前回の記事では、司法取引の概要と対象となる犯罪について解説させていただきました。
会社経営を行う上で密接に関連する法令のほとんどが司法取引の対象犯罪になることをご理解いただけたかと思います。
そのため刑事事件の当事者となった場合には、司法取引を実施するかについて検討しなければならないことも予想されます。
今回の記事では、司法取引の手続きの流れやその対応について解説させていただきます。
このページの目次
1 司法取引の流れ
日本で導入される司法取引の概要については前回の記事で解説させていただいた通りです。
改めて説明しますと、被疑者・被告人と検察官が、一定の犯罪について、弁護人の同意があることを条件として、被疑者・被告人が他人の刑事事件の解明に協力するのと引き換えに、検察官が被疑者・被告人の事件について有利な取扱いをすることなどを合意する制度です。
前提として対象者に対して弁護人が選任されていて、弁護人の同意があることが条件になっています。
司法取引の流れは大まかにいえば,
①弁護人(被疑者・被告人)または検察官からの協議の申し入れ
②三者による協議
③司法取引(合意)の成立
というものになります。
最も重要なのは、言わずもがなですが②でどのような内容の協議をして、どのような内容の合意をするかになります。
2 協議の内容
協議の内容についてはすべてが法律上規定されているわけではありません。
協議の内容には、たとえば、被疑者・被告人による協力行為の内容の提示、検察官による被疑者・被告人からの聴取、検察官による処分の軽減等の内容の提示などが行われるものと考えられます 。
具体的には、当該事件での取り調べを受けている際に、捜査機関としてこの事件の主犯を起訴したいから証言に協力してほしいというような打診があった場合に、どの範囲で供述の協力をするのかその見返りとしてどの程度の刑の軽減を求めるかなどが協議の内容になります。
会社の経営者から公務員に対して賄賂を渡していたという贈収賄事件を例にしてその対応について解説をさせていただきます。
仮にこの容疑が事実であるとして、双方が黙秘しているというケースでは、会社への悪影響を最小限にとどめるために、経営者の弁護人として罪を積極的に認め、司法取引の打診をすることが考えられます。
賄賂を贈った事実を認め公判での供述に協力することを約束する代わりに、経営者側は起訴しないように求める協議を持ち掛けることが協議の申し入れの一例です。
仮に合意が成立すれば、会社の経営者が起訴されて会社の名誉が毀損されるリスクを避けることができるかもしれません。
3 司法取引が問題になるケースについては
司法取引が問題になるケースについては刑事事件に精通した弁護士に依頼することをお勧めします
当該事案について司法取引の打診を被疑者側からするのかどうか、協力するとしてもどの範囲で協力し、見返りの内容をどうするかについては極めて難しい判断になります。
その判断においては、当該事案の事実関係からして問題となっている事案の証拠構造はどのようになっているのか、当事者の供述や証拠が捜査に与える影響の大きさ、量刑の見通しなどを正確に見通して判断する必要があります。
あいち刑事事件総合法律事務所はこれまで多数の刑事事件の弁護活動を経験してきた実績があり、事件の見通しや証拠構造の分析には自信があります。
司法取引を検討している、検察官から司法取引の打診があったというケースでは是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
次回は司法取引が導入されたことに対して、会社経営者は平時からどのような対応を検討すべきかについて解説させていただきます。
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