【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
このページの目次
1 はじめに
前回の記事では、契約の成立時期や契約書の作成日についてみてきました。
今回は、契約が誰と誰の間で締結されたものなのか(契約の当事者が誰なのか)や署名の重要性について深掘りしていきます。
2 署名の重要性
以前の記事でも解説したように、契約とは、2人以上の当事者が、権利や義務に関する合意を結ぶことをいいます。
そして、当事者には、生身の人間(自然人ということもあります。)に限らず、会社などといった法人もなることができます。
問題は、会社などといった法人が契約の当事者になる場合に、契約書に署名をするのは誰なのか、言葉を変えると、誰に契約を締結する権限があるのかという点です。
⑴ 代表取締役
まず、代表取締役には、契約を締結する権限があります。
これは、会社法349条4項で「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められているからです。
そのため、会社の代表取締役が契約書に署名するのが一般的といえます。
⑵ 業務執行取締役
また、その契約に関する業務について、業務執行取締役となっている取締役にも権限があります。
業務執行取締役というのは、取締役会を設置している会社において、ある業務を執行する取締役として、代表取締役以外の取締役を選定するという取締役会の決議を受けた取締役です(会社法363条2項)。
なお、取締役会というのは、会社の取締役全員で構成する合議体で、会社の業務執行の決定をしたり、取締役などの業務を監督したりする合議体です(会社法362条)。
⑶ 取締役
会社によっては、代表取締役を定めないことも可能な場合があります。
このように「代表取締役その他株式会社を代表する者を定め」ていない場合、取締役が会社を代表します(会社法349条1項)。
そして、このような場合で、取締役が複数人いる場合でも、各取締役がそれぞれ会社を代表します(会社法349条2項)。
このような場合であれば、“代表”取締役や“業務執行”取締役でなくても、権限があることになります。
⑷ 契約締結権限を与えられた使用人(従業員)
また、代表取締役や取締役といった会社の役員でなくても、会社の事業に関するある特定の事項などについて委任を受けた従業員(会社法では「使用人」といいます。)にも権限があります。
3 署名の際に気を付けること
このように契約書に署名する権限がある人というのは多岐にわたります。
契約の相手方が会社の場合は、契約書に署名をしようとしているその人に、会社を代表して契約を締結する権限があるのか確認することが重要です。
今回は、契約書の署名の重要性について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。