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仮想通貨と法的規制

ビットコインなどの仮想通貨に注目が集まっています。こうした新しい分野には、大きな経済効果を期待できる一方で、過剰な広告、利用者を誤認させる詐欺的な取引、個人情報の漏洩、さらには仮想通貨そのものの流出も問題になっています。仮想通貨についても事業の適正を確保する必要があり、法的規制がかけられつつあります。ここでは、仮想通貨に関する規制について解説します。
仮想通貨
仮想通貨は、暗号資産とも呼ばれます。法律上はこちらの名称で規定されています。
暗号資産について、「資金決済に関する法律」(資金決済法)では、次のように規定されています。
資金決済に関する法律
第2条第14項
この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
第15項
この法律において「暗号資産交換業」とは、次に掲げる行為のいずれかを業として行うことをいい、「暗号資産の交換等」とは、第一号又は第二号に掲げる行為をいい、「暗号資産の管理」とは、第四号に掲げる行為をいう。
一 暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換
二 前号に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理
三 その行う前二号に掲げる行為に関して、利用者の金銭の管理をすること。
四 他人のために暗号資産の管理をすること(当該管理を業として行うことにつき他の法律に特別の規定のある場合を除く。)。
第16項
この法律において「暗号資産交換業者」とは、第六十三条の二の登録を受けた者をいう。
第17項
この法律において「外国暗号資産交換業者」とは、この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において第六十三条の二の登録と同種類の登録(当該登録に類するその他の行政処分を含む。)を受けて暗号資産交換業を行う者をいう。
資金決済法では「第三章の三 暗号資産」(第63条の2以下)で規制されています。
暗号資産(仮想通貨)を扱うためには、暗号資産交換業者として登録する必要があります(資金決済法第63条の2第14項)。
この登録を受けないで暗号資産交換業を行うと、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第107条第12号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。
暗号資産交換業者として登録するためには、株式会社又は外国暗号資産交換業者(国内に営業所を有する外国会社に限る。)であること(資金決済法第63条の5第1項第1号)、(資金決済法第63条の5第1項第3号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第9条第1項第1号)などの条件を満たす必要があり、条件を満たさないときは、登録を拒否されます(資金決済法第63条の5第1項柱書)。
登録後も、情報の安全管理(資金決済法第63条の8)、利用者の保護等に関する措置(同法第63条の10)、利用者財産の管理(同法第63条の11)などの規定を遵守し、利用者の保護を図らなければなりません。
暗号資産の性質について利用者を誤認させないよう、様々な規制が設けられています。暗号資産交換業の広告においては、暗号資産は本邦通貨又は外国通貨ではないことのほか、暗号資産の性質であって、利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項を表示しなければなりません(資金決済法第63条の9の2)。
この重要な事項として、①暗号資産の価値の変動を直接の原因として損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由、②暗号資産は代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済のために使用することができること、が定められています(暗号資産交換業者に関する内閣府令第18条)。
暗号資産の売買契約の締結や勧誘などにおいて、虚偽の表示をしたり、暗号資産の性質について相手方を誤認させるようなことは禁止されています(資金決済法第63条の9の3第1号・暗号資産交換業者に関する内閣府令第19条)。
これに違反すると、1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第109条第10号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も2億円以下の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第2号)。
資金決済法第63条の9の3第2号では「その行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、虚偽の表示をし、又は暗号資産の性質等について人を誤認させるような表示をする行為」、第3号では「暗号資産交換契約の締結等をするに際し、又はその行う暗号資産交換業に関して広告をするに際し、支払手段として利用する目的ではなく、専ら利益を図る目的で暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換を行うことを助長するような表示をする行為」を禁止しています。これらに違反すると、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されます(資金決済法第112条第14号)。法人の代表者などが違反をした場合、法人も同額の罰金刑を科されます(資金決済法第115条第1項第4号)。
新規事業は、国民の安全を守るため、様々な規制が課され、違反に対しては時に刑罰が科されます。
仮想通貨を始め、新規事業の法的規制について不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に ご相談ください。
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企業が守るべき特定商取引法についての解説③
今回の記事では特定商取引法に違反してしまった場合に企業が受ける影響について事例をあげながら説明させていただきます。
1 行政上の制裁について
【事例】
住宅リフォームを勧誘する訪問販売で契約書に虚偽の記載をし、実際よりも効果があるよう説明したのは特定商取引法違反に当たるとして、消費者庁は23日、5社に一部業務停止命令を出したと発表した。
いずれも22日付で、X社(大阪市)がA社長も含めて18カ月、Y社(神戸市)が18カ月など。
5社は連携し、勧誘や契約といった役割を分担。契約を締結する際、契約書の担当者欄にうその氏名を記載したり、合理的な根拠もなく商品に優れた防水性があると告げたりしていた。
各地の消費生活センターなどに19~23年度、計592件の苦情や相談が寄せられていた。
(共同通信 令和6年5月23日付「リフォーム勧誘、5社を業務停止 訪問販売で虚偽説明 消費者庁」から一部引用)
ここでいう行政上の制裁とは、事業者が特定商取引法に定める義務に違反した場合や不適切な行為を行った場合に、監督官庁が業務改善の指示又は業務停止命令の処分を行うことを意味します。
行政上の制裁には、さまざまな種類がありますが業務停止命令が下された場合には、会社の営業活動を行えなくなり会社の経済的ダメージは非常に大きいものになります。
また業務停止命令などの処分を受けると、事例のように報道されたり、消費者庁のホームページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/)で実名付きで公表されたりするので今後の企業イメージへの影響も甚大なものになります。
事例のケースでは被害件数が大きかったことも考慮されて業務停止命令という重い処分が科されたと考えられます。
2 刑事上の制裁について
【事例】
高齢の男性宅を飛び込みで訪問し、必要ない屋根の修繕工事を勧めて現金をだまし取ろうとしたとして、警視庁は職業不詳のA容疑者(29)を詐欺未遂と特定商取引法違反(契約書面不備)の疑いで逮捕し、5日に発表した。「弁護士と会ってから話す」と供述しているという。
八王子署によると、片山容疑者は昨年10月18日、実在しない塗装会社の社員を名乗り、東京都八王子市内の70代男性宅を訪問。「瓦が壊れている」などとうその説明をして修繕工事契約を結び、必要な工事をするかのように装って代金計約43万円をだまし取ろうとした疑いがある。
片山容疑者は前日17日に男性宅を飛び込みで訪問。「近所で作業中に瓦が壊れていたのが見えた」「道路の小学生にあたったら責任とらされます」などと言い、18日に契約を結ばせていた。(以下略)
(朝日新聞DIGITAL 令和6年7月5日付「高齢者宅を飛び込み訪問 うその屋根工事を契約 詐欺未遂容疑で逮捕」から一部引用)
一般的に行政処分が出ているにもかかわらずそれに無視したケースや、詐欺まがいの手口で違法行為を繰り返すなど態様が悪質なケースでは刑事事件となり刑事罰を科される可能性があります。これを刑事上の制裁といいます。
刑事事件に発展しないようにするには、コンプライアンスを徹底し、特定商取引法違反が生じないよう常日頃から注意することはもちろん、万一警察から取り調べを受けるという事態になった場合には、できる限り不起訴処分となるよう対策を講じることが肝要となります。
事例のケースでは記事のみでは明らかではありませんが契約書面にクーリングオフなどの要記載事項がなかった事から特定商取引法違反に問われた可能性があります。
A容疑者が以前に行政処分を受けていたかは分かりませんが、詐欺未遂でも逮捕されていることから、詐欺にもあたる悪質な事案と判断されて行政処分を受けることなくいきなり逮捕に至った可能性もあります。
3 あいち刑事事件総合法律事務所でサポートできること
以上のように行政処分や刑事処分を受けてしまえば、企業が受けるダメージは甚大です。
そのような事態にならないように重要なのは普段の取引から特定商取引法に違反しないこと、特定商取引法違反の疑いをかけられないことになります。
そのために、日頃から特定商取引法に精通した弁護士に寄る契約書や取引方法についての確認やアドバイスを通じて、特定商取引法に違反することにならないようにしっかりと監督させていただきます。
経営サイドののみならず、社内の営業担当者向けセミナーや勉強会を通じて、全社レベルでのコンプライアンス体制構築支援もさせていただきます。
また事実無根の内容で特定証取忌避法違反の容疑をかけられた場合には行政訴訟を通じて処分を争う、刑事裁判を通じて企業の無実を晴らすなどの弁護活動をさせていただきます。
有事が起きないように、また有事の際に対応できるように、特定商取引法違反をはじめとした刑事事件に精通したあいち刑事事件総合法律事務所に顧問を任せてはいかがでしょうか。
ご不安やご興味がある方は初回相談無料ですので是非お気軽に一度ご相談ください。WEBでのご相談にも対応させていただきます。
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企業が守るべき特定商取引法についての解説②

1 特定商取引法の規制内容について
前回の記事では、特定商取引法の目的とその規制範囲について解説させていただきました。
では特定商取引法ではどのような行為について規制しているのでしょうか。
特定商取引法では、①行政規制、②民事的ルールの2種類の規制に大別されます。
①行政規制は、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて定められる規制です。
②民事的ルールは、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するために定められているルールのことをいいます。
2 行政規制
行政規制には、①氏名等の表示の義務付け、②不当な勧誘行為の禁止、③広告規制、④書面交付義務の4つがあります。
この規制に違反した場合には、業務改善の指示や業務停止命令・業務禁止命令の行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
①については、トラブルになった際の連絡先として機能する必要があるので、単に表示すればよいというのではなく、連絡が取ることが可能な連絡先を表示する必要があります。
また勧誘時には事業者名と勧誘目的であることを明示することが義務付けられています。
②についてしばしば問題になるのは虚偽の説明や、不当な威迫を行って消費者に契約を迫る行為などがあります。
これらの行為は悪質性が高いと判断される場合には、詐欺罪(刑法246条)や強要罪(刑法223条)が成立し、より重い刑事罰が科される場合があります。
③広告規制については虚偽広告、誇大広告をすることが禁止されています。広告の内容については、線引きが難しいところもありますので専門家に判断を仰ぐことがベターです。
④については、契約時に重要事項を記した書面を交付することが特定商取引法上義務付けられています。
実際に同法の違反によって検挙されたケース
3 民事的ルール
民事的ルールには、①クーリングオフ、②意思表示の取消、③損害賠償等の額の制限です。
これらは消費者を保護するための規定です。
これらの内容について法律で定められている記載義務に反して表示をしない場合や、虚偽の内容(クーリングオフの期間を偽るなど)を記載する、または表示すべき内容を記載していなかった場合には行政規制の対象となる場合があります。
4 企業がするべき対応
企業として特定商取引法の対象となる事業をする場合この規制に抵触しないように細心の注意を払う必要があります。
企業として準備する契約書類などに問題がないか確認することはもちろん、従業員が取引の際に守るべき事項をマニュアルにするなどして法令を遵守すことをしっかりと確認する必要があります。
マニュアルがしっかり作成されていれば、万が一従業員が独断で規制に反する取引を行ったとしても企業側が責任負うリスクを防ぐことができます。
今回の記事では特定商取引法で規制されている行為について解説させていただきました。
個々の事例においてこれらの規制に抵触するかについては法律の専門家に相談することをおすすめします。
あいち刑事事件総合法律事務所ではお困りの方に無料法律相談を実施して、お困りの点についてご相談に乗らせていただきます。また継続的に契約書の内容の確認や、取引内容の適法性について確認してほしいというニーズのある方向けに顧問契約もご用意しています。
初回の相談は無料で、WEB面談での対応も可能ですので、まずは一度気軽にご相談してみてください。
次回の記事ではこれらの規制に違反してしまった場合には、企業としてどのような影響があるのかについて解説させていただきます。
経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。
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福祉施設の職員による虐待事案について⑤

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
虐待事実を把握することの意味
虐待を受けたとされる本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。その際、当然のことですが、加害者の職員等への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。今回は、施設が、虐待行為を行った疑いのある職員(嫌疑者)に対する聴き取りを実施する際の留意点などについて解説します。
嫌疑者に対する聴き取りの持つ意味
例えば通報をしてきて職員に対する聴き取り等から虐待行為を行った疑いのある職員(嫌疑者)が特定された場合、その職員が最終的に虐待を行ったことを自ら認めてくれれば、虐待の有無の調査の目的はほぼ達成されたといえます。
しかしながら、施設による調査では、刑事事件の捜査で認められているような強制的な調査権限が与えられているわけではありませんし、時間的な制約がある場合もありますから、施設による調査にはそもそも限界があります。この点が施設による調査の難しいところです。
嫌疑者に対する聴き取りを行う際の留意点
まず最初に、嫌疑者に対する聴き取りでは、最初は、手の内を見せずに、相手の言うことを否定せずに自由に話をさせることが効果的な場合が多いといえます。この方法であれば、嫌疑者が真相を語っていない場合、証言に矛盾が出てくることも多く、事後に防犯カメラ映像等客観的な証拠と照らし合わせて追及することで虐待行為を認めるように導けることがあります。
また、聴き取りを実施する側も結論ありきで話をしないこと、すなわち、思い込みは禁物です。他の証拠から虐待行為の事実関係を推測し解明していくことは重要ですが、聴き取りの最初から結論ありきで質問した場合、せっかく嫌疑者が正直に真相を語ろうとしているのに、反発心が生じてかえって口を閉ざしてしまうなど、弊害が起きる場合があります。また、思い込みが強すぎますと、それに合致する都合のよい証拠しか目に入らなくなるおそれがあり、真相を見誤ることにもなりかねません。
また、嫌疑者が虚偽の弁解を繰り返し続ける場合には、虚偽の弁解を続けることは情状が悪くなること、事実関係を正直に話せば懲戒解雇は免れる可能性があることなどを指摘し、正直に供述し事実を認めるよう促すことは必要かつ有効です。
施設利用者に対する聴き取り
そのほか、実際に虐待行為を受けている可能性のある施設利用者からの聴き取りも重要です。聴き取りを実施する場合、当該利用者の身体に実際に痣等の外傷がないかなどを慎重に確認した上、いつ、どこで、誰から、どのような虐待行為を受けたのかひとつひとつ意識しながら聴き取りを実施する必要があります。
弊所には犯罪被害支援部門も設置されており,被害対応についても並行してご依頼頂けます。
最後に
施設内で事実確認の調査をする際には、人証(関係者への聴き取りなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、担当の責任者と一緒に進めていくのがベストといえます。
第三者調査委員会の設置や,施設としての聞き取り調査の実施など,お問い合わせはこちらから。

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廃棄物処理法の営業許可②

【事例】
Aさんは、京都市内で産業廃棄物の収集運搬を行う会社であるⅩ社に長年勤めていました。
Aさんは、家庭の事情をきっかけに、それまで勤めていた会社を退職し、地元である滋賀県高島市で、自ら産業廃棄物の収集運搬を行う会社を立ち上げようと考えました。
AさんはX社に勤めていた経験から、役所で手続きが必要だったり、細かなルールが定められていたりするのは知っていましたが、具体的にどのような手続きをすればいいのかまではわかりませんでした。
そこで、Aさんは、今後必要な手続きなどを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下では「廃棄物処理法」といいます。)が、事業を細分化し、許可ごとに行える事業を分けたうえで、事業を行う会社にはその事業に対応する許可を取るように求めていることをお伝えしました。
そして、廃棄物処理法が細分化している事業の種類のうち、廃棄物の種類に着目した分類を見てきました。
今回は、業態に着目した分類を見ていきます。
2 収集運搬業と処分業
廃棄物処理法は、廃棄物の収集又は運搬を行う者と処分を行う者とそれぞれ別個の許可を得るように求めています。
まず、収集運搬業は、廃棄物を排出する事業者から廃棄物を回収し、処分業者のもとへと運ぶという業態です。
前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法7条1項本文)、産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条1項本文)、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可(廃棄物処理法14条の4第1項本文)の3種類です。
ちなみに、特別管理一般廃棄物収集運搬業許可というものが別途ある訳ではなく、一般廃棄物収集運搬業許可の中で行うことができます。
ただし、「一般廃棄物処理基準(特別管理一般廃棄物にあつては、特別管理一般廃棄物処理基準)に従い、一般廃棄物の」収集運搬をしなければならないとされています(廃棄物処理法7条13項)。
次に、処分業は、処理施設での焼却等の処分や最終処分場での埋立て等の処分などといった処分を行う業態です。
こちらも前回の記事で説明した廃棄物の種類に応じて、次の種類の許可があります。
つまり、一般廃棄物処分業許可(廃棄物処理法7条6項本文)、産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条6項本文)、特別管理産業廃棄物処分業許可(廃棄物処理法14条の4第6項本文)の3種類です。
特別管理一般廃棄物処分業許可がないというということ、その場合でも廃棄物処理法7条13項により、特別管理一般廃棄物処理基準に従う必要があることは、収集運搬業と共通です。
3 施設許可
さて、Aさんのように収集運搬業の許可を求める場合と異なり、処分業の許可を求める場合には、その処分に必要な処理施設が必要になります。
そして、この処理施設を設置するのにも都道府県知事の許可が必要となります。
この廃棄物処理施設設置許可についても、一般廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法8条1項)と産業廃棄物処理施設設置許可(廃棄物処理法15条1項)があります。
今回は、廃棄物処理法の許可について解説していきました。この続きは今後の記事で解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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福祉施設の職員による虐待事案について④

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
取調べを受ける場合の注意点はこちら。
虐待事実を把握することの意味
虐待を受けたとされる本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。その際、当然のことですが、加害者の職員等への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。今回は、施設が事実確認の調査を行う際の留意点について解説します。
職員への聴き取り
まずは、職員への聴き取りです。
この点、職員への聴き取りは、大きく分けて2種類に分けられます。虐待を行なったとされる職員本人への聴き取りと同人以外の職員に対する聴き取りです。
この聴き取りについては、誰に確認するか、また確認する順番について慎重に検討する必要があります。
すなわち、いまだ虐待の事実は明確でない時点で、虐待を行ったとされる職員以外の職員に対する聴き取りを広く行い過ぎると、虐待を行ったと疑われている職員が職場にいづらくなったり、口裏を合わせて虐待の事実を隠蔽しようとするなどの事態が発生する可能性があるからです。したがって、虐待を行ったとされる職員以外の職員の場合、例えば通報をしてきた職員がいる場合は、まずはその職員から聴き取りを行い、他には、目撃者といった中立的な立場の者等、少数の信頼できる職員に限って行うことが重要です。
次に、聴き取りにおいては、通報者がいればその者から開始し、次いで中立的な立場の者、利害関係者の順番で行い、最後に虐待を行った疑いのある者に対して行うのが通常のパターンといえます。
聴き取りを実施することで、調査を行っていることが、聴き取りの対象には知られますので、早い段階で虐待を行った疑いのある者について聴き取りを行うと、その者による関係者への働きかけなど、証拠隠滅工作が行われてしまうリスクが大きくなってしまいます。
聴き取りは、密行的に、かつ、短期間に集中して行う
また、既に虐待行為の案件が大きく報道されているような事案は別ですが、聴き取りは密行的に、かつ、短期間に集中して行う必要があります。聴き取りが施設内で表立って実施されれば、施設内部で、虐待行為の犯人捜しが始まるなど相互不信が生じ、関係者の協力が得られなくなる可能性があります。また、実施する期間が長引くほど、虐待行為の実行者による罪証隠滅工作が行われるリスクが大きくなってしまいます。
次回は、虐待行為を行った疑いのある職員や施設利用者に対する聴き取りなどについて、別個に取り上げて解説します。
最後に
施設内で事実確認の調査をする際には、人証(関係者への聴き取りなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。
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従業員に前科があることが分かったら

(事例)
Aさんは、強盗の罪で服役して、半年前に刑務所から出所しました。Aさんは、B会社に就職するにあたり履歴書を作成していましたが、履歴書に賞罰欄が設けられているのに、服役していたことを記載せず、また面接でも前科があることを言いませんでした。Aさんが入社して1年後、実は服役前科があることがB会社に発覚しました。
B会社は、Aさんに何らかの処分をすることができるでしょうか。
逆にAさんは、何かしらの処分を受けてしまうのでしょうか。
以上の事例はフィクションですが、弊所は、刑事事件を多数扱っているため、相談者から「再就職をする際に警察のお世話になったことを言わないといけませんか?」という相談を受けることが少なくありません。
さて、従業員に前科があることを知った経営者は、その従業員に処分を下すことができるのでしょうか。経営者の方にとっても、今まさに就職活動をしている人にとっても大きな関心ごとではないでしょうか。
この件について、解説します。
前科を隠していたらどうなる
まず前科があるのに前科を隠して入社する行為は、「経歴詐称」、つまり自分の経歴を偽ることになります。前科があるのに前科を隠す場合だけでなく、本当はA大学の出身者なのにB大学出身だと偽るような場合も経歴詐称にあたります。
そして従業員を懲戒するにはあらかじめ就業規則で懲戒の種別及び事由を定めておく必要があり、その拘束力を生じさせるには、その内容を労働者に周知させる手続がとられていなければなりません(最高裁平成13年(受)1709号平成15年10月10日判決,労働基準法106条)。
そして、懲戒処分のバランスが取れているものであることと適切な手続で行われたことが必要になります。
懲戒処分のバランスが取れているとはどういうことでしょうか。簡単にいうと、「いや確かに経歴詐称があるけど、大したことがない詐称なのだから、減給になるのは仕方ないけど、解雇するほどのことではないですよね。」と言われるような懲戒処分は許されないということです。
適切な手続は、その文字通りです。例えば、従業員から言い分を聞かずにいきなり減給や解雇をすると、違法になってしまいます。
このような具合ですので、従業員が隠していた前科を知った経営者としては、就業規則の内容や周知のための手続、処分のバランス、然るべき手続を意識して判断をする必要があります。
特に処分のバランスは、難しい判断を伴いますので、弁護士など専門家に相談することをお勧めします。もし裁判で、「あなたの会社の懲戒処分はバランスが取れていなくて違法です。」と言われてしまった場合、労働者本人からの未払い賃金の請求など金銭的な負担が生じるだけでなく、「ブラック企業」などと報道されるレピュテーションリスクが生じてしまいます。
あくまで一般論ですが、今回のAさんの場合、懲戒解雇になってもおかしくないとは思われますが、例えばあまりにも古い前科を詐称したに過ぎない場合だと懲戒解雇までは難しいかもしれません。また前科が強盗のようなものでなく、交通事故のようなものであった場合も懲戒解雇はやり過ぎとなるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件の豊富な実績を踏まえて、刑事事件と関連する労働問題もサポートできます。もし紛争に巻き込まれている方、懲戒処分について判断が難しいと考えている方はぜひご連絡ください。
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企業が守るべき特定商取引法についての解説①

今回の記事からは数回に分けて特定商取引法に関しての解説をさせていただきます。
特定商取引法については、これに違反したとして逮捕される例が少なくありません。
また逮捕された場合には、消費者保護の観点から被疑者名や会社名が実名で報道されるケースが一般的に多いです。
ですので経営する会社が特定商取引法違反で報道されることになってしまえば、大きく企業イメージを損なってしまいます
例えば、次に挙げる記事のような事例です。
美容商品の販売契約に関してクーリングオフを説明しなかったとして、大阪府警は19日、名古屋市にある美容関連商品卸売業Xの実質経営者Aさんら男性5人を特定商取引法違反(不実の告知など)容疑で逮捕した。
府警は認否を明らかにしていない。
逮捕容疑は2023年1~3月、同社から仕入れた化粧品を販売できる内容の契約を男女3人と締結。契約解除ができるクーリングオフ制度は適用されないと虚偽の説明をしたり、制度の記載がない契約書を渡したりしたとしている。
契約者は市場価格より安価で商品を同社から入手し、第三者に売って利ざやを得られるとする仕組みだった。(以下略)
(毎日新聞令和6年6月19日付「化粧品転売契約、クーリングオフ説明せず。特商法違反疑い、5人を逮捕」から一部引用,当該報道記事は既に削除済み)
本記事では特定商取引法がどのような法律であるか、またどのような取り引きに関して適用があるのかについて解説させていただきます。
この記事を読んでいただくことで、自社が行っている取引や、行おうとしている取引に特定商取引法の規制対象になるかが分かるかと思います。
1 特定商取引法について
特定商取引法は、正式名称を特定商取引に関する法律といいますが、本記事では「特定商取引法」と省略して記載しています。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めています(消費者庁のHPより引用。https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/)
特定商取引法は元々「訪問販売等に関する法律」という名称の法律として施行されており、訪問販売に関する規制を内容としていました。
それが契約類型の多様化に伴って、改正が繰り返されて現行の特定商取引法となっているのです。
2 特定商取引法が規制対象としている取引について
次に特定商取引法が規制対象としている取引に関して解説します。
特定商取引法では7つの契約類型について規制対象としています。
①訪問販売、②訪問購入、③通信販売、④電話勧誘販売、⑤連鎖取引販売、⑥特定継続的役務提供、⑦業務提供誘引取引の7つになります。
それぞれの取引例については、先述の消費者庁のページ(https://www.no-trouble.caa.go.jp/)も参考にしてください。
近年しばしば問題になる取引としては、記事にあったような、ある会社の商品を有償で提供するのでそれを販売して利益を得てくださいというような取引があり、これは⑦の類型にあたります。簡単に言うと「情報商材ビジネス」です。
コロナウイルスの流行やフリマサイトの普及などに伴い自宅で出来る副業として⑦のような取引や事業が増えているといえます。
また継続的にエステを受ける、語学を学ぶといった契約についても、⑥の類型にあたり特定商取引法の規制対象になります。
このように規制対象は当初の訪問販売に限らず非常に広範になっており、これから始めようとしている事業が特定商取引法の規制対象になることは珍しくありません。
次回の記事では、特定商取引法の具体的な規制内容について解説させていただきます。
経営されている業務が特定商取引法の規制対象となるか疑問に思われている方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では、特定商取引法に限らず幅広い分野について、企業の不祥事対策、不祥事対応の業務を行っております。
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企業と個人情報保護

情報通信技術の発達により、企業も大量の情報を扱うようになりました。その中には個人の機微にかかわる重要な情報も含まれます。このような情報は厳重に管理する必要があり、違反があれば処罰も必要です。ここでは、企業の個人情報の保護について解説します。
個人情報保護法
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)は、「デジタル社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、個人情報を取り扱う事業者及び行政機関等についてこれらの特性に応じて遵守すべき義務等を定めるとともに、個人情報保護委員会を設置することにより、行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的」としています(第1条)。
個人情報とは、生存する個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(第2条第1項第1号)や個人識別符号(第2条第2項)が含まれるもの(第2条第1項第2号)をいいます。
企業については「第四章 個人情報取扱事業者等の義務等」において定められています。
個人情報データベース等(個人情報保護法第16条第1項・個人情報の保護に関する法律施行令(個人情報保護法施行令)第4条。個人情報を含む情報の集合物であって、特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものなど)を事業の用に関している企業などは個人情報取扱事業者とされます(個人情報保護法第16条第2項)。
顧客の氏名などを検索すれば出せるようにすれば該当するので、顧客の氏名等の情報をデータとして保存している企業であれば、個人情報取扱事業者に該当するでしょう。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならず(同法第17条第1項)、あらかじめ本人の同意を得ないで、この利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはなりません(同法第18条第1項)。
個人情報取扱事業者は、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法により個人情報を利用してはなりません(同法第19条)。
個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはなりません(同法第20条第1項)。
個人情報取扱事業者(法人の場合は、その役員)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部または一部を複製し、又は加工したものを含みます。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(個人情報保護法第179条)。
法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関して上記のような違反をしたときは、法人も1億円以下の罰金に処されます(個人情報第184条第1項第1号)。
個人情報保護委員会
個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者等やその関係者に対し、個人情報等の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該個人情報取扱事業者等その他の関係者の事務所その他必要な場所に立ち入らせ、個人情報等の取扱いに関し質問をさせ、若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができます(個人情報保護法第46条第1項)。
委員会は、第四章の規定の施行に必要な限度において、個人情報取扱事業者等に対し、個人情報等の取扱いに関し必要な指導及び助言をすることができます(個人情報保護法第47条)。
委員会は、個人情報取扱事業者に違反がある場合、個人の権利利益を保護するため必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を勧告することができます(個人情報保護法第148条第1項)。
この勧告を受けた個人情報取扱事業者等が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において個人の重大な権利利益の侵害が切迫していると認めるときは、個人上保護委員会は、当該個人情報取扱事業者等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができます(個人情報保護法第148条第2項)。
また、個人情報保護委員会は、一定の違反の場合において個人の重大な権利利益を害する事実があるため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該個人情報取扱事業者等に対し、当該違反行為の中止その他違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができます(同条第3項)。これらの命令をした場合において、その命令を受けた個人情報取扱事業者等がその命令に違反したときは、その旨を公表することができます(同条第4項)。
これらの命令に違反した場合には、当該違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます(個人情報保護法第178条)。法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関しこの違反をしたときは、法人も1億円以下の罰金に処されます(同法第184条第1項第1号)。
個人情報取扱事業者(法人の場合は、その役員)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部または一部を複製し、又は加工したものを含みます。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます(個人情報保護法第179条)。法人の代表者や従業者等がその法人の業務に関しこの違反をしたときは、法人も1億円以下の罰金に処されます(同法第184条第1項第1号)。
まとめ
以上のように、企業は個人情報の適切な管理が求められます。
個人情報保護について不安のある方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
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福祉施設の職員による虐待事案について③

福祉施設の職員による虐待事案について、施設側の不祥事対応の観点から弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
施設職員による虐待発生時、施設が負うリスク
市町村は虐待の通報を受けると当該施設に対して必要な調査を行います。そして、施設に対し虐待が判明すると改善を求める行政指導を行います。指導を行ったにもかかわらず、改善がみられない場合には、法令に基づき改善命令が下されたり、最悪指定取り消しという厳しい行政処分が下される可能性があります。加えて事件が報道されることによって、施設の信用が損なわれてしまうというリスクもあります。
施設職員による虐待が発生した場合における施設の対応
たとえば、施設内で職員から高齢者に対する虐待行為が行われている可能性がることが判明した場合、施設側は今後どのように対応すべきでしょうか。
① 施設内での聞き取り調査及び記録
高齢者本人やその家族、職員らから施設内における虐待の相談を受けた場合、担当の責任者へ報告した上で、施設長にも報告することが求められます。
その後、聴き取りが可能な場合には被害者である高齢者本人、加害者の職員、その他の職員への聴き取りを行って事実確認を行い、虐待事実をきちんと把握することがまずもって重要です。その際、被害者に外傷が見られた場合には、写真を撮影させていただくなど証拠の保全に努めるべきです。
また、施設内で調査を行った場合、調査を行った経緯や結果については記録として残しておくことが必要です。
② 市町村に対する通報
高齢者虐待防止法は、養介護施設従業者等に対して、自らが業務に従事する養介護施設又は養介護事業において、高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています(法21条1項)。
ここで注意すべきことは、施設内における聴き取り調査の結果、確実に虐待があったと判断できる場合だけでなく、「虐待を受けたと思われる」時点、すなわち虐待の疑いが払しょくできない場合であっても速やかに通報しなければならないとされている点です。
虐待の事実を隠蔽した場合、後からその事実が発覚してしまうと、行政処分の判断が厳しくなるなど、結局、施設側にとってかえって不利になってしまいます。虐待の隠蔽は絶対に避けるべきでしょう。
次回は、虐待事実の把握の仕方、すなわち、虐待の有無の調査の仕方について掘り下げて解説します。
最後に
施設内で虐待行為が行われている可能性が判明した場合には、調査によって虐待の有無を明確にすること、事実関係を正確に認定することが極めて重要です。しかしながら、施設自らが事実確認の調査を行うことは簡単なことではありません。事実確認の調査を行い、事実関係を正確に認定するには、事実関係の調査について豊富な経験を持つ弁護士が行うことが適任といえます。
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