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企業経営者が知っておくべき「司法取引」について①

2025-01-07

1 はじめに

平成28年に行われた刑事訴訟法の改正によって日本でも司法取引と呼ばれる制度が平成30年6月より導入されています。
司法取引で対象となる犯罪には企業経営とも密接にかかわる犯罪も含まれていますので、企業経営を行う者にとっても重要な制度であるといえます。
今回は司法取引制度の概要や、企業経営者としてどのような点に留意して対応するべきか、具体的な事例を用いて解説させていただきます。

参考 令和2年版犯罪白書 司法合意制度

2 司法取引制度の概要

日本で導入された司法取引制度は検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者または被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するという制度です。
この制度に関しては刑事訴訟法350条の2~350条の15に根拠があります。

日本で導入された司法取引制度の特徴を簡単に挙げるならば
・他人の犯罪の証明に対する協力を内容とすること(自分のした犯罪に対する自白などの協力には後述する見返りは得られません)
・見返りとしては自身の事件について不起訴や、求刑を軽くしてもらえる(罰金を求刑するないしは実刑判決を求刑しないなど)ことが規定されていること
・取引の相手方は検察官であり、警察官は取引の相手方にならないこと
・弁護人の関与が必須であること
という点です。日本で導入された司法取引制度はアメリカの制度を参考にして導入されたものですが、上記の点が日本で導入された司法取引制度の特徴になります。

3 司法取引の対象となる犯罪類型

司法取引の対象となる犯罪類型は多岐にわたりますが企業に密接に関連する犯罪や法令違反の一部を挙げると
・贈収賄などの公務員関連犯罪
・詐欺、横領、背任などの財産犯
・談合などの規制する独占禁止法違反
・インサイダー取引などの規制する金融商品取引法違反
・企業秘密の漏洩などを規制する不正競争防止法違反
・特許法違反
などがあります。
ご覧いただいて分かるように企業経営や取引に関して発生する刑事事件については基本的に司法取引制度の対象事件になると考えていただいて差支えないかと思います。

このように近年導入された司法取引は企業を経営する者にとって密接にかかわる制度にも拘らず、認知度はまだまだ高いとはいえません。
そして捜査対象となった場合に、安易に捜査機関からの誘いに応じて協力を申し出ることは自身のメリットになるばかりでなく、自分で自分の首を絞めることにもなりかねません。
そこで次回の記事では司法取引制度の利用方法やその注意点について詳しく解説させていただきます。

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営業秘密の侵害―企業と不正競争防止法

2025-01-03

企業の営業秘密が外部からの侵入により奪われたり、退職者が営業秘密を持ち出すことが問題となっています。
先日報道された事案としても,回転ずしの運営会社の社長が転職前の競合他社の食材の原価や仕入れ先に関するデータを持ち出していた事件は社会に衝撃を与えました。
営業秘密の侵害は個人だけでなく企業も責任を負うことになります。ここでは、不正競争について解説します。

営業秘密とはなにか

「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいいます(不正競争防止法第2条第6項)。
まとめますと、以下の3つの用件を備えるものが営業秘密にあたります。
○有用性:当該情報自体が客観的に事業活動に利用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つものであること
○秘密管理性:秘密保有企業の秘密管理意思が、秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保されていること
○非公知性:保有者の管理以外では一般に入手できないこと
参照:経済産業省HP「営業秘密~営業秘密を守り活用する~」

自社の技術データ、ノウハウ、顧客名簿などが営業秘密に当たります。

営業秘密の侵害とはなにか

不正競争防止法では、「不正競争」と定められている行為がいくつもあります(不正競争防止法第2条第1項第1号から第22号)。営業秘密を侵害する行為は、第4号から第9号に規定されています。
窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為は「営業秘密不正取得行為」とされています(同法第2条第1項第4号)。
営業秘密と知ってて不正に取得したり使用や開示をする場合(同法第2条第1項第4号)だけでなく、営業秘密不正取得行為であることを重大な過失により知らなかったり、後に営業秘密不正取得行為が介在したことを知りながら営業秘密を使用した場合等も「不正競争」に当たります(同法第2条第1項第5号から第9号)。
冒頭の回転ずしの社長の事案は、不正の手段により営業秘密を取得する営業秘密不正取得行為又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(同法第2条第1項第4号)に当たるものと考えられます。

営業秘密侵害に対する罰則

このような営業秘密の侵害には重い刑罰が加えられます。
不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為又は管理侵害行為により、営業秘密を取得した者(同法第21条第1項第1号)、詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者(同項第2号)、営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、①営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体)又は営業秘密が化体された物件を横領する、②営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成する、③営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装する、のいずれかの方法で領得した者(同項第3号)等は、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(同法第21条第1項柱書)。

「詐欺等行為」とは、人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいい、「管理侵害行為」とは、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(パスワード等によりアクセス制限をしているパソコン等に他人のパスワードやIDを使ってアクセスする行為を指します。不正アクセス禁止法第2条第4項)、その他の営業秘密保有者の管理を害する行為をいいます(不正競争防止法第21条第1項第1号)。

日本国外において使用したり開示する等の目的で、詐欺等行為等により営業秘密を取得した場合は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(同法第21条第3項柱書)。日本国外に流出するような場合は、さらに被害が大きくなり、経済安全保障の観点から、罰金額もより大きくなっています。

営業秘密侵害に対する会社の責任

役員や従業員が営業秘密を侵害する行為をした場合、企業も責任を問われます。法人の代表者や従業者等が、法人の業務に関し、違反行為をした場合は、法人も罰金刑を科されます(同法第22条第1項柱書)。日本国外で使用する目的等のため、不正の利益を得る等の目的で、詐欺等行為等により営業秘密を取得する等の場合は、上記のように被害の大きさや経済安全保障の観点から、罰金額は高くなっており、10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。それ以外の営業秘密の取得等の場合は、5億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第2号)。

まとめ

このように、営業秘密を侵害すると、行為者だけでなく企業も大きな責任を負わされます。
営業秘密の侵害ではないかなど不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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第三者委員会について⑤

2024-12-31

第三者委員会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回記事⇒

https://compliance-bengoshi.com/daisansyatyousaiinkai4

そもそも第三者委員会とは何か

日本弁護士連合会が公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)では、第三者委員会について、「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」と定義しています。

第三者委員会について、顧問弁護士の立場との違い

結論から言いますと、第三者委員会は、企業に対する助言者や味方という立場にはありません。
もちろん、第三者委員会が企業との間でコミュニケーションを図ることは必要かつ重要なことです。そして、第三者委員会は、調査を進めるにつれ、当該不祥事の事案の内容等を詳しく把握していきますので、調査が進むにつれて、企業の側も各ステークホルダーへの対応方針等について、第三者委員会から助けを求めたくなる場合もあると考えられます。
しかし、第三者委員会は、事実関係の調査、事実の評価、原因分析及び再発防止策の提言を目的としており、経営陣は第三者委員会にとってあくまで調査対象としての位置づけです。そうであれば、第三者委員会の立場は、企業の助言者ないし味方的な立場にある顧問弁護士の立場とは異なるものです。
そのため、企業としては、危機対応を進めるためには、第三者委員会を設置したとしても、それとは別に、顧問弁護士等から適切な助言を得る体制を整えておく必要があります。

第三者委員会と顧問弁護士との役割分担

不祥事により第三者委員会を設置した企業には、企業に寄りそって経営陣から相談を受けて危機対応を助言してくれる人が必要になります。この役割を担うのに最適なのは従前から企業の実情に詳しい顧問弁護士です。その必要性は、第三者委員会を設置した場合でも、いささかも変わることはありません(なお、ガイドライン4頁では、顧問弁護士は企業と利害関係があるため、第三者委員会の委員として就任すべきでないとれています)。

最後に

企業で不祥事が発生し、第三者委員会の設置を考えておられる企業経営者等の方、あるいは、未だ不祥事が起きていなくても、企業でおこる法律相談や不安ごとについて、平素から継続的に相談を受けてくれる顧問弁護士を真剣に探しておられる企業経営者等の方は、早めに弁護士にご相談ください。

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契約書の重要性⑦

2024-12-27

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回までの記事では、契約書に関する基本的なルール、署名や押印の重要性などについてみてきました。


今回は、契約書のタイトルに関して解説していきます。

2 書類のタイトルと契約書の関係

一般の方も、書類のタイトルが「賃貸借契約書」、「消費貸借契約書」、「売買契約書」など「〇〇契約書」というタイトルの書類が契約書に当たるのは容易にご理解いただけると思います。
逆に「〇〇契約書」といったタイトルでない書類は、契約書ではないというイメージをお持ちではないでしょうか。
しかし、この理解は誤りです。

契約書とは、あくまで2人以上の当事者が結ぶ権利や義務に関する合意の内容を書面にしたものです。
つまり、「契約書」というタイトルである必要はないのです。
例えば、「合意書」などといったタイトルはもとより、「覚書」や「念書」などといったタイトルであったとしても、当事者同士が権利や義務について合意した内容を記載しているのであれば契約書といえるのです。

3 契約書のタイトルと法的な効果、拘束力

それでは、どのようなタイトルであっても契約書といえるのだとして、タイトルによって法的な効果や拘束力は変わるのでしょうか。
例えば、「覚書」よりも「合意書」や「契約書」といったタイトルの書類の方が、法的な効果や拘束力が強い書類だという印象を持つのではないでしょうか。
しかし、これも誤りです。

契約書がどのような法的な効果を持つのか、どの程度の拘束力を持つのかというのは、あくまで契約書の中身、つまり、どのような内容の合意をしたのかどうかで決まります。
そのため、契約書のタイトルが「〇〇契約書」であろうと「〇〇に関する合意書」であろうと「〇〇に関する覚書」であろうと、その中身が同じなのであれば、法的な効果や拘束力は基本的に同じなのです。

もっとも、当事者が合意を結んだ経緯などから、例えば強い拘束力を持たすつもりがなく、そのことを反映させるために、契約書の中にそのような事項を記載するのに加えて、タイトルもあえて「契約書」ではなく「覚書」にしたというような場合もあるかと思います。
しかし、この場合も、あくまで当事者が合致した意思がどのような内容だったか(この例でいえば強い拘束力を持たさないという意思)、契約書の内容がどうだったかというのが重要で、タイトルのみで一義的に決まっているわけではないのです。

最後に

今回は、契約書のタイトルについて解説していきました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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第三者委員会について④

2024-12-24

第三者委員会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回記事⇒

そもそも第三者委員会とは何か

日本弁護士連合会が公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)では、第三者委員会について、「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」と定義しています。

第三者委員会の調査報告書の記載内容は誰が決めるのか

ガイドラインでは、調査報告書の起案権は第三者委員会に専属するとされています(ガイドライン3頁)。
これは、第三者委員会の独立性と中立性を担保するために設けられたものです。
第三者委員会が作成した報告書に対して、企業側からその記載内容についていろいろと意見を述べるなどし、第三者委員会がそれに応じるようでは、ステークホルダーに来する説明責任を果たすという第三者委員会の役割は到底期待できません。企業は、調査を受ける立場に徹すべきです。ただし、明らかな誤記や、勘違いに基づく事実認定を発見した場合は別であり、第三者委員会にその旨申告して、調査報告書の訂正を求めるべきことは当然といえます。これは調査報告書の記載の正確性の問題だからです。

調査報告書の記載内容について

ガイドラインでは、第三者委員会は、調査により判明した事実とその評価を、企業の現在の経営陣に不利となる場合であっても、調査報告書に記載するとされています(ガイドライン3頁)。

調査報告書の取扱いについて(ガイドライン3頁)

第三者委員会は、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会であることから、調査結果(調査報告書)の提出を受けた企業は、これを遅滞なく、不祥事に関係するステークホルダーに対して開示することが原則であるとされています。
なお、ステークホルダーに対する説明責任を果たすという観点からは、関係者の役職名がわかれば足り、個人名は必ずしも必要ではない場合があります。第三者委員会の調査報告書が公表されることを踏まえると、実名の公表は、その者に対する名誉毀損となる可能性もあります。そのため、このような場合には、調査報告書の一部を非開示とし、あるいは匿名化する等の対応が考えられます。第三者委員会は、必要に応じて、調査報告書(原文)とは別に開示版の調査報告書を作成することができます。非開示部分の決定は、企業の意見を聴取して、第三者委員会が決定します。

第三者委員会について、この続きは今後の記事で解説していきます。

最後に

第三者委員会のメンバーを構成するときに弁護士がその主要なメンバーとなるのが通常です。それは弁護士は、その職務上、事実調査や法的な判断などを日頃から業務として行っているので、調査が正確に行われる蓋然性が高いということにあります。
企業で不祥事が発生し、第三者委員会設置を考えておられる、あるいは、不祥事が起きていなくても、不祥事の事前の回避を真剣に考えておられる企業経営者等の方は、早めに弁護士にご相談ください。

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外国人の雇用について

2024-12-20

グローバル化が進み、外国人の日本での就業が多く見られるようになっています。その一方で、文化の違いなどから日本人の生活者とのトラブルも見受けられます。
外国人が適正に就労できるよう、外国人の雇用についても厳格な規制が設けられています。
ここでは、外国人の雇用の際のルールについて解説します。

外国人の雇用が可能な在留資格

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、日本人と同様にわが国で暮らしていますので、就労活動に制限はありません。これらは出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第二の在留資格で、別表第一の在留資格のような制限はありません。

一方、別表第一の在留資格ですと、どのような在留資格の外国人でも雇用できるわけではありません。

以下の一定の活動を目的として在留する外国人(別表第一の一、第一の二、第一の五)は、その在留資格に定められた範囲で終了が認められます(入管法第19条第1項第1号)。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー等)

文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在の資格(入管法別表第一の三、第一の四)は、日本での就労を予定していない資格なので、そのままでは就労が認められません。これらの資格の者がアルバイト等の就労活動を行う場合、資格外活動の許可を受けることが必要です(入管法第19条第1項第2号・第2項)。

外国人雇用状況の届出

事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、以下の事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第10条第1項)。

氏名,在留資格,在留期間,その者が在留資格を有しない者であって監理措置や仮滞在による許可を受けて報酬を受ける活動を行う者である場合(報酬活動許可者)はこれらの許可を受けている旨及び被管理者又は仮滞在許可者のいずれに該当するか,生年月日,性別,国籍の属する国・地域,資格外活動許可を受けている場合はその旨,中長期在留者(3か月以下の在留期間の者や短期滞在者等以外を指します。入管法第19条の3)の場合は在留カードの番号,特定技能の場合は特定産業分野,特定活動の場合はその特に指定された活動,住所,雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地,賃金その他の雇用状況に関する事項

事業主は、先述の氏名や在留資格、在留期間などの事項を、在留カードや旅券・在留資格証明書などにより確認しなければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第11条第1項)。
資格外活動の許可を受けて就労する場合、在留カードや就労資格証明書により確認する必要があります(同施行規則第11条第2項)。
特定技能や特定活動の在留資格の場合、指定書により確認する必要があります(同施行規則第11条第3項・第4項)。
被監理者や仮滞在許可者である報酬活動許可者の場合、監理措置決定通知書や仮滞在許可書により確認する必要があります(同施行規則第11条第5項)。

外国人雇用状況の届出は、新たに外国人を雇い入れた場合は雇い入れた月の翌月10日までに、その雇用する外国人が離職した場合は離職した日の翌日から起算して10日以内に、当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出することにより行います(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第12条第1項)。

違反した場合の罰則

この届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金に処されます(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第40条第1項第2号)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、この違反行為をしたときは、その行為者を罰するだけでなく、その法人又は人も同様に処罰されます(同条第2項)。

まとめ

このように、外国人の雇用については確認するべき書類が多々あり、違反によっては刑罰を科されることになります。
外国人の雇用についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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外国公務員贈賄罪

2024-12-17

経済のグローバル化に伴い、日本の企業が国外に進出することが増えました。その中では、外国の公務員が関わる事業もあります。その際に、外国の公務員から賄賂を求められることもあります。このようなことを許せば国際的な競争条件が歪められ、国際取引の公正な競争が害されてしまいます。これを防ぐために、外国公務員贈賄罪が定められています。

外国公務員贈賄罪の趣旨

国際商取引における外国公務員への不正な利益供与が問題となっていたため、1997年12月にパリにおいて、我が国を含む33か国により、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」が締結されました。

この条約では、締約国は、「ある者が故意に、国際商取引において商取引又は他の不当な利益を取得し又は維持するために、外国公務員に対し、当該外国公務員が公務の遂行に関して行動し又は行動を差し控えることを目的として、当該外国公務員又は第三者のために金銭上又はその他の不当な利益を直接に又は仲介者を通じて申し出、約束し又は供与することを、自国の法令の下で犯罪とするために必要な措置をとる。」(第1条第1項)、「外国公務員に対する贈賄行為の共犯(教唆、ほう助又は承認を含む。)を犯罪とするために必要な措置をとる。外国公務員に対する贈賄の未遂及び共謀については、自国の公務員に対する贈賄の未遂及び共謀と同一の程度まで、犯罪とする」(第1条第2項)、「自国の法的原則に従って、外国公務員に対する贈賄について法人の責任を確立するために必要な措置をとる」(第2条)などと定められています。

これを受けて、日本では、不正競争防止法において、「外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止」が定められています(同法第18条)。

(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。
一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者
二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者
三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者
四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者
五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

規制の内容

「国際的な商取引」とは、国際的な商活動を目的とする行為、すなわち貿易及び対外投資を含む国境を超えた経済活動に係る行為を意味するとされています。

「営業上の利益」とは、事業者が営業を遂行していく上で得られる有形無形の経済的価値その他の利益一般とされています。「不正の利益」とは、公序良俗又は信義則に反するような形で得られる利益とされています。

取引の獲得や許認可の取得を目指して利益供与をするだけでなく、通関等の手続の遅延等の差別的な不利益な取り扱いを避ける目的で利益を供与することも該当します。

一方で、支払を行わないと暴行されたり殺害される可能性がある場合など、生命・身体に対する危険の回避を主な目的として、やむを得ずに行った利益供与等は、「不正の利益」を得る目的がないと判断される可能性があります。
参照 「外国公務員贈賄罪Q&A」

この規定に違反したときは、違反行為をした者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科されます(不正競争防止法第21条第4項第4号)。日本国内で行われた場合だけでなく、刑法第3条の例に従い、日本国外において違反行為をした日本国民についても適用されます(同条第10項)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関してこの違反行為をしたときは、法人も10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。

まとめ

このように、外国の公務員に対して利益供与をすると、行為者も企業も重い処罰を受けることになります。
企業の国際活動についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

仮想通貨と法的規制

2024-12-13

ビットコインなどの仮想通貨に注目が集まっています。こうした新しい分野には、大きな経済効果を期待できる一方で、過剰な広告、利用者を誤認させる詐欺的な取引、個人情報の漏洩、さらには仮想通貨そのものの流出も問題になっています。仮想通貨についても事業の適正を確保する必要があり、法的規制がかけられつつあります。ここでは、仮想通貨に関する規制について解説します。

仮想通貨

仮想通貨は、暗号資産とも呼ばれます。法律上はこちらの名称で規定されています。
暗号資産について、「資金決済に関する法律」(資金決済法)では、次のように規定されています。

資金決済に関する法律
第2条第14項
この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
第15項
この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号又は第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
第16項
この法律において「暗号資産交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。
第17項
この法律において「外国暗号資産交換業者」とは、この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において第六十三条の二の登録と同種類の登録(当該登録に類するその他の行政処分を含む。)を受けて暗号資産交換業を行う者をいう。

資金決済法では「第三章の三 暗号資産」(第63条の2以下)で規制されています。

暗号資産(仮想通貨)を扱うためには、暗号資産交換業者として登録する必要があります(資金決済法第63条の2第14項)。

この登録を受けないで暗号資産交換業を行うと、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第107条第12号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。

暗号資産交換業者として登録するためには、株式会社又は外国暗号資産交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る。)であること(資金決済法第63条の5第1項第1号)、(資金決済法第63条の5第1項第3号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第9条第1項第1号)などの条件を満たす必要があり、条件を満たさないときは、登録を拒否されます(資金決済法第63条の5第1項柱書)。

登録後も、情報の安全管理(資金決済法第63条の8)、利用者の保護等に関する措置(同法第63条の10)、利用者財産の管理(同法第63条の11)などの規定を遵守し、利用者の保護を図らなければなりません。

暗号資産の性質について利用者を誤認させないよう、様々な規制が設けられています。暗号資産交換業の広告においては、暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないことのほか、暗号資産の性質であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を表示しなければなりません(資金決済法第63条の9の2)。

この重要な事項として、①暗号資産の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由、②暗号資産は代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済のために使用することができること、が定められています(暗号資産交換業者に関する内閣府令第18条)。

暗号資産の売買契約の締結や勧誘などにおいて、虚偽の表示をしたり、暗号資産の性質について相手方を誤認させるようなことは禁止されています(資金決済法第63条の9の3第1号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第19条)。
これに違反すると、1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第109条第10号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も2億円以下の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第2号)。

資金決済法第63条の9の3第2号では「その行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、又は暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為」、第3号では「暗号資産交換契約の締結等をするに際し、又はその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為」を禁止しています。これらに違反すると、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第112条第14号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。

新規事業は、国民の安全を守るため、様々な規制が課され、違反に対しては時に刑罰が科されます。
仮想通貨を始め、新規事業の法的規制について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に ご相談ください。

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企業が守るべき特定商取引法についての解説③

2024-12-10

今回の記事では特定商取引法に違反してしまった場合に企業が受ける影響について事例をあげながら説明させていただきます。

1 行政上の制裁について

【事例】
住宅リフォームを勧誘する訪問販売で契約書に虚偽の記載をし、実際よりも効果があるよう説明したのは特定商取引法違反に当たるとして、消費者庁は23日、5社に一部業務停止命令を出したと発表した。
いずれも22日付で、X社(大阪市)がA社長も含めて18カ月、Y社(神戸市)が18カ月など。
5社は連携し、勧誘や契約といった役割を分担。契約を締結する際、契約書の担当者欄にうその氏名を記載したり、合理的な根拠もなく商品に優れた防水性があると告げたりしていた。
各地の消費生活センターなどに19~23年度、計592件の苦情や相談が寄せられていた。
(共同通信 令和6年5月23日付「リフォーム勧誘、5社を業務停止 訪問販売で虚偽説明 消費者庁」から一部引用)

ここでいう行政上の制裁とは、事業者が特定商取引法に定める義務に違反した場合や不適切な行為を行った場合に、監督官庁が業務改善の指示又は業務停止命令の処分を行うことを意味します。
行政上の制裁には、さまざまな種類がありますが業務停止命令が下された場合には、会社の営業活動を行えなくなり会社の経済的ダメージは非常に大きいものになります。
また業務停止命令などの処分を受けると、事例のように報道されたり、消費者庁のホームページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/)で実名付きで公表されたりするので今後の企業イメージへの影響も甚大なものになります。
事例のケースでは被害件数が大きかったことも考慮されて業務停止命令という重い処分が科されたと考えられます。

2 刑事上の制裁について

【事例】
高齢の男性宅を飛び込みで訪問し、必要ない屋根の修繕工事を勧めて現金をだまし取ろうとしたとして、警視庁は職業不詳のA容疑者(29)を詐欺未遂と特定商取引法違反(契約書面不備)の疑いで逮捕し、5日に発表した。「弁護士と会ってから話す」と供述しているという。
八王子署によると、片山容疑者は昨年10月18日、実在しない塗装会社の社員を名乗り、東京都八王子市内の70代男性宅を訪問。「瓦が壊れている」などとうその説明をして修繕工事契約を結び、必要な工事をするかのように装って代金計約43万円をだまし取ろうとした疑いがある。
片山容疑者は前日17日に男性宅を飛び込みで訪問。「近所で作業中に瓦が壊れていたのが見えた」「道路の小学生にあたったら責任とらされます」などと言い、18日に契約を結ばせていた。(以下略)
(朝日新聞DIGITAL 令和6年7月5日付「高齢者宅を飛び込み訪問 うその屋根工事を契約 詐欺未遂容疑で逮捕」から一部引用)

 一般的に行政処分が出ているにもかかわらずそれに無視したケースや、詐欺まがいの手口で違法行為を繰り返すなど態様が悪質なケースでは刑事事件となり刑事罰を科される可能性があります。これを刑事上の制裁といいます。
刑事事件に発展しないようにするには、コンプライアンスを徹底し、特定商取引法違反が生じないよう常日頃から注意することはもちろん、万一警察から取り調べを受けるという事態になった場合には、できる限り不起訴処分となるよう対策を講じることが肝要となります。
事例のケースでは記事のみでは明らかではありませんが契約書面にクーリングオフなどの要記載事項がなかった事から特定商取引法違反に問われた可能性があります。
A容疑者が以前に行政処分を受けていたかは分かりませんが、詐欺未遂でも逮捕されていることから、詐欺にもあたる悪質な事案と判断されて行政処分を受けることなくいきなり逮捕に至った可能性もあります。

3 あいち刑事事件総合法律事務所でサポートできること

以上のように行政処分や刑事処分を受けてしまえば、企業が受けるダメージは甚大です。

そのような事態にならないように重要なのは普段の取引から特定商取引法に違反しないこと、特定商取引法違反の疑いをかけられないことになります。
そのために、日頃から特定商取引法に精通した弁護士に寄る契約書や取引方法についての確認やアドバイスを通じて、特定商取引法に違反することにならないようにしっかりと監督させていただきます。

経営サイドののみならず、社内の営業担当者向けセミナーや勉強会を通じて、全社レベルでのコンプライアンス体制構築支援もさせていただきます。
また事実無根の内容で特定証取忌避法違反の容疑をかけられた場合には行政訴訟を通じて処分を争う、刑事裁判を通じて企業の無実を晴らすなどの弁護活動をさせていただきます。
有事が起きないように、また有事の際に対応できるように、特定商取引法違反をはじめとした刑事事件に精通したあいち刑事事件総合法律事務所に顧問を任せてはいかがでしょうか。

ご不安やご興味がある方は初回相談無料ですので是非お気軽に一度ご相談ください。WEBでのご相談にも対応させていただきます。

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企業が守るべき特定商取引法についての解説②

2024-12-06

1 特定商取引法の規制内容について

前回の記事では、特定商取引法の目的とその規制範囲について解説させていただきました。
では特定商取引法ではどのような行為について規制しているのでしょうか。
特定商取引法では、①行政規制、②民事的ルールの2種類の規制に大別されます。
①行政規制は、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて定められる規制です。
②民事的ルールは、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するために定められているルールのことをいいます。

2 行政規制

行政規制には、①氏名等の表示の義務付け、②不当な勧誘行為の禁止、③広告規制、④書面交付義務の4つがあります。
この規制に違反した場合には、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
①については、トラブルになった際の連絡先として機能する必要があるので、単に表示すればよいというのではなく、連絡が取ることが可能な連絡先を表示する必要があります。
また勧誘時には事業者名と勧誘目的であることを明示することが義務付けられています。
②についてしばしば問題になるのは虚偽の説明や、不当な威迫を行って消費者に契約を迫る行為などがあります。
これらの行為は悪質性が高いと判断される場合には、詐欺罪(刑法246条)や強要罪(刑法223条)が成立し、より重い刑事罰が科される場合があります。
③広告規制については虚偽広告、誇大広告をすることが禁止されています。広告の内容については、線引きが難しいところもありますので専門家に判断を仰ぐことがベターです。
④については、契約時に重要事項を記した書面を交付することが特定商取引法上義務付けられています。

実際に同法の違反によって検挙されたケース

3 民事的ルール

民事的ルールには、①クーリングオフ、②意思表示の取消、③損害賠償等の額の制限です。
これらは消費者を保護するための規定です。
これらの内容について法律で定められている記載義務に反して表示をしない場合や、虚偽の内容(クーリングオフの期間を偽るなど)を記載する、または表示すべき内容を記載していなかった場合には行政規制の対象となる場合があります。

4 企業がするべき対応

企業として特定商取引法の対象となる事業をする場合この規制に抵触しないように細心の注意を払う必要があります。
企業として準備する契約書類などに問題がないか確認することはもちろん、従業員が取引の際に守るべき事項をマニュアルにするなどして法令を遵守すことをしっかりと確認する必要があります。
マニュアルがしっかり作成されていれば、万が一従業員が独断で規制に反する取引を行ったとしても企業側が責任負うリスクを防ぐことができます。

今回の記事では特定商取引法で規制されている行為について解説させていただきました。
個々の事例においてこれらの規制に抵触するかについては法律の専門家に相談することをおすすめします。
あいち刑事事件総合法律事務所ではお困りの方に無料法律相談を実施して、お困りの点についてご相談に乗らせていただきます。また継続的に契約書の内容の確認や、取引内容の適法性について確認してほしいというニーズのある方向けに顧問契約もご用意しています。
初回の相談は無料で、WEB面談での対応も可能ですので、まずは一度気軽にご相談してみてください。

次回の記事ではこれらの規制に違反してしまった場合には、企業としてどのような影響があるのかについて解説させていただきます。

経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

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