Archive for the ‘不祥事・危機管理’ Category

不倫相手とのハメ撮りをアップ,法的問題点や刑事罰について

2024-10-04

事例

会社役員であるAさんは、アルバイト従業員であるBさんと不倫関係にありました。ある日、Aさんは、Bさんから「真剣交際をしたい人が見つかったので別れたい。」といわれました。Aさんは、どうせ不倫なのだからBさんも不倫したらよいではないかと提案しましたが、断られてしまい、怒りにまかせてBさんとセックスしている時に撮影した動画をインターネット上に投稿しました。
(この事例はフィクションです)

さて、どのような問題が生じるでしょうか。

このような事例でAさんから相談を受けた弁護士として、どのようなリスクを提案するか、説明します。

1点目 盗撮の罪が成立するか

Aさんは、Bさんとセックスしている際の動画、いわゆるハメ撮りを投稿していますが、そもそもこの動画撮影は、Bさんの許諾を得ているのでしょうか?
許諾を得ていない場合、各地域の条例に規定されている盗撮や性的姿態等撮影罪などの犯罪が成立する可能性があります。したがって、示談等Bさんに対する被害弁償に動く必要があります。

なお、Bさんは、アルバイト従業員ということですが、18歳未満の場合には児童ポルノ関係の法令に抵触する可能性があります。その動画データを所持している点は児童ポルノの所持罪、撮影をした点は児童ポルノの撮影罪が成立します。また、Bさんとのセックス自体が各地域の条例で定める青少年保護条例に規定された淫行にあたる可能性があります。いずれにしても示談等被害弁償をする必要があります。

2点目 わいせつ電磁的記録媒体公然陳列が成立するか

わいせつな動画や画像をインターネット上にアップロードした場合、わいせつ電磁的記録媒体公然陳列という犯罪が成立する可能性があります。

例えば、日中の路上でいきなり全裸になった場合、公然わいせつという犯罪が成立することはなんとなくお分かりになると思います。わいせつ電磁的記録媒体公然陳列は、公然わいせつのインターネット版というようなイメージを持っていただくと分かりやすいかもしれません。
Aさんのケースでは、インターネット上にアップロードしたとして、どのようなものにアップロードしたのか、誰でも見られるブログや掲示板なのか、それとも会員制のウェブサイトなのか、といった点を考慮して、犯罪の成否を検討することになります。

なお、Bさんが18歳未満である場合には、児童ポルノの頒布等より重たい犯罪が成立する可能性があります。

3点目 リベンジポルノや名誉毀損の罪が成立するか

リベンジポルノは、簡単にいうと、元配偶者や元交際相手などの性的な画像や動画をその人の承諾を得ず公表するような行為です。
名誉毀損は、簡単にいうと、ある人の名誉を低下させるようなことを公に言いふらすような行為です。

AさんがBさんとセックスしている動画がインターネット上にアップロードされたことによって、そのセックスのことがAさんとBさんの会社やBさんの友人知人に知れ渡った場合、Bさんがとても恥ずかしい思いをすることは容易に想像できますし、それ以上の思いをすることも容易に想像できます。

その動画でセックスしている人がBさんだと分かるような内容である場合、Aさんには、リベンジポルノや名誉毀損といった犯罪が成立する可能性が十分にあります。他方、動画そのものや動画をアップロードする際のコメントや文章などから、Bさんとは分からないようなものであれば、それらの犯罪が成立しない可能性も十分あり得ます。弁護士と相談して、犯罪成立のリスクを見極め、場合によっては示談等を行うことが考えられます。

4点目 不同意性交等の罪が成立するか

さて、AさんとBさんの間のセックスは、不同意性交等といった問題を生じないでしょうか。いわゆるワンナイトの場合、そういった犯罪の可能性が出てきますが、継続的な不倫であれば、その可能性は低いといえます。

ただ、不同意性交等は、近年刑事法令が改正されたことでできた新しい犯罪であり、重要な話がたくさんあります。この不同意性交等については、別途事例を設けて、別の記事で解説しますので、そちらの記事をご参照ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を重点的に扱う法律事務所として、複数の犯罪発生リスクを慎重に見極めた法律サービスを提供しています。こういった専門的な弁護士や実績のある弁護士のサポートをご希望の場合には、こちらからぜひ弊所に一度ご相談ください。

企業側のハラスメント対応① ハラスメントの種類と刑事事件

2024-09-27

現代では企業内でのハラスメントの問題はメディアでも取り上げられるなど社会問題となっています。
また時代の変化に応じてハラスメントと言われるものの種類も多様化の一途をたどっています。
今回の記事ではハラスメントの種類と、それらが刑事事件にまで発展するリスクがある事例について詳しく解説していきます。

1 ハラスメントとは

職場でのハラスメントの定義については、一般的に職場で行われる①優越的な関係を背景とした言動であり、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の修行環境が害されるものと言われており、①~③のすべての要素を満たすものが職場でのハラスメントに該当すると定義されています。
②の要件について、しばしばハラスメントの加害者からは「~したのは業務上必要なことだった」と弁解されることが多いですが、あくまで業務上必要かつ相当な範囲であるかは客観的に判断されますので当事者が必要かつ相当であると思っているかは関係ありません。調査する際などには本人の主張だけでなく、被害者側の言い分や客観的状況に着目することが重要です。

厚労省HP 職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

2 ハラスメントの種類について

ではハラスメントの種類について代表的なものをいくつか挙げて解説させていただきます。ここでは①セクシャルハラスメント、②パワーハラスメント、③モラルハラスメントを挙げて説明をさせていただきます。

① セクシャルハラスメント

セクシャルハラスメントの定義は労働者の意に反する性的な言動によって、労働条件について不利益を受けて就業環境が害されるハラスメントをいいます。
セクシャルハラスメントには一般的に性的な言動を拒否抵抗したことによって労働者が解雇や降格などの不利益を受ける対価型のセクシャルハラスメントと、性的な言動により労働者が不快に思い、能力の発揮に重大な影響を生じた環境型のセクシャルハラスメントに分類されます。

② パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、職場において地位や人間関係などの優位性を利用して、業務の適正な範囲を超えて、業務の適正な範囲を超えて身体的精神的苦痛を与える行為や職場環境を悪化させる行為をいいます。
上司の指示などは業務の適正な範囲を超えているか判断が難しいケースもあり適正な職務行為との線引きが難しい類型でもあります。身体的な攻撃や精神的な攻撃のほかに過大な要求をする場合など、パワーハラスメントに当たるとされている行為についてはさらにいくつかの類型があります。

③ モラルハラスメント

モラルハラスメントとは、精神的な虐待や心理的な攻撃のことです。職場であれば上司や同僚からの不適切な圧力、過剰な侮辱や批判などがこれに該当します
ここまで3つの類型を説明しましたが、これらは明確に分けられているわけではなく不空のハラスメントに該当する場合もあります。
例えば上司から一方的な叱責を受けた場合には上下関係に基づくという点に着目すればパワハラにも該当しますし、心理的な攻撃という点に着目すればモラハラともいえます。
このようにハラスメントの類型や区別することが重要なのではなく、会社側が対応を検討する際の指標としてハラスメントに該当すると言われる代表的な例については担当者で共有しておく必要があるといえます。

3 ハラスメントが刑事事件となる場合

ハラスメントと言われる行為も度が過ぎれば刑事事件として取り扱われるケースも出てきます。刑事事件として取り扱われるケースであれば、警察への被害相談も検討する必要が出ますし、加害者が逮捕される可能性も考慮して処分等を検討しなければならないです。
ハラスメントが刑事事件になるケースは例えば、被害者に対して殴る蹴るなどの暴行を行っていれば暴行罪(刑法208条)又は傷害罪(刑法204条)が成立する可能性があります。
上司の立場を利用して意に反する行動をさせた場合には強要罪(刑法223条)が成立する可能性があります。
被害者の意に反して胸や臀部に触れる行為には不同意わいせつ罪(刑法176条)が成立する可能性があります。。
今のは代表的なケースですが、中には犯罪にあたるかの判断が難しいケースもあります。
当該ハラスメントが刑法上の犯罪にあたるかは法律的に慎重な判断が求められ、その後の対応にも大きくかかわりますので、是非刑事事件を専門に扱う弁護士に相談されることをおすすめします。

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契約書の重要性④

2024-09-20

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、契約の成立時期や契約書の作成日についてみてきました。
今回は、契約が誰と誰の間で締結されたものなのか(契約の当事者が誰なのか)や署名の重要性について深掘りしていきます。

2 署名の重要性

以前の記事でも解説したように、契約とは、2人以上の当事者が、権利や義務に関する合意を結ぶことをいいます。
そして、当事者には、生身の人間(自然人ということもあります。)に限らず、会社などといった法人もなることができます。
問題は、会社などといった法人が契約の当事者になる場合に、契約書に署名をするのは誰なのか、言葉を変えると、誰に契約を締結する権限があるのかという点です。

⑴ 代表取締役
まず、代表取締役には、契約を締結する権限があります。
これは、会社法349条4項で「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められているからです。
そのため、会社の代表取締役が契約書に署名するのが一般的といえます。

⑵ 業務執行取締役
また、その契約に関する業務について、業務執行取締役となっている取締役にも権限があります。
業務執行取締役というのは、取締役会を設置している会社において、ある業務を執行する取締役として、代表取締役以外の取締役を選定するという取締役会の決議を受けた取締役です(会社法363条2項)。
なお、取締役会というのは、会社の取締役全員で構成する合議体で、会社の業務執行の決定をしたり、取締役などの業務を監督したりする合議体です(会社法362条)。

⑶ 取締役
会社によっては、代表取締役を定めないことも可能な場合があります。
このように「代表取締役その他株式会社を代表する者を定め」ていない場合、取締役が会社を代表します(会社法349条1項)。
そして、このような場合で、取締役が複数人いる場合でも、各取締役がそれぞれ会社を代表します(会社法349条2項)。
このような場合であれば、“代表”取締役や“業務執行”取締役でなくても、権限があることになります。

⑷ 契約締結権限を与えられた使用人(従業員)
また、代表取締役や取締役といった会社の役員でなくても、会社の事業に関するある特定の事項などについて委任を受けた従業員(会社法では「使用人」といいます。)にも権限があります。

3 署名の際に気を付けること

このように契約書に署名する権限がある人というのは多岐にわたります。
契約の相手方が会社の場合は、契約書に署名をしようとしているその人に、会社を代表して契約を締結する権限があるのか確認することが重要です。

今回は、契約書の署名の重要性について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

不祥事発生時における広報対応の留意点について③

2024-09-17

企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応の留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも広報とは

広報とは、企業が社会の人々に向けて企業の情報を発信することです。

不祥事が発生した場合の広報対応

企業内で不祥事が発生したとき、特にそれが犯罪に関わるときには、新聞報道されたり、インターネット上で掲載されるなどして、不特定多数の人々に知られてしまう場合があります。その際、企業側に取材がなされ、時には、記者会見を実施する必要が生じるかもしれません。メディアからの取材依頼は広報が担当します。

前回は、企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応(危機管理広報)の基本的な手順について、窓口を一本化するということまで解説しました。今回は、同手順について引き続き解説します。

プレスリリースの発信

プレスリリースとは、当該企業における経営・商品などに関する企業情報をメディアの記者等が利用しやすいように、文書や資料としてまとめたものです。

参考 「不祥事」に関するプレスリリースの一覧

不祥事発生時の企業の公式な見解表明は、多くの場合、プレスリリースによる情報発信となります。プレスリリースには、ポジションペーパーの記載を基に、不祥事発生の事実関係や原因、今後の対応方針や再発防止策、被害者・関係者に対する謝罪等を記載します。

メディアからの質問への対応

メディアの記者等からの質問に対しては、内容をしっかり確認し、質問事項を特定してから回答することが肝要です。口頭で答える時にはまず結論から話すべきであり、イエスかノーかも明確にすべきです。
この人は一体何を話そうとしているのだろうかと思われるような冗長な話し方は絶対にしてはならないことであり、企業にとって不都合なことをごまかそうとしていると思われるおそれがあります。

ステークホルダーへの説明

ステークホルダーとは、取引先、株主、従業員、顧客等、企業と利害関係にある者全般を指す言葉です。
企業の責任として、ステークホルダーに対して、不祥事発生についての十分な説明を行う必要があります。これをおろそかにすると、不祥事を知った消費者や地域住民などから、企業に対して抗議の電話等が殺到する危険性があります。
もっとも、これら各ステークホルダーに対する説明の全てを広報窓口で行うことは困難であり、事前に、取引先への説明文書、消費者等からの問い合わせに対する資料などを作成した上各部署に配布し、対応が不整合にならないようにしておくことも大切です。

次回は、実際に危機管理広報を行う場合にどのような態度で臨むべきかなど、特に注意する点について解説します。

最後に

あいち刑事事件総合法律事務所には企業法務の経験豊富な弁護士が多数在籍しています。企業不祥事を防ぎたい場合や体制を見直したい場合、あるいは、企業不祥事が発生してお困りの際は、あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

契約書の重要性③

2024-09-13

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、契約の基本的な原則、ルールについてみてきました。

今回は、契約の成立時期について深掘りしていきます。

2 成立時期

まず、契約はいつ成立するのかをみていきましょう。

この点について、民法では「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」と規定しています(民法第522条第1項)。

いくら情報化、電子化が進んでいるとはいえ、未だに書類を郵送で取り交して契約を締結する場合もあります。それでは、この場合、「承諾」をしたとされるのはいつになるでしょうか。

答えは、「承諾」するという意思表示が相手のもとに到達したときです(民法第97条第1項)。
つまり、郵便で回答するのであれば、その郵便が相手のもとに届いたときになります。
そして、このように郵便がいつ相手のもとに届いたのかというのは重要な意味を持つことになりますから、確かな到達の時点を記録に残しておく必要があります。
書留郵便などを活用すれば、相手方にいつ到達したのかという記録を残すことができます。

3 契約書の作成日と締結日

契約書には作成日を記入することが一般的です。
しかし、上記2のとおり、契約は承諾の段階で成立することになります。
例えば、ある製品を月に100個製造するという契約が当事者間で合意できたのが、5月1日だとします。そして、納期の都合上、製造は翌2日から始めましたが、契約書に当事者双方がサインできたのは5月10日だとします。
この場合、契約書には何日の日付を記入すべきでしょうか。

5月10日を記入するのでは、2日から9日までの製造については契約の効力が及ばないのではないかと考えて、1日と記入したいと考えるかもしれません。
しかし、契約書作成日を実際の日付よりも遡らせるのは、事実と異なる記載をすることになりますので、望ましいとはいえません。
この場合は、作成日は10日としたうえで、「作成日にかからわず、〇年5月1日から遡及的に適用するものとする」などといった条項を契約書の中に盛り込むのが望ましいといえます。

今回は、契約の成立時期やその点に関する契約書の記載における注意点について解説しました。
この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたい等といったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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会社が被害者となる窃盗事件①~加害者が事実を認めている場合の対応~

2024-09-10

【事例】
X社は金属加工業を営んでおり、会社内の倉庫には大量の銅線や鉄線を保管していました。
X社では3か月ほど前から倉庫内に保管している金属線の在庫の記録と実際にある金属線の数が合わないということがありました。
X社を経営するAさんは顧問弁護士であるあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談して、倉庫の出入り口に防犯カメラを設置しました。
そうすると、誰かが倉庫内に出入りしている様子が写っており、その日時とX社の勤務表を照らし合わせると社員であるBさんが怪しいのではないかという結論に至りました。
弁護士協力の下、X社が事実調査をしたところBさんは金属線を盗んでいたこと、それらを転売して利益を得ていたことを認めました。
Bさんは被害について何年もかけて賠償していくので警察にだけは言わないでほしいと頼んできました。
(事例はフィクションです)

参考プレスリリース NEXCO東日本 グループ会社元社員による着服について

1 窃盗事件が発生した場合の事実調査

会社の経営を行っていて、本件のように窃盗事件の被害者となることは珍しいことではありません。
本件のような事例では会社が扱う商品を転売目的で繰り返し、盗まれており会社に対する被害は甚大であったことが予想されます。
当然このような事件が発生すれば、すぐに調査を行うことが重要になります。
放っておけば、事件は繰り返されて会社の損害はさらに大きいものになりますし、犯人を特定し証拠を確保しておくことは、以下で解説する事後対応を検討する上でも非常に重要になります。

事例でもあるようにまずは犯人の特定が重要になります。
犯人の特定については事例のように防犯カメラを設置するなど社内で調査を行う方法と、警察に被害申告をして捜査を行ってもらう方法の2通りがあります。
事件の内容や緊急性によってどちらが適切かは場合によります。

当然捜査機関に頼んだ方が、指紋の採取など一般人では行えないような捜査を行うことも可能であり事案究明の可能性が高くなることがメリットになります。
その一方で事件をどのように進めていくかについて警察が主導することになる可能性があるので、社内に穏便に納める選択肢を残しておきたいというような場合には、社内で調査を行う必要があるでしょう。
いずれの選択肢を取るにせよ、早期に事件への対処をするためには事件発覚直後から調査を行い、対応を検討することが重要です。

2 加害者が事実を認めている場合の対応

では、事例のように窃盗事件の加害者が事実を認めている場合の対応について解説させていただきます。
加害者が自社の社員であると分かれば、今まで信用していたのに大変な裏切りをしてくれたなという気持ちになることでしょう。
経営者の方としては、加害者に対してなるべく厳しい社会的制裁を受けさせたいと考えられる方もいるでしょう。
そのような状況で加害者が事実を認めて、被害弁償を申し出ている場合にはこれを受け取ってよいものかと悩まれる方もいるでしょう。

窃盗事件において被害弁償を受け取ることはどのような意味があるでしょうか。
当然ですが、盗まれたことにより会社には損害が発生しているので加害者から被害弁償をしてもらうことは当然です。
被害弁償を受けることで影響がある可能性があるのは、窃盗事件を警察に被害届を出すなどして刑事事件として扱ってもらう場合です。 被害弁償を受けていることは、刑事事件において加害者が受ける刑事罰を軽くする方向の事情になります。

例えば、被害額からして加害者が実刑判決を受けるようなケース(一般的に被害額が100万円を超えるようなケース)でも被害弁償がなされていることや、将来被害弁償をしていくことで当事者間で合意が成立している場合には、執行猶予付きの判決が出されることもあります。

会社はあくまで営利(もうけ)を求めますので、加害者が被害弁償を申し出ている場合には損害の填補をするために賠償を受け取る選択肢が一般的かと思います。
もちろん、被害弁償受けることと警察に被害申告を行うことは両立できますので被害弁償を受けた上で警察に被害申告を行うことは可能です。

事例のように被害弁償をする代わりに警察への被害申告をやめてほしいというような場合には、回収の見込みや本人の今後の処遇、会社の経営への影響などを考慮して方針を決めることになると思います。
この判断はまさに、事件の内容や会社の状況、加害者の資力などの返済見込みなどを総合的に考慮した専門的な判断が求められます。
弁護士などこのようなケースに精通した者のアドバイスを受けながら対応されることが安心かと思います。
X社では刑事事件に精通した弁護士に顧問を依頼していたので早期に対応することができました。

今回の記事では会社が窃盗被害を受けた事例において、加害者が事実を認め賠償を希望しているケースの対応について解説しました。
次回は加害者と目される人物が事実を認めていない場合の対応について解説します。

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建設業法により行政指導を受けた場合の対応①

2024-09-06

【事例】
X社はY県から建設業の許可を得て住宅の工事等を行う会社です。
X社では多くの仕事を受注するために下請けに対して、非常に厳しい工期を定めて工事を任せるということを常習的に行っていました。
そのことが内部告発により、Y県の担当者に知れることになり建設業法違反により立ち入り調査が行われました。
立ち入り調査の結果著しく短い工期を強いていたとしてX社は、工期の設定に関し是正するように行政指導を受けました。
突然行政指導を受けたことに驚いたX社のA社長は今後の対応に関してあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談しました

1 建設業法違反があった場合の手続について

今回は上記の事例を用いて、建設業法違反により行政指導を受けた場合の対応について解説します。
まずは事例のように建設業法違反が発覚した場合の手続きについて解説します。

①行政指導

行政指導は後述する処分を行う前に、このように是正してくださいというように指導を行うことが一般的です。これを行政指導といいます。
行政指導については書面でされる場合と口頭でされる場合があります。
行政指導自体には強制力はありませんが、これに従わないでいると後述する処分を受ける可能性が高くなります。

②指示処分

指示処分(監督処分と呼ぶこともあります)というのは、法律や条例に照らして違反している、もしくは適切ではない状態を正すために業者がすべきことについて、監督行政庁が自主的な改善を促すことです。
行政指導と異なり指示処分には拘束力があります。
また指示処分が出されると、その情報は処分を行った日から5年間、監督処分簿に登載することになっていて、公開されることになります。

③営業停止処分

指示処分に従わないと、営業停止の処分を受ける可能性があります。
また、独占禁止法、刑法などの法令に違反した場合や、一括下請負禁止規定の違反があった場合などのケースでは、指示処分なしで営業停止処分がなされることもあります。
営業停止期間は、1年以内の範囲で国土交通大臣や都道府県知事などの監督行政庁が決定します。

④建設業の許可の取消

営業停止処分に違反して営業してしまったり、不正な手段を使って建設業の許可を受けたりすると、監督行政庁により建設業の許可の取り消しがなされます。
独占禁止法、刑法などの法令に違反した場合や一括下請負禁止規定の違反があった場合などで、特に情状が重いと判断されれば、指示処分や営業停止処分なしで許可取り消しがなされることもあります。

以上の手続きについては必ずこの順序でされるというわけではありません。
また違反内容によって対象となる手続きも変わってきます。
態様や違反の内容によっては行政指導を経ずに不利益な処分が科されることもあります。
しかしいずれにせよ、行政指導があった場合に適切な対応を取らなければ②以降の厳しい処分が科されることは間違いありません。
したがって行政指導があった段階で早急な対応が求められます。

2 本件で問題となる建設業法違反について

建設業法違反について行政指導受けてそれを放置して違反を継続した場合には行政処分のみならず刑事処分を受ける場合があります。
本件事例で問題になるのは著しく短い工期を禁止する規定(建設業法19条の5)の規定です。
この規定は2020年にされた建設業法の改正で加えられた規定ですので注意が必要です。

建設業法19条の5
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
同法19条の6
前条に違反した場合、許可行政庁から勧告または公表されるおそれがある。

そして著しく短い期間かどうかについては、中央建設業審議会が作成した資料(https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000711.html)が参考になるとされています。
事例ではまず、今回問題となっているケースで本当に建設業法違反にあたるのか検討する必要があります。
そして先述の資料を基に検討しあたるとなった場合には早急な対応が必要となるでしょう。
次回の記事では、行政指導があった場合に必要な対応について解説させていただきます。

建築業法などの規定による「行政指示/処分」についてお困りのことがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

企業・法人の方はこちらからお問い合わせください。

不祥事発生時における広報対応の留意点について②

2024-09-03

企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応の留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも広報とは

広報とは、企業が社会の人々に向けて企業の情報を発信することです。

不祥事が発生した場合の広報対応

企業内で不祥事が発生したとき、特にそれが犯罪に関わるときには、新聞報道されたり、インターネット上で掲載されるなどして、不特定多数の人々に知られてしまう場合があります。その際、企業側に取材がなされ、時には、記者会見を実施する必要が生じるかもしれません。メディアからの取材依頼は広報が担当します。

今回は、企業内部で不祥事が発生した場合における広報対応(危機管理広報)の基本的な手順について解説します。

事実関係の調査

不祥事が外部に発覚した直後に、企業の役員(経営陣)が現場の知る不祥事の内容をきちんと把握できていなかった場合、ときとして、役員がメディアに対し、事実と異なる情報発信をしてしまうことがあります。このような事態になるのを回避するため、企業としては、不祥事の情報に接した際には、早期に事実関係の調査を行い、事実を正確に把握する必要があります。

事実関係がわからなければ対応しようがないのであり、何を広報すればよいのかすら判断することができません。広報対応を行う場合、事実関係を調査し、事実を正確に把握することがまずもって最優先といえます。

その場合、当該不祥事に関連する事実関係に詳しいが、当該不祥事に関係していない第三者的立場の人物を責任者として事実関係の調査、確認にあたるようにする必要があります。また、事実関係の確定に専門的・技術的な知識、知見が必要と思われる場合には、弁護士等その分野の専門家の起用を検討すべきです。

参考報道:ブックオフ 従業員の現金不正取得などの疑いで特別調査委設置 NHK

対応方針の検討、決定

調査の結果、事実関係が確認できたら、確認した事実関係を書類にまとめて、次に今後の方針を検討し決定します。この書類をポジションペーパーと呼び、ここには事実関係に加えて今後の対応も記載することが重要です。この点、不祥事発生後にどこまで素早く対応方針を決定できるか、この迅速性が世間からの評価を大きく分けます。時機に遅れた広報は、世間の不信、不安を招くものであり、とにかく初動が大切といえます。

窓口の一本化

企業の役員としては、情報の収集に努めるとともに、広報に対応する窓口を一本化し、対応の責任者を決めて、広報対応をその責任者だけに行わせる必要があります。

広報対応の窓口が一本化されておらず様々な窓口が広報対応を行うと、企業内外からの問い合わせについて情報が集約できず、対応方針等回答内容が異なってしまう可能性があり、企業内外に混乱が広がりかねません。窓口の一本化によって、情報を集約し統一的な対応を行っていくことにより、混乱を防ぎます。

次回に続きます。

最後に

企業不祥事発生時に事実関係の調査を実施している際、関係者の間で相互に話が食い違うこともあり、その場合には、客観的な証拠や中立的な第三者の供述等に基づいて、真実が何かを確定する必要があります。

このような客観的な証拠の分析や第三者からのヒアリングなどによって適正な事実認定を行うことは、事実関係の調査について経験豊富な弁護士が行うことが適任です。あいち刑事事件総合法律事務所には企業法務の経験豊富な弁護士が多数在籍しています。企業不祥事に関してお困りの際は、あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

契約書の重要性②

2024-08-30

【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、そもそも契約とはなにか、契約書にしておくことに重要性についてみてきました。

今回は、契約の基本的な内容についてみていきます。

2 任意規定・強行規定

前回の記事でも解説したとおり、契約というのは、2人以上の当事者が、権利や義務に関する合意を結ぶことをいいます。
それでは、当事者が合意さえできれば、どのような内容であっても契約は成立するのでしょうか。
答えはもちろん違います。

民法には、「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う」という規定を置いています(民法第91条)。
この裏返しとして、「法令中の公の秩序に関」する規定と異なる内容は契約に盛り込むことはできません。
このような「法令中の公の秩序に関」する規定のことを強行規定、「法令中の公の秩序に関しない規定」のことを任意規定といいます。

ここで、少し発展的な解説です。
強行規定と似て非なる概念として、取締規定というものがあります。
取締規定というのは、その名のとおり、国民に対してある行為を制限し、又は禁止することを定める規定です。その多くは、違反すると刑罰などの制裁が定められています。
強行規定と取締規定の違いは、仮に契約の規定が取締規定に違反する内容だったとしても、(もちろん刑罰などの制裁は受けることになりますが、)必ずしも無効となるわけではない点にあります。
具体例としては、公安員会の許可を受けていないのに、自身が風俗営業を営むという契約を締結した場合、風俗営業法の罰則を受けるのは当然ですが、契約自体は無効にならないということです。

いずれにしても、法律に違反するような契約は結ぶべきでないというのは当然です。

3 私的自治の原則

ここまでみてきたとおり、強行規定に反さない限り、私人間の取引では、当事者間が合意することによって自由に決めることができます。
これを私的自治の原則といいます。

契約を締結する場合には、この私的自治の原則のもと、いかに自分たちにとって有利な条件で合意できるかどうかというのがポイントになります。

今回は、任意規定や強行規定、私的自治の原則といった契約の基本的な原則、ルールについて解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。

一般の方の契約トラブルに関しては,政府も広報に力を入れているほど,契約に関するトラブルは深刻な場合があります。

政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201803/3.html


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社内調査が必要になる場合

2024-08-27

社内調査はどのような場合に行われるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査の対象となる行為とは

この社内調査の対象となる社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)にはさまざまな種類があります。
まず、違法行為とは、法令に違反する行為のことをいいます、たとえば、インサイダー取引、粉飾決算などの金融商品取引法違反、営業秘密の侵害等の不正競争防止法違反、詐欺、横領、背任、窃盗等の財産犯があります。これらの違法行為は、その社員は刑事責任を問われますし、法令に両罰規定があれば、企業自身も刑事責任を問われることになります。また、金融商品取引法などのように、行政処分を受ける場合もあります。

次に、「不適切な行為」とは、法令には違反している行為ではないが、会社の就業規則やその他規程類に違反する行為、社会通念上不適切と考えられる行為など、会社として何らかの対処を検討とする必要がある行為のことをいいます。たとえば、社員の情報漏洩、パワ―ハラスメント、セクシャルハラスメント、外部に向けた不適切発言などの行為があります。

社内調査が行われる場合

これら不正行為について、企業は、日頃の内部監査、内部通報、外部からの情報提供等を端緒として、社員の不正行為の存在を知り、あるいは、その疑いを抱いた場合に,社内調査を開始することになります。
社内調査は、企業内の不正行為に対して①再発防止のための原因究明や②不正行為に関与した関係者の処分③株主等外部の関係者への説明のために行われ、社内調査により、不正行為に関する証拠を収集し、不正行為の全容を解明していきます。
そして、企業は、社内調査の結果を踏まえて、不正行為に関与した社員に対して社内処分を行ったり、損害賠償等の民事責任の追及や、告訴・告発等の刑事責任の追及を行うなどの措置をとることになります。

すなわち、社内調査は、不正行為の発覚を契機にして、企業が不正行為に対する自浄能力を発揮し、新しい体制を構築するための調査ともいえます。

参考:社内調査に関する日本テレビの報道例

最後に

社員による企業内の不正行為が発覚した場合には、認定された事実関係を基にしてその後の対応を決していくことになりますので、事実関係を正確に認定することが極めて重要です。
このような事実関係の正確な認定は、事実関係の調査について豊富な経験をもつ弁護士が行うことが適任です。
さらに、両罰規定のある犯罪については、企業自体が被疑者・被告人とされ得るため、企業としては、早期に弁護士に刑事弁護を依頼し、不祥事によって企業が受ける被害を最小限にとどめることが肝要といえます。

社内調査に関してご心配なことや不十分に感じることがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

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