宗教法人やNPO法人の運営に携わる幹部・代表者にとって、組織の信用を揺るがす不祥事や刑事事件は決して他人事ではありません。寄付金の不正流用や幹部による詐欺、反社会的勢力の介入などの事件は各所で報道されており、ひとたび発覚すれば信者や支援者からの信頼失墜は避けられません。最悪の場合、所轄庁による調査や宗教法人格の剥奪(解散命令)に発展するリスクもあります。こうしたリスクに備え、不祥事発生時には早期に弁護士へ相談し、適切な対処策を講じることが組織存続の鍵となります。
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1. 不祥事発生が宗教法人・NPO法人に与える影響
寄付者や信者の善意によって成り立つ宗教法人・NPO法人において、不祥事や刑事事件が発生すると甚大な影響が生じます。まず 社会的信用の喪失 により、寄付金や支援の減少、信者・会員離れが起こります。加えて、法的な制裁や行政処分 の可能性も高まります。例えば、教団内で刑事事件に発展する重大な不正が認められた場合、行政庁が宗教法人法に基づき調査に乗り出し、場合によっては 解散命令 を裁判所に請求することも想定されます。現に、過去にはオウム真理教事件や霊視商法の明覚寺事件で解散命令が出され、最近では刑事事件が認定されないケース(旧統一教会)にも同様の措置が検討されています。このように、不祥事が発覚した際の影響は組織の存続に関わる深刻なものとなるため、迅速かつ適切な対応が不可欠です。
2. 事例

過去に宗教法人やNPO法人で問題となった典型的な不祥事の例をいくつか挙げます。
- 不透明な資金流用: 組織の資金が本来の宗教活動や公益活動に使われず、幹部の私的流用に充てられるケース。例えば信者からの寄付金やお布施が代表者個人の生活費に充当されていた事例があります。
- 寄付金の不正利用: 名目と異なる用途に寄付金を使う、または架空の募金活動で集めた資金を裏金化するケース。会計担当者による組織資金の横領事件も各地で発生しています。
- 宗教法人格の悪用(マネーロンダリング・脱税): 宗教法人は非課税措置など特別な優遇を受けるため、その法人格が犯罪収益の洗浄や脱税に悪用される事件が後を絶ちません。実際に暴力団が休眠状態の宗教法人を買収し、犯罪収益を流す手段として利用した例も報告されています。また、海外の不正資金を国内宗教法人を通じて移動させるマネーロンダリング手法も確認されています。
- 幹部による詐欺事件(高額な祓い料詐取など): カルト的手法で高額な祈祷料や除霊料を信者に支払わせ、実態のない「救済」を装って金銭をだまし取る事件。こうした詐欺的商法は刑事事件となりうるばかりか、被害者の告発次第で組織全体の信用問題に発展します。
- 会計不正: 帳簿の改ざんや二重帳簿の作成、収支報告の虚偽記載などにより、組織の財務状況を不透明にする行為。内部牽制や監査体制が弱い団体では不正を見逃しやすく、不祥事の温床となります。
- 反社会的勢力の介入・ダミー宗教法人の利用: 暴力団などが宗教法人やNPO法人を隠れ蓑に使い、不正な活動や資金洗浄を行うケース。架空の信者名簿で設立認証を受けたと疑われる宗教法人がヤミ金融業を営んで摘発された事件もあります。こうしたケースでは組織自体が犯罪インフラと見なされ、厳しい処分の対象となりえます。
- セクハラ・パワハラ等のスキャンダル隠蔽: 教団内での性的嫌がらせや権力乱用といったハラスメント問題を内部で揉み消そうとした結果、被害者の告発により対外的な大事件に発展することがあります。近年、宗教界でもセクハラ・パワハラの訴訟が相次いでおり、ある宗教法人では資金不正の問題に加えて性被害訴訟やパワハラ問題が同時発生する例も報告されています。不祥事を隠蔽しようとすれば一層世間の批判を招き、組織の存続が危ぶまれる結果となります。
3. 弁護士に相談することの重要性
上述のような問題が発覚した際、速やかに弁護士へ相談することは極めて重要 です。その理由は大きく分けて二つあります。
第一に、法的に的確な初動対応を取るためです。不正や犯罪の疑いが出た場合、証拠保全や被害拡大防止、関係者への聞き取りなど初期対応を誤れば後の責任追及や再発防止策に支障が出ます。弁護士であれば客観的な立場から法律に則った適切なアドバイスが可能であり、早期に相談することで事態の悪化を防げます。
第二に、外部への説明責任と信用回復という観点です。不祥事対応では、被害者や信者への謝罪・補償、所轄官庁や捜査機関への報告など様々な場面で専門知識が求められます。弁護士に相談しながら進めることで法令に沿った誠実な対応が担保され、組織の透明性を示すことができます。特に宗教法人やNPO法人に詳しい弁護士であれば、宗教法人法や特定非営利活動促進法(NPO法)等の規制に精通しており、事態収拾と再発防止に向けた総合的な支援が受けられるでしょう。
4. 内部調査と是正措置の立案
不祥事が起きた際には、まず 内部調査 を徹底して行い事実関係を明らかにする必要があります。弁護士はこの内部調査の過程で中立的な調査者として関与し、調査の精度や信憑性を高めるうえで大いに役立ちます。例えば資金流用事件であれば、弁護士が関連資料の精査や関係者ヒアリングを主導し、不正の全容解明と証拠の確保を行います。
また、セクハラ問題などデリケートな事案では、被害申告者・加害者双方から適正に事実を聴取し、公平な判断を下すためにも弁護士の同席や助言が有効です。調査結果が判明した後は、是正措置(改善策)の立案に移ります。不正があった場合の責任者の処分、被害者への補償、組織のガバナンス改革など、再発防止と信頼回復のための具体策を弁護士とともに検討します。
法令に違反する行為があれば然るべき届出や是正報告を行政機関へ行う必要がありますし、場合によっては被害者との示談交渉や刑事告発の判断も迫られます。これら一連の対応を専門家の助言なしに適切に進めることは難しく、弁護士の関与が組織防衛の要となります。
5. 法令順守体制の強化と会計透明性の確保

宗教法人法やNPO法といった関係法令の順守は、平時から整備しておくべき組織運営の基本です。不祥事を機に組織のコンプライアンス体制を見直すことも重要でしょう。弁護士はこれら特殊法人に関する法律やガイドラインを踏まえ、規程類の整備や役員の法的責任範囲の確認など法令順守体制強化をサポートします。
また、多くの宗教法人では法律上、営利企業のような厳格な監査義務がないため、内部牽制が働きにくい面があります。弁護士や公認会計士と連携し会計の透明性を確保する仕組みづくり(複数人による出納チェック、定期的な外部監査導入など)を講じれば、不正の抑止効果が高まります。実際、内部統制が不十分で「性善説」に頼った運営では不正の温床になりやすいことが指摘されており、健全な内部牽制は関係者自身を守る手段でもあります。弁護士の助言のもと、法律に沿った適正な会計管理と情報開示を徹底することで、信者・支援者からの信頼回復につなげることができます。
6. ハラスメント対策と当局調査への対応
昨今、宗教法人や公益法人におけるハラスメント問題も社会的に大きな関心を集めています。教団内部でセクハラ・パワハラが発生した場合、その対応を誤ると深刻なスキャンダルに発展しかねません。弁護士はハラスメントの防止規程策定や相談窓口の設置運営について助言し、万一問題が起きた場合には第三者調査委員会の設置など適切な対処をサポートします。
被害者対応においてはプライバシー保護や人権尊重の観点が不可欠であり、法律の専門家による慎重な進行管理が望まれます。内部での隠蔽は禁物であり、弁護士の関与のもと事実関係を公正に調査し再発防止策を講じることが、ひいては組織の名誉を守ることにつながるでしょう。
さらに、不祥事の程度によっては 所轄庁や捜査当局から調査を受ける局面 も考えられます。宗教法人の場合、文化庁や都道府県からの「質問権」に基づく調査や、悪質な違法行為に対する解散命令請求が現実に起こりえます。こうした当局対応に際しても、弁護士のサポートは不可欠です。当局への報告書作成やヒアリングへの同席、提出書類の精査など、法令に沿った適切な手続きを踏むことで、最悪の事態(法人格剥奪や刑事処分)を回避できる可能性があります。行政との交渉や是正計画の提出も、専門知識なしでは太刀打ちできません。弁護士とともに誠意ある対応策を講じることで、当局からの信頼を得て事態の沈静化を図ることが重要です。
7. 事務所紹介
当事務所では、宗教法人やNPO法人における不祥事対応やコンプライアンス支援に豊富な実績を有する弁護士チームが皆様の相談を承っております。内部調査の実施から是正措置の立案、宗教法人法・NPO法に基づく法令順守体制の整備、さらにはハラスメント防止策の導入支援や所轄庁対応まで、ワンストップで専門的なリーガルサービスをご提供可能です。組織の理念と社会的信用を守るためには、問題が起きてからの対応はもちろん、平時からの予防法務も欠かせません。当事務所の弁護士は顧問契約による継続的なサポートにも対応しており、日常的なご相談から緊急時の対応まで伴走いたします。宗教法人・NPO法人特有の事情に精通した専門家の力をぜひお役立てください。不祥事や刑事事件への適切な対応にお困りの際は、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
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