管理職・役員の不適切発言

(以下の事例はフィクションです)

A社の課長Bさんは、新入社員が初めて出社した際、「うちの販売戦略は、地方から出てきた田舎者の世間知らずに安く商品を売り、うちの商品の虜にしてしまう。いわばシャブ漬け戦略である。」と言いました。その場では何事もなく終わりましたが、その後、SNSに、A社のB課長による「シャブ漬け戦略」との発言について投稿がなされました。

企業管理職の不適切発言について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Bさんの発言は何が問題か

おそらくBさんの発言は、その場の雰囲気を盛り上げるために冗談を言ったのだと思われますし、特定の誰かを誹謗中傷しているわけでもないので、刑法上の名誉毀損罪侮辱罪といった犯罪には該当しません。したがって、発言が法令に違反しているわけではありません。

しかしながら、Bさんの発言は、それを聞いた多くの人が不快に感じるでしょうし、企業の管理職にあたる人がそのような発言をしたとなれば、その影響は相当大きいといえます。それを聞かされた新入社員にとっては、A社では働きたくないと思うでしょうし、SNS投稿を見た多くの人は、今後はA社の商品を買わないといった不買運動に発展していくことが考えられます。

コンプライアンスとは、法令遵守にとどまるものではない

企業犯罪や不祥事を起こさないための予防策のことをコンプライアンス(コンプライアンス体制)といいます。コンプライアンスとは、直接的には「法令遵守」を意味します。
しかし、企業に求められるコンプライアンスには、法令遵守だけでなく、倫理観、公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に業務を行うことも含まれています。法令に加えて、企業が独自に定める就業規則や社内規定から、倫理・モラル的に社会通念上守るべきルールまで遵守しなくてはなりません。

Bさんの発言は、法令には違反していないものの、社会規範の悖る行為であり、コンプライアンス違反に当たる行為といえます。
実際、法令に違反していなくてもBさんのような発言をすれば、取引先からも見放されるなど、企業にとっては、甚大な被害が生じるでしょう。コンプライアンスを単なる法令遵守の問題と捉えていると、実際に不祥事が発生した際の対応や、不祥事の発生を防止するための対策の講じ方を誤るおそれがありますので注意が必要です。

A社が取るべき対応は

Bさんの発言を聞いて、不快な思いをした人に、まずはお詫びをし、Bさんの発言内容が事実と異なるなら,更なる風評被害を防ぐ意味でも、A社が「シャブ漬け戦略」など取っていないことを企業のホームページ等で広く伝えることが必要です。その際、Bさんについて減給等の懲戒処分をしたなら、Bさんの処分についても発表します。

さらに、再発防止策を策定し、既に対策をとっていることについても公表することが肝要です。
本件の再発防止策としては、企業内研修が有効です。コンプライアンスに関する企業内研修を行い、ルールの周知徹底や意識改革をする必要があります。
また、本件は、不正を起こした場合、影響力の大きい企業管理職の発言が問題となっており、研修については、役員や管理職向けなのか従業員向けなのかによっても内容を変える必要があります。

倫理研修のような様々な分野に横断的に対応できる研修を行ったりすることも有効でしょう。

企業で本件のような不正行為が発覚した場合、弁護士のサポートがあればスムーズに進みます。不正を行った者に対して責任を追及したい場合や風評被害対策にお困りの場合等には、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

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