や3百万円以下の罰金(法人は最大3億円)といった刑事罰に発展しかねません。

また、法律違反まではいかなくとも「嘘っぽい宣伝」と受け取られればSNSで批判が拡散し炎上しやすく、ブランドイメージの毀損や販売停止に追い込まれる危険もあります。Amazonや楽天などのECサイトでは,虚偽広告をした事業主に対する制裁として出品や出店の停止の措置をとることもあります。

根拠のない誇張表現は一時的な集客効果よりも大きな損失を招くリスクがあることを肝に銘じる必要があります。

6. 法的チェック体制の構築と広告審査のポイント

企業がインフルエンサーやSNSでのPR施策を安全に運用するには、万全の内部チェック体制を築くことが重要です。まず、社内で薬機法・景表法に関するガイドラインを策定し、どんな表現がNGかをマーケティング担当者やインフルエンサーに周知徹底しましょう。

投稿内容やLP(ランディングページ)は事前に法務担当者や専門家によるチェックを行い、根拠のない表現や誤認のおそれがないか確認します。自社で対応が難しい場合は、薬機法に詳しい弁護士やコンサルタントに定期的に監修を依頼するのも有効です。

また、アフィリエイト広告やインフルエンサー投稿については媒体管理を徹底し、報酬目当ての過剰表現が行われていないかモニタリングする必要があります。報酬提供時には「PR表示を必須にする」「禁句リストを共有する」などのルールを契約書に明記し、遵守状況を確認しましょう。

さらに、万一問題が発覚した際の対応フローも決めておくことで、迅速な投稿削除や再発防止策の実施が可能になります。法律知識のアップデートと社内教育の継続により、違法表現の未然防止と万全なリスク管理体制を構築することができます。

インフルエンサー広告の法令遵守に不安がある企業様は、ぜひ専門家への相談をご検討ください。当事務所(弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所)は刑事事件を専門とし、薬機法違反や景表法違反などの特別法違反事件にも対応実績があります。

広告表現の事前チェックや表示改善のアドバイスはもちろん、万が一行政から調査や措置命令を受けた際には法的対応を全面サポートいたします。また、インフルエンサー契約や広告代理店との取引に関するリーガルチェック、社内研修によるコンプライアンス体制強化支援なども行っています。

不安や疑問がございましたら一人で抱え込まず、違反の未然防止からトラブル対応まで経験豊富な弁護士にご相談ください。企業が安心してマーケティングに取り組めるよう、法的側面から全力で支援いたします。

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