Archive for the ‘不祥事・危機管理’ Category

【制度解説】役員等の第三者に対する責任について詳しく解説

2024-07-02

役員等の第三者に対する責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。

1 役員等の第三者に対する損害賠償責任

会社法429条1項では、役員等(代表取締役、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人)が、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、その役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うと定めています。

この定めは、一見して当り前のように見えますが、実はそうでもないんです。役員等がその任務を怠った場合には、本来的には、会社に対する関係で責任を負わされるに過ぎないのです。
もちろん、役員等であっても、第三者に損害を与えたことについて民法上の一般の不法行為責任を問うことはできますが、不法行為責任の場合は、損害を被った第三者が役員等の損害に対する加害やこれに対する故意・過失を立証しなければならないなど役員等の不法行為責任が認められるためには高いハードルがあります。そこで、会社法は、役員等の第三者に対する特別の法定責任として、429条の定めを設けたわけです。

参考記事

この定めによって、損害を受けた第三者は、任務懈怠の事実とこれに対する悪意又は重過失、損害額とその相当因果関係を立証すれば役員等の責任追及をすることができるので、不法行為責任と比較し、一段と立証が容易になっているわけです。また、この定めは、役員等が、実質的個人会社を経営しているような場合、法人格を盾に第三者に対する損害賠償責任を逃れようとする主張を認めさせないための機能、いわゆる法人格否認の法理の機能を果たしているとも言われています。
ですから、役員等の立場としては、いざとなれば会社の責任だから、などとうかうかしていることはできないのであり、こうした責任追及を受けることがあることも十分理解しておく必要があります。

2 名目役員等の責任

さて、役員等が任務懈怠により第三者に損害賠償責任を負うことがあることはわかりましたが、ここから先は、役員等の中でも特に問題になる名前だけ取締役のようなケースを見てみましょう。
知人に頼まれてとかで名前だけ代表取締役になって欲しいと懇請されて名前だけならというんで代表取締役を引き受けた、あるいは、夫に取締役の欠格事由があるため、経営のことを全く知らない妻が夫の代わりに代表取締役になったなど、しばしば耳にします。こうしたケースでも、取締役として登記されていると、この登記を信じた第三者が損害を被った場合に、役員等として責任を負うことになります。
また、取締役を退任していたにもかかわらず、退任登記が未了だった間に、その登記を信じた第三者が損害を受けた場合には、退任登記が未了であったことを言い訳にできないことがあります。この点、うっかり忘れていた程度では責任を負わないとも考えられていますが、やはり会社において重要な役割と責任を果たす立場である取締役ですから、こうした手続面においてもしっかりとした対応をしておく必要があります。
 
 こうした会社の役員等の責任について予防法務や責任が実際に発生した場合の対応をしていくためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。

 あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。

社内調査を円滑に進めるための体制

2024-06-21

社内調査を円滑に進める体制とはどのような体制かについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査の体制づくり

社内調査の主催者は企業自身であり、社内調査の体制づくりの第一歩は、不正行為の調査を実施する社内調査チームの立ち上げから始まります。
その際、留意すべきことは、社内調査チームに誰が加わるべきか、または、誰を加えるべきでないか、社内調査チームに社外の専門家を関与させるべきかといったことです。

社内調査チームの構成員

社内調査チームは、基本的に社内メンバーを中心に構成されます。通常、企業の法務部、コンプライアンス部、あるいは、人事部、総務部など、社員の不正行為に対処することが予定されている部署が中心となって構成されることが多いと考えられます。
一方、この社内メンバーには、当然のことながら、不正行為を行った疑いのある対象者については加えるべきではありません。また、被害者や申告者も当然除外されます。
したがって、社内調査チームは、当事者らとは利害関係のないメンバーで構成することになります。
また、不正行為の内容にもよりますが、不正行為が発生した部署をよく知る社員を社内調査チームに参加させることも、社内調査を円滑に進める上で重要でしょう。もっとも、その社内調査チームに参加した社員が、実際には、不正行為に関与していたとなれば本末転倒であり、そのようなことがないように注意が必要です。

参考:外部調査・第三者委員会について

外部専門家の参加

不正行為の内容によっては、企業が主催する社内調査チームに、外部の専門家を加えることを検討する必要があります。
とくに、専門家が外部法律事務所の弁護士の場合、社内調査チームのメンバーとして法律家が参加することで、過去の裁判例を含めた法律的な観点からのアドバイスを受けることができ、有効と考えられます。また、インサイダー取引、粉飾決算等、関係当局が企業に対して既に調査を開始している場合は、社内調査チームに弁護士を加えることで、関係当局に対し、社内調査の公正さを示すことなどが期待できます。

最後に

以上述べたように、企業内で不正行為が発覚した場合、事案によって、弁護士を社内調査チームのメンバーに入れることは、法律的なアドバイスを受けられるなどのメリットがありますが、不正行為が発覚した場合には、認定された事実関係を基にしてその後の対応を決していくことになりますので、まずもって事実関係を正確に認定することが極めて重要です。
このような事実関係の正確な認定についても、事実関係の調査について豊富な経験をもつ弁護士が行うことが適任といえます。

参考報道:日本テレビ,外部有識者を含めた調査チームを設置

社内調査におけるヒヤリングの留意点①

2024-06-19

社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査の方法

社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。
もっとも、社内調査では、当然のことながら、刑事事件の捜査で認められる捜索差押えといった強制的な証拠物の収集手続きはありませんし、社員の身柄を拘束してヒヤリングを実施することもできません。
このように、社内調査にはそもそも限界があることにまず留意すべきです。

業務命令として、ヒヤリングはできるか

この点は、判例があり、最高裁昭和52年3月13日民集31巻7号1037頁に以下のような判断が下されています。

「そもそも、企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業は、この企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもつて一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、企業秩序に違反する行為があつた場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができることは、当然のことといわなければならない。しかしながら、企業が右のように企業秩序違反事件について調査をすることができるということから直ちに、労働者が、これに対応して、いつ、いかなる場合にも、当然に、企業の行う右調査に協力すべき義務を負つているものと解することはできない。けだし、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによつて、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできないからである。そして、右の観点に立つて考えれば、当該労働者が他の労働者に対する指導、監督ないし企業秩序の維持などを職責とするものであって、右調査に協力することがその職務の内容となつている場合には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから、右調査に協力すべき義務を負うものといわなければならないが、右以外の場合には、調査対象である違反行為の性質、内容、当該労働者の右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはないものと解するのが、相当である。」と判示しています。

この判示からすると、企業内の不正行為が、まさしく企業の職務に関連して行われたような場合には、当該社員に対して義務的にヒヤリングに応じるよう命じることができる可能性が高いといえます。しかし、そうでない場合には、どこまで義務付けられるかについては慎重に見極める必要があるといえるでしょう。

また、前述のように、当該社員がヒヤリングに応じようとしない場合に、物理的な強制をともなうような方法でヒヤリングを実施したり、社員に対し威迫的な言動でヒヤリングに応じるよう申し向けることは、企業の不法行為になりかねないことにも留意が必要です。

次回は、社内調査においてヒヤリングを実際に行う際の留意点について解説します。

最後に

社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。

社内調査の進め方についてご心配なことがある方やご不安なことがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。お問い合わせはこちらからどうぞ。

コンプライアンス体制の構築④

2024-06-14

【事例】

Aさんは、佐賀県唐津市で水産加工業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、インターネットでの通販を利用して自社の水産加工品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社の直売所での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そのため、インターネット通販のサイトを開設する必要もあると考えていますし、購入された水産加工品を安全に消費者に届けなければいけませんし、消費者への輸送手段も確保せねばなりません。
また、事業拡大のために、銀行から融資も受けなければなりません。
このような山積する課題に対応する一環として、Ⅹ社では法務部を新設することになり、Aさんがそこの責任者となりました。
Aさんが法務部の責任者として最初に会社から指示された仕事は、X社のコンプライアンス体制を構築することでした。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんでした。
また、X社にはこれまで顧問として付いてもらっていた弁護士もいません。
そこで、Aさんは、Ⅹ社のコンプライアンス体制を構築するにあたって、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。

1 はじめに

以前の記事で、法的リスクを細分化する必要性について解説してきました。
そして、今回の記事では、Ⓐ絶対に取ってはいけないリスクなのかⒷ取っても良いリスクなのかを判断することの意味などについてより詳細に見ていきます。

2 リスクへの対応の濃淡

以前の記事で法的リスクを細分化してみていきましたが、その内容からわかるように、企業活動をするうえで必ず直面するものだと言っても過言ではありません。

このように必ずといっていいほどリスクには直面しますが、Ⓐ絶対に取ってはいけないリスクなのか、Ⓑ取ってもいいリスクなのかを考えなければなりません。
なぜかといえば、漠然とリスクがあると捉えているだけでは、不可避的にリスクには直面する以上、リスクがあれば避けるというのでは何も行動できなくなりますし、どのようなリスクがあっても突き進むというのでは企業にいつか致命的なダメージを与えるリスクが顕在化することにもなりかねません。

そして、細分化したリスクがⒶ取ってはいけないリスクなのか、Ⓑ取ってもいいリスクなのかは、いかなる企業にも当てはまる普遍的なものばかりではなく、企業ごとに影響する度合いには差があります。
例えば、裁判に対応するには費用が掛かりますし(以前の記事の④裁判に対応しなければならないリスク)、敗訴した場合には相手方に賠償をしなければなりません(以前の記事の③敗訴してしまうリスク)。敗訴した場合の差し押さえ等について裁判所HP
大企業にとっては深刻なダメージを与えない額であっても、比較的事業規模の小さな企業にとっては、裁判費用だけで企業運営に支障をきたす場合もあるでしょうから、こういったリスクはⒶ取ってはいけないリスクになります。
一方で、かかる費用や賠償額が少額の裁判でも、その裁判が世間の注目を集めるものであれば(以前の記事の⑤自社の評判が傷付けられるリスク)、比較的事業規模の小さな企業にはそれほどの痛手にはならないかもしれませんが、大企業には大きな痛手になる場合もあるでしょうから、この場合は大企業にとってはⒶ取ってはいけないリスクとなります。

今回は、法的リスクを細分化する必要性と対応の考え方についてより詳細に解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

法務問題へのコンプライアンス体制の構築③

2024-06-08

1 はじめに

以前の記事で、コンプライアンス違反に陥りやすい状況について解説してきました。
また、それ以前には、コンプライアンスとは何かについても解説してきました。
今回は、コンプライアンス上のリスクについて、より詳細に解説していきます。

2 法的リスクの細分化

以前の記事で、コンプライアンスとして求められているのは、㋐法律のようなルールだけでなく、㋑会社内のルール、㋒倫理的、道徳的なルールまで守ることではないかという解説をしました。
今回は、そのうちの㋐法律のようなルールを掘り下げていきましょう。

企業が抱えている法的リスクと聞いたときに、どのようなものをイメージするでしょうか。
企業の行動が①法令に違反するリスクでしたり、企業の事業を所管する行政庁から②行政処分などの規制を受けるリスクでしたりは、イメージがわきやすいのではないでしょうか。

その他にも、例えば契約違反だと取引先から訴えられたとします。
自社としては契約違反ではないと考えたとしても、契約書の文言の解釈の違いなどから、裁判所が取引先の主張を認めてしまうことはありますから、③起こされた裁判で敗訴してしまうリスクもあります
また、そもそも結果以前に④起こされた裁判に対応しなければならないリスクというものもありますし、裁判を起こされたことによって⑤自社の評判が傷付けられるリスクというものもあります。
また、契約する前段階だとしても、コストをかけたのに契約が破談になってしまったり、相手方に企業秘密が漏れてしまったりといった⑥契約交渉段階で生じるリスクもあります。

このようなリスクは、企業が活動をするうえで必ず直面すると言っても過言ではありません。
現に,様々な企業がリスクマネジメントについて体制を構築し,外部に向けて公表しています。
例 ソフトバンク

それでは、なぜ細分化する必要があるのでしょうか。
それは、リスクを細分化しないと、Ⓐ絶対に取ってはいけないリスクなのか、Ⓑ取ってもいいリスクなのかといった判断ができないからです。
今回は、法的リスクを細分化する必要性について解説していきました。
Ⓐ絶対に取ってはいけないリスクなのか、Ⓑ取ってもいいリスクなのかを判断することの意味などについては、今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内で不祥事を起こさないための対応・アドバイスにも力を入れています。
コンプライアンス体制の構築などについてアドバイスをご希望の方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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企業と不正競争防止法

2024-06-07

回転ずしの運営会社の社長が転職前の競合他社の食材の原価や仕入れ先に関するデータを持ち出していた事件が大きく取り上げられました。

参考記事 

このような行為は不正競争に当たり、営業秘密を持ち出した個人だけでなく企業も責任を負うことになります。
ここでは、不正競争のうち、他人の営業秘密を奪う場合について解説します。

不正競争とは

不正競争防止法では、「不正競争」と定められている行為がいくつもあります(不正競争防止法第2条第1項第1号から第22号)。

冒頭の回転ずしの社長の事案は、不正の手段により営業秘密を取得する営業秘密不正取得行為又は営業秘密不正取得行為により取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為(同法第2条第1項第4号)に当たるものと考えられます。

この「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいいます(同法第2条第6項)。

不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為又は管理侵害行為により、営業秘密を取得した者(同法第21条第1項第1号)、詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者(同項第2号)、営業秘密を営業秘密保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、①営業秘密記録媒体等(営業秘密が記載され、又は記録された文書、図画又は記録媒体)又は営業秘密が化体された物件を横領する、②営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成する、③営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装する、のいずれかの方法で領得した者(同項第3号)等は、10年以下の懲役若しくは2000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(同法第21条第1項柱書)。

「詐欺等行為」とは、人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいい、「管理侵害行為」とは、財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス禁止法に定める不正アクセス行為、そのほかの営業秘密保有者の管理を害する行為をいいます(同法第21条第1項第1号)。日本国外において使用したり開示する等の目的で、詐欺等行為等により営業秘密を取得した場合は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(同法第21条第3項柱書)。日本国外に流出するような場合は、さらに被害が大きくなり、また経済安全保障を図れなくなりますので、罰金額もより大きくなっています。

不正競争に対する会社の責任

役員や従業員が不正競争を行った場合、企業も責任を問われます。

法人の代表者や従業者等が、法人の業務に関し、違反行為をした場合は、法人も罰金刑を科されます(同法第22条第1項柱書)。日本国外で使用する目的等のため、不正の利益を得る等の目的で、詐欺等行為等により営業秘密を取得する等の場合は、上記のように被害の大きさや経済安全保障の観点から、罰金額は高くなっており、10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。

それ以外の営業秘密の取得等の場合は、5億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第2号)。

まとめ

このように、営業秘密の侵害に対しては、行為者だけでなく企業に対しても大きな責任が科せられる可能性があります。

営業秘密の侵害等不正競争についてお悩みの方、企業の営業秘密の管理運用についてご心配なことがある担当者の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ

社内調査はどのような場合に行う必要があるのか

2024-06-05

社内調査はどのような場合に行われるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査の対象となる行為とは

この社内調査の対象となる社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)にはさまざまな種類があります。

まず、違法行為は、法令に違反する行為のことをいいます。
たとえば、インサイダー取引、粉飾決算などの金融商品取引法違反、営業秘密の侵害等の不正競争防止法違反、詐欺、横領、背任、窃盗等の財産犯があります。
これらの違法行為は、その社員は刑事責任を問われますし、法令に両罰規定があれば、企業自身も刑事責任を問われることになります。また、金融商品取引法などのように、行政処分を受ける場合もあります。

報道:社内調査で被害は1億7300万円 架空工事発注を巡る詐欺事件/SBSテレビ ライブ静岡

次に、「不適切な行為」とは、法令には違反している行為ではないが、会社の就業規則やその他規程類に違反する行為、社会通念上不適切と考えられる行為など、会社として何らかの対処を検討とする必要がある行為のことをいいます。たとえば、社員の情報漏洩、パワ―ハラスメント、セクシャルハラスメント、外部に向けた不適切発言などの行為があります。

社内調査が行われる場合

これら不正行為について、企業は、日頃の内部監査、内部通報、外部からの情報提供等を端緒として、社員の不正行為の存在を知り、あるいは、その疑いを抱いた場合に,社内調査を開始することになります。

社内調査は、企業内の不正行為に対して①再発防止のための原因究明②不正行為に関与した関係者の処分、③株主等外部の関係者への説明のために行われ、社内調査により、不正行為に関する証拠を収集し、不正行為の全容を解明していきます。

そして、企業は、社内調査の結果を踏まえて、不正行為に関与した社員に対して社内処分を行ったり、損害賠償等の民事責任の追及や、告訴・告発等の刑事責任の追及を行うなどの措置をとることになります。

すなわち、社内調査は、不正行為の発覚を契機にして、企業が不正行為に対する自浄能力を発揮し、新しい体制を構築するための調査ともいえます。

最後に

社員による企業内の不正行為が発覚した場合には、認定された事実関係を基にしてその後の対応を決していくことになりますので、事実関係を正確に認定することが極めて重要です。

このような事実関係の正確な認定は、事実関係の調査について豊富な経験をもつ弁護士が行うことが適任です。

さらに、両罰規定のある犯罪については、企業自体が被疑者・被告人とされ得るため、企業としては、早期に弁護士に刑事弁護を依頼し、不祥事によって企業が受ける被害を最小限にとどめることが肝要といえます。

社内調査,不祥事対応には刑事事件に強いバックグラウンドを持つ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。警察OB等から構成された外部団体とも提携し,適切な対応をアドバイスします。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

官製談合で社員に対して捜査を受けた時,社員が官製談合に関わらないために

2024-05-31

【事例】
A社は滋賀県草津市で建設業を営んでいる会社でした。
A社の社員であるBは自身の営業成績を上げようと、プライベートで親交のある滋賀県の職員であるCに対して金銭を渡すことで入札における予定価格を教えてもらっていました。
Bは予定価格を聞いていたことはA社には伏せた上で自身の担当する工事において、Cからの情報を基に予定価格に近接した額で繰り返し入札を行っていました
その結果としてA社はBが担当する工事において立て続けに落札に成功していました。
しかし、落札金額が予定価格と不自然に近接していることから怪しんだ滋賀県警の警察官がBに対して取調べを開始しました。
逮捕されて会社に迷惑をかけるのではと考えたBはA社の社長に対し、これまでの犯行を告白しました。
(事例はフィクションです)

官製談合とは

官製談合とは国や地方自治体などによる事業の発注の際に行われる競争入札において、発注機関側の公務員が入札談合(入札参加者の間で、あらかじめ受注予定者や受注価格等を取り決めるなどすること)に関与して、不公平な形で落札業者が決まるしくみを指します。
具体的な態様として度々問題になるのは、本件の事例のように当該工事における予定価格を漏洩する場合です。
予定価格とは入札が行われる場合に、入札時に地方公共団体側で事前に定められる価格で、この価額を下回らない額のうち最低額を提示した業者が落札することになるので入札において極めて重要な情報になります。

官製談合については2003年に入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下通称である「官製談合防止法」といいます)が制定されました。
談合に関わった公務員については官製談合防止法違反で刑事訴追される可能性が高いです。
これに対して、談合に関わった社員等の公務員ではない関係者については、刑法上の公契約等妨害罪(刑法96条の6第2項)に問われる可能性が高いです。
このように自社の社員が官製談合に関わってしまった場合には、刑事事件の被疑者として取り扱われます。
事例のように金品を受け取っていた場合には、贈賄罪(刑法198条)に問われる可能性があります
そして関係者が複数いて当事者間での口裏合わせの危険性が高いことから、官製談合に関する刑事事件は非常に身体拘束のリスクが高い類型の事件になります。

官製談合防止法違反については,こちらで解説しています。

官製談合に社員が関わっていた場合に会社が受ける影響について

①捜査による影響

自社の社員が官製談合に関わっていた場合にはほぼ確実に会社に対して捜査機関の捜索が行われて、工事に関する資料等の関係書類等が広範かつ大量に押収されるおそれがあります。
当然ですが当該社員から証拠隠滅を依頼されても決して応じてはいけません。会社ぐるみでの関与を疑われることになりますし、別途証拠隠滅罪で刑事訴追を受けるおそれもあります。
当該社員が隠れて証拠書類を隠滅しないようにすることも含めて対応する必要があります。
当該社員については先述したように逮捕されて、身体拘束を受ける可能性が高いです。
社員が捜査を受けていることが明らかになった場合には、以上のような捜査の流れに留意して今後の業務体制について見直す必要があります。

②今後の入札における影響

社員による官製談合行為が明らかになったケースの多くでは、当該地方公共団体における工事に関して会社として指名停止処分を受けることになります。
指名停止処分を受ければ、入札による受注機会を失うのみならず、指名停止となった事実と理由が公表されるので会社の信頼が大きく揺らぐことになります。
このように官製談合に社員が関わっていた場合に会社が受ける損失や影響は測り知れないものものですので、普段から会社におけるコンプライアンス教育の徹底と法令が遵守されているかのチェック体制の確立が重要になって来るといえます。

官製談合事件に社員が関与していた場合の事後対応

官製談合は会社に対する周囲からの信頼を失墜させる犯罪であり、入札停止などの重大なペナルティを科される事件になります。
信頼回復のために重要なのは再発防止のための対策になります。
具体的には入札が関係する契約で複数人で対応する体制づくりや、内部通報システムの整備などが有効であると言われています。
あいち刑事事件総合法律事務所には長年刑事事件を中心に扱ってきたことによる刑事事件に対するノウハウと、企業のコンプライアンスに関する専門チームがあります。
是非再発防止や事件に対する者としての対応にお困りの経営者の方はご相談ください。

お問い合わせはこちらから,またはお電話(0120-631-881)までどうぞ。

会社に損害を与えたつもりがないのに特別背任と言われてしまった場合の対応

2024-05-28

(事例)この事例はフィクションです。
Aさんは、医療機器メーカーの修理部門の部長をしています。Aさんの会社では、営業が機械を顧客に販売し、機械が故障した場合にAさんが部長をしている修理部門で修理をすることになります。
Aさんはある日、特別背任の疑いで捜査を受けることとなりました。警察は、修理代金を不当に安く設定して修理を請け負い続け、会社に莫大な損害を与えたというのです。そして、会社の経理関係資料をみると、確かに莫大な損害が出ています。
会社に損害を与えるつもりなど全くなかったAさんは、どう対応するのが良いか、弁護士に相談することとしました。

以上の事例を基に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、どのような聴取を行い、サポートしていくか、特別背任という犯罪の説明を交えて解説します。

背任とはどのような犯罪か

まず背任はどのような犯罪なのか,ざっくりいうと、本人(依頼者)のためにならないと知りながら、依頼者から任された任務の内容に反する行動をして、依頼者に損害を与えたときに成立します。特別背任は、この背任行為を社長や部長など一定の地位の高い人がした場合に成立します。

今回のケースでいうと、Aさんは、会社という依頼者から修理業務を引き受けて、営業活動をすることで利益を出すことを任されているわけです。
そのAさんが不当に安く修理を請け負うことは任務の内容に反することになります。その結果、莫大な損害を依頼者である会社に与えています。しかもAさんは、部長という高い役職にあります。そのためAさんには、不当に安く修理を請け負うことで会社に損害を与えたという特別背任の容疑をかけられているわけです。

しかし、特別背任が成立するためには、「依頼者のためにならないと知りながら」という要件(実際の刑法や会社法ではもっと難しい文言を使っていますが、ここでは簡単な書き方にしています。)があります。Aさんは、ここを否定することができれば、特別背任の罪を免れることができます。したがって、Aさんから相談を受けた弁護士は、この点について詳しく話を聞いていくことになります。

では、「依頼者のためにならないと知りながら」という要件に関わる事実はどのようなものでしょうか。
そもそも会社に損害を与える行為自体が会社のためにならないことは明らかです。したがって、Aさんは、不当に安く修理を請け負って会社に莫大な損害を与えてしまった以上、会社のためにならないことが解っていたはずだといわれかねません。
しかし、Aさんは、「会社に損害を与えるつもりなどなかった」と言っているので、なぜそう思うのか確認する必要があります。
例えばAさんが次のような説明をしたとすればどうでしょうか。「うちの会社では、修理部門が修理をしますが、修理に必要な部品にかかった費用などは経理部門という別の部門で管理しています。実は、経理部門の部長がとてもパワハラ体質の人で、せっかく入社した人がすぐやめてしまうということがここ最近たくさんありました。経理がそのような状況だったので、計算に漏れがあって困っているという愚痴を営業の部長や課長がこぼしていました。私が安すぎる価格で修理をしてしまったのも経理部門のゴタゴタのせいかもしれません。」

このような話が出てくると、確かにAさんは不当に安く修理を請け負ってしまったけれども、経理部門のミスで安すぎることに気づかなかった、だから「会社のためにならないと解っていながら」修理を請け負ったことなどありません、と主張できるようになります。

もちろん今回紹介した事例は、フィクションなので、これほど簡単にはいかないことの方が多いでしょう。会社の組織、経理、業界の専門知識などいろいろな知識が必要になります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、簿記の資格を有する弁護士はもちろん、経理関係の業務や会社運営の顧問に精通した弁護士が在籍しており、一定のクオリティを持ったアドバイスをさせていただきます。
こういった専門的な弁護士や実績のある弁護士のサポートをご希望の場合には、ぜひ弊所に一度ご相談ください。

お問い合わせはこちらのフォームから,またはお電話(0120-631-881)までどうぞ。

迷惑行為の動画を拡散された 店側としてはどのような対応をとるべき?

2024-05-17

【事例】
A社はB市内において複数のラーメン店を運営していました。
ある日動画配信サイトにおいて、A社の運営するラーメン店において、客Xが備え付けの箸をなめてそれを箸箱に戻す様子が映った動画が投稿されていた。
動画はSNSで引用されるなどして多くの人の知るところとなり、店の評判を大きく落とすこととなりました。
A社はあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に今後の対応について相談しました。
(事例はフィクションです)

迷惑動画をあげることにはどのような罪が成立しますか

近年SNSや動画サイトの隆盛により、周囲からの注目を浴びるなどの目的で、事例のような迷惑動画を上げるケースが社会問題になっています。
今回の記事では、企業が事例のような迷惑動画の被害に遭った場合に取るべき対応について、詳しく解説させていただきます。

はじめに、迷惑動画をあげる行為にはどのような犯罪が成立するのかについて事例を題材に説明させていただきます。
まず事例において成立する犯罪として、威力業務妨害罪(刑法234条)が考えられます。

罪名にある「威力」というと暴力や脅迫などが思い浮かぶかもしれませんが、事例のようなお店の業務を妨害するような動画を上げる行為も「威力」に該当します。
他にも、事例にある箸をなめて箸箱に戻す行為行為は、その箸を心理的に今後使えなくする行為なので、器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性があります。
たとえ物理的に破壊していなくとも、茶碗に放尿するなどその物を心理的に今後使えなくする行為について刑法では器物損壊罪の成立を肯定しています。
このように最初にあげた事例では、刑法上の威力業務妨害罪や器物損壊罪が成立する可能性が高いといえます。

店側として取るべき対応

1 犯人の特定

事例のような動画投稿の多くはSNSや動画サイトなどで匿名で投稿されることがほとんどです。
動画を撮影したものや迷惑行為をしたものに対して責任を追及する場合には、まずその犯人を特定することから始める必要があります。
そしてアカウントの情報のみで犯人が分からない場合には、発信者情報開示請求を動画が投稿されたプロバイダに対して行うことが、犯人を特定する方法として考えられます
発信者情報開示請求は裁判所に必要書類を揃えて申し立てをする必要があるなど複雑な手続きですので、請求を考える場合には早急に弁護士に相談することをお勧めします。
また動画の映像やお店の防犯カメラに映った映像から犯人を特定する方法として、後述する刑事告訴を行い捜査機関に犯人を特定してもらう方法もあります。

2 刑事告訴

捜査機関に対する告訴とは、犯罪の被害を受けた者などの告訴権者が捜査機関に犯罪事実を申告して犯罪者の処罰を求める行為です。刑事告訴をするメリットとしては、先述のように犯人の特定が難しい場合に捜査機関の力を借りて犯人の特定ができる場合があることがあります。
また近年大きな社会問題になっている迷惑動画の投稿に対して、店側として許さない毅然とした態度を示して、模倣犯や愉快犯を防ぐ意味合いもあります。
刑事告訴は必ず弁護士を代理人にする必要があるわけではありませんが、事実の特定や捜査機関との連携を弁護士が行うことでスムーズに手続きが進みやすくなるので早期に弁護士に相談することをお勧めします。

3 民事上の賠償請求

刑事手続きが、犯人に対する刑事処罰を目的とする行為であるのに対して、事例の場合における民事手続きは犯人に対する金銭的な責任を追及する手続きになります。
どのような手続をとるかは被害の大きさや加害者側の対応、社会的影響の大きさなどを比較考慮して決める必要があります。
事例の事案では損害賠償の額の算定が問題になるケースが多いでしょう。
事例では単に箸が使えなくなったのみではなく、動画の拡散によってお店の印象が低下して客が減り、損害が発生している可能性が高いです。そのような場合に、収入が減った場合の損害を証明することは簡単ではありません。
手段の選択や、訴えると決めた場合の損害額の証明は容易ではないので、事例のような事態発生の発覚後すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

4 信用回復のために取るべき措置

今回の事例のようなケースではなるべく早く、お店の信頼回復を図る必要があります。
具体的には、動画がこれ以上拡散することがないように問題の動画や動画を引用した投稿を削除する申請を行うことや、同じような行為が繰り返されないように箸箱を客席におかないなどの再発防止策をとる必要があります。
飲食店などは特に客からの評判によって収益が大きく変わるので、客の信頼を回復するための措置はなるべく早くとる必要があります。

刑事事件対応に強い顧問弁護士

あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件に精通した事務所として、刑事事件、少年事件をこれまで多数扱ってまいりました。
そのように刑事事件に強い事務所だからこそ、事例のように企業が刑事事件の被害者になった場合の適切な対応には自信があります。
先ほども述べたように、現代ではSNSの発達やスマホの普及によって、情報は瞬く間に拡散されるので迅速な対応が非常に重要になります。
そのためには、事例のような事態が発生してから弁護士を依頼するのでは対応が後手に回ってしまうおそれがあります。
あいち刑事事件総合法律事務所では、平時からご依頼いただき平時から法律相談相談に加え、事例のような場合に迅速に対応できる顧問契約を準備させていただいております。
事例のような事態にお困りの方、もし事例のような事態が発生した場合のご対応にご心配がある方は、ぜひ一度あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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