Archive for the ‘不祥事・危機管理’ Category
民泊サービスを始めるための注意点⑤
民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します⑤
【事例】
Aさんは京都市内で不動産業を営んでいるX社の代表取締役を務めていました。
Aさんは近年京都市内を訪れる観光客が増えていることに目を付けて、自社が保有する空き物件を活用し民泊事業を開始しようと考えました。
しかし、Aさんは民泊業を行うためにどのような設備や手続が必要か分かりませんでしたので民泊サービスの許認可関係に強い弁護士に法律相談をしました。
(事例はフィクションです)
これまでは上記の事例を基に旅館業法上の許可を得て民泊業を営む場合について解説させていただきました。
しかし後日Aさんから以下のような相談を受けました。
【相談】
実は自社の顧客から自分が住む一軒家の空き部屋を利用して民泊サービスを始めようと考えているがどうすればよいのかと相談されているのだがどのように対応すればよいのか。
最近住宅宿泊事業法という法律が施行されたと聞くがそれは旅館業法とは何が違うのか。
(相談はフィクションです)
この相談内容にお答えする形で、今回の記事では旅館業法の許可を得ずに民泊サービスを営む方法やその注意点について解説させていただきます。
1 住宅宿泊事業法について
住宅宿泊事業法は平成30年6月15日に施行された比較的新しい法律です。
制定の背景には旅館業法の規制緩和でも述べたように外国人旅行客の増加とそれに伴う宿泊施設の不足があります。
簡単に言えば、以前よりも一定の要件の下、旅館業法によるよりも簡単に民泊サービスを始められるようにすることを目的に制定された法律といえるでしょう。
以前の記事で旅館業法には営業形態として3つの形態(ホテル・旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業)があると解説しました。
住宅宿泊事業法の制定によって民泊サービスの営業形態として、「住宅宿泊事業」という新たな形態を規定しているといえます。
このことから、住宅宿泊事業法は別名「民泊新法」とも呼ばれています。
2 住宅宿泊事業とは
住宅宿泊事業(新法民泊事業)については、住宅宿泊事業法第2条3項に定義が規定されています。
住宅事業法第2条
3 この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。
この規定でポイントになるのは
①「住宅」に宿泊させる事業であること
②人を宿泊させる日数が「180日を超えない」こと
です。住宅の範囲については次回の記事で詳しく解説させていきます。
住宅宿泊事業として営業する場合には日数制限がありますので、これを超えて年間通して営業をすることを目指す場合には、住宅宿泊事業法に基づいて民泊サービスを始めることは不適当といえます。
今回の記事では住宅宿泊事業法について概略を説明させていただきました。
次回は住宅の定義など住宅宿泊事業として民泊を始める場合の注意点に関して詳しく解説させていただきます。
民泊サービスを始める場合にはこれまで解説していた旅館業法に基づく許可を得て解するのがいいのか、また住宅宿泊事業として始めるのがいいのか判断が難しいところです。
民泊サービスに用いようとする不動産や周囲の状況などの事情にもよりますので是非、民泊サービスの許認可関係に詳しいあいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
相談は初回無料で、経営者様のご都合によってはWEBでの相談にも対応させていただきます。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
民泊サービスを始めるための注意点④

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します④
【事例】
Aさんは京都市内で不動産業を営んでいるX社の代表取締役を務めていました。
Aさんは近年京都市内を訪れる観光客が増えていることに目を付けて、自社が保有する空き物件を活用し民泊事業を開始しようと考えました。
しかし、Aさんは民泊業を行うためにどのような設備や手続が必要か分かりませんでしたので民泊サービスの許認可関係に強い弁護士に法律相談をしました。
(事例はフィクションです)
前回の記事では許可申請を行う場合の手続きの流れについて解説させていただきました。
今回の記事では前回の記事に補足する形で旅館業を行う際に旅館業法上の許可以外に必要な手続きや確認しておくべきことについて解説させていただきます。
1 建築基準法上の問題について
これは必ず必要な手続きではありませんが、使用を予定している物件が所在する地域において旅館業の立地が禁止されている場合に注意が必要です。
民宿サービスを行おうと計画する段階から、当該物件が旅館業の立地が禁止されていないか確認しておくことが必要です。
また建築基準法の用途変更の建築確認の手続きが必要となる場合があります。
詳しくは都道府県等の建築基準法担当窓口に相談する事ができますが、不安のある方は建築基準法に精通した専門家に確認してみてください。
2 消防法上の問題について
民泊サービスを利用される方や周辺住民等の安全を確保するため、消防用設備等の設置、出火防止、非難、通報等の防火安全対策が必要になります。
不安な方はお近くの消防署等の消防機関に相談することをおすすめします。
消防庁が民泊業を始める場合に消防法上注意するべきことに関してまとめたリーフレットを挙げているページがありますので以下のURLからご確認ください。
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/suisin/post20.html
3 賃貸借契約、管理規約等について
この問題については上記事例においては自社が所有する物件において民泊業を始めようとしているので問題になりません。
ただし他者から物件を借り受けて民泊業を営もうとする場合や、分譲マンションの所有する一室を使用して民泊業を行おうとする場合には別途法律上の問題が生じる可能性があります。
特に当該物件の契約内容やマンションの管理規約等で民泊として使用することが制限されていないかはトラブル防止の観点から事前に貸主やマンションの管理組合等に確認しておくことが重要になります。
4 まとめ
以上のように旅館業法上の問題以外にも民泊業を始める場合には様々な法律上の問題が生じる可能性があります。
弁護士は様々な法律に精通していますから民泊業を始めようとする場合に、これらの問題に柔軟に対応することが可能です。
あいち刑事事件総合法律事務所では、民泊業を始めることを検討している経営者の方向けに顧問契約も準備しております。
まずは一度初回無料の相談を利用してみてはいかがでしょうか。相談はWEB面談でも対応させていただいております。

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企業における営業秘密の情報漏洩⑤

企業において営業秘密の情報漏洩があった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
前回までは、秘密漏えいをしてしまった場合の,不正競争防止法上の罰則について解説しました。
今回は、営業秘密保護のための管理体制の構築についてお話しします。
企業が保有する情報の把握、営業秘密の指定

前回までにお話ししましたように、「営業秘密」として不正競争防止法上の保護を受けるためには、企業が主観的に営業秘密であると考えているだけでは足りず、従業員等から認識可能な程度に客観的に秘密として管理されている状態にあったことが必要です。
現代社会において、企業が取り扱う情報は非常に多く、まずは、企業においてどのような情報を取り扱っているのかを十分把握する必要があります。その上で、各情報がどのくらい重要かを見極め、営業秘密は、そのなかでも秘密性の高い重要な情報という位置付けになると考えられます。
企業による営業秘密の保護対策

営業秘密を含む重要な秘密情報についてはアクセス権者を制限すること(アクセス制限)が重要です。
もっとも、通常の業務で常時使用するものであれば制限をかけることは困難であり、この場合にはパスワードを付してしっかり管理する必要があります。そのほか、秘密情報が記された資料の回収や記録媒体の複製制限、私的USBメモリ等の持ち込み禁止等によって、情報を外部に持ち出せないようにすること、就業規則に、企業秘密の保持について従業員の義務を明記し、入社時等に提出を求める誓約者等によって秘密保持を誓約させることなども重要です。
その他
上記のとおり、秘密情報の指定、あるいは、アクセス権者以外の情報の持ち出しを防止する対策をとったとしても、企業の情報に接触する従業員の情報の取扱いに対する認識が希薄であれば、実効的な情報管理は期待できません。それどころか企業からその情報を持ち出しても構わないだろうという気持ちになってしまうことも考えられます。そのため、日頃から、どのような行為が犯罪となるのかなどについて従業員を対象とした教育・研修を実施することが重要です。秘密性のレベルに応じてアクセス権者が異なる場合には、レベルに応じた教育・研修を実施することも必要でしょう。
最後に
企業において不正競争防止法違反に該当する行為が行われた場合、企業自身が法的責任を負う可能性があるのかを慎重に検討し、今後の対応を決める必要があります。
また、報道などの社会的責任に関しても、取引先にどのように説明をしていくのかといったことも考える必要があります。
以上のように、企業としては、様々な対応をする必要があり、適切に対応していくのであれば、弁護士のサポートが必要になってくることが考えられます。
社内の情報保護規定,体制の構築について関心のある方に向けて,弊所では無料相談も実施しております。お気兼ねなくお問い合わせください。

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中小企業経営者必見!不正競争防止法の重要ポイントと対策

不正競争防止法(ふせいきょうそうぼうしほう)は、事業者同士の公正な競争を守るための法律です。
中小企業の中にはこの法律を十分に知らずに、知らないうちに違反行為をしてしまったり、被害を受けても適切に対応できなかったりするケースも見られます。
しかし、自社の大切な情報やブランドを守り、競争上の不利益を避けるために、中小企業の経営者が知っておくべきポイントが数多く含まれています。
本記事では、営業秘密の保護、不正な商品表示、営業妨害行為といった不正競争防止法の注意すべき規定について、それぞれ具体例とインシデント予防のための施策を交えて分かりやすく解説します。
不正競争防止法の概要
不正競争防止法では、事業者間の不公正な競争行為をいくつかの類型に分けて禁止しています。
例えば、他社の有名ブランド名やロゴを無断で使い、自社の商品なのにあたかも相手の会社の商品であるかのように見せかける行為があります。
また、地域ブランドやキャッチフレーズなど著名な表示を勝手に使用することも問題です。
さらに、他社の商品パッケージやデザインをそっくり真似て似た商品を販売するといった行為も該当します。
そのほか、自社の秘密情報を盗み出したり、根拠のない悪い噂を流して競合他社の信用を落とすような行為も禁止されています。
これらに違反すると、損害賠償請求を受けたり刑事罰が科されたりする可能性があるため注意が必要です。
この法律によりこうした不正を防止し、公正な市場競争を維持することで、中小企業の正当な努力やブランド価値が守られることが期待されています。
事例
(フィクションです)
小さな食品メーカーA社は、地元で長年かけて開発した秘伝のレシピを武器に人気商品を販売していました。
しかし退職した社員がこのレシピを競合のB社に漏洩し、B社は非常によく似た商品をA社より安価で発売します。
さらにB社はその商品のパッケージデザインもA社の商品に酷似させ、「本場○○産」と実際とは異なる表示を行い、自社製品のほうが優れていると宣伝しました。
この結果、多くの消費者が両社の商品を混同してしまい、A社は売上だけでなくブランドの信用も大きく損なう打撃を受けました。
当然ながら、これらB社の行為は不正競争防止法に違反する疑いがあり、A社は差止めや損害賠償請求などの法的措置も視野に入れて検討しています。
営業秘密の保護
営業秘密とは、公に知られておらず、企業が秘密として管理することで競争上の価値を持つ重要な情報を指します。
例えば、製造上のノウハウや秘伝のレシピ、顧客リスト、新商品開発の計画、価格設定の戦略など、外部に知られていない自社の重要情報が該当します。
不正競争防止法では、こうした他社の営業秘密を窃盗や不正な入手によって取得したり、無断で使用・開示したりする行為を禁止しています。
営業秘密の侵害は特に悪質とみなされ、他の違反行為より重い罰則(最大で10年の懲役や2000万円の罰金)が科される場合もあります。
予防策として、秘密情報はアクセスできる人を限定し、重要データにはパスワードや権限設定を設けて厳重に管理しましょう。
さらに、従業員と秘密保持契約(NDA)を締結し、定期的に情報管理の教育を行うことで、内部からの漏えいリスクを減らすことができます。
不正な商品表示
商品の産地や品質などについて、事実と異なる表示をして消費者を誤解させる行為です。
例えば、海外産の原料を使っているにも関わらず「国産」「地元名産」と偽る表示や、他社のブランド名に紛らわしい名称で商品を販売するケースが挙げられます。
こうした虚偽表示は、消費者だけでなく正直に営業する他社にも損害を与えるため、不正競争防止法で禁止されています。
当然、偽装が発覚すれば企業の信用は失墜し、行政からの指導や罰則の対象にもなりかねません。
防止策として、商品パッケージや広告に記載する内容は必ず事実に即したものにしましょう。
また、表示に誤りや紛らわしい点がないか、社内で複数人が確認する仕組みを設け、定期的に見直すことも大切です。
営業妨害行為
競合他社の信用をおとしめるために虚偽の情報を流すような行為です。
例えば、競争相手の商品に欠陥があるという根拠のない噂を広めたり、インターネット上で匿名で悪評を書き込んだりするケースが該当します。
このような信用毀損行為は禁止されており、発覚すれば法的な責任を問われる可能性があります。
場合によっては損害賠償だけでなく刑事上の罰則(罰金刑など)が科されることもあるため注意が必要です。
自社としては、社員に対して競合他社を誹謗中傷しないよう教育を徹底することが必要です。
また、自社がこうした被害に遭った場合には、証拠を保全した上で専門家に相談し、情報の削除要請や差止め請求など適切な対応策を検討しましょう。
その他の不正競争行為
上記以外にも様々な行為が不正競争防止法で禁止されています。
例えば、他社の商品と混同されるような名称やロゴを意図的に使う行為や、有名ブランドの名前を無断で含むインターネットのドメイン名を取得して高額で売りつけようとする行為があります。
そのほか、契約者など特定の相手にだけ提供される業務データを不正に入手し利用する行為(限定提供データの不正取得)や、製品発売直後にその独特なデザインを模倣した商品を販売する行為なども挙げられます。
これらはいずれも公正な競争秩序を乱すものとして規制されており、違反すれば民事・刑事の追及を受ける可能性があります。
自社が加担しないのはもちろん、万一被害に遭った場合には、証拠を確保したうえで早めに法的対応を検討することが必要です。
最後に
当事務所は、中小企業の知的財産や不正競争防止法に関する法務サポートを専門としています。
知的財産分野に精通した経験豊富な弁護士が、親身になって貴社のトラブル解決に取り組んでおります。
営業秘密の管理体制構築や、不正競争が疑われる事案への対応など、企業活動を守るためのアドバイスと支援を日々行っております。
不正の疑いがある場合の証拠収集や相手方との交渉、さらには訴訟手続に至るまで丁寧にサポートいたします。
中小企業の皆様が安心して事業に専念できるよう、法的リスクの未然防止と問題発生時の解決に尽力いたします。
不正競争や知的財産に関するお困りごとがございましたら、いつでもお気軽に当事務所へご相談ください。

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訪問販売で特定商取引法違反した場合の刑罰リスク徹底解説 -後編

○はじめに
訪問販売は消費者に直接アプローチできる有効な販売手法ですが、その反面、不適切な勧誘行為によるトラブルも起こりやすいため法律で厳しく規制されています。
とりわけ特定商取引法は、訪問販売での悪質な勧誘を禁止し、違反した事業者には行政処分や刑事罰が科される仕組みを整えています。万一法令に違反すれば、業務停止命令などで事業の継続自体が困難になるリスクだけでなく、罰金や懲役刑といった刑罰もあります。
本記事では、前回の記事の後編として,特定商取引法違反事件が企業に対する影響などについて深堀します。
○違反が企業経営に与える影響
特定商取引法に違反すると、単に罰金などを払えば済むという問題ではなく、企業経営に深刻なダメージが及びます。以下に、違反発覚・処分による主な影響をまとめます。
•信用の低下とブランド毀損: 違反により社名公表や報道がなされると、顧客や取引先からの信用は一気に失われます。悪質商法で摘発された会社というレッテルが貼られれば、将来的に新規顧客を獲得することはもちろん、既存顧客との信頼関係維持も難しくなるでしょう。企業の評判(レピュテーション)を回復するには長い時間と努力が必要です。
•営業活動の停止・縮小: 業務停止命令が出れば、その期間中は該当する事業活動を行えず売上が途絶えます。例えば訪問販売事業の3か月停止を命じられれば、その間の売上機会はゼロになり、固定費だけがかかる厳しい状況に陥ります。停止命令まではいかなくとも行政からの指示で営業手法の全面見直しを迫られれば、一時的に勧誘活動を自粛せざるを得ず、事業規模の縮小は避けられません。特に訪問販売一本で収益を上げている中小企業には死活問題となります。
•経営層・従業員への影響: 違反の内容次第では、代表者や担当社員が逮捕・起訴されて刑事裁判を受けることになります。経営トップが拘束・起訴されれば企業運営は滞り、最悪の場合そのまま廃業に至ることも考えられます。また従業員にとっても、自社が悪徳商法で摘発された事実は士気の低下や離職につながりかねません。優秀な人材の流出や採用難にも直結します。違反による内部への打撃は計り知れません。
•金銭的損失: 刑事罰として科される罰金の支払い(法人に科される場合は最大数億円規模)や、行政処分に対応するためのコンサル費用・謝罪広告費用など、多額の支出を強いられる可能性があります。さらに、違反行為で得た売上はクーリングオフや契約取消しで返金対応が必要となり、被害者から損害賠償請求を受けることもあります。結果として企業財務に深刻な悪影響が及び、資金繰りが悪化して倒産リスクすら高まります。
このように、特定商取引法違反は企業の信用・業績・存続に直結する重大リスクです。一度違反を犯してしまうと、その後の事業継続にまで暗い影を落とすことになるため、「法律に触れなければ儲かるからやってしまえ」という発想は極めて危険です。短期的な売上よりも長期的な信用維持を優先し、法令順守を徹底することが健全な経営には不可欠と言えるでしょう。
○訪問販売事業者のコンプライアンス対応策
では、そうした違反リスクを回避し健全な訪問販売を行うために、企業はどのようなコンプライアンス対策を講じるべきでしょうか。以下に具体的な対応策を示します。
•社内教育の徹底: 営業担当者や訪問スタッフに対し、特定商取引法のルールや消費者保護の理念を定期的に教育しましょう。新人研修で法律知識を教え込むのはもちろん、定期的に勉強会を開催したり、違反事例を共有して注意喚起を行ったりします。「知らなかった」では済まされないことを全社員に認識させ、法律を守った正しい営業活動の重要性を周知徹底することが大切です。
•社内ルール・マニュアルの整備: 法律で求められる遵守事項(勧誘前の氏名等明示、再勧誘禁止、書面交付義務など)や禁止行為を網羅した営業マニュアルを作成し、実務に落とし込みます。勧誘のステップごとに「ここで必ず事業者名を告げる」「契約が成立したら〇〇を書面で渡す」等、具体的な手順とNG事項を明文化しておきます。また、クレーム発生時の報告フローなども定め、現場でマニュアルを常に参照できるようにします。明確なルールがあれば、万一現場社員が独断で逸脱行為をしてしまった場合でも「会社として違反を防ぐ体制を取っていた」ことの証明になり、企業の責任を軽減する助けにもなります。
•契約書類やトークスクリプトの点検: 現在使用している契約書や申込書、パンフレット、そして営業トークの台本などをチェックし、法定事項の記載漏れや誤記載がないか、虚偽・誇大な表現が紛れ込んでいないかを確認します。特定商取引法で定められた契約書記載事項(氏名・価格・支払方法・クーリングオフ告知など)を満たしていない書面を使っていると、それだけで違反になります。必要に応じて専門家のレビューを受け、書類やトークの内容が適法かつ消費者に誤解を与えないものに改善しましょう。
•勧誘現場のモニタリングと苦情対応: 訪問販売の現場を不定期にチェックし、法律遵守が守られているか監督します。例えば上司や管理者が営業に同行して様子を見る、顧客アンケートで営業員の対応を評価してもらうなどの方法があります。不適切な勧誘の兆候があれば早期に是正指導を行います。また消費者からクレームがあった場合は内容を精査し、違反行為が疑われれば速やかに原因究明と再発防止策を講じます。内部通報制度を整備して社員からの違法行為の申告を受け付けることも有効です。
•最新法令情報の入手と専門家への相談: 特定商取引法は改正も行われていますので、消費者庁や経済産業省から発表される情報を収集し最新の規制動向に対応しましょう。例えば訪問販売の適用除外や電子書面交付の要件など、逐次アップデートがされる可能性があります。自社だけで判断が難しい場合は弁護士などの専門家に相談してアドバイスを仰ぐことも大切です。法律のプロにチェックしてもらうことで、グレーな勧誘手法に踏み込んでいないか客観的な評価を得られます。違反の予防には専門家の知見も積極的に活用しましょう。
以上のような対策を講じ、“「攻めの営業」より「守りの体制」”をまず固めることが、長期的に見れば事業の安定と信頼獲得につながります。コンプライアンスを軽視した営業はリスクが高すぎるため、経営者自ら陣頭指揮を執って法令遵守の企業風土を築くのがよいでしょう。
○弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所によるサポート
特定商取引法に関するリスク対応について不安がある企業や、残念ながら違反行為を指摘されてしまった事業者の方は、早めに法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、企業の刑事事件やコンプライアンス支援を扱う法律事務所であり、特定商取引法を含めた特別法違反の刑事事件に関する豊富な知見と実績を有しています。
当事務所では、訪問販売や通信販売など特定商取引法が関係するビジネスを営む企業に対し、法令遵守のためのアドバイスや社内体制整備のサポートを提供しています。具体的には、貴社の契約書類や勧誘マニュアルが法律の要件を満たしているかをチェックし、必要な修正点を提案いたします。また、営業担当者向けのコンプライアンス研修の実施、万が一トラブルが発生した際の社内調査の支援なども可能です。顧問契約による継続サポートによって、定期的に取引内容の適法性を確認しリスクを未然に防ぐ体制構築をお手伝いいたします。
もし既に行政処分の予兆があったり、捜査機関から事情聴取や突然の家宅捜索を受けてしまった場合には、速やかにご連絡ください。当事務所は刑事事件の経験豊富な弁護士が揃っており、特定商取引法違反の事案にも対応した経験があります。違反の疑いをかけられた段階から弁護活動を開始し、取調べへの対応方法のアドバイスや証拠の精査、問題となった契約の相手方との示談交渉など適切な対策を講じます。代表者や社員が逮捕・起訴されてしまった後でも、勾留や接見禁止の解除に向けた働きかけや、公判での情状弁護に全力を尽くし、身体拘束からの早期の解放や不起訴処分、執行猶予判決の獲得など被疑者・被告人のための弁護活動を展開します。企業としてのダメージを最小限に抑えるためにも、初動から弁護士のサポートを受けることが重要です。
当事務所へのご相談は初回無料で承っており、電話やウェブ面談にも対応しています。特定商取引法の適用範囲に自社の営業が該当するか判断に迷っている経営者の方、あるいは違反を指摘されお困りの方は、お一人で悩まずにぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。私たちは全国に拠点を持ち、迅速かつ丁寧に対応いたします。法令順守と企業防衛に向けた法律の専門家として、皆様の事業が安心・安全に継続できるよう全力でサポートいたします。
以上、訪問販売における特定商取引法違反の刑罰リスクについて解説しました。健全な事業運営のためには法律遵守が不可欠であり、違反した際の代償は企業にとってあまりにも大きいものです。本記事の内容を踏まえ、ぜひ適切なコンプライアンス体制を整えていただければ幸いです。万一トラブルに直面した際には早めに専門家に相談し、被害の拡大を防ぐようにしてください。法を守った誠実な訪問販売で、消費者から信頼される健全なビジネスを築いていきましょう。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

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民泊サービスを始めるための注意点③

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します③
【事例】
Aさんは京都市内で不動産業を営んでいるX社の代表取締役を務めていました。
Aさんは近年京都市内を訪れる観光客が増えていることに目を付けて、自社が保有する空き物件を活用し民泊事業を開始しようと考えました。
しかし、Aさんは民泊業を行うためにどのような設備や手続が必要か分かりませんでしたので民泊サービスの許認可関係に強い弁護士に法律相談をしました。
(事例はフィクションです)
前回の記事では民泊業を営む場合に旅館業法上の許可が必要な場合について解説させていただきました。
今回の記事では旅館業法上の許可を取得する場合の流れについて解説させていただきます。
1 許可取得までの流れの概説
旅館業法に基づく許可を受けるためには、民泊サービスを行う予定の施設が所在する都道府県(保健所を設置する市、特別区を含む)の保健所にて申請を行う必要があります。
例えば事例のケースでいえば、京都市内の施設で申請をしようとしているので、京都市保健所(京都市が設置している保健所)が申請先になります。
そしてその流れを大まかに言えば、
①事前相談→②許可申請→③施設検査→④許可という流れになっています。
許可決定を受けて、初めて営業を開始することができるようになります。
2 各段階についての解説
(1)事前相談について
事前相談については、許可申請を行う前に事前相談を求めている自治体が多いようです。
申請を開始する前に都道府県の旅館業法担当窓口に一度確認してみてください。
相談にあたっては、施設の所在地、施設の図面、建築基準法や消防法への適合状況が確認されることがあるようです。
事前の準備について自信がない場合については専門家に相談して準備を進める方がよいかもしれません。
(2)許可申請について
許可申請にあたっては、①許可申請書と②営業施設の図面の提出と手数料の支払いが求められます。
①、②の他にも都道府県が条例で定める書類が別途必要になる場合がありますので、この点も事前相談で確認しておくことをおすすめします。
(3)施設検査について
施設検査においては、対象の施設が構造設備基準に適合していることを確認するために行われます。
検査の方法としては保健所職員等による立ち入り検査が行われます。構造基準が満たしていることが確認されるまでは許可を取得することができません。
構造設備基準については許可を申請する営業種別によっても異なります。
例えば以前の記事で紹介した、簡易宿所営業では延べ床面積が33㎡以上であること(宿泊者数が10に以下の場合は例外あり)、入浴設備があること(周辺の施設の状況によっては例外あり)などの基準が設けられています。
詳しくは旅館業法に詳しい専門家にご相談ください。
(4)許可と営業開始
許可を得る事ができれば営業を開始することができます。
地域や申請時期によっても変わるかもしれませんが、申請から許可までの標準的な機関は数週間程度と言われています。
3 許可申請の際には旅館業法に精通した弁護士にご相談ください
以上のように許可申請を行う場合には地方公共団体とのやり取りもありますし法的要件に適合しているかの判断も必要になります。
許可申請がスムーズに認められるかはその後の営業にも大きくかかわることですし、旅館業法に精通した弁護士に一度ご相談下さい。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
全国展開している事務所だからこそできるネットワークを生かした迅速な対応が可能です。
企業犯罪・不祥事に関するお問い合わせ、ご相談のご予約は24時間365日受け付けております。
企業犯罪・不祥事が起きてしまった場合の対応にお困りの方、予防法務も含めたコンプライアンス体制の構築・見直しをお考えの経営者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。
施術所の開設手続き③

【事例】
Aさんは、一念発起して、自宅のある奈良県天理市内で、資格を取得して鍼灸整骨院を開業しようと考えました。
Aさんは、鍼灸整骨院を開業するのには資格がいるというのは分かっていましたし、資格取得のために通い始めた学校も卒業が近付いてきました。
また、患者として鍼灸整骨院に通っていた経験から、健康保険も使える場面もあるようだということも知っていました。
しかし、具体的にどのような手続きをする必要があるのかまでは分かっていませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、鍼灸整骨院を開業するにあたって、必要となる届出などについて解説してきました。
今回は届出や構造設備に関する規律を担保するための罰則規定や立ち入り調査等に関する規定についてみていきます。
2 届出や設備を整えなかった場合の罰則規定
前回までの記事でも解説しましたが、柔道整復師については柔道整復師法が、はり師やきゅう師についてはあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下では、各資格の頭文字をとって「あはき法」といいます。)が、業務に関する規律を規定しています。
そして、それらの規律を担保するために、違反した場合に課される刑事罰についても定めています。
⑴ 無免許、免許の不正取得
まず、柔道整復師でもないのに、「業として柔道整復」を行った場合(医師である場合は除きます。)、50万円以下の罰金に処されます(柔道整復師法29条1項1号)。
また、「虚偽又は不正の事実に基づいて」柔道整復師の免許を受けた場合も同様に処罰されます(柔道整復師法29条1項3号)。
はり師やきゅう師でもないのに、業としてはりやきゅうをした場合も(こちらも意思である場合は除きます。)、50万円以下の罰金に処されます(あはき法13条の7第1項1号)。
また、「虚偽又は不正の事実に基づいて」はり師やきゅう師の免許を受けた場合も同様に処罰されます(あはき法13条の7第1項2号)。
⑵ 届出の懈怠、虚偽の届出
また、施術所を開設したのに10日以内にその届出をしなかった場合や、施術所の休止や廃止をしたのに10日以内にその届出をしなかった場合は、30万円以下の罰金に処されます(柔道整復師については柔道整復師法30条6号、19条1項、2項。はり師やきゅう師についてはあはき法13条の8第5号、9条の2第1項、2項。)。
それぞれの届出の際に、虚偽の届出をした場合も同様に処罰されます。
しかも、この処罰規定は、違反をした個人に対してだけではなく、法人に対しても適用されます(柔道整復師法32条、あはき法14条)。
例えば、複数の柔道整復師やはり師、きゅう師を雇い、会社として施術所を運営していた場合に、その代表者が虚偽の届出をしていたことから、柔道整復師法やあはき法で処罰されるとします。
このような場合に、法人の代表者だけではなく、施術所を運営している会社も処罰されることがあるのです。
続いて、都道府県知事による報告聴取、立入検査、行政命令などの規定についてみていきます。
3 報告及び検査
柔道整復師については柔道整復師法が、はり師やきゅう師についてはあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下では、各資格の頭文字をとって「あはき法」といいます。)が、業務に関する規律を規定しています。
それぞれの法律では、それらの規律を担保するための規定、都道府県知事の権限を定めた規定についても定めています。
⑴ 報告・検査
まず、都道府県知事は、必要があれば、施術所の開設者や柔道整復師、はり師、きゅう師といった人々に、必要な報告を求めることができます(柔道整復師法21条1項、あはき法10条1項)。
万が一、求められた報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、それだけで30万円以下の罰金に処されることになります(柔道整復師法30条7号、あはき法13条の8第6号)。
また、職員に施術所の立入検査をさせることもできます(柔道整復師法21条、あはき法10条1項)。
万が一、この検査を拒んだり、妨げたり、忌避したりした場合にも、それだけで30万円以下の罰金に処されることになります(柔道整復師法30条7号、あはき法13条の8第6号)。
⑵ 行政命令
都道府県知事が報告を求めたり、立入検査をしたりした結果、施術所の構造設備が法律の基準(柔道整復師法20条1項、あはき法9条の5第1項)に適合していなかったり、法律で求められている衛生上の措置(柔道整復師法20条2項、あはき法9条の5第2項)が講じられていなかったりしたとします。
この場合には、期間を定めて、施術所の使用制限や使用禁止といったことを命令することもできますし、施術所の構造設備を改善するように命令したり、衛生上の措置を講じるように命令したりすることもできます(柔道整復師法22条、あはき法11条2項)。
万が一、この命令に違反した場合にも、30万円以下の罰金に処されることがあります(柔道整復師法30条4号、あはき法13条の8第7号)。
⑶ 両罰規定
報告や立入検査に関する刑事罰についても、行政命令の違反に関する刑事罰についても、両罰規定が定められています(柔道整復師法32条、あはき法14条)。
両罰規定というのは、違反した個人だけではなく、法人も処罰することができる規定です。
今回は、柔道整復師法やあはき法の規律を担保するための規定のうち、都道府県知事による報告聴取、立入検査、行政命令などの規定について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
まとめ
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など企業案件の知識・経験の豊富な弁護士が、企業犯罪・不祥事対応等のコンプライアンス事案に対応します。
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訪問販売で特定商取引法違反した場合の刑罰リスク徹底解説 -前編

○はじめに
訪問販売は消費者に直接アプローチできる有効な販売手法ですが、その反面、不適切な勧誘行為によるトラブルも起こりやすいため法律で厳しく規制されています。
とりわけ特定商取引法は、訪問販売での悪質な勧誘を禁止し、違反した事業者には行政処分や刑事罰が科される仕組みを整えています。万一法令に違反すれば、業務停止命令などで事業の継続自体が困難になるリスクだけでなく、罰金や懲役刑といった刑罰もあります。
本記事では、中小企業経営者や訪問販売事業者の方々に向けて、特定商取引法における訪問販売の定義から禁止行為の具体例、違反時の刑事責任と行政処分、実際の摘発事例、経営への影響、そしてコンプライアンスの対策までを総合的に解説します。最後に、違反リスクへの対応策として弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所のサポート内容も紹介しますので、リスク管理にお役立てください。
○特定商取引法における訪問販売の定義と対象範囲
まず「訪問販売」とは何かを確認しましょう。特定商取引法第2条1項で定義が定められており、訪問販売を事業者(販売業者や役務提供事業者)が、自らの営業所以外の場所(例:消費者の自宅)で契約の申込みや契約締結を行う取引などをいいます。
典型的にはセールススタッフが家庭を戸別訪問して商品やサービスの契約を結ぶケースですが、それだけではありません。
特定商取引法上の訪問販売にはキャッチセールスやアポイントメントセールスと呼ばれる手法も含まれます。
例えば、街頭で通行人に声をかけ営業所等に同行させて契約させる行為(キャッチセールス)や、電話・SNS等で「景品が当たりました」「特別に選ばれました」などと宣伝して店舗に呼び出し契約させる行為(アポイントメントセールス)も、契約自体は店舗で結んだとしても訪問販売に該当します。
また、一時的に借りたホテルの一室や喫茶店で商品を展示・販売する場合でも、その会場の状況が常設店舗に準じないようなものであれば訪問販売に該当します。このように消費者にとって不意打ち性の高い勧誘は広く「訪問販売」として法律の規制対象となります。
要するに、店舗や事務所から離れた場所で行われる対面勧誘販売が訪問販売に該当します。
特定商取引法の訪問販売規制は、原則としてすべての商品・サービスおよび特定権利(会員権など一定の権利)に適用されます。
したがって、住宅リフォームから健康食品の販売、さらには権利性商品(例:クラブの会員権や塾の受講権)まで、業として反復継続的に消費者に対して行う勧誘販売であれば基本的に特定商取引法のルールに従わねばなりません。事業者は「自分の販売形態が訪問販売に該当するか」慎重に見極め、該当する場合は同法の規制を遵守する必要があります。
○訪問販売で禁止されている行為の具体例
次に、特定商取引法が訪問販売でどのような勧誘行為を禁止しているかを具体的に見ていきます。同法第6条では、消費者に不当な契約をさせたり契約解除を妨げたりする以下のような行為を明確に禁止しています。
代表的な禁止行為の例は以下のとおりです。
•不実告知(虚偽・誇大な説明): 商品・サービスの内容や価格など重要な事実について、事実と異なることを告げる行為。たとえば「この浄水器をつければ病気にならない」など根拠のない効果をうたったり、「本日限り半額」などとウソの割引情報を伝えて契約を急がせることが該当します。事実に反する説明で消費者を誤認させ契約させることは厳禁です。
•重要事項の不告知: 消費者に契約させる際に、本来知らせるべき重要な事実を意図的に告げない行為。典型例は、契約後でも一定期間内なら無条件で解約できる「クーリング・オフ」の制度をわざと説明しないケースです。他にも、追加料金や解約制限など不利な条件を隠して契約させる行為が該当しえます。重要なポイントを黙っているのも違法な勧誘に該当しうるのです。
•威迫・困惑(脅しや執拗な勧誘): 契約をさせるため、あるいは消費者による申込み撤回や契約解除(クーリング・オフ)を妨げるために、相手を威圧したり心理的に追い詰めたりする行為です。大声で怒鳴って契約を迫る、長時間居座って消費者を疲弊させ判断力を鈍らせる、契約を断ろうとする相手に「違約金を支払え」などと脅す――こうした威嚇的・困惑的な勧誘は法律で禁止されています。消費者が不安や恐怖で正しい判断ができない状況を意図的に作り出す行為は違法です。
•再勧誘・迷惑勧誘: 消費者が一度「契約しません」「申し込みを撤回します」と意思表示したにもかかわらず、執拗に勧誘を続ける行為も禁止されています。特定商取引法第3条の2第2項により、訪問販売業者は相手方が契約しない意思を示したら、それ以上その契約の勧誘をしてはならないと定められています。例えば「もう結構です」と断られたのに別の日に再訪問したり、電話を繰り返し掛けたりするのは再勧誘の禁止規定に抵触します。また、相手から退出要請があったのに居座り続ける(不退去)ことも問題です。消費者の意思に反するしつこい勧誘は違法です。
•目的隠匿の誘引(キャッチセールス・アポ電勧誘): 販売目的を告げずに人を誘い出し、公共の場所以外で契約を勧誘する行為も禁止されています。例えば「アンケート調査です」「無料でプレゼントを配っています」などと営業目的を隠して人を呼び止め、営業所ではない場所に連れて行ってから商品を売り込む手口がこれに当たります。前述したキャッチセールスやアポイントメントセールスで、誘い出した消費者を密室や人目につかない場所で勧誘するような場合が典型例です。正体を隠しておびき出し、その場で初めて契約を迫るようなやり方は法律違反となります。
以上が主な禁止行為の例となります。
これら以外にも、訪問販売では契約時に事業者情報や契約条件を書面で交付する義務(第4条・第5条)や、契約後一定期間の無条件解約を認めるクーリング・オフ制度(第9条)など消費者保護のルールがあります。これらの義務を怠ること自体も違法行為です。たとえば契約書面を渡さない、書面に虚偽の内容を記載する、といった行為も処罰の対象になります。事業者は法律で何が禁じられているかを正確に理解し、絶対にそれらの不適切な勧誘を行わないよう社内で徹底する必要があります。
○違反行為に科される刑事罰と行政処分
特定商取引法に違反した場合、事業者や関係者には行政上の処分と刑事上の罰則の双方が科される可能性があります。ここでは訪問販売で禁止行為等に違反した際の主な処分と刑罰を解説します。
- 行政処分: 特定商取引法に基づく行政処分には段階があり、違反の程度に応じて次のような措置がとられます。
•業務改善の指示(指示処分): 主務大臣は、違反を確認した事業者に対してまず違反行為をやめ、再発防止策を講じること等の是正指示を出すことができます(第7条1項)。これは行政上の是正勧告にあたり、法的拘束力があります。改善指示を受けた事業者は速やかに社内体制を見直し、違反を解消しなければなりません。
•業務停止命令: 違反が重大または悪質な場合、あるいは指示に従わない場合には、一定期間その業務の全部または一部の停止を命じられます(第8条)。例えば「令和○年○月○日から○月○日までの間、訪問販売業務のうち●●に関する事項を停止すること」といった内容です。業務停止命令を受けると、その間は指定された営業活動を一切行えなくなるため、事業継続に深刻な影響が生じます。行政処分としては重い部類で、違反行為が反復継続され消費者被害が拡大しているようなケースなどで発動されます。
•業務禁止命令(役員の関与禁止命令): さらに悪質な場合、法人の代表者や担当役員個人に対し、一定期間その訪問販売業務を新たに開始することを禁ずる業務禁止命令が発令されることもあります(第8条の2)。これは業務停止命令を出された法人の代表者などが、別名義で同じ事業を行って業務停止命令が無意味なものにならないように行う処分です。
また、こうした行政処分が下された場合、主務官庁のホームページやプレスリリースで社名や違反内容が公表されます。公的に名前が公表されることで社会的信用失墜というさらなるペナルティも科される仕組みです。 - 刑事罰: 行政処分にとどまらず、特定商取引法違反行為の一部は刑事罰(懲役刑・罰金刑)の対象にもなっています。警察などの捜査機関が悪質な事件と判断すれば、関係者が逮捕・送検され刑事裁判で裁かれる可能性があります。主な刑事罰の規定は以下のとおりです。
•禁止行為違反に対する罰則: 第6条に定められた上記のような禁止行為(虚偽説明、威迫困惑、目的隠し勧誘等)に違反した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(もしくはその両方)が科されます。
たとえば訪問販売で嘘の説明をして契約させた営業員や、そのような手法を指示した経営者は、この規定により刑事罰を受ける可能性があります。
•書面交付義務違反に対する罰則: 契約時の書面交付義務(第4条1項・第5条1項、2項)を怠ったり、交付書面に虚偽の記載をした場合も処罰対象です。
これに違反した者には6月以下の懲役または100万円以下の罰金(または両方)が科されます。実際、クーリングオフの書面を渡さなかったリフォーム業者の社長がこの容疑で逮捕されたと報道された例があります。書面を出さないと「手続きミス」程度に思われがちですが、立派な犯罪行為なのです。
•行政処分違反に対する罰則: 発令された業務停止命令や禁止命令に違反して営業を続けた場合も、極めて悪質とみなされ厳罰に処されます。
具体的には、主務大臣の命令に違反した者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または両方)に処せられます(第70条第3号)。例えば業務停止中にも関わらず密かに勧誘を続けていたような場合、刑事事件として逮捕された事例もあります。行政処分に背く行為は非常に悪質だとみられ、特に重い罰則が用意されています。
以上のように個人に科される刑罰だけでなく、事業主体である法人自体も処罰の対象となり得ます。特定商取引法には両罰規定があり、違反行為を行った従業員や代表者本人の処罰に加えて、その使用者である法人にも罰金刑が科されます。たとえば社員が訪問販売で違法な勧誘を行った場合、企業には1億円以下の罰金が科される可能性があります。
また、業務停止命令違反のようなより重大なケースでは法人に対し最大3億円以下の罰金という非常に高額な制裁が科されます。中小企業にとって数億円の罰金は経営を揺るがしかねない巨額であり、法人としての刑事責任も極めて重いことがわかります。
さらに、訪問販売での悪質商法は場合によって詐欺罪(刑法246条)や強要罪(刑法223条)といった一般刑法で裁かれることもあります。たとえば嘘を並べ立てて高齢者に高額な契約を結ばせ巨額の代金を騙し取った場合には、特商法違反のみならず詐欺罪が適用されてより重い刑罰(10年以下の懲役など)に問われる可能性もあります。
このように特定商取引法違反は刑事事件化しやすく、企業経営者や社員にとって逮捕・起訴や前科といったリスクをはらんでいることを肝に銘じる必要があります。
○実際の違反事例(企業や経営者の摘発ケース)
特定商取引法違反で訪問販売業者や経営者が摘発された実例は後を絶ちません。ここではいくつか具体的なケースを紹介します。いずれも法律違反により逮捕や処分に至った事例であり、読者の皆様の教訓としてください。
•住宅リフォーム「点検商法」でクーリングオフ不告知の摘発: 2024年から2025年にかけ、関西地方で屋根修理の訪問点検で消費者の不安をあおり、屋根工事契約の訪問販売を行っていたリフォーム会社の社長や社員、アルバイト4名が、契約時にクーリングオフが可能なことを説明しなかったなどの疑いで逮捕されたという報道がされています。この事件では、アルバイト50人以上をSNSで集めて戸別訪問させる大がかりな手口であったとも報道されています。
•高齢者に対するアポイントメントセールスの摘発: 古典的な手口ですが、高齢者を狙った訪問販売の違法勧誘も各地で摘発されています。たとえば2009年には神奈川県の訪問販売会社の実質経営者ら6人が、「店のオープン記念で商品を無料配布します」と嘘を言って74歳の女性を民家に呼び出し、実際には家庭用温熱治療器を約26万円で売りつけた容疑で逮捕されたと報道されています。この事件では、商品は仕入れ値3万3千円ほどのもので、12月から翌9月までの間に約1000人の高齢者に同様の手口で販売し、総額2億4千万円もの売上を上げていたとも報道されています。これは典型的なアポイントメントセールス(目的隠匿勧誘)の悪質事例で、消費者の善意(無料配布にあやかりたい気持ち)につけ込んだものです。
•業務停止命令に違反して勧誘を続けた摘発: 違反を繰り返した業者には行政処分が下されますが、それを無視すれば刑事事件となります。2023年には、過去に特商法違反で業務禁止命令を受けていた訪問販売会社の関係者2名が、業務禁止命令中にもかかわらずセミナーで勧誘を続けていたとして逮捕されたと報道されています。この事件では、全国で1000億円以上を集めていたとみられるとも報道されていて、行政処分を無視した悪質業者に対する摘発の典型例といえます。
これらの事例からも分かるとおり、特定商取引法違反は実名報道を伴う摘発案件となり得ます。一度このように摘発されてしまうと、経営者個人はもちろん会社の名前も報道で広く知られてしまい、信用失墜は避けられません。違法な勧誘は「自分だけは大丈夫」と思わず、社会の監視の目に晒されているという自覚を持つことが肝要です。
○弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所によるサポート
特定商取引法に関するリスク対応について不安がある企業や、残念ながら違反行為を指摘されてしまった事業者の方は、早めに法律の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、企業の刑事事件やコンプライアンス支援を扱う法律事務所であり、特定商取引法を含めた特別法違反の刑事事件に関する豊富な知見と実績を有しています。
当事務所では、訪問販売や通信販売など特定商取引法が関係するビジネスを営む企業に対し、法令遵守のためのアドバイスや社内体制整備のサポートを提供しています。具体的には、貴社の契約書類や勧誘マニュアルが法律の要件を満たしているかをチェックし、必要な修正点を提案いたします。また、営業担当者向けのコンプライアンス研修の実施、万が一トラブルが発生した際の社内調査の支援なども可能です。顧問契約による継続サポートによって、定期的に取引内容の適法性を確認しリスクを未然に防ぐ体制構築をお手伝いいたします。
当事務所へのご相談は初回無料で承っており、電話やウェブ面談にも対応しています。特定商取引法の適用範囲に自社の営業が該当するか判断に迷っている経営者の方、あるいは違反を指摘されお困りの方は、お一人で悩まずにぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。私たちは全国に拠点を持ち、迅速かつ丁寧に対応いたします。法令順守と企業防衛に向けた法律の専門家として、皆様の事業が安心・安全に継続できるよう全力でサポートいたします。
以上、特定商取引法が規制する範囲や具体的な事例などについて解説しました。健全な事業運営のためには法律遵守が不可欠であり、違反した際の代償は企業にとってあまりにも大きいものです。本記事の内容を踏まえ、ぜひ適切なコンプライアンス体制を整えていただければ幸いです。万一トラブルに直面した際には早めに専門家に相談し、被害の拡大を防ぐようにしてください。法を守った誠実な訪問販売で、消費者から信頼される健全なビジネスを築いていきましょう。
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民泊サービスを始めるための注意点①

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関して弁護士が解説します。
【事例】
Aさんは京都市内で不動産業を営んでいるX社の代表取締役を務めていました。
Aさんは近年京都市内を訪れる観光客が増えていることに目を付けて、自社が保有する空き物件を活用し民泊事業を開始しようと考えました。
しかし、Aさんは民泊業を行うためにどのような設備や手続が必要か分かりませんでしたので民泊サービスの許認可関係に強い弁護士に法律相談をしました。
(事例はフィクションです)
1 民泊サービスと近年の法改正について
民泊(サービス)については明確な定義はありませんが、住宅(戸建て住宅やマンションなどの共同住宅)の全部または一部を活用して旅行者等に宿泊サービスを提供することを指すと言われています。
事例で挙げたように、民泊サービスは海外旅行者の増加に伴って近年注目されているビジネスの一つです。そして、平成30年6月15日より民泊サービスの普及を背景に、新たな民泊サービスの枠組みを定めた住宅宿泊事業法が施行されました。
この法律は住宅宿泊事業者としての届け出を行えば住宅で宿泊サービスを行う事ができるようになり、住居を持つものであれば一定の条件の下,以前より容易に民泊サービスが提供できるようになりました。
しかしながら、住宅宿泊事業者法の枠組みで行える民泊事業については、年間の実施制限などの規制があり営業の内容等次第では従前どおりの手続きを経る必要があるので注意が必要です。
仮に本来受けるべき許可を得ずに営業をしてしまえば、刑事罰を科される可能性もあります。
改正法による住宅宿泊事業者法の対象なる事業については別の記事で改めて詳しく解説させていただきます。
2 旅館業法に基づく許可について
先程説明した民泊事業を行う際に必要な手続きとしては、旅館業法に基づいて許可を受けることになります。
旅館業法の許可にはいくつかの種別がありますが、住宅を利用して民泊サービスを行う場合には「簡易宿所営業」で許可を取得するのが通常です。
旅館業法には簡易宿所営業の他にホテル営業、旅館営業、下宿営業があります。カプセルホテルも施設の構造にもよりますが「簡易宿所営業」に分類されることが多いです。
3 簡易宿所営業の許可を取得する場合の構造設備の基準
では簡易宿所営業を許可する場合には、施設がどのような基準を満たしていることが必要でしょうか。
簡易宿所営業における構造の基準については旅館業法施行令第1条第2項に定めがあります。
なおか簡易宿所の許可基準は平成28年4月に基準が緩和されており、このことからも政府は民泊サービスを普及させて海外旅行者の受け皿になることを期待していることが窺えます。
以下に基準を挙げておきます。
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
二 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
X社が保有する物件の設備が上記の条件を満たす場合には簡易宿所営業の許可を受けて民泊サービスを営むことが可能になります。
しかしながら設備が条件を満たしていても、必要な許可を取得しないまま民泊サービスを提供してしまえば、無許可営業として刑事罰の対象になってしまいます。
次回の記事では旅館業法上の許可が必要なのはどのような場合なのかについて解説させていただきます。

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企業における営業秘密の情報漏洩③

企業において営業秘密の情報漏洩があった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
営業秘密として不正競争防止法上の保護を受けるためには
「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないものをいいます(不正競争防止法2条6項)。
すなわち、同法上の営業秘密は次の3つの要件を満たす必要があります。
- 秘密として管理されている情報であること
- 有用な情報であること
- 公然と知られていない情報であること
の3要件です。
今回は、この中で、最も問題となることの多い①秘密管理性の要件について解説します。
②情報の有用性,③情報の非公知性について前回の記事でも触れていますので併せてご確認ください。
秘密管理性の要件について
秘密管理性の要件について、経済産業省が出している「営業秘密管理指針」には、
秘密管理性要件の趣旨は、企業が秘密として管理しようとする対象(情報の範囲)が従業員等に対して明確化されることによって、従業員や取引相手先(以下、「従業員等」という。)の予見可能性、ひいては、経済活動の安定性を確保することにあるとされ、続いて、必要な秘密管理措置の程度として、秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業の秘密管理意思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要がある
とされています。
営業秘密は、情報という無形のもので、占有によって保有者を明らかにすることができませんし、秘密であるところに価値が存在するため、公示にもなじみません。また、その保有携帯も様々です。そのため、営業秘密として保護を受けるためには、秘密に管理しようとする意思があっただけでは足りません。従業員等から認識可能な程度に客観的に秘密として管理されている状態にあったことが必要です。
この点、秘密管理性要件は、従来、①情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)、②情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにされていること(認識可能性)の2つが判断の要素になると説明されてきました。しかしながら、現在では、両者は秘密管理性の有無を判断する重要なファクターであるが、それぞれ別個独立した要件ではなく、「アクセス制限」は、「認識可能性」を担保する一つの手段であると考えられ、したがって、情報にアクセスした者が秘密であると認識できる(「認識可能性」を満たす)場合に、十分なアクセス制限がないことを根拠に秘密管理性が否定されることはないとされています(同営業秘密管理指針6頁)。
参考となる裁判例として、「不正競争防止法2条6項が保護されるべき営業秘密に秘密管理性を要件とした趣旨は、・・・その保有者が主観的に秘密にしておく意思を有しているだけでなく、当該情報にアクセスした従業員や外部者に、当該情報が秘密であることが十分に認識できるようにされていることが重要であり、・・・可能な限り高度なアクセス制限をすることは、独立した要件ではな」いとした東京高判平成29年3月21日があります。
次回は、営業秘密の情報漏洩があった場合の不正競争防止法の罰則について、具体的に解説していきます。

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