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第三者委員会について④

2024-12-24

第三者委員会について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回記事⇒

そもそも第三者委員会とは何か

日本弁護士連合会が公表した「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)では、第三者委員会について、「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」と定義しています。

第三者委員会の調査報告書の記載内容は誰が決めるのか

ガイドラインでは、調査報告書の起案権は第三者委員会に専属するとされています(ガイドライン3頁)。
これは、第三者委員会の独立性と中立性を担保するために設けられたものです。
第三者委員会が作成した報告書に対して、企業側からその記載内容についていろいろと意見を述べるなどし、第三者委員会がそれに応じるようでは、ステークホルダーに来する説明責任を果たすという第三者委員会の役割は到底期待できません。企業は、調査を受ける立場に徹すべきです。ただし、明らかな誤記や、勘違いに基づく事実認定を発見した場合は別であり、第三者委員会にその旨申告して、調査報告書の訂正を求めるべきことは当然といえます。これは調査報告書の記載の正確性の問題だからです。

調査報告書の記載内容について

ガイドラインでは、第三者委員会は、調査により判明した事実とその評価を、企業の現在の経営陣に不利となる場合であっても、調査報告書に記載するとされています(ガイドライン3頁)。

調査報告書の取扱いについて(ガイドライン3頁)

第三者委員会は、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会であることから、調査結果(調査報告書)の提出を受けた企業は、これを遅滞なく、不祥事に関係するステークホルダーに対して開示することが原則であるとされています。
なお、ステークホルダーに対する説明責任を果たすという観点からは、関係者の役職名がわかれば足り、個人名は必ずしも必要ではない場合があります。第三者委員会の調査報告書が公表されることを踏まえると、実名の公表は、その者に対する名誉毀損となる可能性もあります。そのため、このような場合には、調査報告書の一部を非開示とし、あるいは匿名化する等の対応が考えられます。第三者委員会は、必要に応じて、調査報告書(原文)とは別に開示版の調査報告書を作成することができます。非開示部分の決定は、企業の意見を聴取して、第三者委員会が決定します。

第三者委員会について、この続きは今後の記事で解説していきます。

最後に

第三者委員会のメンバーを構成するときに弁護士がその主要なメンバーとなるのが通常です。それは弁護士は、その職務上、事実調査や法的な判断などを日頃から業務として行っているので、調査が正確に行われる蓋然性が高いということにあります。
企業で不祥事が発生し、第三者委員会設置を考えておられる、あるいは、不祥事が起きていなくても、不祥事の事前の回避を真剣に考えておられる企業経営者等の方は、早めに弁護士にご相談ください。

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外国人の雇用について

2024-12-20

グローバル化が進み、外国人の日本での就業が多く見られるようになっています。その一方で、文化の違いなどから日本人の生活者とのトラブルも見受けられます。
外国人が適正に就労できるよう、外国人の雇用についても厳格な規制が設けられています。
ここでは、外国人の雇用の際のルールについて解説します。

外国人の雇用が可能な在留資格

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者は、日本人と同様にわが国で暮らしていますので、就労活動に制限はありません。これらは出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第二の在留資格で、別表第一の在留資格のような制限はありません。

一方、別表第一の在留資格ですと、どのような在留資格の外国人でも雇用できるわけではありません。

以下の一定の活動を目的として在留する外国人(別表第一の一、第一の二、第一の五)は、その在留資格に定められた範囲で終了が認められます(入管法第19条第1項第1号)。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定技能、技能実習、特定活動(ワーキングホリデー等)

文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在の資格(入管法別表第一の三、第一の四)は、日本での就労を予定していない資格なので、そのままでは就労が認められません。これらの資格の者がアルバイト等の就労活動を行う場合、資格外活動の許可を受けることが必要です(入管法第19条第1項第2号・第2項)。

外国人雇用状況の届出

事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、以下の事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第10条第1項)。

氏名,在留資格,在留期間,その者が在留資格を有しない者であって監理措置や仮滞在による許可を受けて報酬を受ける活動を行う者である場合(報酬活動許可者)はこれらの許可を受けている旨及び被管理者又は仮滞在許可者のいずれに該当するか,生年月日,性別,国籍の属する国・地域,資格外活動許可を受けている場合はその旨,中長期在留者(3か月以下の在留期間の者や短期滞在者等以外を指します。入管法第19条の3)の場合は在留カードの番号,特定技能の場合は特定産業分野,特定活動の場合はその特に指定された活動,住所,雇入れ又は離職に係る事業所の名称及び所在地,賃金その他の雇用状況に関する事項

事業主は、先述の氏名や在留資格、在留期間などの事項を、在留カードや旅券・在留資格証明書などにより確認しなければなりません(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第11条第1項)。
資格外活動の許可を受けて就労する場合、在留カードや就労資格証明書により確認する必要があります(同施行規則第11条第2項)。
特定技能や特定活動の在留資格の場合、指定書により確認する必要があります(同施行規則第11条第3項・第4項)。
被監理者や仮滞在許可者である報酬活動許可者の場合、監理措置決定通知書や仮滞在許可書により確認する必要があります(同施行規則第11条第5項)。

外国人雇用状況の届出は、新たに外国人を雇い入れた場合は雇い入れた月の翌月10日までに、その雇用する外国人が離職した場合は離職した日の翌日から起算して10日以内に、当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に提出することにより行います(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則第12条第1項)。

違反した場合の罰則

この届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金に処されます(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第40条第1項第2号)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、この違反行為をしたときは、その行為者を罰するだけでなく、その法人又は人も同様に処罰されます(同条第2項)。

まとめ

このように、外国人の雇用については確認するべき書類が多々あり、違反によっては刑罰を科されることになります。
外国人の雇用についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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外国公務員贈賄罪

2024-12-17

経済のグローバル化に伴い、日本の企業が国外に進出することが増えました。その中では、外国の公務員が関わる事業もあります。その際に、外国の公務員から賄賂を求められることもあります。このようなことを許せば国際的な競争条件が歪められ、国際取引の公正な競争が害されてしまいます。これを防ぐために、外国公務員贈賄罪が定められています。

外国公務員贈賄罪の趣旨

国際商取引における外国公務員への不正な利益供与が問題となっていたため、1997年12月にパリにおいて、我が国を含む33か国により、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」が締結されました。

この条約では、締約国は、「ある者が故意に、国際商取引において商取引又は他の不当な利益を取得し又は維持するために、外国公務員に対し、当該外国公務員が公務の遂行に関して行動し又は行動を差し控えることを目的として、当該外国公務員又は第三者のために金銭上又はその他の不当な利益を直接に又は仲介者を通じて申し出、約束し又は供与することを、自国の法令の下で犯罪とするために必要な措置をとる。」(第1条第1項)、「外国公務員に対する贈賄行為の共犯(教唆、ほう助又は承認を含む。)を犯罪とするために必要な措置をとる。外国公務員に対する贈賄の未遂及び共謀については、自国の公務員に対する贈賄の未遂及び共謀と同一の程度まで、犯罪とする」(第1条第2項)、「自国の法的原則に従って、外国公務員に対する贈賄について法人の責任を確立するために必要な措置をとる」(第2条)などと定められています。

これを受けて、日本では、不正競争防止法において、「外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止」が定められています(同法第18条)。

(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。
一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者
二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者
三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者
四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者
五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者

規制の内容

「国際的な商取引」とは、国際的な商活動を目的とする行為、すなわち貿易及び対外投資を含む国境を超えた経済活動に係る行為を意味するとされています。

「営業上の利益」とは、事業者が営業を遂行していく上で得られる有形無形の経済的価値その他の利益一般とされています。「不正の利益」とは、公序良俗又は信義則に反するような形で得られる利益とされています。

取引の獲得や許認可の取得を目指して利益供与をするだけでなく、通関等の手続の遅延等の差別的な不利益な取り扱いを避ける目的で利益を供与することも該当します。

一方で、支払を行わないと暴行されたり殺害される可能性がある場合など、生命・身体に対する危険の回避を主な目的として、やむを得ずに行った利益供与等は、「不正の利益」を得る目的がないと判断される可能性があります。
参照 「外国公務員贈賄罪Q&A」

この規定に違反したときは、違反行為をした者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科されます(不正競争防止法第21条第4項第4号)。日本国内で行われた場合だけでなく、刑法第3条の例に従い、日本国外において違反行為をした日本国民についても適用されます(同条第10項)。
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関してこの違反行為をしたときは、法人も10億円以下の罰金刑を科されます(同法第22条第1項第1号)。

まとめ

このように、外国の公務員に対して利益供与をすると、行為者も企業も重い処罰を受けることになります。
企業の国際活動についてお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

仮想通貨と法的規制

2024-12-13

ビットコインなどの仮想通貨に注目が集まっています。こうした新しい分野には、大きな経済効果を期待できる一方で、過剰な広告、利用者を誤認させる詐欺的な取引、個人情報の漏洩、さらには仮想通貨そのものの流出も問題になっています。仮想通貨についても事業の適正を確保する必要があり、法的規制がかけられつつあります。ここでは、仮想通貨に関する規制について解説します。

仮想通貨

仮想通貨は、暗号資産とも呼ばれます。法律上はこちらの名称で規定されています。
暗号資産について、「資金決済に関する法律」(資金決済法)では、次のように規定されています。

資金決済に関する法律
第2条第14項
この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
第15項
この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号又は第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
第16項
この法律において「暗号資産交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。
第17項
この法律において「外国暗号資産交換業者」とは、この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において第六十三条の二の登録と同種類の登録(当該登録に類するその他の行政処分を含む。)を受けて暗号資産交換業を行う者をいう。

資金決済法では「第三章の三 暗号資産」(第63条の2以下)で規制されています。

暗号資産(仮想通貨)を扱うためには、暗号資産交換業者として登録する必要があります(資金決済法第63条の2第14項)。

この登録を受けないで暗号資産交換業を行うと、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第107条第12号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。

暗号資産交換業者として登録するためには、株式会社又は外国暗号資産交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る。)であること(資金決済法第63条の5第1項第1号)、(資金決済法第63条の5第1項第3号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第9条第1項第1号)などの条件を満たす必要があり、条件を満たさないときは、登録を拒否されます(資金決済法第63条の5第1項柱書)。

登録後も、情報の安全管理(資金決済法第63条の8)、利用者の保護等に関する措置(同法第63条の10)、利用者財産の管理(同法第63条の11)などの規定を遵守し、利用者の保護を図らなければなりません。

暗号資産の性質について利用者を誤認させないよう、様々な規制が設けられています。暗号資産交換業の広告においては、暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないことのほか、暗号資産の性質であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を表示しなければなりません(資金決済法第63条の9の2)。

この重要な事項として、①暗号資産の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由、②暗号資産は代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済のために使用することができること、が定められています(暗号資産交換業者に関する内閣府令第18条)。

暗号資産の売買契約の締結や勧誘などにおいて、虚偽の表示をしたり、暗号資産の性質について相手方を誤認させるようなことは禁止されています(資金決済法第63条の9の3第1号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第19条)。
これに違反すると、1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第109条第10号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も2億円以下の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第2号)。

資金決済法第63条の9の3第2号では「その行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、又は暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為」、第3号では「暗号資産交換契約の締結等をするに際し、又はその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為」を禁止しています。これらに違反すると、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第112条第14号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。

新規事業は、国民の安全を守るため、様々な規制が課され、違反に対しては時に刑罰が科されます。
仮想通貨を始め、新規事業の法的規制について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に ご相談ください。

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企業が守るべき特定商取引法についての解説③

2024-12-10

今回の記事では特定商取引法に違反してしまった場合に企業が受ける影響について事例をあげながら説明させていただきます。

1 行政上の制裁について

【事例】
住宅リフォームを勧誘する訪問販売で契約書に虚偽の記載をし、実際よりも効果があるよう説明したのは特定商取引法違反に当たるとして、消費者庁は23日、5社に一部業務停止命令を出したと発表した。
いずれも22日付で、X社(大阪市)がA社長も含めて18カ月、Y社(神戸市)が18カ月など。
5社は連携し、勧誘や契約といった役割を分担。契約を締結する際、契約書の担当者欄にうその氏名を記載したり、合理的な根拠もなく商品に優れた防水性があると告げたりしていた。
各地の消費生活センターなどに19~23年度、計592件の苦情や相談が寄せられていた。
(共同通信 令和6年5月23日付「リフォーム勧誘、5社を業務停止 訪問販売で虚偽説明 消費者庁」から一部引用)

ここでいう行政上の制裁とは、事業者が特定商取引法に定める義務に違反した場合や不適切な行為を行った場合に、監督官庁が業務改善の指示又は業務停止命令の処分を行うことを意味します。
行政上の制裁には、さまざまな種類がありますが業務停止命令が下された場合には、会社の営業活動を行えなくなり会社の経済的ダメージは非常に大きいものになります。
また業務停止命令などの処分を受けると、事例のように報道されたり、消費者庁のホームページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/)で実名付きで公表されたりするので今後の企業イメージへの影響も甚大なものになります。
事例のケースでは被害件数が大きかったことも考慮されて業務停止命令という重い処分が科されたと考えられます。

2 刑事上の制裁について

【事例】
高齢の男性宅を飛び込みで訪問し、必要ない屋根の修繕工事を勧めて現金をだまし取ろうとしたとして、警視庁は職業不詳のA容疑者(29)を詐欺未遂と特定商取引法違反(契約書面不備)の疑いで逮捕し、5日に発表した。「弁護士と会ってから話す」と供述しているという。
八王子署によると、片山容疑者は昨年10月18日、実在しない塗装会社の社員を名乗り、東京都八王子市内の70代男性宅を訪問。「瓦が壊れている」などとうその説明をして修繕工事契約を結び、必要な工事をするかのように装って代金計約43万円をだまし取ろうとした疑いがある。
片山容疑者は前日17日に男性宅を飛び込みで訪問。「近所で作業中に瓦が壊れていたのが見えた」「道路の小学生にあたったら責任とらされます」などと言い、18日に契約を結ばせていた。(以下略)
(朝日新聞DIGITAL 令和6年7月5日付「高齢者宅を飛び込み訪問 うその屋根工事を契約 詐欺未遂容疑で逮捕」から一部引用)

 一般的に行政処分が出ているにもかかわらずそれに無視したケースや、詐欺まがいの手口で違法行為を繰り返すなど態様が悪質なケースでは刑事事件となり刑事罰を科される可能性があります。これを刑事上の制裁といいます。
刑事事件に発展しないようにするには、コンプライアンスを徹底し、特定商取引法違反が生じないよう常日頃から注意することはもちろん、万一警察から取り調べを受けるという事態になった場合には、できる限り不起訴処分となるよう対策を講じることが肝要となります。
事例のケースでは記事のみでは明らかではありませんが契約書面にクーリングオフなどの要記載事項がなかった事から特定商取引法違反に問われた可能性があります。
A容疑者が以前に行政処分を受けていたかは分かりませんが、詐欺未遂でも逮捕されていることから、詐欺にもあたる悪質な事案と判断されて行政処分を受けることなくいきなり逮捕に至った可能性もあります。

3 あいち刑事事件総合法律事務所でサポートできること

以上のように行政処分や刑事処分を受けてしまえば、企業が受けるダメージは甚大です。

そのような事態にならないように重要なのは普段の取引から特定商取引法に違反しないこと、特定商取引法違反の疑いをかけられないことになります。
そのために、日頃から特定商取引法に精通した弁護士に寄る契約書や取引方法についての確認やアドバイスを通じて、特定商取引法に違反することにならないようにしっかりと監督させていただきます。

経営サイドののみならず、社内の営業担当者向けセミナーや勉強会を通じて、全社レベルでのコンプライアンス体制構築支援もさせていただきます。
また事実無根の内容で特定証取忌避法違反の容疑をかけられた場合には行政訴訟を通じて処分を争う、刑事裁判を通じて企業の無実を晴らすなどの弁護活動をさせていただきます。
有事が起きないように、また有事の際に対応できるように、特定商取引法違反をはじめとした刑事事件に精通したあいち刑事事件総合法律事務所に顧問を任せてはいかがでしょうか。

ご不安やご興味がある方は初回相談無料ですので是非お気軽に一度ご相談ください。WEBでのご相談にも対応させていただきます。

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企業が守るべき特定商取引法についての解説②

2024-12-06

1 特定商取引法の規制内容について

前回の記事では、特定商取引法の目的とその規制範囲について解説させていただきました。
では特定商取引法ではどのような行為について規制しているのでしょうか。
特定商取引法では、①行政規制、②民事的ルールの2種類の規制に大別されます。
①行政規制は、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて定められる規制です。
②民事的ルールは、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するために定められているルールのことをいいます。

2 行政規制

行政規制には、①氏名等の表示の義務付け、②不当な勧誘行為の禁止、③広告規制、④書面交付義務の4つがあります。
この規制に違反した場合には、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
①については、トラブルになった際の連絡先として機能する必要があるので、単に表示すればよいというのではなく、連絡が取ることが可能な連絡先を表示する必要があります。
また勧誘時には事業者名と勧誘目的であることを明示することが義務付けられています。
②についてしばしば問題になるのは虚偽の説明や、不当な威迫を行って消費者に契約を迫る行為などがあります。
これらの行為は悪質性が高いと判断される場合には、詐欺罪(刑法246条)や強要罪(刑法223条)が成立し、より重い刑事罰が科される場合があります。
③広告規制については虚偽広告、誇大広告をすることが禁止されています。広告の内容については、線引きが難しいところもありますので専門家に判断を仰ぐことがベターです。
④については、契約時に重要事項を記した書面を交付することが特定商取引法上義務付けられています。

実際に同法の違反によって検挙されたケース

3 民事的ルール

民事的ルールには、①クーリングオフ、②意思表示の取消、③損害賠償等の額の制限です。
これらは消費者を保護するための規定です。
これらの内容について法律で定められている記載義務に反して表示をしない場合や、虚偽の内容(クーリングオフの期間を偽るなど)を記載する、または表示すべき内容を記載していなかった場合には行政規制の対象となる場合があります。

4 企業がするべき対応

企業として特定商取引法の対象となる事業をする場合この規制に抵触しないように細心の注意を払う必要があります。
企業として準備する契約書類などに問題がないか確認することはもちろん、従業員が取引の際に守るべき事項をマニュアルにするなどして法令を遵守すことをしっかりと確認する必要があります。
マニュアルがしっかり作成されていれば、万が一従業員が独断で規制に反する取引を行ったとしても企業側が責任負うリスクを防ぐことができます。

今回の記事では特定商取引法で規制されている行為について解説させていただきました。
個々の事例においてこれらの規制に抵触するかについては法律の専門家に相談することをおすすめします。
あいち刑事事件総合法律事務所ではお困りの方に無料法律相談を実施して、お困りの点についてご相談に乗らせていただきます。また継続的に契約書の内容の確認や、取引内容の適法性について確認してほしいというニーズのある方向けに顧問契約もご用意しています。
初回の相談は無料で、WEB面談での対応も可能ですので、まずは一度気軽にご相談してみてください。

次回の記事ではこれらの規制に違反してしまった場合には、企業としてどのような影響があるのかについて解説させていただきます。

経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。

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福祉施設の職員による虐待事案について⑤

2024-12-03

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

虐待事実を把握することの意味

虐待を受けたとされる本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。その際、当然のことですが、加害者の職員等への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。今回は、施設が、虐待行為を行った疑いのある職員(嫌疑者)に対する聴き取りを実施する際の留意点などについて解説します。

嫌疑者に対する聴き取りの持つ意味

例えば通報をしてきて職員に対する聴き取り等から虐待行為を行った疑いのある職員(嫌疑者)が特定された場合、その職員が最終的に虐待を行ったことを自ら認めてくれれば、虐待の有無の調査の目的はほぼ達成されたといえます。

しかしながら、施設による調査では、刑事事件の捜査で認められているような強制的な調査権限が与えられているわけではありませんし、時間的な制約がある場合もありますから、施設による調査にはそもそも限界があります。この点が施設による調査の難しいところです。

嫌疑者に対する聴き取りを行う際の留意点

まず最初に、嫌疑者に対する聴き取りでは、最初は、手の内を見せずに、相手の言うことを否定せずに自由に話をさせることが効果的な場合が多いといえます。この方法であれば、嫌疑者が真相を語っていない場合、証言に矛盾が出てくることも多く、事後に防犯カメラ映像等客観的な証拠と照らし合わせて追及することで虐待行為を認めるように導けることがあります。

また、聴き取りを実施する側も結論ありきで話をしないこと、すなわち、思い込みは禁物です。他の証拠から虐待行為の事実関係を推測し解明していくことは重要ですが、聴き取りの最初から結論ありきで質問した場合、せっかく嫌疑者が正直に真相を語ろうとしているのに、反発心が生じてかえって口を閉ざしてしまうなど、弊害が起きる場合があります。また、思い込みが強すぎますと、それに合致する都合のよい証拠しか目に入らなくなるおそれがあり、真相を見誤ることにもなりかねません。

また、嫌疑者が虚偽の弁解を繰り返し続ける場合には、虚偽の弁解を続けることは情状が悪くなること、事実関係を正直に話せば懲戒解雇は免れる可能性があることなどを指摘し、正直に供述し事実を認めるよう促すことは必要かつ有効です。

施設利用者に対する聴き取り

そのほか、実際に虐待行為を受けている可能性のある施設利用者からの聴き取りも重要です。聴き取りを実施する場合、当該利用者の身体に実際に痣等の外傷がないかなどを慎重に確認した上、いつ、どこで、誰から、どのような虐待行為を受けたのかひとつひとつ意識しながら聴き取りを実施する必要があります。

弊所には犯罪被害支援部門も設置されており,被害対応についても並行してご依頼頂けます。

最後に

施設内で事実確認の調査をする際には、人証(関係者への聴き取りなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。

事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、担当の責任者と一緒に進めていくのがベストといえます。

第三者調査委員会の設置や,施設としての聞き取り調査の実施など,お問い合わせはこちらから

廃棄物処理法の営業許可②

2024-11-29

【事例】
Aさんは、京都市内で産業廃棄物の収集運搬を行う会社であるⅩ社に長年勤めていました。
Aさんは、家庭の事情をきっかけに、それまで勤めていた会社を退職し、地元である滋賀県高島市で、自ら産業廃棄物の収集運搬を行う会社を立ち上げようと考えました。
AさんはX社に勤めていた経験から、役所で手続きが必要だったり、細かなルールが定められていたりするのは知っていましたが、具体的にどのような手続きをすればいいのかまではわかりませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下では「廃棄物処理法」といいます。)が、事業を細分化し、許可ごとに行える事業を分けたうえで、事業を行う会社にはその事業に対応する許可を取るように求めていることをお伝えしました。

そして、廃棄物処理法が細分化している事業の種類のうち、廃棄物の種類に着目した分類を見てきました。

今回は、業態に着目した分類を見ていきます。

2 収集運搬業と処分業

廃棄物処理法は、廃棄物の収集又は運搬を行う者と処分を行う者とそれぞれ別個の許可を得るように求めています。

まず、収集運搬業は、廃棄物を排出する事業者から廃棄物を回収し、処分業者のもとへと運ぶという業態です。
前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法7条1項本文)、産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条1項本文)、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条の4第1項本文)の3種類です。
ちなみに、特別管理一般廃棄物収集運搬業許可というものが別途ある訳ではなく、一般廃棄物収集運搬業許可の中で行うことができます。
ただし、「一般廃棄物処理基準(特別管理一般廃棄物にあつては、特別管理一般廃棄物処理基準)に従い、一般廃棄物の」収集運搬をしなければならないとされています(廃棄物処理法7条13項)。

次に、処分業は、処理施設での焼却等の処分や最終処分場での埋立て等の処分などといった処分を行う業態です。
こちらも前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物処分業許可(廃棄物処理法7条6項本文)、産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条6項本文)、特別管理産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条の4第6項本文)の3種類です。
特別管理一般廃棄物処分業許可がないというということ、その場合でも廃棄物処理法7条13項により、特別管理一般廃棄物処理基準に従う必要があることは、収集運搬業と共通です。

3 施設許可

さて、Aさんのように収集運搬業の許可を求める場合と異なり、処分業の許可を求める場合には、その処分に必要な処理施設が必要になります。
そして、この処理施設を設置するのにも都道府県知事の許可が必要となります。
この廃棄物処理施設設置許可についても、一般廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法8条1項)と産業廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法15条1項)があります。

今回は、廃棄物処理法の許可について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

続きの記事はこちら

廃棄物処理法の許可③

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福祉施設の職員による虐待事案について④

2024-11-26

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回の解説記事はこちら。

取調べを受ける場合の注意点はこちら。

虐待事実を把握することの意味

虐待を受けたとされる本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。その際、当然のことですが、加害者の職員等への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。今回は、施設が事実確認の調査を行う際の留意点について解説します。

職員への聴き取り

まずは、職員への聴き取りです。
この点、職員への聴き取りは、大きく分けて2種類に分けられます。虐待を行なったとされる職員本人への聴き取りと同人以外の職員に対する聴き取りです。
この聴き取りについては、誰に確認するか、また確認する順番について慎重に検討する必要があります。
すなわち、いまだ虐待の事実は明確でない時点で、虐待を行ったとされる職員以外の職員に対する聴き取りを広く行い過ぎると、虐待を行ったと疑われている職員が職場にいづらくなったり、口裏を合わせて虐待の事実を隠蔽しようとするなどの事態が発生する可能性があるからです。したがって、虐待を行ったとされる職員以外の職員の場合、例えば通報をしてきた職員がいる場合は、まずはその職員から聴き取りを行い、他には、目撃者といった中立的な立場の者等、少数の信頼できる職員に限って行うことが重要です。

次に、聴き取りにおいては、通報者がいればその者から開始し、次いで中立的な立場の者、利害関係者の順番で行い、最後に虐待を行った疑いのある者に対して行うのが通常のパターンといえます。
聴き取りを実施することで、調査を行っていることが、聴き取りの対象には知られますので、早い段階で虐待を行った疑いのある者について聴き取りを行うと、その者による関係者への働きかけなど、証拠隠滅工作が行われてしまうリスクが大きくなってしまいます。

聴き取りは、密行的に、かつ、短期間に集中して行う

また、既に虐待行為の案件が大きく報道されているような事案は別ですが、聴き取りは密行的に、かつ、短期間に集中して行う必要があります。聴き取りが施設内で表立って実施されれば、施設内部で、虐待行為の犯人捜しが始まるなど相互不信が生じ、関係者の協力が得られなくなる可能性があります。また、実施する期間が長引くほど、虐待行為の実行者による罪証隠滅工作が行われるリスクが大きくなってしまいます。

次回は、虐待行為を行った疑いのある職員や施設利用者に対する聴き取りなどについて、別個に取り上げて解説します。

最後に

施設内で事実確認の調査をする際には、人証(関係者への聴き取りなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、担当の責任者と一緒に進めていくのがベストといえます。

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従業員に前科があることが分かったら

2024-11-22

(事例)

 Aさんは、強盗の罪で服役して、半年前に刑務所から出所しました。Aさんは、B会社に就職するにあたり履歴書を作成していましたが、履歴書に賞罰欄が設けられているのに、服役していたことを記載せず、また面接でも前科があることを言いませんでした。Aさんが入社して1年後、実は服役前科があることがB会社に発覚しました。
B会社は、Aさんに何らかの処分をすることができるでしょうか。
逆にAさんは、何かしらの処分を受けてしまうのでしょうか。

以上の事例はフィクションですが、弊所は、刑事事件を多数扱っているため、相談者から「再就職をする際に警察のお世話になったことを言わないといけませんか?」という相談を受けることが少なくありません。
さて、従業員に前科があることを知った経営者は、その従業員に処分を下すことができるのでしょうか。経営者の方にとっても、今まさに就職活動をしている人にとっても大きな関心ごとではないでしょうか。
この件について、解説します。

前科を隠していたらどうなる 

まず前科があるのに前科を隠して入社する行為は、「経歴詐称」、つまり自分の経歴を偽ることになります。前科があるのに前科を隠す場合だけでなく、本当はA大学の出身者なのにB大学出身だと偽るような場合も経歴詐称にあたります。
そして従業員を懲戒するにはあらかじめ就業規則で懲戒の種別及び事由を定めておく必要があり、その拘束力を生じさせるには、その内容を労働者に周知させる手続がとられていなければなりません(最高裁平成13年(受)1709号平成15年10月10日判決,労働基準法106条)。
そして、懲戒処分のバランスが取れているものであることと適切な手続で行われたことが必要になります。
懲戒処分のバランスが取れているとはどういうことでしょうか。簡単にいうと、「いや確かに経歴詐称があるけど、大したことがない詐称なのだから、減給になるのは仕方ないけど、解雇するほどのことではないですよね。」と言われるような懲戒処分は許されないということです。
適切な手続は、その文字通りです。例えば、従業員から言い分を聞かずにいきなり減給や解雇をすると、違法になってしまいます。

このような具合ですので、従業員が隠していた前科を知った経営者としては、就業規則の内容や周知のための手続、処分のバランス、然るべき手続を意識して判断をする必要があります。

特に処分のバランスは、難しい判断を伴いますので、弁護士など専門家に相談することをお勧めします。もし裁判で、「あなたの会社の懲戒処分はバランスが取れていなくて違法です。」と言われてしまった場合、労働者本人からの未払い賃金の請求など金銭的な負担が生じるだけでなく、「ブラック企業」などと報道されるレピュテーションリスクが生じてしまいます。

あくまで一般論ですが、今回のAさんの場合、懲戒解雇になってもおかしくないとは思われますが、例えばあまりにも古い前科を詐称したに過ぎない場合だと懲戒解雇までは難しいかもしれません。また前科が強盗のようなものでなく、交通事故のようなものであった場合も懲戒解雇はやり過ぎとなるかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件の豊富な実績を踏まえて、刑事事件と関連する労働問題もサポートできます。もし紛争に巻き込まれている方、懲戒処分について判断が難しいと考えている方はぜひご連絡ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

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