【事例】
A社はB市内において複数のラーメン店を運営していました。
ある日動画配信サイトにおいて、A社の運営するラーメン店において、客Xが備え付けの箸をなめてそれを箸箱に戻す様子が映った動画が投稿されていた。
動画はSNSで引用されるなどして多くの人の知るところとなり、店の評判を大きく落とすこととなりました。
A社はあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に今後の対応について相談しました。
(事例はフィクションです)
このページの目次
迷惑動画をあげることにはどのような罪が成立しますか
近年SNSや動画サイトの隆盛により、周囲からの注目を浴びるなどの目的で、事例のような迷惑動画を上げるケースが社会問題になっています。
今回の記事では、企業が事例のような迷惑動画の被害に遭った場合に取るべき対応について、詳しく解説させていただきます。
はじめに、迷惑動画をあげる行為にはどのような犯罪が成立するのかについて事例を題材に説明させていただきます。
まず事例において成立する犯罪として、威力業務妨害罪(刑法234条)が考えられます。
罪名にある「威力」というと暴力や脅迫などが思い浮かぶかもしれませんが、事例のようなお店の業務を妨害するような動画を上げる行為も「威力」に該当します。
他にも、事例にある箸をなめて箸箱に戻す行為行為は、その箸を心理的に今後使えなくする行為なので、器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性があります。
たとえ物理的に破壊していなくとも、茶碗に放尿するなどその物を心理的に今後使えなくする行為について刑法では器物損壊罪の成立を肯定しています。
このように最初にあげた事例では、刑法上の威力業務妨害罪や器物損壊罪が成立する可能性が高いといえます。
店側として取るべき対応
1 犯人の特定
事例のような動画投稿の多くはSNSや動画サイトなどで匿名で投稿されることがほとんどです。
動画を撮影したものや迷惑行為をしたものに対して責任を追及する場合には、まずその犯人を特定することから始める必要があります。
そしてアカウントの情報のみで犯人が分からない場合には、発信者情報開示請求を動画が投稿されたプロバイダに対して行うことが、犯人を特定する方法として考えられます
発信者情報開示請求は裁判所に必要書類を揃えて申し立てをする必要があるなど複雑な手続きですので、請求を考える場合には早急に弁護士に相談することをお勧めします。
また動画の映像やお店の防犯カメラに映った映像から犯人を特定する方法として、後述する刑事告訴を行い捜査機関に犯人を特定してもらう方法もあります。
2 刑事告訴
捜査機関に対する告訴とは、犯罪の被害を受けた者などの告訴権者が捜査機関に犯罪事実を申告して犯罪者の処罰を求める行為です。刑事告訴をするメリットとしては、先述のように犯人の特定が難しい場合に捜査機関の力を借りて犯人の特定ができる場合があることがあります。
また近年大きな社会問題になっている迷惑動画の投稿に対して、店側として許さない毅然とした態度を示して、模倣犯や愉快犯を防ぐ意味合いもあります。
刑事告訴は必ず弁護士を代理人にする必要があるわけではありませんが、事実の特定や捜査機関との連携を弁護士が行うことでスムーズに手続きが進みやすくなるので早期に弁護士に相談することをお勧めします。
3 民事上の賠償請求
刑事手続きが、犯人に対する刑事処罰を目的とする行為であるのに対して、事例の場合における民事手続きは犯人に対する金銭的な責任を追及する手続きになります。
どのような手続をとるかは被害の大きさや加害者側の対応、社会的影響の大きさなどを比較考慮して決める必要があります。
事例の事案では損害賠償の額の算定が問題になるケースが多いでしょう。
事例では単に箸が使えなくなったのみではなく、動画の拡散によってお店の印象が低下して客が減り、損害が発生している可能性が高いです。そのような場合に、収入が減った場合の損害を証明することは簡単ではありません。
手段の選択や、訴えると決めた場合の損害額の証明は容易ではないので、事例のような事態発生の発覚後すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
4 信用回復のために取るべき措置
今回の事例のようなケースではなるべく早く、お店の信頼回復を図る必要があります。
具体的には、動画がこれ以上拡散することがないように問題の動画や動画を引用した投稿を削除する申請を行うことや、同じような行為が繰り返されないように箸箱を客席におかないなどの再発防止策をとる必要があります。
飲食店などは特に客からの評判によって収益が大きく変わるので、客の信頼を回復するための措置はなるべく早くとる必要があります。
刑事事件対応に強い顧問弁護士
あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件に精通した事務所として、刑事事件、少年事件をこれまで多数扱ってまいりました。
そのように刑事事件に強い事務所だからこそ、事例のように企業が刑事事件の被害者になった場合の適切な対応には自信があります。
先ほども述べたように、現代ではSNSの発達やスマホの普及によって、情報は瞬く間に拡散されるので迅速な対応が非常に重要になります。
そのためには、事例のような事態が発生してから弁護士を依頼するのでは対応が後手に回ってしまうおそれがあります。
あいち刑事事件総合法律事務所では、平時からご依頼いただき平時から法律相談相談に加え、事例のような場合に迅速に対応できる顧問契約を準備させていただいております。
事例のような事態にお困りの方、もし事例のような事態が発生した場合のご対応にご心配がある方は、ぜひ一度あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。