Archive for the ‘不祥事・危機管理’ Category

横領の被害申告

2024-02-16

(事例はフィクションです)
雑貨店を経営しているAさんのお店では、レジのお金や商品の在庫の数を整理するための記録をつけておりますが、あまりに業務が多い場合にはついつい記録を忘れてしまったり、どこかで計算ミスが起きてしまったもののどこから間違っているのか解らなかったりする場合もあります。
従業員のBは、商品の売上金1万円を着服していることが解りました。着服の方法は、商品が返品されていないのに返品されたことにして、売上記録を勝手に抹消し、売上金1万円をお客さんに返したことにして実際には自分の財布に入れていたというものです。
 Aさんは、とりあえずその1万円は返してもらいましたが、実際にはもっと着服をしているのではないかと疑っています。しかし、レジのお金や商品の在庫の記録が不正確なこともあるので、どうやって過去の着服を突き止めることができるのか、全く解りません。そこで弁護士に相談することを考えています。
この事例をもとに、弁護士が、どのようなサポートをAさんにして差し上げられるか、解説します。

弁護活動の内容

今回の事例のような着服は、よくある方法です。同じような被害にあった経営者の方も少なくないのではないでしょうか。
参考:レジ金窃取事案における窃盗と業務上横領の違いについて


もし、このような相談を受けた場合の対応としては、まずAさんから会社の経理関係の書類を預かって、お金の流れを追っていくことになります。いつからの経理関係書類をお預かりするかは、弁護士とAさんで相談して決めることになるでしょう。
そして、余罪が疑われるポイントを探していくことになります。例えば、異常に返品の数が多いような場合です。また、少なくともこの時期の記録は正確だと言える根拠があれば、在庫の数とレジのお金が合わないと言いやすくなってきます。これら経理関係書類のチェックは、大変に根気のいる作業なので、会計に精通した弁護士と細かく根気強く打合せをしていくことが大事です。
そして一定の証拠が揃った段階で、警察に被害届や告訴状、つまりBさんに対する捜査や処罰を求める書類を提出することになります。一般の方が告訴状を準備するのは一苦労なので、書類の作成技術の高い弁護士に依頼するメリットも大きいです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の強み

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、簿記の資格を有する弁護士はもちろん、会計検査院や検察庁で勤務した経験がある弁護士が在籍しています。また、犯人側の立場から、お金の流れを徹底的に追っていったことが決め手となって、無罪判決を獲得した弁護士も在籍しています。

こういった専門的な弁護士や実績のある弁護士のサポートをご希望の場合には、ぜひ弊所に一度ご相談ください。

ご相談はこちらからも問い合わせ可能です。

従業員の薬物所持が疑われる場合の誤った会社の対応

2024-02-09

【事例】
Aさんは、もともと警察官をしていましたが、現在は通信事業を営むX社のコンプライアンス部で課長の職に就いています。
ある日、Aさんは、Ⅹ社の従業員であるBさんが、日常的に違法薬物を使っているらしいという噂を耳にしました。
そこで、Aさんは、X社の規定に則り、Bさんに対して聴き取り調査を行うことにしました。
Bさんは聴き取りで、日常的に大麻を使用していた事実を認め、会社にあるBさんの机の引出しに隠して所持していた大麻をAさんに提出しました。
Aさんは、警察官をしていた経験から、Aさんが提出したのが実際に大麻の可能性が高いと考えました。
しかし、Aさんは、X社の株主総会が1月後と間近に迫っていたこともあり、警察に大麻を提出したらX社に捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が入ったり、Bさんが逮捕されたりして、その事実が報道されてしまうのではないかということを心配しました。
そのため、警察への提出は株主総会後にし、それまでは自分が大麻を厳重に保管する方がいいのではないかと、Bさんから提出を受けた大麻を直ぐに警察に提出することを躊躇してしまいました。
Aさんは、X社の上司とも相談して、どのように対応すべきかをあいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです)

Bさんに成立する犯罪

Aさんの見立て通り、Bさんが提出したのが違法な大麻だったとします。
違法な大麻を所持していたBさんは、「大麻を、みだりに、所持」したということになりますから、大麻取締法違反となり、「営利の目的」などがなく、有罪となれば5年以下の懲役という刑罰を受ける可能性があります(大麻取締法24条の2第1項)。

また、一般論としては、大麻取締法違反のように薬物事件が疑われる場合、被疑者(いわゆる容疑者)の捜査は、逮捕などをしてされることが多いといえます。そして、薬物を隠していた場所に対しては、捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われる可能性が高いといえます。

そのため、Aさんが懸念していたとおり、警察がBさんに大麻取締法違反の疑いがあるとして捜査を開始した場合、Bさんが逮捕されたり、X社のBさんの机について捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われたりする可能性は充分にあるでしょう。

どの対応が間違えていたのか?

しかし、Bさんが提出した大麻を、Aさんが保管することには大きな問題があります。
場合によっては、Aさん自身が罪に問われる可能性もあります。

⑴ 大麻取締法違反
まず、元警察官とはいえ、X社の株主総会が終わるまでの期間中、AさんがBさんから提出を受けた大麻を保管・所持して良い理由はありません。そうすると、Bさんから大麻の提出を受けてから、株主総会が終わって警察に提出するまでの約1カ月間、これは大麻の可能性が高いと思いながら、大麻を所持していたわけですから、保管していたAさん自身が大麻取締法違反として捜査を受け、処罰される可能性があります。

大麻の単純所持事案については,弊所解説記事もご覧ください。

⑵ 証拠隠滅罪
少し事情が変わって、Bさんに大麻を売ったCさんが警察に逮捕され、その捜査の過程で大麻を買った人物としてBさんが浮上し、警察からX社に問い合わせがあったとします。
それにもかかわらず、Aさんが何かと理由をつけて、Bさんから提出を受けた大麻を提出しなかったり、隠したりしたとします。

この場合のAさんの行為は、Bさんという「他人の刑事事件に関する」大麻という「証拠を隠滅」したといえますから、証拠隠滅罪に問われる可能性があります(刑法104条)。

従業員が犯罪行為によって逮捕,検挙されてしまった場合の対応についてはこちらもご覧ください。

このように、従業員が不祥事を行い、会社のためと思ってした行為であっても、許されない行為はありますし、場合によっては犯罪に当たってしまう可能性もあります。
そのような事態を回避するためには、刑事事件の視点から対応を考えることも重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、会社内で不祥事が起こった場合の対応・アドバイスにも力を入れています。
会社としての不祥事対応へのアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

会社内で発生した業務上横領事件への対応 加害者を刑事告訴をするべきですか?

2024-02-06

【事例】
X社は製造業を営んでいる会社です。
X社の製造部の部長であるAさんは1年前から、管理を任されていた社内の物品を勝手に持ち出してフリマサイトで売却し金銭を得ていました。
最近になって物品の在庫と実際の数が合わないことに気付いたX社が調査をしたところ、Aさんの横領が発覚しました。
Aさんはこれまで転売により300万円の利益を得たこと、遊興費などでそのお金は費消してしまったこと、被害金額についてはこれから何とか分割して返していくから「刑事告訴だけはやめてほしい」と懇願してきました。
X社の担当者は、今後どのように対応するべきかあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談しました。
(事例はフィクションです)

今回は、上記の事例を用いて、自社で業務上横領事件が発生したことが明らかになった場合の対応についてあいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

刑事告訴について

刑事告訴とは、警察や検察などの捜査機関に対して、刑事事件が発生したことを申告し、事件を捜査し、犯人を処罰することを求めることをいいます。
本件の事例において、刑事告訴をする場合には、「告訴状」をX社の所在する地域を管轄する警察署に提出することが通常です。
告訴状には、犯罪を構成する事実を記載する必要があります。
例えば事例のような業務上横領事件であれば、「いつ」「誰が」「どこで」「何を(時価総額もあれば望ましい)」「どのように横領した」という事実を特定して行うことが通常です。
また告訴の際には後述するように、犯罪が成立したことを立証するための証拠を可能な限り添付することで警察が告訴を受理し動いてくれる可能性が格段に高くなるといえます。

ポイント

告訴を受理してもらい捜査を円滑に行うためには,事前の調査が重要

刑事告訴が受理された後は、取調べなどの捜査が行われることになります。
事件の内容や証拠の内容によっては加害者が逮捕されるリスクもあります。
事例のケースでは業務上横領による被害金額が100万円を超えているため実刑となる可能性もあるので、被害を立証するだけの証拠があれば逮捕される可能性の高い事件であるといえます。
そして捜査が進んで、最終的には検察官が証拠や加害者の言い分なども確認した上で起訴するか不起訴が決められます。
起訴された事件については裁判所で審理され、判決が出されて、判決が確定すれば刑事事件としては終了になります。

横領事件において刑事告訴をする場合のポイントは何か

個人的な利益の着服や物品の横流しといった横領事件は,企業内での不祥事として最たるものです。
刑事事件のうち,知能犯の中で見ても,詐欺・偽造につぐ認知件数があります。
参考:警察庁令和4年度版統計

①客観的な証拠の収集を行う
刑事告訴して実際に警察が動くためには、被害や犯行を裏付ける客観的な証拠が必要になります。
本件の事例であれば、
・保管していた物品の管理に関する記録
・Aさんが横領したこと及びその日時を裏付ける社内の防犯カメラ映像
・Aさんが被害品を転売したことを示す販売履歴等の記録や入出金履歴
・被害金額の使用に関する履歴
などが客観証拠として考えられます。
実際の被害事例において犯行を基礎づける証拠の判断には,専門的な知識と刑事事件に対する豊富な経験が必要になります。
また証拠は早期に確保しなければ、加害者による隠滅の恐れもあります。
したがって被害が発覚した場合にはなるべく早く、刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

②加害者本人に対する聴き取りを丁寧に行い、書面化しておく
加害者本人からの聴き取りも証拠収集の一環として重要な意味を持ちます。
客観的な証拠だけで立証が不十分な場合には、加害者が認めていることをもって証拠を補完する場合があります。
また事実を認めている場合や、賠償に関して応じる旨の話をしている場合には、それを上申書や誓約書といった形で残しておくことも重要になります。
この場合に、会社の担当者のみで聴き取りや書面の作成の指示を行えば、後から圧力をかけられて、無理やり誤った内容の書面を作成させられたと言われ、トラブルが複雑化する可能性もあります。
第三者の立場である弁護士などの専門家を入れて聴き取り調査を行うことが、トラブルの円満な解決には必要であるといえます。

社内調査活動についてはこちらのページでも解説をしています。

③警察の担当者と綿密に連携する
刑事告訴が受理されたと言ってもそれだけで安心してはいけません。
証拠の収集が不十分であったり、警察の方で優先順位が低くなったりすれば捜査が遅々として進まないこともあります。
弁護士が会社の窓口になって証拠の収集状況や取調べ状況についてこまめに確認し、必要であれば証拠の提出や作成などに協力することで捜査がスムーズに進むことにつながります。

刑事告訴を行うかどうかの判断

刑事告訴を行うことによるメリットには次のようなものが挙げられます。
・加害者に対し捜査機関による厳しい捜査が行われ、証拠の収集も容易になる
・会社の他の従業員に対し示しがつく
・警察が介入したことが加害者に対する圧力になり、賠償をする動機付けになる

その反面刑事告訴を行うことによるデメリットには次のようなものがあります。
・捜査協力をするために、会社が捜索の対象になるなど負担がかかる場合がある
・他の従業員にも事件が知れて話が大きくなるおそれがある
・加害者が逮捕された際に会社の名前が出る可能性がある
・逮捕や実刑判決により加害者の収入の当てがなくなり、却って賠償に支障が出る場合がある

刑事告訴を行うか、加害者への聴取を行った上で当事者間の賠償だけの問題とするのかについては社の方針も含め、以上のメリットとデメリットを慎重に検討し判断する必要があるかと思います。
当然、その判断の前提には証拠を収集し、関係者からの聴き取りを行って被害の全容の把握をすることも重要になります。
刑事事件に精通した弁護士であれば、豊富な経験を基に綿密に調査を行い、会社にとってどのようにすることが最善なのかアドバイスさせていただくことができます。
業務上横領が発覚した際の対応や事件の調査、またその後の刑事告訴に関する相談は、刑事事件に精通し、企業で起きた刑事事件の対応にも強いあいち刑事事件総合法律事務所に是非ご相談ください。

企業役員の私生活上の犯罪

2024-02-02

(事例はフィクションです)

大阪に本社を置くZ社の取締役Aさんは、深夜、旅行先の京都市内の路上で、酒に酔って、タクシー運転手Bさんに暴行を加え、怪我を負わせるとともに、タクシーのドアを蹴って凹ませ、臨場した警察官に傷害・器物損壊罪で現行犯逮捕されました。既に、複数のメディアが報道しています。

このような場合、企業としては、どのように対応すべきでしょうか。

私生活上の行為の影響

従業員・役員による不正として、企業活動と関係なく、従業員・役員が私生活上の行為について不正を起こすことがあります。

この場合、必ずしも企業に影響があるとはいえません。
ただし、私生活上の行為であっても、特に企業の幹部従業員や役員による犯罪行為であれば、マスコミも注目し、報道される可能性があります。そして、私生活上の行為といえども、犯罪行為をするような者が重要な役職にいたという事実が明らかになれば、企業の社会的信用が損なわれることは免れず、これを防止するため様々な対応を検討する必要があります。
ここで難しい問題は、従業員・役員が私生活において犯罪行為をした場合には、企業がそれを認識するのは、事例のように逮捕等の捜査活動が端緒となることが通常です。しかも、企業が警察等捜査機関に事実関係の詳細や本人の供述状況等を尋ねたとしても、捜査機関は、捜査上の理由から、これに応じないのが通常であることです。
このように、企業外の犯罪ですから、企業としてできることは限られていますが、その場合でも、企業として適切な対応をとるためには、まずは、できる限り迅速に事実関係を把握する必要があります。本人が身柄を拘束されている場合、情報を入手する手段としては、当該従業員・役員の弁護人、家族等から事情を聞くことが考えられます。

役員や従業員が逮捕された場合についてはこちらのページでも解説しています。

企業側としての対応

マスコミ対応、役職や人事に対する検討はどうすべきでしょうか。

事例のような企業の役員が逮捕された場合、とりわけ上場企業であればマスコミ報道がされる可能性は極めて大きくなります。特に、事例のように、現行犯逮捕された場合には、報道の直後から、複数のマスコミから一斉に取材攻勢に遭うことが予想されます。この場合、企業としては、想定されるマスコミからの質問に対する回答を準備しておく必要があります。基本的には、事件の内容に関する質問に対しては、「捜査中であり、弊社からのコメントは差し控える。」などと回答することになります。

次に、事例のAさんについては、Aさんが、社長、副社長、専務、常務等の役付取締役や代表取締役である場合、これらの役職を解いたり、代表権を剥奪する必要があるかについて検討する必要があります。
また、事例と異なり、Aさんが従業員であった場合には、懲戒等の人事処分を検討する必要があります。仮に、Aさんが、代表権を有する唯一の取締役であり,Aさんが、逮捕のみならず勾留され身体拘束が続いた場合、身体を拘束されている間,Z社の業務執行が事実上停止してしまうことになりかねず、そのような場合、早期に取締役会を開催して、他の取締役に代表権を付与することも検討する必要があるでしょう。

従業員・役員による私生活上の不正行為が発覚した場合、弁護士のサポートがあればスムーズに進みます。マスコミ対応や、不正を行った従業員・役員に対し、責任を追及したい場合等、早期に弁護士に相談した方がよいでしょう。

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