コンプライアンス体制の構築⑤

【事例】

Aさんは、佐賀県唐津市で水産加工業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、インターネットでの通販を利用して自社の水産加工品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社の直売所での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そのため、インターネット通販のサイトを開設する必要もあると考えていますし、購入された水産加工品を安全に消費者に届けなければいけませんし、消費者への輸送手段も確保せねばなりません。
また、事業拡大のために、銀行から融資も受けなければなりません。
このような山積する課題に対応する一環として、Ⅹ社では法務部を新設することになり、Aさんがそこの責任者となりました。
Aさんが法務部の責任者として最初に会社から指示された仕事は、X社のコンプライアンス体制を構築することでした。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんでした。
また、X社にはこれまで顧問として付いてもらっていた弁護士もいません。
そこで、Aさんは、Ⅹ社のコンプライアンス体制を構築するにあたって、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。

1 はじめに

以前の記事で、法的リスクを細分化し、Ⓐ絶対に取ってはいけないリスクなのか、Ⓑ取ってもいいリスクなのかを判断する必要があるという解説をしてきました。

今回の記事では、仮にリスクと考えていた自体が実際に起きてしまった場合に、どのように責任を取る必要が生じるのかについてみていきます。

2 企業が問われる責任

企業が問われる責任は、大きく分けて4つに分類することができます。

1つ目は民事責任です。
典型的には、契約の内容どおりに行動しなかった場合の債務不履行に基づく損害賠償責任や、契約がなくても、自社の行為によって他者に損害を被らせてしまった場合の損害賠償責任などといった金銭的な支払いが思いつくでしょう。
しかし、それだけにとどまらず、契約の内容どおりに仕事を完遂させる、謝罪広告を掲載するなどといった金銭的な支払い以外もあり得ます。

2つ目は刑事責任です。
個人ではなく企業であっても、犯罪行為をしてしまった場合には処罰されることがあります。
例えば、事業で生じた廃棄物を不法投棄した場合、いわゆる廃棄物処理法違反に該当する場合があります。
また、いわゆる産業スパイなど不正な方法で他社の営業秘密を入手したら不正競争防止法違反に問われる可能性があります。

3つ目は行政責任です。
企業が行う事業は、法律に基づいて官公庁の規制を受けている場合があります。
例えば、建設業を行う場合には、建設業法という法律に基づいて国土交通大臣や都道府県知事から建設業の許可を受けることなどといった規制を受けることになります。

参考:建設業の許可を受けていた会社が廃棄物処理法違反により産廃収集許可を取り消された事例

そのような規制に反してしまった場合、規制に適合するようにという勧告や命令を受ける場合がありますし、場合によっては業務停止などといった処分を受けたり、その事業を行う許可などが取り消されたりする場合があります。

4つ目は社会的責任です。
企業が違反行為をした場合、法律に基づいて官公庁からその内容を公表されてしまうことがあります。
そうでなくても、個人からインターネットで発信されてしまうこともあります。
そのような場合に、企業の評判が下がるなどといった形で責任を負うことがあります。

3 個人が問われる責任

個人であっても、責任を負う場合があります。
こちらも大きく分けると民事責任、刑事責任、労務責任、社会的責任といったものがあります。

民事責任については、例えば会社の備品を盗んだ場合など、企業に対して賠償責任を負う場合もある点に注意が必要です。

労務責任とは、個人は企業と雇用契約を締結し、その企業の就業規則などといった社内のルールに従う必要があります。
そのようなルールに違反した場合、会社内の人事評価が下がることがありますし、場合によっては懲戒解雇などといった懲戒処分を受ける可能性もあります。

今回は、企業や個人が問われる責任について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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