Archive for the ‘企業犯罪’ Category
「営業秘密」の裁判例解説②

本記事では、横浜地裁平成26年(わ)1529号平成28年10月31日判決について解説します。この判決については、控訴上告されていますが、有罪無罪の結論自体に変更はありません。
本件は、被告人が不正競争防止法で禁止されている営業秘密の領得を犯したものとして起訴されたものの、一部について有罪、一部について無罪となった事件です。このような結論が出ている判決をよく読むと、なぜ一部については有罪になるのに他は無罪となるのかが解ります。それが解ると、営業秘密を守るためには企業がどうするべきなのかも解ります。
本件を簡単にいうと、自動車会社A社で働いていた被告人は、サーバーコンピューターに保存された営業秘密データを複製して持ち出したというデータ領得行為と営業秘密が含まれた教本を持ち出した複製して持ち出したという教本領得行為で起訴されました。
データ領得行為については、営業秘密であるデータを不正の目的で持ち出したものだと認定されて有罪となっています。一方、教本領得行為については、秘密として管理されていたとはいえないとして無罪となりました。
では、なぜデータは営業秘密なのに、教本は営業秘密と認められなかったのでしょうか?
前回の記事では、データ領得行為について有罪となった過程について説明しました。その記事は以下のリンクから確認できます。
今回は、教本領得行為が無罪となった理由を確認します。
結論からいうと、領得された教本が営業秘密に該当するとはいえないという理由から無罪となりました。
では、なぜ営業秘密と認定されなかったのでしょうか。確認していきます。
(1)裁判所の認定によると、教本は次のような管理の仕方で保管されていました。
・教本は、閲覧コーナーに、他の本と共に、表紙の全部又は一部が見えるように展示されていた。
・閲覧コーナーには監視員はおらず、周囲に監視をすることが可能な職員もいなかった。
・教本を紐や鎖でオープンラックとつなげるような措置もなく、閲覧するために氏名等を記載するなどの手続もなく、館内に入った人は誰でも自由に手に取って閲覧することができ、メモをすることも禁止されていなかった。
・教本は若手従業員の育成講座のテキストとして使用され、受講者には終了後に教本が配布され、持ち帰りも許されていた。
(2)本件教本には、社外秘であることを表す文字のスタンプが押されていた。
(3)(1)の事情を踏まえると、(2)があっても営業秘密として合理的な方法で管理されていたとはいえない。
以上の理由から、教本についてはそもそも営業秘密と認めるだけの管理がされていないことから営業秘密として認められなかったのです。
データ領得行為と教本領得行為とで結論が異なった理由から、営業秘密として保護を得るための管理体制について一定の方向性を考えることができます。
まず当然のことながら、社外秘であることを示すマークなりスタンプなりは最低限必要なのでしょうが、それだけで営業秘密と取り扱ってもらえるわけではないようです。
誰がそれを見てよいのか明確に示すこと、誰が確認したのか記録を残すことができるようにすること、他の秘密でないものと適切に分けて管理すること、こういった事情が必要になってくるといえます。
具体的な事件や営業秘密の保護・整理について担当部門の方はこちらからお問い合わせください。
取締役等に対する贈賄罪、収賄罪について

取締役等に対する贈賄罪、収賄罪で自社の取締役が金銭を受け取っていた際の対応を弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考報道:東京女子医大を家宅捜索 特別背任容疑、同窓会が実態ない職員に給与
【事例】
A社の取締役であるXさんは、下請け業者のB社のYさんから、自分を優遇してもらうことをお願いされて100万円の金銭を受け取りました。
そしてXさんはYさんが自宅を購入するための資金に困った際に、A社名義でYさんにとって非常に有利な条件で多額の融資をしていました。
以前の記事では取締役が職務に関し金銭を受け取った場合に成立する罪や、成立する要件について解説しました。
今回の記事では、事例のようなケースが発覚した場合の対応について解説します。
1 事実の調査について
事例のようなケースが発覚するのは、事情を知った者からの内部または外部通報によることが多いと思われます。
そのような通報があった場合はまずは当事者に事情を確認して、事実関係を詳細にかつ正確に把握することが重要になります。
以前の記事で解説したように、会社役員の収賄罪については、公務員の収賄罪とは要件が一部異なります。
受け取った金銭が何か職務上の請託を受けてされたものなのか、受け取った利益に関する証拠があるのかなど、当事者の証言や客観的証拠を踏まえて会社法に違反するような事実があるのかについて確認をする必要があります。
会社法に違反するのは以前の記事で説明した収賄だけではありません。
本件事例においては、Yさんに対してXさんが不正な融資を行ったことについて特別背任にあたる可能性があります。
特別背任については会社法960条に規定があります。
会社法第960条
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
四 民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五 第346条第2項、第351条第2項又は第401条第3項(第403条第3項及び第420条第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六 支配人
七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八 検査役
明らかに会社の損害にあたるような不正融資(例:返済原資のないものへの無担保での貸し付け)については、事前に金銭の収受などがなくとも特別背任にあたり刑事責任を負う可能性があります。
収賄という形で通報があったとしても、特別背任などほかの罪に当たる可能性はないかなど多角的な視点で調査することが重要になります。
そのような調査を行うためには、法的知識に詳しいものも含めた調査チームを作ることが重要になります。
2 当事者への責任追及
仮に会社法違反であることが明らかになった場合には当事者に対しての責任追及について考える必要があります。
収賄や特別背任については刑罰が予定されているので警察に届け出ることが適当かとは思いますが問題は単純ではありません。
事件の内容的に会社の評判や株主の利益にも関わる事態なのでどのように対処するかは様々な視点から考える必要があります。
会社法にも会社から取締役への責任追及(例:取締役の解任請求)や、株主から取締役への責任追及(例:損害賠償請求)など様々な規定が置かれていますので会社としても当該事例にや会社の置かれている状況などに応じて適切な対処をする必要があります。
対処方法の選択や対処の進め方についても専門家である弁護士に相談しながら進めることをおすすめします
3 再発防止策の策定
事件の処理が終了したとしても、今後事例のような事態が発生しないように再発防止策を策定することは、会社の信頼回復や今後の会社経営において重要な課題になります。
内部通報制度の充実や、取締役等の会社役員のコンプライアンス体制の確立などを検討する必要があります。
不祥事対応,企業犯罪についてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。
「営業秘密」の裁判例解説

本記事では、横浜地裁平成26年(わ)1529号平成28年10月31日判決について解説します。この判決については、控訴上告されていますが、有罪無罪の結論自体に変更はありません。
本件は、被告人が不正競争防止法で禁止されている営業秘密の領得を犯したものとして起訴されたものの、一部について有罪、一部について無罪となった事件です。このような結論が出ている判決をよく読むと、なぜ一部については有罪になるのに他は無罪となるのかが解ります。それが解ると、営業秘密を守るためには企業がどうするべきなのかも解ります。
参考報道 「ギャラ」「NG」芸能人の営業秘密持ち出し疑い 会社員の男を逮捕 朝日新聞
本件を簡単にいうと、自動車会社A社で働いていた被告人は、サーバーコンピューターに保存された営業秘密データを複製して持ち出したというデータ領得行為と,営業秘密が含まれた教本を複製して持ち出したという教本領得行為で起訴されました。
データ領得行為については、営業秘密であるデータを不正の目的で持ち出したものだと認定されて有罪となっています。一方、教本領得行為については、秘密として管理されていたとはいえないとして無罪となりました。
では、なぜデータは営業秘密なのに、教本は営業秘密と認められなかったのでしょうか?
データが営業秘密と認定された根拠
判決文「第3 本件各データファイルの営業秘密該当性及びその点に関する被告人の認識について」に詳しい説明がありますので、裁判所が根拠として挙げた事項を確認します。
- データファイルの内容が会社の事業活動にとって有用であったこと。例えば、未発表の製品の仕様が入力されていたり、独自に開発された販売台数を予測するためのシステムツールの使用マニュアルなどが含まれていたようです。
- データファイルに秘匿性が認められること。(1)のデータの有用性を踏まえると、これらデータが漏出した場合、会社の競争力等に影響が生じることから、秘匿性も認められています。
- データファイルへのアクセス制限が行われていたこと。例えば会社の中でも業務に必要なものにしかアクセスすることができないようになっていたことや従業員に対する指導が行われていたことなどが挙げられています。
- 弁護人は、営業秘密と解るようなラベリングがされていないものがあることや宴会の写真など明らかに営業秘密と関係のないものもデータファイルに入っていたことを指摘して、営業秘密該当性を争いましたが、(1)~(3)の状況を踏まえると、必ずしも管理が徹底されていない部分もあったが、営業秘密該当性が否定されることはありませんでした。
以上が、今回の判決のうち、データ領得行為が有罪となった簡単な理由です。
次回、教本領得行為が無罪となった理由を説明しますので、次の記事をご覧ください。
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外国人の不法就労について

外国人が適正に就労できるよう、外国人の雇用についても厳格な規制が設けられています。就労資格のない外国人を日本の企業が雇用した場合、その外国人だけでなく雇用した個人や企業も処罰を受けます。ここでは、外国人を不法就労した場合の処罰について解説します。
外国人の不法就労活動
本邦に在留する外国人は、その在留資格により認められた活動や許可の範囲を越えて活動することはできません(出入国管理及び難民認定法(入管法)第19条第1項)。
別表第一の一、第一の二、第一の五
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー等)
その在留資格に定められた範囲でのみ就労が可能(入管法第19条第1項第1号)。
別表第一の三、第一の四
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
資格外活動の許可を受けることが必要(入管法第19条第1項第2号・第2項)。
その在留資格により活動できない活動をして報酬やその他の収入を得た場合、不法就労となります。
資格外の活動のほか、旅券や上陸許可なく本邦に上陸した者や在留資格を失った者、在留期間を経過した者等、在留資格が無い者が活動をして報酬やその他の収入を得た場合も不法就労となります。(出入国管理及び難民認定法(入管法)第24条第3の4号イ)。
不法就労助長罪
このような外国人に不法就労活動をさせた場合、不法就労助長罪となります。
入管法では、次のいずれかに該当する者について、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する、と定めています(入管法第73条の2第1項)。
① 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
② 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
③ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
この行為をした者は、次のいずれかに該当することを知らないことを理由として処罰を免れることはできません。ただし、知らなかったことについて過失がなかったときは、処罰されません(入管法第73条の2第2項)。
① 当該外国人の活動が当該外国人の在留資格に応じた活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動であること。
② 当該外国人が当該外国人の活動を行うに当たり許可(入管法第19条第2項)を受けていないこと。
③ 当該外国人が在留資格のない者(入管法第70条第1項第1号、第2号、第3号から第3号の3まで、第5号、第7号から第7号の3まで又は第8号の2から第8号の4)であること
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関してこの罪を犯したときは、行為者だけでなく、その法人又は人に対しても、300万円以下の罰金刑が科されます(入管法第76条の2)。
事業主は、外国人の氏名や在留資格、在留期間などの事項を、在留カードや旅券・在留資格証明書などにより確認しなければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第11条第1項)。こうしたことを怠っていると、知らなかったことについて過失がなかったとすることは困難になります。
まとめ
このように、不法就労者を雇うようなことをしてしまうと、採用担当者だけでなく企業自身も重い刑罰を科されることになります。不法就労をさせないことはもちろん、雇用の際に、外国人の在留資格などについてもしっかりと確認する必要があります。
外国人の雇用についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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企業経営者が知っておくべき「司法取引」について①

1 はじめに
平成28年に行われた刑事訴訟法の改正によって日本でも司法取引と呼ばれる制度が平成30年6月より導入されています。
司法取引で対象となる犯罪には企業経営とも密接にかかわる犯罪も含まれていますので、企業経営を行う者にとっても重要な制度であるといえます。
今回は司法取引制度の概要や、企業経営者としてどのような点に留意して対応するべきか、具体的な事例を用いて解説させていただきます。
2 司法取引制度の概要
日本で導入された司法取引制度は検察官と被疑者・被告人およびその弁護人が協議し、被疑者または被告人が「他人」の刑事事件の捜査・公判に協力するのと引換えに、自分の事件を不起訴または軽い求刑にしてもらうことなどを合意するという制度です。
この制度に関しては刑事訴訟法350条の2~350条の15に根拠があります。
日本で導入された司法取引制度の特徴を簡単に挙げるならば
・他人の犯罪の証明に対する協力を内容とすること(自分のした犯罪に対する自白などの協力には後述する見返りは得られません)
・見返りとしては自身の事件について不起訴や、求刑を軽くしてもらえる(罰金を求刑するないしは実刑判決を求刑しないなど)ことが規定されていること
・取引の相手方は検察官であり、警察官は取引の相手方にならないこと
・弁護人の関与が必須であること
という点です。日本で導入された司法取引制度はアメリカの制度を参考にして導入されたものですが、上記の点が日本で導入された司法取引制度の特徴になります。
3 司法取引の対象となる犯罪類型
司法取引の対象となる犯罪類型は多岐にわたりますが企業に密接に関連する犯罪や法令違反の一部を挙げると
・贈収賄などの公務員関連犯罪
・詐欺、横領、背任などの財産犯
・談合などの規制する独占禁止法違反
・インサイダー取引などの規制する金融商品取引法違反
・企業秘密の漏洩などを規制する不正競争防止法違反
・特許法違反
などがあります。
ご覧いただいて分かるように企業経営や取引に関して発生する刑事事件については基本的に司法取引制度の対象事件になると考えていただいて差支えないかと思います。
このように近年導入された司法取引は企業を経営する者にとって密接にかかわる制度にも拘らず、認知度はまだまだ高いとはいえません。
そして捜査対象となった場合に、安易に捜査機関からの誘いに応じて協力を申し出ることは自身のメリットになるばかりでなく、自分で自分の首を絞めることにもなりかねません。
そこで次回の記事では司法取引制度の利用方法やその注意点について詳しく解説させていただきます。
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外国人の雇用について

グローバル化が進み、外国人の日本での就業が多く見られるようになっています。その一方で、文化の違いなどから日本人の生活者とのトラブルも見受けられます。
外国人が適正に就労できるよう、外国人の雇用についても厳格な規制が設けられています。
ここでは、外国人の雇用の際のルールについて解説します。
外国人の雇用が可能な在留資格
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、日本人と同様にわが国で暮らしていますので、就労活動に制限はありません。これらは出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第二の在留資格で、別表第一の在留資格のような制限はありません。
一方、別表第一の在留資格ですと、どのような在留資格の外国人でも雇用できるわけではありません。
以下の一定の活動を目的として在留する外国人(別表第一の一、第一の二、第一の五)は、その在留資格に定められた範囲で終了が認められます(入管法第19条第1項第1号)。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー等)
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在の資格(入管法別表第一の三、第一の四)は、日本での就労を予定していない資格なので、そのままでは就労が認められません。これらの資格の者がアルバイト等の就労活動を行う場合、資格外活動の許可を受けることが必要です(入管法第19条第1項第2号・第2項)。
外国人雇用状況の届出
事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、以下の事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第10条第1項)。
氏名,在留資格,在留期間,その者が在留資格を有しない者であって監理措置や仮滞在による許可を受けて報酬を受ける活動を行う者である場合(報酬活動許可者)はこれらの許可を受けている旨及び被管理者又は仮滞在許可者のいずれに該当するか,生年月日,性別,国籍の属する国・地域,資格外活動許可を受けている場合はその旨,中長期在留者(3か月以下の在留期間の者や短期滞在者等以外を指します。入管法第19条の3)の場合は在留カードの番号,特定技能の場合は特定産業分野,特定活動の場合はその特に指定された活動,住所,雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地,賃金その他の雇用状況に関する事項
事業主は、先述の氏名や在留資格、在留期間などの事項を、在留カードや旅券・在留資格証明書などにより確認しなければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第11条第1項)。
資格外活動の許可を受けて就労する場合、在留カードや就労資格証明書により確認する必要があります(同施行規則第11条第2項)。
特定技能や特定活動の在留資格の場合、指定書により確認する必要があります(同施行規則第11条第3項・第4項)。
被監理者や仮滞在許可者である報酬活動許可者の場合、監理措置決定通知書や仮滞在許可書により確認する必要があります(同施行規則第11条第5項)。
外国人雇用状況の届出は、新たに外国人を雇い入れた場合は雇い入れた月の翌月10日までに、その雇用する外国人が離職した場合は離職した日の翌日から起算して10日以内に、当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出することにより行います(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第12条第1項)。
違反した場合の罰則
この届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金に処されます(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第40条第1項第2号)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、この違反行為をしたときは、その行為者を罰するだけでなく、その法人又は人も同様に処罰されます(同条第2項)。
まとめ
このように、外国人の雇用については確認するべき書類が多々あり、違反によっては刑罰を科されることになります。
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外国公務員贈賄罪

経済のグローバル化に伴い、日本の企業が国外に進出することが増えました。その中では、外国の公務員が関わる事業もあります。その際に、外国の公務員から賄賂を求められることもあります。このようなことを許せば国際的な競争条件が歪められ、国際取引の公正な競争が害されてしまいます。これを防ぐために、外国公務員贈賄罪が定められています。
外国公務員贈賄罪の趣旨
国際商取引における外国公務員への不正な利益供与が問題となっていたため、1997年12月にパリにおいて、我が国を含む33か国により、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」が締結されました。
この条約では、締約国は、「ある者が故意に、国際商取引において商取引又は他の不当な利益を取得し又は維持するために、外国公務員に対し、当該外国公務員が公務の遂行に関して行動し又は行動を差し控えることを目的として、当該外国公務員又は第三者のために金銭上又はその他の不当な利益を直接に又は仲介者を通じて申し出、約束し又は供与することを、自国の法令の下で犯罪とするために必要な措置をとる。」(第1条第1項)、「外国公務員に対する贈賄行為の共犯(教唆、ほう助又は承認を含む。)を犯罪とするために必要な措置をとる。外国公務員に対する贈賄の未遂及び共謀については、自国の公務員に対する贈賄の未遂及び共謀と同一の程度まで、犯罪とする」(第1条第2項)、「自国の法的原則に従って、外国公務員に対する贈賄について法人の責任を確立するために必要な措置をとる」(第2条)などと定められています。
これを受けて、日本では、不正競争防止法において、「外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止」が定められています(同法第18条)。
(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。
一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者
二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者
三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者
四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者
五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者
規制の内容
「国際的な商取引」とは、国際的な商活動を目的とする行為、すなわち貿易及び対外投資を含む国境を超えた経済活動に係る行為を意味するとされています。
「営業上の利益」とは、事業者が営業を遂行していく上で得られる有形無形の経済的価値その他の利益一般とされています。「不正の利益」とは、公序良俗又は信義則に反するような形で得られる利益とされています。
取引の獲得や許認可の取得を目指して利益供与をするだけでなく、通関等の手続の遅延等の差別的な不利益な取り扱いを避ける目的で利益を供与することも該当します。
一方で、支払を行わないと暴行されたり殺害される可能性がある場合など、生命・身体に対する危険の回避を主な目的として、やむを得ずに行った利益供与等は、「不正の利益」を得る目的がないと判断される可能性があります。
参照 「外国公務員贈賄罪Q&A」
この規定に違反したときは、違反行為をした者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科されます(不正競争防止法第21条第4項第4号)。日本国内で行われた場合だけでなく、刑法第3条の例に従い、日本国外において違反行為をした日本国民についても適用されます(同条第10項)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関してこの違反行為をしたときは、法人も10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。
まとめ
このように、外国の公務員に対して利益供与をすると、行為者も企業も重い処罰を受けることになります。
企業の国際活動についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
企業が守るべき特定商取引法についての解説②

1 特定商取引法の規制内容について
前回の記事では、特定商取引法の目的とその規制範囲について解説させていただきました。
では特定商取引法ではどのような行為について規制しているのでしょうか。
特定商取引法では、①行政規制、②民事的ルールの2種類の規制に大別されます。
①行政規制は、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて定められる規制です。
②民事的ルールは、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するために定められているルールのことをいいます。
2 行政規制
行政規制には、①氏名等の表示の義務付け、②不当な勧誘行為の禁止、③広告規制、④書面交付義務の4つがあります。
この規制に違反した場合には、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
①については、トラブルになった際の連絡先として機能する必要があるので、単に表示すればよいというのではなく、連絡が取ることが可能な連絡先を表示する必要があります。
また勧誘時には事業者名と勧誘目的であることを明示することが義務付けられています。
②についてしばしば問題になるのは虚偽の説明や、不当な威迫を行って消費者に契約を迫る行為などがあります。
これらの行為は悪質性が高いと判断される場合には、詐欺罪(刑法246条)や強要罪(刑法223条)が成立し、より重い刑事罰が科される場合があります。
③広告規制については虚偽広告、誇大広告をすることが禁止されています。広告の内容については、線引きが難しいところもありますので専門家に判断を仰ぐことがベターです。
④については、契約時に重要事項を記した書面を交付することが特定商取引法上義務付けられています。
実際に同法の違反によって検挙されたケース
3 民事的ルール
民事的ルールには、①クーリングオフ、②意思表示の取消、③損害賠償等の額の制限です。
これらは消費者を保護するための規定です。
これらの内容について法律で定められている記載義務に反して表示をしない場合や、虚偽の内容(クーリングオフの期間を偽るなど)を記載する、または表示すべき内容を記載していなかった場合には行政規制の対象となる場合があります。
4 企業がするべき対応
企業として特定商取引法の対象となる事業をする場合この規制に抵触しないように細心の注意を払う必要があります。
企業として準備する契約書類などに問題がないか確認することはもちろん、従業員が取引の際に守るべき事項をマニュアルにするなどして法令を遵守すことをしっかりと確認する必要があります。
マニュアルがしっかり作成されていれば、万が一従業員が独断で規制に反する取引を行ったとしても企業側が責任負うリスクを防ぐことができます。
今回の記事では特定商取引法で規制されている行為について解説させていただきました。
個々の事例においてこれらの規制に抵触するかについては法律の専門家に相談することをおすすめします。
あいち刑事事件総合法律事務所ではお困りの方に無料法律相談を実施して、お困りの点についてご相談に乗らせていただきます。また継続的に契約書の内容の確認や、取引内容の適法性について確認してほしいというニーズのある方向けに顧問契約もご用意しています。
初回の相談は無料で、WEB面談での対応も可能ですので、まずは一度気軽にご相談してみてください。
次回の記事ではこれらの規制に違反してしまった場合には、企業としてどのような影響があるのかについて解説させていただきます。
経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。
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廃棄物処理法の営業許可②

【事例】
Aさんは、京都市内で産業廃棄物の収集運搬を行う会社であるⅩ社に長年勤めていました。
Aさんは、家庭の事情をきっかけに、それまで勤めていた会社を退職し、地元である滋賀県高島市で、自ら産業廃棄物の収集運搬を行う会社を立ち上げようと考えました。
AさんはX社に勤めていた経験から、役所で手続きが必要だったり、細かなルールが定められていたりするのは知っていましたが、具体的にどのような手続きをすればいいのかまではわかりませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下では「廃棄物処理法」といいます。)が、事業を細分化し、許可ごとに行える事業を分けたうえで、事業を行う会社にはその事業に対応する許可を取るように求めていることをお伝えしました。
そして、廃棄物処理法が細分化している事業の種類のうち、廃棄物の種類に着目した分類を見てきました。
今回は、業態に着目した分類を見ていきます。
2 収集運搬業と処分業
廃棄物処理法は、廃棄物の収集又は運搬を行う者と処分を行う者とそれぞれ別個の許可を得るように求めています。
まず、収集運搬業は、廃棄物を排出する事業者から廃棄物を回収し、処分業者のもとへと運ぶという業態です。
前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法7条1項本文)、産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条1項本文)、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条の4第1項本文)の3種類です。
ちなみに、特別管理一般廃棄物収集運搬業許可というものが別途ある訳ではなく、一般廃棄物収集運搬業許可の中で行うことができます。
ただし、「一般廃棄物処理基準(特別管理一般廃棄物にあつては、特別管理一般廃棄物処理基準)に従い、一般廃棄物の」収集運搬をしなければならないとされています(廃棄物処理法7条13項)。
次に、処分業は、処理施設での焼却等の処分や最終処分場での埋立て等の処分などといった処分を行う業態です。
こちらも前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物処分業許可(廃棄物処理法7条6項本文)、産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条6項本文)、特別管理産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条の4第6項本文)の3種類です。
特別管理一般廃棄物処分業許可がないというということ、その場合でも廃棄物処理法7条13項により、特別管理一般廃棄物処理基準に従う必要があることは、収集運搬業と共通です。
3 施設許可
さて、Aさんのように収集運搬業の許可を求める場合と異なり、処分業の許可を求める場合には、その処分に必要な処理施設が必要になります。
そして、この処理施設を設置するのにも都道府県知事の許可が必要となります。
この廃棄物処理施設設置許可についても、一般廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法8条1項)と産業廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法15条1項)があります。
今回は、廃棄物処理法の許可について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
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企業が守るべき特定商取引法についての解説①

今回の記事からは数回に分けて特定商取引法に関しての解説をさせていただきます。
特定商取引法については、これに違反したとして逮捕される例が少なくありません。
また逮捕された場合には、消費者保護の観点から被疑者名や会社名が実名で報道されるケースが一般的に多いです。
ですので経営する会社が特定商取引法違反で報道されることになってしまえば、大きく企業イメージを損なってしまいます
例えば、次に挙げる記事のような事例です。
美容商品の販売契約に関してクーリングオフを説明しなかったとして、大阪府警は19日、名古屋市にある美容関連商品卸売業Xの実質経営者Aさんら男性5人を特定商取引法違反(不実の告知など)容疑で逮捕した。
府警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は2023年1~3月、同社から仕入れた化粧品を販売できる内容の契約を男女3人と締結。契約解除ができるクーリングオフ制度は適用されないと虚偽の説明をしたり、制度の記載がない契約書を渡したりしたとしている。
契約者は市場価格より安価で商品を同社から入手し、第三者に売って利ざやを得られるとする仕組みだった。(以下略)
(毎日新聞令和6年6月19日付「化粧品転売契約、クーリングオフ説明せず。特商法違反疑い、5人を逮捕」から一部引用,当該報道記事は既に削除済み)
本記事では特定商取引法がどのような法律であるか、またどのような取り引きに関して適用があるのかについて解説させていただきます。
この記事を読んでいただくことで、自社が行っている取引や、行おうとしている取引に特定商取引法の規制対象になるかが分かるかと思います。
1 特定商取引法について
特定商取引法は、正式名称を特定商取引に関する法律といいますが、本記事では「特定商取引法」と省略して記載しています。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています(消費者庁のHPより引用。https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/)
特定商取引法は元々「訪問販売等に関する法律」という名称の法律として施行されており、訪問販売に関する規制を内容としていました。
それが契約類型の多様化に伴って、改正が繰り返されて現行の特定商取引法となっているのです。
2 特定商取引法が規制対象としている取引について
次に特定商取引法が規制対象としている取引に関して解説します。
特定商取引法では7つの契約類型について規制対象としています。
①訪問販売、②訪問購入、③通信販売、④電話勧誘販売、⑤連鎖取引販売、⑥特定継続的役務提供、⑦業務提供誘引取引の7つになります。
それぞれの取引例については、先述の消費者庁のページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/)も参考にしてください。
近年しばしば問題になる取引としては、記事にあったような、ある会社の商品を有償で提供するのでそれを販売して利益を得てくださいというような取引があり、これは⑦の類型にあたります。簡単に言うと「情報商材ビジネス」です。
コロナウイルスの流行やフリマサイトの普及などに伴い自宅で出来る副業として⑦のような取引や事業が増えているといえます。
また継続的にエステを受ける、語学を学ぶといった契約についても、⑥の類型にあたり特定商取引法の規制対象になります。
このように規制対象は当初の訪問販売に限らず非常に広範になっており、これから始めようとしている事業が特定商取引法の規制対象になることは珍しくありません。
次回の記事では、特定商取引法の具体的な規制内容について解説させていただきます。
経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。
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