営業部門の不正行為を防止するためには?

(事例はフィクションです)

健康器具を扱うA社では、最近ヒット商品があり、売上高が大きく伸びていて、A社の営業マンであつたBさんも他の営業マン同様に売り上げ伸ばしていた。Bさんは、もともと競馬好きなど遊興費に金を使うことが多かったが、売り上げ増と相まって、更に遊興費が増え、そのうち売掛金を回収した金の一部を遊興費に充てるようになった。最近になって、税務調査が入り、取引先への反面調査の結果、売掛金残高について、取引先が把握している残高との間に差異が認められた。そこで、Bさんに問いただしたところ、Bさんは、約500万円の遊興費への使いこみを認めた。

中小企業において、集金した売掛金を着服することはよくみられる事例です。
そこで、今回は、営業部門に関する不正事例として、今回は売掛金の一部を入金せずに私的に使い込んだ事例を取り上げ、営業担当者の横領行為を事前に防止する手段についてあいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Bさんには何罪が成立するか

Bさんについては、業務上売掛金の一部を横領していますので、業務上横領罪が成立します。

不正を事前に防止する施策

チェック体制の整備

営業担当者が集金も行う場合、売掛金の回収までの取引の全てをその営業担当者が管理することになり、不正の温床になる危険が高まります。本件のように、会社の売上げが全体的に大きく伸びているときには、売上金の回収に係る不正を全体の数字から発見することはますます困難になります。
そこで、営業担当者の横領行為を事前に防止するためには、そもそも売掛金の状況に日頃から目を光らせておくことが重要です。たとえば、社内の経理担当者が日頃から各営業担当者の売掛金に目を光らせておけば、特定の営業担当者のみ異常に高い売掛金(未回収の売掛金)を抱えているという事実が見えてきて、着服の事実を疑うことが可能になります。この点、売掛金の管理は、1人の担当者ではなく、複数の担当者の目に触れる体制を整えておくことも重要です。

売掛金の相手先に、定期的に残高確認を行うこと

売掛金の相手先は、代金を支払う立場ですので、いつ支払ったか、いくら支払ったか(残高がいくらか)等について、正確に答えてくれるのが通常です。そのため、中間期末時や決算期末時に相手先に残高確認を行うことは大変有効であり、営業担当者が回収金の着服をしにくくなります。

連番で領収書を管理すること

営業担当者が売掛金を現金で回収する際には、必ず領収書を発行します。
領収書については市販のものではなく、自社独自の領収書を使用し、かつ、連番を打つことが重要です。横領が行われる場合、その事実を隠蔽するため当該営業担当者が、自作の領収書を作成して取引先に渡していることも多いからです。
このように領収書を管理するだけでも、回収金の着服は相当程度防げると思われます。

最後に、Bさんは今後どうなるか

Bさんについては、横領しているため、会社としては懲戒解雇が検討されることになります。着服金額の回収が容易にすすまないなどの場合には、捜査機関に対して刑事告訴するか否かも検討することになるでしょう。

また,ある程度の規模の事業者内での不祥事の場合には,第三者委員会を設置して調査を行うこともあります。
参考:30代男性職員が約9200万円横領で JAおちいまばりが第三者委員会を設置【愛媛

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