今回の記事からは数回に分けて特定商取引法に関しての解説をさせていただきます。
特定商取引法については、これに違反したとして逮捕される例が少なくありません。
また逮捕された場合には、消費者保護の観点から被疑者名や会社名が実名で報道されるケースが一般的に多いです。
ですので経営する会社が特定商取引法違反で報道されることになってしまえば、大きく企業イメージを損なってしまいます
例えば、次に挙げる記事のような事例です。
美容商品の販売契約に関してクーリングオフを説明しなかったとして、大阪府警は19日、名古屋市にある美容関連商品卸売業Xの実質経営者Aさんら男性5人を特定商取引法違反(不実の告知など)容疑で逮捕した。
府警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は2023年1~3月、同社から仕入れた化粧品を販売できる内容の契約を男女3人と締結。契約解除ができるクーリングオフ制度は適用されないと虚偽の説明をしたり、制度の記載がない契約書を渡したりしたとしている。
契約者は市場価格より安価で商品を同社から入手し、第三者に売って利ざやを得られるとする仕組みだった。(以下略)
(毎日新聞令和6年6月19日付「化粧品転売契約、クーリングオフ説明せず。特商法違反疑い、5人を逮捕」から一部引用,当該報道記事は既に削除済み)
本記事では特定商取引法がどのような法律であるか、またどのような取り引きに関して適用があるのかについて解説させていただきます。
この記事を読んでいただくことで、自社が行っている取引や、行おうとしている取引に特定商取引法の規制対象になるかが分かるかと思います。
1 特定商取引法について
特定商取引法は、正式名称を特定商取引に関する法律といいますが、本記事では「特定商取引法」と省略して記載しています。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています(消費者庁のHPより引用。https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/)
特定商取引法は元々「訪問販売等に関する法律」という名称の法律として施行されており、訪問販売に関する規制を内容としていました。
それが契約類型の多様化に伴って、改正が繰り返されて現行の特定商取引法となっているのです。
2 特定商取引法が規制対象としている取引について
次に特定商取引法が規制対象としている取引に関して解説します。
特定商取引法では7つの契約類型について規制対象としています。
①訪問販売、②訪問購入、③通信販売、④電話勧誘販売、⑤連鎖取引販売、⑥特定継続的役務提供、⑦業務提供誘引取引の7つになります。
それぞれの取引例については、先述の消費者庁のページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/)も参考にしてください。
近年しばしば問題になる取引としては、記事にあったような、ある会社の商品を有償で提供するのでそれを販売して利益を得てくださいというような取引があり、これは⑦の類型にあたります。簡単に言うと「情報商材ビジネス」です。
コロナウイルスの流行やフリマサイトの普及などに伴い自宅で出来る副業として⑦のような取引や事業が増えているといえます。
また継続的にエステを受ける、語学を学ぶといった契約についても、⑥の類型にあたり特定商取引法の規制対象になります。
このように規制対象は当初の訪問販売に限らず非常に広範になっており、これから始めようとしている事業が特定商取引法の規制対象になることは珍しくありません。
次回の記事では、特定商取引法の具体的な規制内容について解説させていただきます。
経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。
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