企業における営業秘密の情報漏洩④

企業において営業秘密の情報漏洩があった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

前回までは、不正競争防止法上の保護を受ける「営業秘密」といえるためには、どのような要件を満たす必要があるか解説しました。

今回は、同法上の保護を受ける営業秘密が実際に存在し、同営業秘密の情報漏洩があった場合の罰則について解説します。

参考 顧客情報保護のための体制と関連法令 前編

営業秘密侵害罪とは

営業秘密侵害罪は、比較的新しく作られた犯罪であり、平成15年の不正競争防止法の改正によって導入されました。

それ以前には、企業において保有している情報を企業外に持ち出す行為については、刑法による処罰が行われていました。

例えば、企業内部者が、紙に記載された営業秘密資料を密かに持ち出して企業外の第三者に手渡し、その第三者がコピーをとって直ちに企業内部者に返却したとしても、裁判所は、持ち出したファイルという紙媒体の価値だけではなく、紙媒体に化体した情報の価値に着目して窃盗罪を認めていました。

しかし、現在においては、紙媒体を持ち出さなくても情報の企業外への持ち出しが可能であり、情報をメールで送ることも可能ですし、USBメモリにコピーしたりすることもできます。このような場合、窃盗罪は、財物に対する犯罪ですから処罰できないことになってしまいます。そこで、このような場合でも処罰を可能にするべく営業秘密侵害罪が創設されることになったのです。

営業秘密侵害罪の主観的要件

営業秘密侵害罪が成立するためには、行為者について、「不正の利益を得る目的」または「営業秘密保有者に損害を加える目的」があったことが必要とされています(これは、一般的に図利加害目的といいます。)。この図利加害目的を要件とすることで、内部告発、研究目的、報道目的等での営業秘密の利用は除かれることになります。

営業秘密の侵害行為とは

詐欺や窃盗等の不正の手段によって営業秘密を取得する行為(不正競争防止法21条1項1号)や詐欺や窃盗等の不正の手段により取得した営業秘密を使用または開示する行為(同法21条1項2号)などが営業秘密を侵害する行為とされています。

そして、営業秘密侵害罪が成立するとなった場合には、その刑罰は相当に重く、法定刑は、10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金、またはこれを併科すると規定されています。

また、こうした営業秘密を侵害する行為の一部については、法人の代表者又は法人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、その行為を行ったときは、法人も罰金(法定刑は5億円以下。同法22条1項2号)の対象とされています。

たとえば、A社の代表取締役Xさんが、A社の事業に利用するため、競合会社B社の従業員Yさんを騙し、「営業秘密」が入ったUSBメモリを取得した場合、Xさんだけではなく、A社も刑事責任を問われることが考えられます。

次回は、営業秘密保護のための管理体制の構築について解説します。

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