横領・業務上横領

横領・業務上横領とは

横領罪は、自己の占有する他人の物を不当に取得することで成立します。

業務上横領罪は、横領した物が業務上占有していたものである場合に成立します。

いずれも自分が占有している、つまり自分が管理していたり所持していたりしている他人の物を、その管理等を依頼した他人の意思に反して自分や第三者の物とすることにより成立するため、財産犯の中でも信頼関係を破壊する罪といえます。

業務上横領罪の方が、業務で預かっているという高度な信頼関係に由来するものであることから、単純な横領罪に比べて重い罪となります。

会社に関係するとすれば、従業員や役員がその業務に関して占有している会社の財産を横領したという場合がほとんどと考えられるため、ここでは会社が業務上横領の被害者となる場合の対応などについて説明します。

従業員・役員が業務上横領をした場合

従業員や役員が会社財産を業務上横領した場合、会社として

  1. 被害届の提出や告訴をする
  2. 加害者に損害賠償を請求するといった被害者としての対応はもちろん
  3. 組織再編
  4. 再発防止策の構築

なども併せて考えなければなりません。

①被害届の提出や告訴

会社が被害に遭った場合、加害者である従業員や役員に刑事罰を与えるために被害届の提出や告訴をすることが考えられます。

被害届の提出や告訴をする場合には、事前に業務上横領の証拠を集め、捜査機関が受理してくれるように準備する必要があります。

そのため、内部調査は非常に重要ですが、会計帳簿や請求書などの精査はもちろん、役員から指示を与えられて犯罪に関与していた従業員がいないかを調査したり、関係者に聴き取り調査をしたりすることも必要になります。

内部調査には、時間と労力がかかる上、法律的な知識も必要になるので、弁護士などの専門家に調査を依頼することが、結果的に時間や労力の節約につながり、会社業務への支障を最小限に抑えることができます。

②損害賠償請求

業務上横領によって会社が被った損害について、加害者である従業員や役員に損害賠償を請求することもできます。

会社財産を喪失させてしまっていることから、その損害を賠償してもらうことは会社財産を回復させるだけでなく、会社資力が戻ることによる社会的信用の回復にもつながります。

しかし、民事裁判で損害賠償請求をしようとすると、損害の立証責任が会社側にあるため、とても大きな負担となりますし、時間もかなりかかってしまいます。

そのため、弁護士に依頼して訴訟を代理してもらうことが有効です。

もっとも、訴訟ではなく、示談や和解といった加害者側との話し合いで賠償を実現することも可能です。

その場合でも、条件面や金額面などについて交渉が必要になったり、要らぬトラブルを避けたりするためにも弁護士を窓口として行うのが肝要です。

③組織再編

役員が業務上横領をした場合、当該役員を解任することは当然ですが、未然に防げなかった責任を取って、他の役員も辞任しなければならなくなる可能性があります。

そのため、運営側の大幅な刷新が行われることになりますが、社会的信用を回復するための新体制移行には、第三者的な目線からの適切な人材登用が必要とされます。

また、場合によってはM&Aなどを繰り返さないといけなくなる可能性もあります。

こういった場合には、専門的な知識が必要不可欠ですので、専門家に依頼しましょう。

④再発防止策の構築

二度と同じことが繰り返されないための対策も講じる必要があります。

なぜこのようなことが起きてしまったのかの原因を調査し、分析するとともに、適切な対策を講じるためには、やはりコンプライアンスに精通した弁護士とともに行う必要があります。

また、不正があった場合に、早期に不正を発見できるシステムの構築も必要です。

早く気付くことができれば、会社財産の流出を最小限に抑えることができますし、損害の回復も容易となります。

そのためには、内部通報制度の活用や内部監査システムの構築、財産管理システムの見直しなどを行っていく必要があります。

弁護士だけではなく、税理士などの専門家にも参画してもらいながら、そういったシステムを構築していきましょう。

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