民泊サービスを始める場合の法律上の注意点⑦

民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します⑦

【相談】

不動産事業を営むX社の社長であるAさんから次のような相談を受けました
実は自社の顧客から
「自分が住む一軒家や持っている別荘を利用して民泊サービスを始めようと考えているがどうすればよいのか」
と相談されているのだがどのように対応すればよいのか。
最近住宅宿泊事業法という法律が施行されたと聞くがそれは旅館業法とは何が違うのか。
(相談はフィクションです)

前回までの記事では住宅宿泊業法の「住宅」の要件について解説しました。
実際に民泊サービスとして使用する「住宅」が決まれば、次は開業するための手続きになります。
今回の記事では、住宅宿泊事業法に基づいて民泊サービスを始める場合の手続きの概説について解説します。

1 届出方法について

住宅宿泊事業を始めるためには、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等に届け出る必要があります(住宅宿泊事業法第3条1項)。
ここでのポイントは、旅館業法の場合は「許可」を申請する必要があったのに対して、住宅宿泊事業法では「届出」で手続きが足りるということです。
許可と届出の違いの説明はここでは省略しますが、旅館業法に基づくよりも手続きが簡便になっています。
届出をする際の記載事項に関しては住宅宿泊事業法第3条2項に定めがあります。
住宅宿泊事業法第3条
2 前項の届出をしようとする者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、住宅宿泊事業を営もうとする住宅ごとに、次に掲げる事項を記載した届出書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 商号、名称又は氏名及び住所
二 法人である場合においては、その役員の氏名
三 未成年者である場合においては、その法定代理人の氏名及び住所(法定代理人が法人である場合にあっては、その商号又は名称及び住所並びにその役員の氏名)
四 住宅の所在地
五 営業所又は事務所を設ける場合においては、その名称及び所在地
六 第十一条第一項の規定による住宅宿泊管理業務の委託(以下単に「住宅宿泊管理業務の委託」という。)をする場合においては、その相手方である住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項
七 その他国土交通省令・厚生労働省令で定める事項

7号の「その他国土交通省令・厚生労働省令」は前回の記事でも出てきた住宅宿泊業法施行規則になります。
上記にあげた事項の他に記載すべき事項については詳しくはこちらの法令を確認いただくか信頼できる弁護士にご相談ください。

2 住宅宿泊事業の管理について

先ほど挙げた届出事項の中に「住宅宿泊管理業務の委託をする場合」という文言がありました(住宅宿泊業法第3条2項6号)。
住宅で「民泊サービス」を提供する場合には、その住宅に誰か民泊を管理する人間が必要になります。その業務の事を住宅宿泊管理業務というのです。
住宅宿泊事業者が行うべき管理業務の内容については住宅宿泊事業法第5条から第10条に規定があります。
例えば住宅の清掃等の衛生の確保や、宿泊者の安全の確保などが規定されています。

もちろんこれは住宅宿泊業を営む者が、その「住宅」に常駐して行うのであれば問題ありませんが、それができないのであれば管理業務を第三者に責任をもって委託しなければなりません。
委託をする場合には、その委託された者が「住宅宿泊管理業者」となるのです。

3 旅館営業と民泊サービスの違い

民泊サービスを始める施設に関する基準

旅館業法として住宅宿泊業法に基づいて民泊サービスを始める場合のメリットとして、施設に対する基準の要件が緩いところです。
民泊サービスを始める場合の初期投資として最も大きなものは施設に関する費用であることがほとんどです。
記事でも住宅宿泊業法の「住宅」の要件について解説しましたが、要するに今住んでいる家の一室を利用しても開業することが可能な場合が多いです。
その点で開業のためのハードルが低いといえるでしょう。

手続きの違い

始める際の手続きについては許可制と届出制の違いがあります。
旅館業法では許可制とされており、住宅宿泊業法では届出制となっています。
許可制の場合は本来禁止されている行為を法令で特別に許可を与える制度ですので、仮に要件を満たしていても不許可となり開業が認められない場合があります。
そのために事前の行政側との面談が重要であることは以前の記事で解説した通りです。
これに対して届出制の場合は要件を満たしていれば、届出をした時点で効力が発生します。
この手続きの違いから届出制を取っている住宅宿泊業法による方が手続き面でもハードルが低いといえるでしょう。

営業日に関する基準

ここまで説明すると旅館業法の方がよいかもしれませんが住宅宿泊業法に基づいて民泊サービスを始める場合には日数制限があります。
具体的には1年の約半分である180日を超えて営業してはならないと定められています。
この日数を超えて営業すれば違法な営業となっています。
日数制限があるということは、その限られた営業日数で施設にかかる費用や人件費などにかかる維持費と比較して採算がとれている必要があります。
したがって始めるための手続や設備についての要件が簡単だからという理由だけで安易に住宅宿泊業法に基づいて民泊サービスを始めることは避けた方がよいでしょう。

4 まとめ

このように民泊サービスを始めようとする場合には複数の選択肢があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。
またうまく開業にこぎつけたとしても管理に関するトラブル、行政指導など行政側への対応、顧客対応など法的な対応が必要になるケースは珍しくありません。
弊所では法令に精通した弁護士のみならず、規制に関する問題に強い元検察官の弁護士、許認可関係に強い行政書士など多数の専門家が在籍しています。
民泊サービスを開業することをご検討の方は是非、許認可関係に精通したあいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回相談は無料で、WEB会議を利用したご相談にも対応しております。
その後の問題についても対応をご希望の方には顧問契約もご準備しています。

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