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企業役員の私生活上の犯罪

2024-10-11

事例はフィクションです。
大阪に本社を置くZ社の取締役Aさんは、深夜、旅行先の京都市内の路上で、酒に酔って、タクシー運転手Bさんに暴行を加え、怪我を負わせるとともに、タクシーのドアを蹴って凹ませ、臨場した警察官に傷害・器物損壊罪で現行犯逮捕されました。既に、複数のメディアが報道しています。

このような場合、企業としては、どのように対応すべきでしょうか。

会社としての対応

従業員・役員による不正として、企業活動と関係なく、従業員・役員が私生活上の行為について不正を起こすことがあります。この場合、必ずしも企業に影響があるとはいえません。
ただし、私生活上の行為であっても、特に企業の幹部従業員や役員による犯罪行為であれば、マスコミも注目し、報道される可能性があります。

参考報道 タクシー料金払わず、運転手にかみつき逃走 30歳会社役員の男を逮捕

そして、私生活上の行為といえども、犯罪行為をするような者が重要な役職にいたという事実が明らかになれば、企業の社会的信用が損なわれることは免れず、これを防止するため様々な対応を検討する必要があります。
ここで難しい問題は、従業員・役員が私生活において犯罪行為をした場合には、企業がそれを認識するのは、事例のように逮捕等の捜査活動が端緒となることが通常です。しかも、企業が警察等捜査機関に事実関係の詳細や本人の供述状況等を尋ねたとしても、捜査機関は、捜査上の理由から、これに応じないのが通常であることです。
このように、企業外の犯罪ですから、企業としてできることは限られていますが、その場合でも、企業として適切な対応をとるためには、まずは、できる限り迅速に事実関係を把握する必要があります。本人が身柄を拘束されている場合、情報を入手する手段としては、当該従業員・役員の弁護人、家族等から事情を聞くことが考えられます。

マスコミ対応、役職や人事に対する検討

事例のような企業の役員が逮捕された場合、とりわけ上場企業であればマスコミ報道がされる可能性は極めて大きくなります。特に、事例のように、現行犯逮捕された場合には、報道の直後から、複数のマスコミから一斉に取材攻勢に遭うことが予想されます。この場合、企業としては、想定されるマスコミからの質問に対する回答を準備しておく必要があります。基本的には、事件の内容に関する質問に対しては、「捜査中であり、弊社からのコメントは差し控える。」などと回答することになります。

次に、事例のAさんについては、Aさんが、社長、副社長、専務、常務等の役付取締役や代表取締役である場合、これらの役職を解いたり、代表権を剥奪する必要があるかについて検討する必要があります。

また、事例と異なり、Aさんが従業員であった場合には、懲戒等の人事処分を検討する必要があります。仮に、Aさんが、代表権を有する唯一の取締役であり,Aさんが、逮捕のみならず勾留され身体拘束が続いた場合、身体を拘束されている間,Z社の業務執行が事実上停止してしまうことになりかねず、そのような場合、早期に取締役会を開催して、他の取締役に代表権を付与することも検討する必要があるでしょう。

従業員・役員による私生活上の不正行為が発覚した場合、弁護士のサポートがあればスムーズに進みます。マスコミ対応や、不正を行った従業員・役員に対し、責任を追及したい場合等、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

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社内調査におけるヒヤリングの留意点について④

2024-10-08

社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査におけるヒヤリングの意味

社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。

企業で不正行為が行われ、またその疑いがある場合に、事実関係を解明するため、事情を知っている関係者のヒヤリングを実施することは必要不可欠です。

今回は、社内調査におけるヒヤリングの留意点の最後として、企業が、社内調査として社員に対するヒヤリングを行った場合に、それをどうやって証拠化するかについて解説します。

以前の記事:社内調査におけるヒヤリングの留意点③

ヒヤリング結果の証拠化について

社内調査は、証拠の収集活動であり、収集した証拠は、将来の民事・刑事の手続きに使用される可能性もあります。そこで、何らかの形で収集した証拠は、証拠資料として文書化し、整理しておくことが重要です。

社内調査でヒヤリングを行った場合には、そのヒヤリング結果を正確に証拠とする必要があります。ヒヤリング結果を証拠化する方法には、①ヒヤリングを実施した者がヒヤリング記録を作成する、②ヒヤリングを録音しておき、その反訳文(録音内容を文書化したものです。)を作成する、③陳述書を作成してヒヤリング対象者の署名を得る、などの方法があります。

①の方法が最も一般的な方法だと思われます。
②の方法は、短時間で簡潔なヒヤリングを実施した場合には、後日、言った、言わないという紛争を回避する観点からも有効な方法ですが、ヒヤリングが長時間に及び、社内調査とは無関係の会話が多数含まれるような場合は、使いにくい証拠となってしまいますので、注意が必要です。この場合、事前に録音することを対象者に伝えることが望ましいですが、録音を伝えることで、供述を引き出さない場合もあるため、事前に録音することを伝えるか否かは個別に判断する必要があります。なお、対象者の方から録音を申し出てくることもあり、情報漏洩防止の観点から録音を禁止にしても問題はありません。もっとも、これを拒むことで後にヒヤリング自体の透明性、信用性を問題とされる可能性があることは注意しておく必要があります。
③の方法は、ヒヤリングの結果を将来の民事・刑事の手続に実際に使用する必要があるときには有効な方法です。陳述書とは、対象者が自身の名義で作成した文書で、通常、作成者本人がこれに署名や押印を行うものであり、対象者が記載内容に間違いがないことを確認してから署名をおこなうため、対象者が説明した内容と異なる内容が企業へ報告されるリスクは少ないからです。もっとも、陳述書の内容が、客観的な関係資料と整合していなかったりした場合には、その社員の陳述書の証拠としての利用価値は少なく、常に陳述書を作成するまでの必要はありません。

最後に

社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。

事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。

不倫相手とのハメ撮りをアップ,法的問題点や刑事罰について

2024-10-04

事例

会社役員であるAさんは、アルバイト従業員であるBさんと不倫関係にありました。ある日、Aさんは、Bさんから「真剣交際をしたい人が見つかったので別れたい。」といわれました。Aさんは、どうせ不倫なのだからBさんも不倫したらよいではないかと提案しましたが、断られてしまい、怒りにまかせてBさんとセックスしている時に撮影した動画をインターネット上に投稿しました。
(この事例はフィクションです)

さて、どのような問題が生じるでしょうか。

このような事例でAさんから相談を受けた弁護士として、どのようなリスクを提案するか、説明します。

1点目 盗撮の罪が成立するか

Aさんは、Bさんとセックスしている際の動画、いわゆるハメ撮りを投稿していますが、そもそもこの動画撮影は、Bさんの許諾を得ているのでしょうか?
許諾を得ていない場合、各地域の条例に規定されている盗撮や性的姿態等撮影罪などの犯罪が成立する可能性があります。したがって、示談等Bさんに対する被害弁償に動く必要があります。

なお、Bさんは、アルバイト従業員ということですが、18歳未満の場合には児童ポルノ関係の法令に抵触する可能性があります。その動画データを所持している点は児童ポルノの所持罪、撮影をした点は児童ポルノの撮影罪が成立します。また、Bさんとのセックス自体が各地域の条例で定める青少年保護条例に規定された淫行にあたる可能性があります。いずれにしても示談等被害弁償をする必要があります。

2点目 わいせつ電磁的記録媒体公然陳列が成立するか

わいせつな動画や画像をインターネット上にアップロードした場合、わいせつ電磁的記録媒体公然陳列という犯罪が成立する可能性があります。

例えば、日中の路上でいきなり全裸になった場合、公然わいせつという犯罪が成立することはなんとなくお分かりになると思います。わいせつ電磁的記録媒体公然陳列は、公然わいせつのインターネット版というようなイメージを持っていただくと分かりやすいかもしれません。
Aさんのケースでは、インターネット上にアップロードしたとして、どのようなものにアップロードしたのか、誰でも見られるブログや掲示板なのか、それとも会員制のウェブサイトなのか、といった点を考慮して、犯罪の成否を検討することになります。

なお、Bさんが18歳未満である場合には、児童ポルノの頒布等より重たい犯罪が成立する可能性があります。

3点目 リベンジポルノや名誉毀損の罪が成立するか

リベンジポルノは、簡単にいうと、元配偶者や元交際相手などの性的な画像や動画をその人の承諾を得ず公表するような行為です。
名誉毀損は、簡単にいうと、ある人の名誉を低下させるようなことを公に言いふらすような行為です。

AさんがBさんとセックスしている動画がインターネット上にアップロードされたことによって、そのセックスのことがAさんとBさんの会社やBさんの友人知人に知れ渡った場合、Bさんがとても恥ずかしい思いをすることは容易に想像できますし、それ以上の思いをすることも容易に想像できます。

その動画でセックスしている人がBさんだと分かるような内容である場合、Aさんには、リベンジポルノや名誉毀損といった犯罪が成立する可能性が十分にあります。他方、動画そのものや動画をアップロードする際のコメントや文章などから、Bさんとは分からないようなものであれば、それらの犯罪が成立しない可能性も十分あり得ます。弁護士と相談して、犯罪成立のリスクを見極め、場合によっては示談等を行うことが考えられます。

4点目 不同意性交等の罪が成立するか

さて、AさんとBさんの間のセックスは、不同意性交等といった問題を生じないでしょうか。いわゆるワンナイトの場合、そういった犯罪の可能性が出てきますが、継続的な不倫であれば、その可能性は低いといえます。

ただ、不同意性交等は、近年刑事法令が改正されたことでできた新しい犯罪であり、重要な話がたくさんあります。この不同意性交等については、別途事例を設けて、別の記事で解説しますので、そちらの記事をご参照ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を重点的に扱う法律事務所として、複数の犯罪発生リスクを慎重に見極めた法律サービスを提供しています。こういった専門的な弁護士や実績のある弁護士のサポートをご希望の場合には、こちらからぜひ弊所に一度ご相談ください。

廃棄物処理法の営業許可①

2024-10-01

【事例】
Aさんは、京都市内で産業廃棄物の収集運搬を行う会社であるⅩ社に長年勤めていました。
Aさんは、家庭の事情をきっかけに、それまで勤めていた会社を退職し、地元である滋賀県高島市で、自ら産業廃棄物の収集運搬を行う会社を立ち上げようと考えました。
AさんはX社に勤めていた経験から、役所で手続きが必要だったり、細かなルールが定められていたりするのは知っていましたが、具体的にどのような手続きをすればいいのかまではわかりませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

Aさんが起業しようと考えている産業廃棄物の収集運搬という事業は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法や廃棄物処理法と省略して呼ばれることがあります。以下では「廃棄物処理法」といいます。)で規制されています。
この法律は、「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的」としています(廃棄物処理法1条)。

廃棄物処理法は、このような目的から、事業を細分化し、許可ごとに行える事業を分けたうえで、事業を行う会社にはその事業に対応する許可を取ることを求めています。
結論から言えば、Aさんは、少なくとも滋賀県知事から産業廃棄物収集運搬業許可を得る必要があります(廃棄物処理法14条1項本文)。
このような結論に至る前提として、まずは廃棄物処理法が細分化している事業の種類を見ていきます。

2 廃棄物の種類

⑴ 産業廃棄物と一般廃棄物
まず、廃棄物処理法は、誰が出した廃棄物かによって必要な許可を分けています。
それが産業廃棄物と一般廃棄物という区分です。

産業廃棄物は、主には、事業活動にともなって生じた廃棄物のうち、燃え殻、紙くず、廃プラスチック類、金属くず、がれき類、ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くずなど、廃棄物処理法2条4項1号や廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令で定められている一定のものをいいます。

一方の一般廃棄物は、「産業廃棄物以外の廃棄物」と定められています(廃棄物処理法2条2項)。
一般家庭が排出する廃棄物が中心ですが、それ以外にも事業者が排出する廃棄物でも一定のものが含まれます。
例えば、紙くずは、紙や紙加工品の製造業者、新聞業者、出版業者などといった一定の事業を行っている事業者が排出する場合のみ産業廃棄物となりますので(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令2条1号)、対象外の事業者が排出する紙くずは一般廃棄物となります。

⑵ 特別管理廃棄物
また、誰が出した廃棄物かという区分とは別に、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれ」があるなど特に注意が必要な廃棄物は、特別管理廃棄物とされています。
つまり、特別管理産業廃棄物(廃棄物処理法2条5項)と特別管理一般廃棄物(廃棄物処理法2条3項)という区分があります。
特別管理産業廃棄物の例としては、一定の廃石綿(アスベスト)、一定の廃酸や廃アルカリなどです(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令2条の4)。
特別管理一般廃棄物の例としては、病院などから出た感染性廃棄物などです(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令1条)。

今回は、廃棄物処理法の許可について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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企業側のハラスメント対応① ハラスメントの種類と刑事事件

2024-09-27

現代では企業内でのハラスメントの問題はメディアでも取り上げられるなど社会問題となっています。
また時代の変化に応じてハラスメントと言われるものの種類も多様化の一途をたどっています。
今回の記事ではハラスメントの種類と、それらが刑事事件にまで発展するリスクがある事例について詳しく解説していきます。

1 ハラスメントとは

職場でのハラスメントの定義については、一般的に職場で行われる①優越的な関係を背景とした言動であり、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の修行環境が害されるものと言われており、①~③のすべての要素を満たすものが職場でのハラスメントに該当すると定義されています。
②の要件について、しばしばハラスメントの加害者からは「~したのは業務上必要なことだった」と弁解されることが多いですが、あくまで業務上必要かつ相当な範囲であるかは客観的に判断されますので当事者が必要かつ相当であると思っているかは関係ありません。調査する際などには本人の主張だけでなく、被害者側の言い分や客観的状況に着目することが重要です。

厚労省HP 職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

2 ハラスメントの種類について

ではハラスメントの種類について代表的なものをいくつか挙げて解説させていただきます。ここでは①セクシャルハラスメント、②パワーハラスメント、③モラルハラスメントを挙げて説明をさせていただきます。

① セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントの定義は労働者の意に反する性的な言動によって、労働条件について不利益を受けて就業環境が害されるハラスメントをいいます。
セクシャルハラスメントには一般的に性的な言動を拒否抵抗したことによって労働者が解雇や降格などの不利益を受ける対価型のセクシャルハラスメントと、性的な言動により労働者が不快に思い、能力の発揮に重大な影響を生じた環境型のセクシャルハラスメントに分類されます。

② パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、職場において地位や人間関係などの優位性を利用して、業務の適正な範囲を超えて、業務の適正な範囲を超えて身体的精神的苦痛を与える行為や職場環境を悪化させる行為をいいます。
上司の指示などは業務の適正な範囲を超えているか判断が難しいケースもあり適正な職務行為との線引きが難しい類型でもあります。身体的な攻撃や精神的な攻撃のほかに過大な要求をする場合など、パワーハラスメントに当たるとされている行為についてはさらにいくつかの類型があります。

③ モラルハラスメント

モラルハラスメントとは、精神的な虐待や心理的な攻撃のことです。職場であれば上司や同僚からの不適切な圧力、過剰な侮辱や批判などがこれに該当します
ここまで3つの類型を説明しましたが、これらは明確に分けられているわけではなく不空のハラスメントに該当する場合もあります。
例えば上司から一方的な叱責を受けた場合には上下関係に基づくという点に着目すればパワハラにも該当しますし、心理的な攻撃という点に着目すればモラハラともいえます。
このようにハラスメントの類型や区別することが重要なのではなく、会社側が対応を検討する際の指標としてハラスメントに該当すると言われる代表的な例については担当者で共有しておく必要があるといえます。

3 ハラスメントが刑事事件となる場合

ハラスメントと言われる行為も度が過ぎれば刑事事件として取り扱われるケースも出てきます。刑事事件として取り扱われるケースであれば、警察への被害相談も検討する必要が出ますし、加害者が逮捕される可能性も考慮して処分等を検討しなければならないです。
ハラスメントが刑事事件になるケースは例えば、被害者に対して殴る蹴るなどの暴行を行っていれば暴行罪(刑法208条)又は傷害罪(刑法204条)が成立する可能性があります。
上司の立場を利用して意に反する行動をさせた場合には強要罪(刑法223条)が成立する可能性があります。
被害者の意に反して胸や臀部に触れる行為には不同意わいせつ罪(刑法176条)が成立する可能性があります。
今のは代表的なケースですが、中には犯罪にあたるかの判断が難しいケースもあります。
当該ハラスメントが刑法上の犯罪にあたるかは法律的に慎重な判断が求められ、その後の対応にも大きくかかわりますので、是非刑事事件を専門に扱う弁護士に相談されることをおすすめします。

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福祉施設の職員による虐待事案について①

2024-09-24

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

近年、施設職員による虐待事案は増加傾向にある

近年、福祉施設の職員による虐待事案は増加傾向にあります。ここでは、そのなかでも虐待事案数の多い高齢者虐待、障害者虐待について、まずその実態からお話します。

高齢者虐待の実態

厚生労働省において実施した令和4年度の高齢者虐待への対応状況に関する調査結果(令和5年12月公表)によると、養護者による高齢者虐待以外の養介護施設従業者等(老人ホーム等で業務に従事する人を指します。)による高齢者虐待は、相談・通報件数2,795件(対前年度405件(16.9%)増)、虐待判断件数856件(対前年度117件(15.8%)増)となっています。養護者による虐待事案が、対前年度と比較して横ばい傾向にあることからしますと、近年、施設職員による虐待事案の増加が目立ちます。

虐待の種別は、身体的虐待(57.6%)が最も多く、心理的虐待(33.0%)、介護等放棄(23.2%)、経済的虐待(3.9%)、性的虐待(3.5%)の順になっています。
虐待の発生要因は、教育・知識・介護技術等に関する問題(56.1%)が最も多く、職員のストレスや感情コントロールの問題(23.0%)、虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等(22.5%)の順になっています。

障害者虐待の実態

厚生労働省において実施した令和4年度の障害者虐待への対応状況に関する調査結果(令和5年12月公表)によると、養護者による障害者虐待以外の障害者福祉施設従業者等(障害者支援施設等で業務に従事する人を指します。)による障害者虐待は、相談・通報件数4,104件(対前年度1.28倍)、虐待判断件数956件(対前年度1.37倍)となっています。養護者による虐待事案は前年度と比較して横ばいに近く、障害者虐待についても、近年、施設職員による虐待事案の増加が目立っています。

虐待の種別は、身体的虐待(52%)が最も多く、心理的虐待(46パーセント)、性的虐待(14%)、放棄、放置(10パーセント)、経済的虐待(5パーセント)の順になっています。虐待の発生要因は、教育・知識・介護技術等に関する問題(74%)が最も多く、倫理観や理念の欠如(58%)、職員のストレスや感情コントロールの問題(57%)の順になっています。

福祉施設の職員による虐待事案について、この続きは今後の記事で解説していきます。

最後に

福祉施設の職員による虐待は後で絶ちません。虐待防止の取り組み、あるいは、実際に虐待が疑われる事案が発生した際の対応等については弊社の弁護士にご相談ください。

契約書の重要性④

2024-09-20

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、契約の成立時期や契約書の作成日についてみてきました。
今回は、契約が誰と誰の間で締結されたものなのか(契約の当事者が誰なのか)や署名の重要性について深掘りしていきます。

2 署名の重要性

以前の記事でも解説したように、契約とは、2人以上の当事者が、権利や義務に関する合意を結ぶことをいいます。
そして、当事者には、生身の人間(自然人ということもあります。)に限らず、会社などといった法人もなることができます。
問題は、会社などといった法人が契約の当事者になる場合に、契約書に署名をするのは誰なのか、言葉を変えると、誰に契約を締結する権限があるのかという点です。

⑴ 代表取締役
まず、代表取締役には、契約を締結する権限があります。
これは、会社法349条4項で「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められているからです。
そのため、会社の代表取締役が契約書に署名するのが一般的といえます。

⑵ 業務執行取締役
また、その契約に関する業務について、業務執行取締役となっている取締役にも権限があります。
業務執行取締役というのは、取締役会を設置している会社において、ある業務を執行する取締役として、代表取締役以外の取締役を選定するという取締役会の決議を受けた取締役です(会社法363条2項)。
なお、取締役会というのは、会社の取締役全員で構成する合議体で、会社の業務執行の決定をしたり、取締役などの業務を監督したりする合議体です(会社法362条)。

⑶ 取締役
会社によっては、代表取締役を定めないことも可能な場合があります。
このように「代表取締役その他株式会社を代表する者を定め」ていない場合、取締役が会社を代表します(会社法349条1項)。
そして、このような場合で、取締役が複数人いる場合でも、各取締役がそれぞれ会社を代表します(会社法349条2項)。
このような場合であれば、“代表”取締役や“業務執行”取締役でなくても、権限があることになります。

⑷ 契約締結権限を与えられた使用人(従業員)
また、代表取締役や取締役といった会社の役員でなくても、会社の事業に関するある特定の事項などについて委任を受けた従業員(会社法では「使用人」といいます。)にも権限があります。

3 署名の際に気を付けること

このように契約書に署名する権限がある人というのは多岐にわたります。
契約の相手方が会社の場合は、契約書に署名をしようとしているその人に、会社を代表して契約を締結する権限があるのか確認することが重要です。

今回は、契約書の署名の重要性について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

不祥事発生時における広報対応の留意点について③

2024-09-17

企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応の留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも広報とは

広報とは、企業が社会の人々に向けて企業の情報を発信することです。

不祥事が発生した場合の広報対応

企業内で不祥事が発生したとき、特にそれが犯罪に関わるときには、新聞報道されたり、インターネット上で掲載されるなどして、不特定多数の人々に知られてしまう場合があります。その際、企業側に取材がなされ、時には、記者会見を実施する必要が生じるかもしれません。メディアからの取材依頼は広報が担当します。

前回は、企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応(危機管理広報)の基本的な手順について、窓口を一本化するということまで解説しました。今回は、同手順について引き続き解説します。

プレスリリースの発信

プレスリリースとは、当該企業における経営・商品などに関する企業情報をメディアの記者等が利用しやすいように、文書や資料としてまとめたものです。

参考 「不祥事」に関するプレスリリースの一覧

不祥事発生時の企業の公式な見解表明は、多くの場合、プレスリリースによる情報発信となります。プレスリリースには、ポジションペーパーの記載を基に、不祥事発生の事実関係や原因、今後の対応方針や再発防止策、被害者・関係者に対する謝罪等を記載します。

メディアからの質問への対応

メディアの記者等からの質問に対しては、内容をしっかり確認し、質問事項を特定してから回答することが肝要です。口頭で答える時にはまず結論から話すべきであり、イエスかノーかも明確にすべきです。
この人は一体何を話そうとしているのだろうかと思われるような冗長な話し方は絶対にしてはならないことであり、企業にとって不都合なことをごまかそうとしていると思われるおそれがあります。

ステークホルダーへの説明

ステークホルダーとは、取引先、株主、従業員、顧客等、企業と利害関係にある者全般を指す言葉です。
企業の責任として、ステークホルダーに対して、不祥事発生についての十分な説明を行う必要があります。これをおろそかにすると、不祥事を知った消費者や地域住民などから、企業に対して抗議の電話等が殺到する危険性があります。
もっとも、これら各ステークホルダーに対する説明の全てを広報窓口で行うことは困難であり、事前に、取引先への説明文書、消費者等からの問い合わせに対する資料などを作成した上各部署に配布し、対応が不整合にならないようにしておくことも大切です。

次回は、実際に危機管理広報を行う場合にどのような態度で臨むべきかなど、特に注意する点について解説します。

最後に

あいち刑事事件総合法律事務所には企業法務の経験豊富な弁護士が多数在籍しています。企業不祥事を防ぎたい場合や体制を見直したい場合、あるいは、企業不祥事が発生してお困りの際は、あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

契約書の重要性③

2024-09-13

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、契約の基本的な原則、ルールについてみてきました。

今回は、契約の成立時期について深掘りしていきます。

2 成立時期

まず、契約はいつ成立するのかをみていきましょう。

この点について、民法では「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定しています(民法第522条第1項)。

いくら情報化、電子化が進んでいるとはいえ、未だに書類を郵送で取り交して契約を締結する場合もあります。それでは、この場合、「承諾」をしたとされるのはいつになるでしょうか。

答えは、「承諾」するという意思表示が相手のもとに到達したときです(民法第97条第1項)。
つまり、郵便で回答するのであれば、その郵便が相手のもとに届いたときになります。
そして、このように郵便がいつ相手のもとに届いたのかというのは重要な意味を持つことになりますから、確かな到達の時点を記録に残しておく必要があります。
書留郵便などを活用すれば、相手方にいつ到達したのかという記録を残すことができます。

3 契約書の作成日と締結日

契約書には作成日を記入することが一般的です。
しかし、上記2のとおり、契約は承諾の段階で成立することになります。
例えば、ある製品を月に100個製造するという契約が当事者間で合意できたのが、5月1日だとします。そして、納期の都合上、製造は翌2日から始めましたが、契約書に当事者双方がサインできたのは5月10日だとします。
この場合、契約書には何日の日付を記入すべきでしょうか。

5月10日を記入するのでは、2日から9日までの製造については契約の効力が及ばないのではないかと考えて、1日と記入したいと考えるかもしれません。
しかし、契約書作成日を実際の日付よりも遡らせるのは、事実と異なる記載をすることになりますので、望ましいとはいえません。
この場合は、作成日は10日としたうえで、「作成日にかからわず、〇年5月1日から遡及的に適用するものとする」などといった条項を契約書の中に盛り込むのが望ましいといえます。

今回は、契約の成立時期やその点に関する契約書の記載における注意点について解説しました。
この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたい等といったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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会社が被害者となる窃盗事件①~加害者が事実を認めている場合の対応~

2024-09-10

【事例】
X社は金属加工業を営んでおり、会社内の倉庫には大量の銅線や鉄線を保管していました。
X社では3か月ほど前から倉庫内に保管している金属線の在庫の記録と実際にある金属線の数が合わないということがありました。
X社を経営するAさんは顧問弁護士であるあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談して、倉庫の出入り口に防犯カメラを設置しました。
そうすると、誰かが倉庫内に出入りしている様子が写っており、その日時とX社の勤務表を照らし合わせると社員であるBさんが怪しいのではないかという結論に至りました。
弁護士協力の下、X社が事実調査をしたところBさんは金属線を盗んでいたこと、それらを転売して利益を得ていたことを認めました。
Bさんは被害について何年もかけて賠償していくので警察にだけは言わないでほしいと頼んできました。
(事例はフィクションです)

参考プレスリリース NEXCO東日本 グループ会社元社員による着服について

1 窃盗事件が発生した場合の事実調査

会社の経営を行っていて、本件のように窃盗事件の被害者となることは珍しいことではありません。
本件のような事例では会社が扱う商品を転売目的で繰り返し、盗まれており会社に対する被害は甚大であったことが予想されます。
当然このような事件が発生すれば、すぐに調査を行うことが重要になります。
放っておけば、事件は繰り返されて会社の損害はさらに大きいものになりますし、犯人を特定し証拠を確保しておくことは、以下で解説する事後対応を検討する上でも非常に重要になります。

事例でもあるようにまずは犯人の特定が重要になります。
犯人の特定については事例のように防犯カメラを設置するなど社内で調査を行う方法と、警察に被害申告をして捜査を行ってもらう方法の2通りがあります。
事件の内容や緊急性によってどちらが適切かは場合によります。

当然捜査機関に頼んだ方が、指紋の採取など一般人では行えないような捜査を行うことも可能であり事案究明の可能性が高くなることがメリットになります。
その一方で事件をどのように進めていくかについて警察が主導することになる可能性があるので、社内に穏便に納める選択肢を残しておきたいというような場合には、社内で調査を行う必要があるでしょう。
いずれの選択肢を取るにせよ、早期に事件への対処をするためには事件発覚直後から調査を行い、対応を検討することが重要です。

2 加害者が事実を認めている場合の対応

では、事例のように窃盗事件の加害者が事実を認めている場合の対応について解説させていただきます。
加害者が自社の社員であると分かれば、今まで信用していたのに大変な裏切りをしてくれたなという気持ちになることでしょう。
経営者の方としては、加害者に対してなるべく厳しい社会的制裁を受けさせたいと考えられる方もいるでしょう。
そのような状況で加害者が事実を認めて、被害弁償を申し出ている場合にはこれを受け取ってよいものかと悩まれる方もいるでしょう。

窃盗事件において被害弁償を受け取ることはどのような意味があるでしょうか。
当然ですが、盗まれたことにより会社には損害が発生しているので加害者から被害弁償をしてもらうことは当然です。
被害弁償を受けることで影響がある可能性があるのは、窃盗事件を警察に被害届を出すなどして刑事事件として扱ってもらう場合です。 被害弁償を受けていることは、刑事事件において加害者が受ける刑事罰を軽くする方向の事情になります。

例えば、被害額からして加害者が実刑判決を受けるようなケース(一般的に被害額が100万円を超えるようなケース)でも被害弁償がなされていることや、将来被害弁償をしていくことで当事者間で合意が成立している場合には、執行猶予付きの判決が出されることもあります。

会社はあくまで営利(もうけ)を求めますので、加害者が被害弁償を申し出ている場合には損害の填補をするために賠償を受け取る選択肢が一般的かと思います。
もちろん、被害弁償受けることと警察に被害申告を行うことは両立できますので被害弁償を受けた上で警察に被害申告を行うことは可能です。

事例のように被害弁償をする代わりに警察への被害申告をやめてほしいというような場合には、回収の見込みや本人の今後の処遇、会社の経営への影響などを考慮して方針を決めることになると思います。
この判断はまさに、事件の内容や会社の状況、加害者の資力などの返済見込みなどを総合的に考慮した専門的な判断が求められます。
弁護士などこのようなケースに精通した者のアドバイスを受けながら対応されることが安心かと思います。
X社では刑事事件に精通した弁護士に顧問を依頼していたので早期に対応することができました。

今回の記事では会社が窃盗被害を受けた事例において、加害者が事実を認め賠償を希望しているケースの対応について解説しました。
次回は加害者と目される人物が事実を認めていない場合の対応について解説します。

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