Archive for the ‘不祥事・危機管理’ Category
企業が産業廃棄物を不法投棄するとどのような処分を受けるのか
【事例】
茨城県内で産業廃棄物約2トンを捨てたとして、茨城県警が1日、同県A市の70歳代の男2人を廃棄物処理法違反(不法投棄)容疑で逮捕したことが、捜査関係者への取材で分かった。 県内では近年、山中への大量投棄ではなく、平地の田畑などに少量の産廃を捨て去る手口が横行しており、県や県警が「ゲリラ的不法投棄」と呼んで警戒を強めていた。
(読売新聞オンライン 令和5年6月1日「田畑や駐車場に突然がれきの山が…産業廃棄物物の「ゲリラ投棄」で70代の男2人を逮捕」より引用)
廃棄物処理法について
事例のような不法投棄については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下通称である「廃棄物処理法」といいます。)で規制されています。
廃棄物処理法における廃棄物には大きく分けて産業廃棄物と一般廃棄物があり、両者の区別は環境に対する影響の大きさの違いから量刑上重要な意味を持ちます。
区別は以下の通りです。
●産業廃棄物
事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、その他政令で定める廃棄物に加え、輸入された廃棄物と携帯廃棄物。
●一般廃棄物
産業廃棄物以外の廃棄物。
そして廃棄物を不法に投棄した場合については刑事罰が定められており、法定刑は「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」です(廃棄物処理法16条、25条1項14号)。
また、廃棄物処理法には両罰規定があるので法人が不法投棄をしていた場合には、法人にも罰金刑が科されます。 法定刑は「3億円以下の罰金」です(廃棄物処理法26条6号)。
企業が不法投棄をしていた場合に負う責任
1 刑事上の責任
上記のように不法投棄をした場合には刑事罰が定められており、捜査を受けて刑事罰を受ける可能性があります。 不法投棄の態様や、行政指導に対する対応が悪質であると判断された場合には、不法投棄を主導した者が逮捕されるケースもあります。
態様が悪質と判断されるケースとしては複数回投棄をしていること、有毒物質を出すなど廃棄物が周辺の環境に与える影響が大きいこと、複数回行政指導を受けているにもかかわらずそれを無視しているなどの事情があるケースが考えられます。
そして刑事罰については初犯であれば罰金刑となるケースが多いですが、先述した悪質性が高い事案や廃棄物の量が1トンを超えるようなケースでは正式起訴されて執行猶予付きの判決を受けるケースや実刑判決を受けるケースもあります。
刑事処分の軽減のためには捜査段階から悪質性が高くない事情や原状回復を行っているなどの有利に働く事情を主張していく必要があります。 仮に執行猶予付きであれ経営者が懲役刑を受けることは、役員資格を失う、代表者名義で取得している行政上の許認可の取消事由になるなど企業の経営に与える影響が大きいことが考えられます。
2 民事上の責任
民事上の責任としては、不法投棄をした場所が私有地である場合にはその所有者から、公有地である場合については公共団体から損害賠償請求をされる可能性があります。
損害賠償の主な内容としては不法投棄がされた場所の原状回復費用になります。 先述したように原状回復の有無は刑事処分の判断においても重視されるので、被害者が明らかになった場合は早期に賠償や示談の交渉を始めることが望ましいといえます。
企業として不法投棄に対する事前の対策と発生後の対応について
1 事前の対策
事前の対策として特に建設業や解体業など多くの廃棄物が出ることが予想される業種については事前の対策を検討してもよいかもしれません。 社員や関連業者に対する指導やコンプライアンス対策を徹底し自社が関係することろで不法投棄が発生しないように対策することが求められます。
2 事後の対応
不法投棄の発覚については、いきなり警察が介入する場合だけでなく、行政側からの指導が入るケースもあります。 もし不法投棄について行政側からの指導が入った場合については原状回復など適切な対応を行って調査に対して再犯防止策を取っていることなどを説明するなど適切な対応をすることで刑事事件となり刑罰を受けることを避けられる可能性もあります。
仮に刑事事件化して、企業の経営者が逮捕された場合については早期に身柄解放するべく検察官や裁判官と交渉する必要があります。一度起訴されれば刑事処分を受けることになるので身柄解放だけでなく刑事処分に対する検察官に対する交渉も早期に始める必要があります。
刑事処分を受けるとしてもより経営への影響の少ない罰金刑でとどまるように、原状回復や再犯防止策の徹底など有利な事情を集め主張していく必要があります。
最後に
あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件、少年事件を数多く扱ってきており廃棄物処理法違反事件でも不起訴や正式裁判の回避(略式罰金)など被疑者の方にとって有利な処分を獲得した経験もございます。
また企業の経営の面でも、企業ホームチームがコンプライアンス対策や再犯防止策の策定など不法投棄事案の発生の防止や再犯防止の徹底をサポートさせていただきます。 今後の再犯防止策の徹底は刑事処分でより有利な判断を得るためにも有利な事情になります。 不法投棄などの廃棄物処理法違反事件についてご心配な方は、まずはあいち刑事事件総合法律事務所の無料相談(専用ダイヤル03−5989−0893)をご利用ください。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
不正経理等企業内部の不正行為

企業内あるいは外部との取引において、水増し請求をしたり不正経理をしたりして、横領等を隠蔽したり、差額分を着服したり相手方からキックバックを受けたりすることがあります。このような不正行為は長期間にわたって続けられることが多く、被害は甚大になることが多々あります。
不正経理行為に対して成立する犯罪や、その予防について解説します。
詐欺・電子計算機使用詐欺
実際に行ってもいない出張の交通費を会社に請求したりすることなどが考えられます。このような行為は詐欺罪に当たり、10年以下の懲役に処されます(刑法第246条第1項)。
虚偽の費用や給与金額を入力して給与振り込みをさせるなど、自然人の担当者に虚偽の情報を伝えるのではなく、虚偽の情報をコンピューターに入力して利益を得た場合、電子計算機使用詐欺罪が成立します。法定刑は詐欺罪と同じ、10年以下の懲役です(刑法第246条の2)。
業務上横領・窃盗
会社内の備品を勝手に売却したりすることが考えられます。自分が管理担当者であるなど、業務上自己の支配下に置いているといえる場合は業務上横領罪(刑法第253条)、そうでない場合は窃盗罪が成立します(刑法第235条)。
背任罪
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(刑法第247条)。知り合いに便宜を図るため、通常であれば融資しないような案件で融資を行うような場合が考えられます。
取締役等が行えば、特別背任罪が成立し、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、又はこれを併科される(会社法第960条)という、非常に重い刑を科されます。
前述の業務上横領罪等に該当すれば、より重いこれらの罪の刑が成立します。背任罪とこれらの犯罪のいずれが成立するかは、具体的な事案により判断されますが、犯罪の種類ごとに判断はある程度類型化されています。例えば、業務上横領罪か背任罪かについては、自己の名義・計算で行えば業務上横領罪、本人つまり会社の名義・計算で行えば背任罪となるとされています。
第三者への対応
水増し請求など第三者がかかわる場合、自社は他社にとって加害者となりえます。取引先に水増し請求をして実際に行った業務より多くの代金を支払わせた場合、取引先を被害者とする詐欺罪に当たります。これに続いて、自社には実際に行った業務分の代金が支払われたと報告して、差額分を着服することが考えられます。このようなことをすれば自社に対する業務上横領が成立します。また、取引先で不正を行った者について成立する犯罪の共犯(刑法第60条以下)となる可能性もあります。
社内調査
以上のような不正行為は、他にチェックする人がいなかったり、複数名がチェックすることになっていても形骸化している状況を利用して行われます。その結果、誰も気が付くことなく、長期間にわたって続けられることが多いです。メンバーの異動があっても、「今までこういう風にやってきたから」などと言われて、特に疑問に思うことなく受け入れてしまい、不正が行われ続けてしまうことも多く見受けられます。
このような不正が発覚したとしても、既に長期間行われていて、被害金額が膨大になっている可能性があります。また、時間の経過により、資料も散逸していて、被害金額を特定することが困難なこともあります。
責任追及
不法な行為によって自社が損害を受けた場合、損害賠償を請求できます(民法第709条)。
取締役や監査役等の役員等に当たる者が、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによった損害を賠償する責任を負います(会社法第423条第1項)。第三者に対し賠償責任を負う場合もあります。
基本的には、不法行為をした者自身が当該第三者に損害賠償責任を負います。役員等であれば、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います(会社法第429条第1項)。第三者の損害についての故意ではなく、職務上の注意義務ついて悪意又は重過失があれば該当します。
また、従業員などの被用者がその事業の執行について第三者に損害を加えた場合、企業も、その損害を賠償する責任を負います(民法第715条第1項)。
時効
被害金額を特定できたとしても、不正が長期間行われていた場合、初期に行われた不正行為については、時効にかかっている可能性があります。
民事責任については、不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者側が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、又は不法行為の時から20年間行使しないときは、時効により消滅します(民法第724条)。
取締役の任務懈怠責任等不法行為以外の責任の場合は、他の債権と同じく債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効により消滅します(民法第166条第1項)。
刑事責任については、刑の種類により時効の期間が異なります(刑事訴訟法第250条)。電子計算機使用詐欺罪や業務上横領罪の場合は、10年以下の懲役ですので、7年経過すれば、時効により消滅します(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。時効より前の不正行為については、刑事処分を求められなくなります。
不正防止のために
以上のように、不正経理が行われれば、自社に多大な損失をもたらすだけでなく、自社が加害者となり、責任を負うことになりかねません。
このような事態を防ぐために、企業内におけるコンプライアンス体制を整備しておく必要があります。
内部通報制度を整備するなどして、不正の報告をするハードルを下げることなども重要です。
企業犯罪の防止についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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契約書の重要性①

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
契約書の内容を確認することの重要性を考える大前提として、今回はそもそも契約とはなにかというところからみていきましょう。
2 契約とは
契約というのは、2人以上の当事者が、権利や義務に関する合意を結ぶことをいいます。
当事者には、生身の人間(自然人ということもあります。)に限らず、会社などといった法人もなることができます。
また、契約は、“合意を結ぶこと”であるというのもポイントです。
つまり、どのような契約であっても、契約書などといった書類を取り交す必要があるというわけではありません。
口頭で合意している場合であっても、契約は成立することになります。
その一方で、例えば保証契約については、書面で取り交す必要があるというのが法律で定められています(民法446条2項)。
「契約書」と一言でいっても解釈が難しい場合があります。例えば,税金の関係上「契約書」の扱いについては国税庁が通達を出しています。
3 契約書の重要性
それでは、保証契約のように書面で取り交す必要がある場合を除き、契約書を取り交わさなくてもいいのでしょうか。
もちろん契約書があるに越したことはありません。
まず、契約書があると、お互いの合意の内容が明確になりますから、将来的に契約内容を巡ってトラブルになる可能性を下げることができます。
また、仮にトラブルに発展して裁判となった場合には、契約書がその裁判の中で強力な証拠となる可能性もあります。
さらに、契約が潜在的に抱えているリスクをコントロールする手段ともなりえます。
例えば、契約した段階では財務状況に何ら問題のない会社であったとしても、何かのきっかけで急速に財務状況が悪化してしまい、支払いが滞ってしまう可能性もあります。
また、取引の相手方が、裏では反社会勢力と繋がりがあるのに、それを隠しているかもしれません。
他にも、取引の中で開示した情報を他社にもらされてしまうおそれ、継続的な取引でないと自社に利益が生じない場合に短期間で解約されてしまうおそれなども考えられます。
このようにリスクとしては多種多様なものが考えられますし、自社がどのようなリスを抱えていて、そのリスクがどの程度の大きさなのかも会社ごとに様々です。
そのようなリスクを回避したり、リスクが顕在化した場合の影響を減少させたりする条項を契約書の中に盛り込むことで、リスクのコントロールが可能になります。
まとめ
今回は、契約や契約書について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

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SNSでの迷惑行為への企業の対応

飲食店内で容器を舐めるような迷惑行為の様子を撮影してネットに上げるといった事件が続発し、社会問題となっています。このような迷惑行為の存在自体お店のイメージを下げることになりますが、企業が適切に対応していないとして、企業が責められ、社会的信用を失うことになりかねません。さらに、自社の従業員やアルバイトが、調理に使う具材にいたずらをするなどの迷惑行為の様子を撮影してネットに上げる、いわゆるバイトテロをしてしまえば、企業の社会的信用はさらに下がりかねません。
迷惑行為に対して成立する罪
いかに「いたずら」「悪ふざけ」と思っていたとしても,刑罰法令に抵触する場合には犯罪が成立します。
いわゆるバイトテロに対しては,以下のような刑法犯の成立があり得ます。
業務妨害罪
冒頭にあげた迷惑行為については、偽計業務妨害罪(刑法第233条)又は威力業務妨害罪(刑法第234条)が成立する可能性があります。
威力業務妨害罪の「威力を用いて」とは、人の意思を制圧する勢力を用いることをいいます。偽計業務妨害罪の「偽計を用いて」とは、人を欺き、あるいは、人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑したり、計略や策略を用いるなど、「威力」以外の不正な手段を言うとされています。
「威力」と「偽計」のいずれに該当するかを判断するにあたっては、行為の態様又は結果のいずれかが目に見えるものであれば「威力」に、目に見えないものであれば「偽計」になるとするのが一般的です。迷惑行為の様子をネットに上げることで、多くの人の目にさらされ、店舗内でそのような行為が行われているとか、自分が使った容器もそのようにされているのではないかと多くの人が不安に陥り意思が制圧されるといえます。したがって、「威力を用いて」に該当すると考えられます。
そして、迷惑行為がネットに上げられると、ネットで情報がさらに拡散し、利用者が不安に思って店に来なくなる可能性があります。また、調味料の容器を舐められたのであれば店内のすべての容器を入れ替えなければならないなど、迷惑行為に関係する備品を撤去するなどの対応が必要となり、通常の業務さえもできなくなります。これは業務の円滑かつ平穏な遂行そのものを妨害する行為であり、「業務を妨害した」といえます。
偽計業務妨害罪,威力業務妨害罪に対しては3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
器物損壊罪
迷惑行為に当たり、容器に手を付けるようなことをすれば、器物損壊罪(刑法第261条)が成立する可能性があります。
「他人の物を損壊」とは、物の効用を害することとされています。飲食店の容器を舐めるなどすれば、その容器はもはや客に提供することができなくなります。これは物の効用を害するに当たるといえ、器物損壊罪に該当する可能性があります。
器物損壊罪に対しては3年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。
迷惑行為への対応
迷惑行為が行われても、インターネットのような多くの人々が目にする場所に上げる手段がない時代であれば、迷惑行為をした者に個別に対応すれば済みました。しかしながら、多くの人々の目にさらされる現在では、適切とされる対応を取らなければ、企業自身が加害者かのように扱われかねません。
加害者への対応
加害者に対する企業の対応としては、民事責任の追及として、加害者への不法行為に基づく損害賠償請求が考えられます(民法第709条)。
加害者が未成年者(18歳に満たない者。第4条)で自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかった場合、監督義務者である保護者に請求することになります(民法第712条・第714条第1項)。
ただし、これは12歳前後までの年齢で問題になることであり、高校生などアルバイトをするような年齢では自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとされることはまずありません。監督義務者に請求できない場合、本人に請求することになります。
損害については、不法行為と因果関係があるものについて認められます。例えば、容器を舐められたのであれば、店内のすべての容器を取り換えたり、消毒するなどの対策をする費用が生じます。このような、加害者の行為により生じた費用については損害といえ、損害賠償請求をすることが可能です。
一方で、このような加害者の行為により株価が下がり、企業が大きな打撃を受けたなどしばしば主張されます。しかしながら、企業の株価は市場の状況など様々な要素の影響を受けます。加害者の行為が原因で株価が下がりそれによりどれだけの損害が生じたかを証明するのは難しいでしょう。
企業としては、民事責任のほか、刑事責任を追及するため、威力業務妨害罪や器物損壊罪などで被害届や告訴をすることが考えられます。
社会への対応
迷惑行為により、社会の人々も、その企業の店舗を利用しても安全なのか不信感を抱いてしまいます。時宜にかなった広報や会見を行うことにより、この不安を解消する必要があります。とくにネット上では犯人に重い代償を払わせるべきだという声が大きくなりがちですが、前述のようにそのようなことはできないこともあります。企業としては、自社が行った対応やその理由について丁寧に説明し、一人でも多くの人々の納得できるようにするべきです。
まとめ
このように、SNSでの迷惑行為については、企業は様々な事情を考慮して対応していく必要があります。
SNSでの迷惑行為について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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取締役等に対する贈賄罪、収賄罪について賄賂が問題になるのは公務員だけではないの?

【事例】
A社の取締役であるXさんは、下請け業者のB社のYさんから、自分を優遇してもらうことをお願いされて100万円の金銭を受け取りました。
そしてXさんはYさんが自宅を購入するための資金に困った際に、A社名義でYさんにとって非常に有利な条件で多額の融資をしていました。
取締役がお金を受け取っても収賄罪が成立するの?
以前の記事では公務員に対する贈収賄罪や官製談合防止法違反の対応について解説しました。
しかし、取締役などの会社役員であっても職務に関して金品を受け取るなどした場合に刑事責任を負う可能性があることはあまり知られていないかもしれません。
確かに刑法上の贈賄罪や、収賄罪は主体や客体が公務員に限定されています。
したがって事例のようなケースでも刑法上の収賄罪は成立しません。
但し会社法には、取締役などの会社役員について贈収賄の規定があり刑事罰も規定されています。以下に条文を紹介します。
会社法第967条(取締役の贈収賄)
1 次に掲げる者が、その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。
一 第960条第1項各号又は第2項各号に掲げる者
二 第961条に規定する者
三 会計監査人又は第346条第4項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者
2 前項の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
この条文にある会社法960条、961条に掲げる者には取締役や監査役などの会社役員が含まれます(詳しくは会社法960条、961条をご確認ください)。
ではこの条文の規定する内容について、刑法上の贈収賄罪との違いはあるでしょうか。
会社法の贈収賄と刑法上の贈収賄との比較
では比較するために刑法上の収賄罪の条文を以下にあげます。
刑法第197条
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
まず、公務員を規定する刑法の場合は「その職務に関し」とのみ規定があります。
請託、すなわち何か具体的なお願いをされた場合については罪を重くする事情であり(この場合より法定刑の重い受託収賄罪が成立します)、請託をされていなくて収賄罪は成立します。
これに対して、会社法の規定では、「その職務に関し、不正の請託を受けて」というように規定されています。
すなわち取締役に収賄罪が成立するのは、不正な請託、本件でいえば不正な条件でお金を貸してほしいなどというお願いがあった場合になります。
また渡すものについても規定が異なっています。
刑法上の収賄罪については「賄賂」と規定されているのに対して、会社法上の収賄罪については「財産上の利益」と規定されています。
刑法上の「賄賂」については、判例上「賄賂の目的物は、有形無形を問わず、人の需要・欲望を満たすに足りる一切の利益を含む」とされており、財産上の利益に限定していません。
したがって、会社法上の「財産上の利益」とは刑法上の「賄賂」より対象を限定しているといえます。
以上のように刑法上の贈収賄と会社法上の贈収賄では成立する範囲について違いがあります。
今回の記事では取締役が会社の職務に関して金品を受け取った場合にも収賄罪が成立する場合があること、刑法上の収賄罪との成立範囲の違いについて解説しました。
次回の記事では事例のようなケースが明らかになった場合に、会社が取るべき対応について解説させていただきます。

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社内調査におけるヒヤリングの留意点③

社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
そもそも社内調査とは何か
社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。
社内調査におけるヒヤリングの意味
社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。
企業で不正行為が行われ、またその疑いがある場合に、事実関係を解明するため、事情を知っている関係者のヒヤリングを実施することは必要不可欠です。
今回は、企業が、不正行為を行った疑いのある社員(嫌疑者)に対するヒヤリングを実施する際の留意点について解説します。
嫌疑者に対するヒヤリングの持つ意味
社内調査は、不正行為の事実関係を解明し、不正を行った者を突き止め、この者に対する各種処分等を通じて、企業が自浄能力を発揮し、新たな体制を整える基礎をつくるために実施されるものです。
したがって、事案に関連する資料の分析や関係者に対するヒヤリング等から不正行為を行った疑いのある社員(嫌疑者)が特定された場合、嫌疑者が最終的に不正を行ったことを自白してくれれば、社内調査の目的はほぼ達成されたといえます。
しかし、前々回でお話ししたように、企業による社内調査では、刑事事件の捜査で認められているような強制的な調査権限が与えられているわけではありませんし、時間的な制約がある場合もありますから、社内調査にはそもそも限界があります。この点が社内調査の難しいところです。
嫌疑者に対するヒヤリングを行う際の留意点
まず最初に、嫌疑者に対するヒヤリングでは、最初は、手の内を見せずに、相手の言うことを否定せずに自由に話をさせることが効果的な場合が多いといえます。
この方法であれば、嫌疑者が真相を語っていない場合、証言に矛盾が出てくることも多く、事後に客観的な証拠と照らし合わせて追及することで自白に導けることがあります。
また、ヒヤリングをする側も結論ありきで話をしないこと、すなわち、思い込みは禁物です。他の証拠から不正行為の事実関係を推測し解明していくことは重要ですが、ヒヤリングの最初から結論ありきで質問した場合、せっかく嫌疑者が正直に真相を語ろうとしているのに、反発心が生じてかえって口を閉ざしてしまうなど、弊害が起きる場合があります。
思い込みが強すぎますと、それに合致する都合のよい証拠しか目に入らなくなるおそれがあり、真相を見誤ることにもなりかねません。
次に、嫌疑者は精神的に非常に不安定になっている場合も多く、嫌疑者を精神的に威圧するなど、精神的に追い込むことはNGです。あくまで冷静に証拠に基づき論理的に自白を導くことが基本です。「素直に認めないとクビにするぞ(あるいは、刑事告訴するぞ)。」などと圧力をかけて供述を引き出すことは企業の社内調査として行ってはいけないことであり、そのような手法によって嫌疑者が仮に自白したとしても証言の信用性に疑義が生じることになります。他方、嫌疑者が虚偽の弁解を繰り返し続ける場合には、虚偽の弁解を続けることは情状が悪くなること、事実関係を正直に話せば懲戒解雇は免れる可能性があることなどを指摘し、正直に供述し事実を認めるよう促すことは必要かつ有効です。
最後に
社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
コンプライアンス体制の構築⑦

【事例】
Aさんは、佐賀県唐津市で水産加工業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、インターネットでの通販を利用して自社の水産加工品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社の直売所での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そのため、インターネット通販のサイトを開設する必要もあると考えていますし、購入された水産加工品を安全に消費者に届けなければいけませんし、消費者への輸送手段も確保せねばなりません。
また、事業拡大のために、銀行から融資も受けなければなりません。
このような山積する課題に対応する一環として、Ⅹ社では法務部を新設することになり、Aさんがそこの責任者となりました。
Aさんが法務部の責任者として最初に会社から指示された仕事は、X社のコンプライアンス体制を構築することでした。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんでした。
また、X社にはこれまで顧問として付いてもらっていた弁護士もいません。
そこで、Aさんは、Ⅹ社のコンプライアンス体制を構築するにあたって、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。※解説事例についてはこちらの記事と同様です。
1 はじめに
以前の記事で、不祥事を予防するために必要なことについて解説してきました。
今回は、不祥事の予防策や対策を講じるのにどのような弁護士に力を借りるのがよいかについて考えていきます。
2 弁護士の種類
昨今、弁護士資格を有する方を雇用される企業も増えてきています(いわゆるインハウスローヤー)。
そのような企業であれば外部の弁護士に頼る必要が一切ないかといえば、そうとは限りません。
そのようなインハウスローヤーをはじめとする企業内の法務担当者と外部の弁護士の役割の違いについて見ていきましょう。
3 法務担当者の役割
法務担当者の一番の特徴は、その会社の事情に精通しているという点です。
企業の経営戦略やその会社内の事情、例えば、複数の事業のうちどの事業を重視しているのか、これからどの事業を伸ばしていこうと考えているのか、各事業については誰がどの程度精通しているのかなどといったことは、会社の外部の弁護士が一朝一夕で理解できることではありません。そのため、このような社内の事情に基づいた法律的なアドバイスができるというのが法務担当者の特徴、役割になります。
その一方で、企業が日常的に接する法分野以外の知識や経験は不足している場合がありますし、日常的に接する法分野であっても、裁判になった場合にどうなるのか、最新の判例はどうなっているのかなどといったより深い専門知識については不足している場合もあります。
このような場合には外部の弁護士を頼ることが考えられます。
もっとも、外部の弁護士に頼る場合でも、法務担当者が窓口になることで、弁護士が必要としている情報を的確に伝えたり、アドバイスの内容を十全に理解したり、場合によっては弁護士のアドバイスをチェックしたりするなど、外部の弁護士をより活かす役割が期待できます。
4 外部の弁護士の役割
先ほど述べたことの裏返しで、外部弁護士には法務担当者がカバーしきれない分野や専門性に基づいた役割を求めることが考えられます。
また、法務担当者が会社内の事情に精通しているということは、裏を返せば会社内の風土に影響を受けているということでもあります。
しかし、外部の弁護士はあくまで企業外部の人物ですから、中立的な役割を期待することもできます。
参考:告発文書疑惑の兵庫県、公益通報の窓口を外部に設置へ 外部弁護士が対応、匿名性高める 産経新聞
今回は、不祥事の予防策・対策に関して、どのような弁護士の力を借りるかについて解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
コンプライアンス体制の構築⑥
【事例】
Aさんは、佐賀県唐津市で水産加工業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、インターネットでの通販を利用して自社の水産加工品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社の直売所での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そのため、インターネット通販のサイトを開設する必要もあると考えていますし、購入された水産加工品を安全に消費者に届けなければいけませんし、消費者への輸送手段も確保せねばなりません。
また、事業拡大のために、銀行から融資も受けなければなりません。
このような山積する課題に対応する一環として、Ⅹ社では法務部を新設することになり、Aさんがそこの責任者となりました。
Aさんが法務部の責任者として最初に会社から指示された仕事は、X社のコンプライアンス体制を構築することでした。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんでした。
また、X社にはこれまで顧問として付いてもらっていた弁護士もいません。
そこで、Aさんは、Ⅹ社のコンプライアンス体制を構築するにあたって、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
1 はじめに
以前の記事で、法的リスクを細分化して分類することの必要性や、仮にリスクと考えていた自体が実際に起きてしまった場合に、どのように責任を取る必要が生じるのかについて解説してきました。
今回は、不祥事を予防するために必要なことについて考えていきます。
2 組織が変わる必要があること
以前の記事で、コンプライアンス違反の陥りやすい状況について解説していますが、そこからも分かるように、企業風土に根ざしている場合も少なくありません。
不祥事を予防するためには、一部門に任せきりにするのではなく、自社の組織体制を様々な角度から見直し、企業が全体として取り組んでいくことが必要です。
3 予防策のポイント
必要なことの1つ目は、原因の究明です。

これは、事態を起こした個人を特定したり、その個人の責任を追及したりするということではありません。
人の責任を追及するだけでは、どうしても場当たり的な対応になってしまい、適切な予防策を見出すことは難しくなります。
不祥事の再発を防止するという視点からは、個人に注目するのではなく、起きた出来事に注目することが必要です。
2つ目は、企業風土の見直しです。
いわばソフト面を整えるということです。
例えば、企業内の常識と一般常識が乖離している場合、その乖離を是正していくことが必要です。
東洋オンライン 日本の大問題「風土が劣化した、重い組織」5大症状
また、不祥事の隠蔽は最悪の対策の1つです。不祥事を隠すと、発覚した場合の被害は大きくなるばかりですし、改善の機会もなくなってしまいます。責任を問われることをおそれて不祥事を隠すことがないようにしなければなりません。
このような点からすると、組織外に対しても、組織内に対しても、組織は開かれたものに見直す必要があります。
組織外という意味では、組織の行動指針などを社会に公表できるようなものにすれば、それは企業内の常識と一般常識の乖離がない状態でしょう。
また、組織内という意味では、不祥事が起きた場合に現場から経営層に報告が上がるようにする必要があります。
3つ目は、再発防止体制の構築です。
これはいわばハード面を整えるということです。
企業内部の監査体制を構築して不祥事に繋がる事態を察知したり、不祥事が発覚した場合の報告窓口を整備したりすることなどが重要になっていきます。
今回は、不祥事の予防策について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
コンプライアンス体制の構築⑤

【事例】
Aさんは、佐賀県唐津市で水産加工業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、インターネットでの通販を利用して自社の水産加工品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社の直売所での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そのため、インターネット通販のサイトを開設する必要もあると考えていますし、購入された水産加工品を安全に消費者に届けなければいけませんし、消費者への輸送手段も確保せねばなりません。
また、事業拡大のために、銀行から融資も受けなければなりません。
このような山積する課題に対応する一環として、Ⅹ社では法務部を新設することになり、Aさんがそこの責任者となりました。
Aさんが法務部の責任者として最初に会社から指示された仕事は、X社のコンプライアンス体制を構築することでした。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんでした。
また、X社にはこれまで顧問として付いてもらっていた弁護士もいません。
そこで、Aさんは、Ⅹ社のコンプライアンス体制を構築するにあたって、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
1 はじめに
以前の記事で、法的リスクを細分化し、Ⓐ絶対に取ってはいけないリスクなのか、Ⓑ取ってもいいリスクなのかを判断する必要があるという解説をしてきました。
今回の記事では、仮にリスクと考えていた自体が実際に起きてしまった場合に、どのように責任を取る必要が生じるのかについてみていきます。
2 企業が問われる責任
企業が問われる責任は、大きく分けて4つに分類することができます。
1つ目は民事責任です。
典型的には、契約の内容どおりに行動しなかった場合の債務不履行に基づく損害賠償責任や、契約がなくても、自社の行為によって他者に損害を被らせてしまった場合の損害賠償責任などといった金銭的な支払いが思いつくでしょう。
しかし、それだけにとどまらず、契約の内容どおりに仕事を完遂させる、謝罪広告を掲載するなどといった金銭的な支払い以外もあり得ます。
2つ目は刑事責任です。
個人ではなく企業であっても、犯罪行為をしてしまった場合には処罰されることがあります。
例えば、事業で生じた廃棄物を不法投棄した場合、いわゆる廃棄物処理法違反に該当する場合があります。
また、いわゆる産業スパイなど不正な方法で他社の営業秘密を入手したら不正競争防止法違反に問われる可能性があります。
3つ目は行政責任です。
企業が行う事業は、法律に基づいて官公庁の規制を受けている場合があります。
例えば、建設業を行う場合には、建設業法という法律に基づいて国土交通大臣や都道府県知事から建設業の許可を受けることなどといった規制を受けることになります。
参考:建設業の許可を受けていた会社が廃棄物処理法違反により産廃収集許可を取り消された事例
そのような規制に反してしまった場合、規制に適合するようにという勧告や命令を受ける場合がありますし、場合によっては業務停止などといった処分を受けたり、その事業を行う許可などが取り消されたりする場合があります。
4つ目は社会的責任です。
企業が違反行為をした場合、法律に基づいて官公庁からその内容を公表されてしまうことがあります。
そうでなくても、個人からインターネットで発信されてしまうこともあります。
そのような場合に、企業の評判が下がるなどといった形で責任を負うことがあります。
3 個人が問われる責任
個人であっても、責任を負う場合があります。
こちらも大きく分けると民事責任、刑事責任、労務責任、社会的責任といったものがあります。
民事責任については、例えば会社の備品を盗んだ場合など、企業に対して賠償責任を負う場合もある点に注意が必要です。
労務責任とは、個人は企業と雇用契約を締結し、その企業の就業規則などといった社内のルールに従う必要があります。
そのようなルールに違反した場合、会社内の人事評価が下がることがありますし、場合によっては懲戒解雇などといった懲戒処分を受ける可能性もあります。
今回は、企業や個人が問われる責任について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

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社内調査におけるヒヤリングの留意点について②
社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か
社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。
社内調査におけるヒヤリングの意味
社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。
企業で不正行為が行われ、またその疑いがある場合に、事実関係を解明するため、事情を知っている関係者のヒヤリングを実施することは必要不可欠です。
前回は、「企業が社員に対してヒヤリングに応じるよう命じることができるか」について解説しましたが、今回は、企業がヒヤリングを実際に行う際の留意点について解説します。
対象者の選定
まず、社内調査のきっかけとなった申告や初期段階で収集した客観的な証拠などから、ヒヤリングの対象者を選定する必要があります。
ヒヤリングの対象者としては、不正行為を行った疑いのある者(嫌疑者)、不正行為に関係する役員、従業員が中心となりますが、場合によっては、退職者や取引先の担当者等に協力を求めてヒヤリングを実施することもあり得ます。
ヒヤリングを実際に行う際の留意点
まず第1に、社内調査が行われる端緒として、日頃の内部監査、内部通報、外部からの情報提供などがありますが、ヒヤリングの対象者の中に内部通報者等の協力者がいる場合には、この者の保護を図る必要があります。社内において、あたかもその協力者が悪いかのように協力者探しが始まり、その者が社内にいられない事態となれば、今後、内部通報等する者はいなくなってしまいます。そのようなことが起きないよう、協力者の氏名等、協力者が誰であるか特定できるような情報は絶対に秘匿する必要があります。
次に、ヒヤリングにおいては、不正行為の申告者がいればその者から開始し、次いで目撃者等中立的な立場の者、利害関係者の順番で行い、最後に不正行為を行った疑いのある者に対して行うのが通常のパターンといえます。
ヒヤリングを実施することにより、社内調査を行っていることが、ヒヤリングの対象には知られますので、早い段階で不正行為を行った疑いのある者についてヒヤリングを行うと、その者による関係者への働きかけなど、証拠隠滅工作が行われてしまうリスクが大きくなります。
また、既に不正行為の案件が大きく報道されているような事案は別ですが、ヒヤリングは密行的に、かつ、短期間に集中して行う必要があります。ヒヤリングが社内で表立って実施されれば、会社内部で、不正行為の犯人捜しが始まるなど相互不信が生じ、関係者の協力が得られなくなる可能性があります。
実施する期間が長引くほど、不正行為の実行者による罪証隠滅工作が行われるリスクが大きくなってしまいます。
参考報道:NTT西日本子会社の顧客情報900万件流出、社内調査後も対策せず…個人情報を自由に持ち出し
次回は、不正行為を行った疑いのある者(嫌疑者)に対するヒヤリングについて、別個に取り上げて解説します。
最後に
社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。
調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

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