Archive for the ‘企業犯罪’ Category

外国人の雇用について

2024-12-20

グローバル化が進み、外国人の日本での就業が多く見られるようになっています。その一方で、文化の違いなどから日本人の生活者とのトラブルも見受けられます。
外国人が適正に就労できるよう、外国人の雇用についても厳格な規制が設けられています。
ここでは、外国人の雇用の際のルールについて解説します。

外国人の雇用が可能な在留資格

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、日本人と同様にわが国で暮らしていますので、就労活動に制限はありません。これらは出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第二の在留資格で、別表第一の在留資格のような制限はありません。

一方、別表第一の在留資格ですと、どのような在留資格の外国人でも雇用できるわけではありません。

以下の一定の活動を目的として在留する外国人(別表第一の一、第一の二、第一の五)は、その在留資格に定められた範囲で終了が認められます(入管法第19条第1項第1号)。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー等)

文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在の資格(入管法別表第一の三、第一の四)は、日本での就労を予定していない資格なので、そのままでは就労が認められません。これらの資格の者がアルバイト等の就労活動を行う場合、資格外活動の許可を受けることが必要です(入管法第19条第1項第2号・第2項)。

外国人雇用状況の届出

事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、以下の事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第10条第1項)。

氏名,在留資格,在留期間,その者が在留資格を有しない者であって監理措置や仮滞在による許可を受けて報酬を受ける活動を行う者である場合(報酬活動許可者)はこれらの許可を受けている旨及び被管理者又は仮滞在許可者のいずれに該当するか,生年月日,性別,国籍の属する国・地域,資格外活動許可を受けている場合はその旨,中長期在留者(3か月以下の在留期間の者や短期滞在者等以外を指します。入管法第19条の3)の場合は在留カードの番号,特定技能の場合は特定産業分野,特定活動の場合はその特に指定された活動,住所,雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地,賃金その他の雇用状況に関する事項

事業主は、先述の氏名や在留資格、在留期間などの事項を、在留カードや旅券・在留資格証明書などにより確認しなければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第11条第1項)。
資格外活動の許可を受けて就労する場合、在留カードや就労資格証明書により確認する必要があります(同施行規則第11条第2項)。
特定技能や特定活動の在留資格の場合、指定書により確認する必要があります(同施行規則第11条第3項・第4項)。
被監理者や仮滞在許可者である報酬活動許可者の場合、監理措置決定通知書や仮滞在許可書により確認する必要があります(同施行規則第11条第5項)。

外国人雇用状況の届出は、新たに外国人を雇い入れた場合は雇い入れた月の翌月10日までに、その雇用する外国人が離職した場合は離職した日の翌日から起算して10日以内に、当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出することにより行います(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第12条第1項)。

違反した場合の罰則

この届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金に処されます(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第40条第1項第2号)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、この違反行為をしたときは、その行為者を罰するだけでなく、その法人又は人も同様に処罰されます(同条第2項)。

まとめ

このように、外国人の雇用については確認するべき書類が多々あり、違反によっては刑罰を科されることになります。
外国人の雇用についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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外国公務員贈賄罪

2024-12-17

経済のグローバル化に伴い、日本の企業が国外に進出することが増えました。その中では、外国の公務員が関わる事業もあります。その際に、外国の公務員から賄賂を求められることもあります。このようなことを許せば国際的な競争条件が歪められ、国際取引の公正な競争が害されてしまいます。これを防ぐために、外国公務員贈賄罪が定められています。

外国公務員贈賄罪の趣旨

国際商取引における外国公務員への不正な利益供与が問題となっていたため、1997年12月にパリにおいて、我が国を含む33か国により、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」が締結されました。

この条約では、締約国は、「ある者が故意に、国際商取引において商取引又は他の不当な利益を取得し又は維持するために、外国公務員に対し、当該外国公務員が公務の遂行に関して行動し又は行動を差し控えることを目的として、当該外国公務員又は第三者のために金銭上又はその他の不当な利益を直接に又は仲介者を通じて申し出、約束し又は供与することを、自国の法令の下で犯罪とするために必要な措置をとる。」(第1条第1項)、「外国公務員に対する贈賄行為の共犯(教唆、ほう助又は承認を含む。)を犯罪とするために必要な措置をとる。外国公務員に対する贈賄の未遂及び共謀については、自国の公務員に対する贈賄の未遂及び共謀と同一の程度まで、犯罪とする」(第1条第2項)、「自国の法的原則に従って、外国公務員に対する贈賄について法人の責任を確立するために必要な措置をとる」(第2条)などと定められています。

これを受けて、日本では、不正競争防止法において、「外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止」が定められています(同法第18条)。

(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。
一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者
二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者
三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者
四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者
五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

規制の内容

「国際的な商取引」とは、国際的な商活動を目的とする行為、すなわち貿易及び対外投資を含む国境を超えた経済活動に係る行為を意味するとされています。

「営業上の利益」とは、事業者が営業を遂行していく上で得られる有形無形の経済的価値その他の利益一般とされています。「不正の利益」とは、公序良俗又は信義則に反するような形で得られる利益とされています。

取引の獲得や許認可の取得を目指して利益供与をするだけでなく、通関等の手続の遅延等の差別的な不利益な取り扱いを避ける目的で利益を供与することも該当します。

一方で、支払を行わないと暴行されたり殺害される可能性がある場合など、生命・身体に対する危険の回避を主な目的として、やむを得ずに行った利益供与等は、「不正の利益」を得る目的がないと判断される可能性があります。
参照 「外国公務員贈賄罪Q&A」

この規定に違反したときは、違反行為をした者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科されます(不正競争防止法第21条第4項第4号)。日本国内で行われた場合だけでなく、刑法第3条の例に従い、日本国外において違反行為をした日本国民についても適用されます(同条第10項)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関してこの違反行為をしたときは、法人も10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。

まとめ

このように、外国の公務員に対して利益供与をすると、行為者も企業も重い処罰を受けることになります。
企業の国際活動についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

企業が守るべき特定商取引法についての解説②

2024-12-06

1 特定商取引法の規制内容について

前回の記事では、特定商取引法の目的とその規制範囲について解説させていただきました。
では特定商取引法ではどのような行為について規制しているのでしょうか。
特定商取引法では、①行政規制、②民事的ルールの2種類の規制に大別されます。
①行政規制は、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて定められる規制です。
②民事的ルールは、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するために定められているルールのことをいいます。

2 行政規制

行政規制には、①氏名等の表示の義務付け、②不当な勧誘行為の禁止、③広告規制、④書面交付義務の4つがあります。
この規制に違反した場合には、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
①については、トラブルになった際の連絡先として機能する必要があるので、単に表示すればよいというのではなく、連絡が取ることが可能な連絡先を表示する必要があります。
また勧誘時には事業者名と勧誘目的であることを明示することが義務付けられています。
②についてしばしば問題になるのは虚偽の説明や、不当な威迫を行って消費者に契約を迫る行為などがあります。
これらの行為は悪質性が高いと判断される場合には、詐欺罪(刑法246条)や強要罪(刑法223条)が成立し、より重い刑事罰が科される場合があります。
③広告規制については虚偽広告、誇大広告をすることが禁止されています。広告の内容については、線引きが難しいところもありますので専門家に判断を仰ぐことがベターです。
④については、契約時に重要事項を記した書面を交付することが特定商取引法上義務付けられています。

実際に同法の違反によって検挙されたケース

3 民事的ルール

民事的ルールには、①クーリングオフ、②意思表示の取消、③損害賠償等の額の制限です。
これらは消費者を保護するための規定です。
これらの内容について法律で定められている記載義務に反して表示をしない場合や、虚偽の内容(クーリングオフの期間を偽るなど)を記載する、または表示すべき内容を記載していなかった場合には行政規制の対象となる場合があります。

4 企業がするべき対応

企業として特定商取引法の対象となる事業をする場合この規制に抵触しないように細心の注意を払う必要があります。
企業として準備する契約書類などに問題がないか確認することはもちろん、従業員が取引の際に守るべき事項をマニュアルにするなどして法令を遵守すことをしっかりと確認する必要があります。
マニュアルがしっかり作成されていれば、万が一従業員が独断で規制に反する取引を行ったとしても企業側が責任負うリスクを防ぐことができます。

今回の記事では特定商取引法で規制されている行為について解説させていただきました。
個々の事例においてこれらの規制に抵触するかについては法律の専門家に相談することをおすすめします。
あいち刑事事件総合法律事務所ではお困りの方に無料法律相談を実施して、お困りの点についてご相談に乗らせていただきます。また継続的に契約書の内容の確認や、取引内容の適法性について確認してほしいというニーズのある方向けに顧問契約もご用意しています。
初回の相談は無料で、WEB面談での対応も可能ですので、まずは一度気軽にご相談してみてください。

次回の記事ではこれらの規制に違反してしまった場合には、企業としてどのような影響があるのかについて解説させていただきます。

経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

廃棄物処理法の営業許可②

2024-11-29

【事例】
Aさんは、京都市内で産業廃棄物の収集運搬を行う会社であるⅩ社に長年勤めていました。
Aさんは、家庭の事情をきっかけに、それまで勤めていた会社を退職し、地元である滋賀県高島市で、自ら産業廃棄物の収集運搬を行う会社を立ち上げようと考えました。
AさんはX社に勤めていた経験から、役所で手続きが必要だったり、細かなルールが定められていたりするのは知っていましたが、具体的にどのような手続きをすればいいのかまではわかりませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下では「廃棄物処理法」といいます。)が、事業を細分化し、許可ごとに行える事業を分けたうえで、事業を行う会社にはその事業に対応する許可を取るように求めていることをお伝えしました。

そして、廃棄物処理法が細分化している事業の種類のうち、廃棄物の種類に着目した分類を見てきました。

今回は、業態に着目した分類を見ていきます。

2 収集運搬業と処分業

廃棄物処理法は、廃棄物の収集又は運搬を行う者と処分を行う者とそれぞれ別個の許可を得るように求めています。

まず、収集運搬業は、廃棄物を排出する事業者から廃棄物を回収し、処分業者のもとへと運ぶという業態です。
前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法7条1項本文)、産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条1項本文)、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条の4第1項本文)の3種類です。
ちなみに、特別管理一般廃棄物収集運搬業許可というものが別途ある訳ではなく、一般廃棄物収集運搬業許可の中で行うことができます。
ただし、「一般廃棄物処理基準(特別管理一般廃棄物にあつては、特別管理一般廃棄物処理基準)に従い、一般廃棄物の」収集運搬をしなければならないとされています(廃棄物処理法7条13項)。

次に、処分業は、処理施設での焼却等の処分や最終処分場での埋立て等の処分などといった処分を行う業態です。
こちらも前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物処分業許可(廃棄物処理法7条6項本文)、産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条6項本文)、特別管理産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条の4第6項本文)の3種類です。
特別管理一般廃棄物処分業許可がないというということ、その場合でも廃棄物処理法7条13項により、特別管理一般廃棄物処理基準に従う必要があることは、収集運搬業と共通です。

3 施設許可

さて、Aさんのように収集運搬業の許可を求める場合と異なり、処分業の許可を求める場合には、その処分に必要な処理施設が必要になります。
そして、この処理施設を設置するのにも都道府県知事の許可が必要となります。
この廃棄物処理施設設置許可についても、一般廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法8条1項)と産業廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法15条1項)があります。

今回は、廃棄物処理法の許可について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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企業が守るべき特定商取引法についての解説①

2024-11-19

今回の記事からは数回に分けて特定商取引法に関しての解説をさせていただきます。
特定商取引法については、これに違反したとして逮捕される例が少なくありません。
また逮捕された場合には、消費者保護の観点から被疑者名や会社名が実名で報道されるケースが一般的に多いです。
ですので経営する会社が特定商取引法違反で報道されることになってしまえば、大きく企業イメージを損なってしまいます
例えば、次に挙げる記事のような事例です。

美容商品の販売契約に関してクーリングオフを説明しなかったとして、大阪府警は19日、名古屋市にある美容関連商品卸売業Xの実質経営者Aさんら男性5人を特定商取引法違反(不実の告知など)容疑で逮捕した。
府警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は2023年1~3月、同社から仕入れた化粧品を販売できる内容の契約を男女3人と締結。契約解除ができるクーリングオフ制度は適用されないと虚偽の説明をしたり、制度の記載がない契約書を渡したりしたとしている。
契約者は市場価格より安価で商品を同社から入手し、第三者に売って利ざやを得られるとする仕組みだった。(以下略)
(毎日新聞令和6年6月19日付「化粧品転売契約、クーリングオフ説明せず。特商法違反疑い、5人を逮捕」から一部引用,当該報道記事は既に削除済み)

本記事では特定商取引法がどのような法律であるか、またどのような取り引きに関して適用があるのかについて解説させていただきます。
この記事を読んでいただくことで、自社が行っている取引や、行おうとしている取引に特定商取引法の規制対象になるかが分かるかと思います。

1 特定商取引法について

特定商取引法は、正式名称を特定商取引に関する法律といいますが、本記事では「特定商取引法」と省略して記載しています。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています(消費者庁のHPより引用。https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/)
特定商取引法は元々「訪問販売等に関する法律」という名称の法律として施行されており、訪問販売に関する規制を内容としていました。
それが契約類型の多様化に伴って、改正が繰り返されて現行の特定商取引法となっているのです。

2 特定商取引法が規制対象としている取引について

次に特定商取引法が規制対象としている取引に関して解説します。
特定商取引法では7つの契約類型について規制対象としています。
①訪問販売、②訪問購入、③通信販売、④電話勧誘販売、⑤連鎖取引販売、⑥特定継続的役務提供、⑦業務提供誘引取引の7つになります。
それぞれの取引例については、先述の消費者庁のページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/)も参考にしてください。

近年しばしば問題になる取引としては、記事にあったような、ある会社の商品を有償で提供するのでそれを販売して利益を得てくださいというような取引があり、これは⑦の類型にあたります。簡単に言うと「情報商材ビジネス」です。
コロナウイルスの流行やフリマサイトの普及などに伴い自宅で出来る副業として⑦のような取引や事業が増えているといえます。
また継続的にエステを受ける、語学を学ぶといった契約についても、⑥の類型にあたり特定商取引法の規制対象になります。
このように規制対象は当初の訪問販売に限らず非常に広範になっており、これから始めようとしている事業が特定商取引法の規制対象になることは珍しくありません。

次回の記事では、特定商取引法の具体的な規制内容について解説させていただきます。

経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。

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企業と個人情報保護

2024-11-15

情報通信技術の発達により、企業も大量の情報を扱うようになりました。その中には個人の機微にかかわる重要な情報も含まれます。このような情報は厳重に管理する必要があり、違反があれば処罰も必要です。ここでは、企業の個人情報の保護について解説します。

個人情報保護法

個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、「デジタル社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、個人情報を取り扱う事業者及び行政機関等についてこれらの特性に応じて遵守すべき義務等を定めるとともに、個人情報保護委員会を設置することにより、行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的」としています(第1条)。

個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(第2条第1項第1号)や個人識別符号(第2条第2項)が含まれるもの(第2条第1項第2号)をいいます。

企業については「第四章 個人情報取扱事業者等の義務等」において定められています。

個人情報データベース等(個人情報保護法第16条第1項・個人情報の保護に関する法律施行令(個人情報保護法施行令)第4条。個人情報を含む情報の集合物であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものなど)を事業の用に関している企業などは個人情報取扱事業者とされます(個人情報保護法第16条第2項)。

顧客の氏名などを検索すれば出せるようにすれば該当するので、顧客の氏名等の情報をデータとして保存している企業であれば、個人情報取扱事業者に該当するでしょう。

個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならず(同法第17条第1項)、あらかじめ本人の同意を得ないで、この利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはなりません(同法第18条第1項)。
個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはなりません(同法第19条)。
個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはなりません(同法第20条第1項)。

個人情報取扱事業者(法人の場合は、その役員)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部または一部を複製し、又は加工したものを含みます。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(個人情報保護法第179条)。

法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関して上記のような違反をしたときは、法人も1億円以下の罰金に処されます(個人情報第184条第1項第1号)。

個人情報保護委員会

個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者等やその関係者に対し、個人情報等の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該個人情報取扱事業者等その他の関係者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、個人情報等の取扱いに関し質問をさせ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができます(個人情報保護法第46条第1項)。

委員会は、第四章の規定の施行に必要な限度において、個人情報取扱事業者等に対し、個人情報等の取扱いに関し必要な指導及び助言をすることができます(個人情報保護法第47条)。

委員会は、個人情報取扱事業者に違反がある場合、個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができます(個人情報保護法第148条第1項)。

この勧告を受けた個人情報取扱事業者等が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときは、個人上保護委員会は、当該個人情報取扱事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができます(個人情報保護法第148条第2項)。

また、個人情報保護委員会は、一定の違反の場合において個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができます(同条第3項)。これらの命令をした場合において、その命令を受けた個人情報取扱事業者等がその命令に違反したときは、その旨を公表することができます(同条第4項)。

これらの命令に違反した場合には、当該違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(個人情報保護法第178条)。法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関しこの違反をしたときは、法人も1億円以下の罰金に処されます(同法第184条第1項第1号)。

個人情報取扱事業者(法人の場合は、その役員)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部または一部を複製し、又は加工したものを含みます。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(個人情報保護法第179条)。法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関しこの違反をしたときは、法人も1億円以下の罰金に処されます(同法第184条第1項第1号)。

まとめ

以上のように、企業は個人情報の適切な管理が求められます。
個人情報保護について不安のある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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【事例紹介】風俗営業法違反での行政処分を放置していた結果逮捕された事例①

2024-10-22

【事例】
東京・歌舞伎町のコンセプトカフェで未成年の従業員に接待させたとして、警視庁は、店の経営者の男Aと店長の女Bの両容疑者を風営法違反(無許可営業)などで逮捕し、26日に発表した。
いずれも容疑を認めているという。
少年育成課によると、両容疑者は共謀して(中略)コンセプトカフェXで、未成年の少女(17)を女性従業員として雇ったうえ、都公安委員会から風俗営業の許可を得ずに、客の30代男性に酒をついだり、話し相手をしたりするなどの接待をさせた疑いがある。
男は、この女性従業員が未成年と知りながら雇っていたといい、「店で未成年を5~6人ほど雇っていた」と供述しているという。
店は(中略)、これまでも無許可の接待行為について行政指導を受けていた。
(朝日新聞DIGITAL 令和6年9月26日「歌舞伎町のコンカフェで無許可接待、従業員に未成年も 警視庁が摘発」より一部抜粋)

今回は風営法違反で逮捕された事例を基に、風営法ではどのような規定があるのか、規定違反に関する行政指導を無視した場合にどうなるかについて解説します。
この記事では風営法の規定について、次回の記事では風営法違反の行政指導の意義や、それを放置することによる影響を解説します。

1 風営法の規定について

風営法は正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といいます。
この記事ではこの正式名称ではなく、風営法と略称を用いて解説させていただきます。
風営法では法律名にもある通り、「風俗営業」に関する法律になっています。

そして「風俗営業」については風営法第2条に規定があります。

第二条この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
二喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)
三喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの
四まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
五スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)

通常の飲食店との違いでは風営法第2条1号の「客の接待をして客に遊興または飲食をさせる営業」であるかが重要な違いになります。当然「風俗営業」にあたるかは、お店の実態によって判断されます。
したがって表向きは「居酒屋」としていても、実際にはキャバクラのように、女性に接客をさせているようであれば、「風俗営業」を行っていると判断されます。

2 上記事例で問題になった風営法違反

記事の内容からの推測になりますが記事で摘発された店舗については、
①風俗営業の許可を得ずに営業したこと(無許可営業)
②18歳未満のものを雇用していたこと(年少者雇用)
の2点で風営法の規定に違反していたと考えられます。
以下でそれぞれの規定に関して説明させていただきます。

①無許可営業
風営法3条で風俗営業を行う場合は、風俗営業の種別に応じて許可を受けなければならないと定められています。
先ほど説明したように「風俗営業」を行っているかは、お店の業務の実態により判断されます。
実際には「風俗営業」行っているのに、「風俗営業」を行うための許可を取っていない場合(例:飲食店営業の許可しか取っていない)には、無許可営業にあたります。

②年少者使用
「風俗営業」に該当するお店では、18歳未満の者に客の接待をさせることを禁止しています(風営法第22条3号)。
これも先ほどと同様に、表向きは居酒屋のように飲食店を装い、実際には風俗営業にあたるような営業をして、その営業に際して18歳未満の者に接待をさせた場合には、この規定に違反することになります。

このように営業内容が風俗営業にあたるかによって、営業の際に必要な許可や働かせてよい者の年齢規制が変わってきます。
このような店舗を開業される経営者の方や風営法に関して調査や捜査を受けられた経営者、労働者の方は、風営法に詳しいあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に是非一度ご相談ください。
次回の記事では風営法違反が明らかになった場合の手続きの流れや、行政処分を無視してしまった場合の流れについて解説させていただきます。

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廃棄物処理法の営業許可①

2024-10-01

【事例】
Aさんは、京都市内で産業廃棄物の収集運搬を行う会社であるⅩ社に長年勤めていました。
Aさんは、家庭の事情をきっかけに、それまで勤めていた会社を退職し、地元である滋賀県高島市で、自ら産業廃棄物の収集運搬を行う会社を立ち上げようと考えました。
AさんはX社に勤めていた経験から、役所で手続きが必要だったり、細かなルールが定められていたりするのは知っていましたが、具体的にどのような手続きをすればいいのかまではわかりませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

Aさんが起業しようと考えている産業廃棄物の収集運搬という事業は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法や廃棄物処理法と省略して呼ばれることがあります。以下では「廃棄物処理法」といいます。)で規制されています。
この法律は、「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的」としています(廃棄物処理法1条)。

廃棄物処理法は、このような目的から、事業を細分化し、許可ごとに行える事業を分けたうえで、事業を行う会社にはその事業に対応する許可を取ることを求めています。
結論から言えば、Aさんは、少なくとも滋賀県知事から産業廃棄物収集運搬業許可を得る必要があります(廃棄物処理法14条1項本文)。
このような結論に至る前提として、まずは廃棄物処理法が細分化している事業の種類を見ていきます。

2 廃棄物の種類

⑴ 産業廃棄物と一般廃棄物
まず、廃棄物処理法は、誰が出した廃棄物かによって必要な許可を分けています。
それが産業廃棄物と一般廃棄物という区分です。

産業廃棄物は、主には、事業活動にともなって生じた廃棄物のうち、燃え殻、紙くず、廃プラスチック類、金属くず、がれき類、ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くずなど、廃棄物処理法2条4項1号や廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令で定められている一定のものをいいます。

一方の一般廃棄物は、「産業廃棄物以外の廃棄物」と定められています(廃棄物処理法2条2項)。
一般家庭が排出する廃棄物が中心ですが、それ以外にも事業者が排出する廃棄物でも一定のものが含まれます。
例えば、紙くずは、紙や紙加工品の製造業者、新聞業者、出版業者などといった一定の事業を行っている事業者が排出する場合のみ産業廃棄物となりますので(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令2条1号)、対象外の事業者が排出する紙くずは一般廃棄物となります。

⑵ 特別管理廃棄物
また、誰が出した廃棄物かという区分とは別に、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれ」があるなど特に注意が必要な廃棄物は、特別管理廃棄物とされています。
つまり、特別管理産業廃棄物(廃棄物処理法2条5項)と特別管理一般廃棄物(廃棄物処理法2条3項)という区分があります。
特別管理産業廃棄物の例としては、一定の廃石綿(アスベスト)、一定の廃酸や廃アルカリなどです(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令2条の4)。
特別管理一般廃棄物の例としては、病院などから出た感染性廃棄物などです(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令1条)。

今回は、廃棄物処理法の許可について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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福祉施設の職員による虐待事案について①

2024-09-24

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

近年、施設職員による虐待事案は増加傾向にある

近年、福祉施設の職員による虐待事案は増加傾向にあります。ここでは、そのなかでも虐待事案数の多い高齢者虐待、障害者虐待について、まずその実態からお話します。

高齢者虐待の実態

厚生労働省において実施した令和4年度の高齢者虐待への対応状況に関する調査結果(令和5年12月公表)によると、養護者による高齢者虐待以外の養介護施設従業者等(老人ホーム等で業務に従事する人を指します。)による高齢者虐待は、相談・通報件数2,795件(対前年度405件(16.9%)増)、虐待判断件数856件(対前年度117件(15.8%)増)となっています。養護者による虐待事案が、対前年度と比較して横ばい傾向にあることからしますと、近年、施設職員による虐待事案の増加が目立ちます。

虐待の種別は、身体的虐待(57.6%)が最も多く、心理的虐待(33.0%)、介護等放棄(23.2%)、経済的虐待(3.9%)、性的虐待(3.5%)の順になっています。
虐待の発生要因は、教育・知識・介護技術等に関する問題(56.1%)が最も多く、職員のストレスや感情コントロールの問題(23.0%)、虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等(22.5%)の順になっています。

障害者虐待の実態

厚生労働省において実施した令和4年度の障害者虐待への対応状況に関する調査結果(令和5年12月公表)によると、養護者による障害者虐待以外の障害者福祉施設従業者等(障害者支援施設等で業務に従事する人を指します。)による障害者虐待は、相談・通報件数4,104件(対前年度1.28倍)、虐待判断件数956件(対前年度1.37倍)となっています。養護者による虐待事案は前年度と比較して横ばいに近く、障害者虐待についても、近年、施設職員による虐待事案の増加が目立っています。

虐待の種別は、身体的虐待(52%)が最も多く、心理的虐待(46パーセント)、性的虐待(14%)、放棄、放置(10パーセント)、経済的虐待(5パーセント)の順になっています。虐待の発生要因は、教育・知識・介護技術等に関する問題(74%)が最も多く、倫理観や理念の欠如(58%)、職員のストレスや感情コントロールの問題(57%)の順になっています。

福祉施設の職員による虐待事案について、この続きは今後の記事で解説していきます。

最後に

福祉施設の職員による虐待は後で絶ちません。虐待防止の取り組み、あるいは、実際に虐待が疑われる事案が発生した際の対応等については弊社の弁護士にご相談ください。

輸出に係る犯罪―外国為替及び外国貿易法違反

2024-08-06

経済のグローバル化に伴い、企業の外国との取引はさらに増加しました。一方で、外国に輸出した商品が兵器転用され、独裁国家やテロリストに利用され、我が国や国際社会の安全を脅かす可能性も高まっています。このような事態に陥らないよう、対外取引を管理する必要があります。

ここでは、そのための規制のひとつとして、「外国為替及び外国貿易法」について解説します。 外国為替及び外国貿易法 外国為替及び外国貿易法(外為法)は、第1条で「この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要最小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期し、もつて国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と定めています。

本邦(第6条第1項第1号)内に主たる事務所を有する法人の代表者等や本邦内に住所を有する人又はその代理人等が、外国においてその人の財産又は業務についてした行為にも適用されます(第5条)。

外為法では、以下の事項が規制されています。
○支払等(第3章。第16条から第19条)
○資本取引等(第4章。第20条から第25条の2)
○対内直接投資等(第5章。第26条から第46条)
○外国貿易(第6章。第47条から第54条)
また、支払等の報告や輸出を業として行う者が輸出等を行うにあたって順守すべき基準等についても定めています。
○報告等(第6章の2。第55条から第55条の9)
○輸出等遵守基準(第6章の3。第55条の10から第55条の12)

輸出についての規制

輸出については、「第6章 外国貿易」にて規制されています。
第47条には「貨物の輸出は、この法律の目的に合致する限り、最少限度の制限の下に、許容されるものとする。」と定め、輸出については最小限とすることを原則としています。
第48条第1項では輸出の許可等について定められており、「国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。」とされています。

この政令として「輸出貿易管理令」が制定されています。同政令の第1条では、別表で定める貨物について、一定の地域へ輸出する際には、経済産業大臣の許可を受けなければならないとしています。
噴霧乾燥器など軍用の細菌製剤の開発、製造若しくは散布に用いられる装置又はその部分品(別表第一、三の二、(二)5の2)など、軍用に用いられるおそれのあるものは、どの地域に輸出するのであっても、許可が必要となります。

そのほかの貨物や地域であっても、別表で定める一定の輸出については、経済産業大臣の承認を受けなければならないとしています(輸出貿易管理令第2条)。 この許可を受けないで輸出貿易管理令で定める貨物の輸出をしたときは、7年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。当該違反行為の目的物の価格の5倍が2000万円を超えるときは、罰金は、当該価格の5倍以下となります。(第69条の6第1項第2号)。
核兵器等又はその開発等のために用いられるおそれが特に大きいと認められる貨物を許可なく輸出したときはさらに重くなり、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。当該違反行為の目的物の価格の5倍が3000万円を超えるときは、罰金は、当該価格の5倍以下になります(第69条の6第2項第2号)。

また、輸出しようとする者に対して、外為法第48条第1項の規定の確実な実施を図るため必要があると認めるときは、他の地域を仕向地として輸出する場合も許可を受ける義務を課することができます(外為法第48条第2項)。
また、国際収支の均衡の維持のため、外国貿易及び国民経済の健全な発展のため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、対抗措置(第10条第1項)を実施するために必要な範囲内で、承認を受ける義務を課することができます(外為法第48条第2項)。

これらの許可を受けないで輸出貿易管理令で定める貨物の輸出をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます。当該違反行為の目的物の価格の5倍が1000万円を超えるときは、罰金は、当該価格の5倍以下となります。(第69条の7第1項第3・4号)。

法人の代表者などがこうした違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人も次の通り罰金刑を科されます(第72条第1項)。
①第69条の6第2項 10億円以下(当該違反行為の目的物の価格の5倍が10億円を超えるときは、当該価格の5倍以下)の罰金刑
②第69条の6第1項 7億円以下(当該違反行為の目的物の価格の5倍が7億円を超えるときは、当該価格の5倍以下)の罰金刑
③第69条の7 5億円以下(当該違反行為の目的物の価格の5倍が5億円を超えるときは、当該価格の5倍以下)の罰金刑

捜査への対応

外為法違反事件などは、国の安全保障にかかわるため、警察や検察も厳しい取り調べを行います。
ときには違法な捜査を行い、裁判所もこれを信用して保釈などを認めない、といった事態に巻き込まれる可能性があります。

「大川原化工機事件」では、噴霧乾燥器が兵器転用が可能になるのに経産省の許可を得ずに輸出したとして、社長や専務、相談役が逮捕・起訴され、検察官の公訴取り消しで刑事事件が終結しました。その間、社長たち長期間保釈も認められず拘束され、相談役の方が亡くなるという、痛ましい事件となりました。

被疑者・被告人には黙秘権があり、また供述調書の訂正申し立てや署名押印拒否の権利もあります。ですが、逮捕され、過酷な取り調べを受ける中で、これらの権利を全うすることは非常に難しいことです。このような事件では接見禁止がつき、家族や会社関係者とも面会できず、精神的にも追い詰められかねません。

こうした事件で疑いをかけられたり、逮捕されたときは、早急に弁護士に依頼してください。頻繁に接見を行い、捜査対応について必要なサポートをします。
万が一違法行為が行われたときは、警察や検察に抗議して違法な捜査をやめさせます。また、弁護士会の支援を求めたり、マスコミに告発するなどして、社会的にも違法捜査を許さない状況に持っていきます。 輸出についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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